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【 TURRELL 】金沢にホストクラブをオープンします。

「地元の人に愛されるお店にしよう。」

金沢への出店を決めた際、責任者のMUSASHI、店長の斎藤工とともに話し合ったのは、このようなビジョンでした。東京からの外来者としてではなく、地元に馴染むお店を作る。東京を押し付けるようなやり方ではなく、金沢の街に溶け込むお店を目指そうと決めたのです。そして、ホストも東京から連れてくるのではなく、金沢で集めることにしました。

しかし、物件を契約してからホストを集めるのに苦戦し、約一年が経過してしまいました。その間、店長の斎藤工は地元の2軒のお店で半年ほどお世話になり、地域の方々との交流を深めました。私自身も毎月金沢を訪れ、朝まで飲みながら街を学びました。

ホストはまだ十分な人数が集まっていませんが、それでもオープンを決意しました。

「金沢にリスペクトがあるお店とは、一体どのようなものか?」

金沢といえば、九谷焼や花街、兼六園など、伝統的な街のイメージが強いです。実際、金沢の老舗クラブは、伝統工芸品をふんだんに取り入れ、和洋折衷の上品な空間を作り上げています。当初は、そんなお店を作りたいと思っていました。しかし、立ち上げの段階で、そのような老舗クラブが長年かけて築き上げてきたものを再現するのは到底難しいことに気付きました。見せかけの和風にするのも無粋です。

「金沢を代表する観光地、21世紀美術館があるじゃないか!」と気付きました。21世紀美術館以外にも、FOC、芸宿、PAUSE、POOL SIDE GALLERY、NN、IACK、ソシ SOSI、など、若者が運営するようなアートスペースも数多くあり、さらに現代アートと伝統工芸がリンクするような作家も多く存在していました。これらを背景に、金沢の新しい魅力である現代アートを取り入れるお店にしようと決めました。

福光屋の太一郎さんの紹介で借りることになった夢館IIのテナントは、部分的に外の光を取り込むことができる設計でした。光といえば、金沢21世紀美術館の代表的な常設作品「ブループラネットスカイ」ジェームズ・タレルの作品が頭に浮かびます。私はこの作品が大好きで、金沢を訪れるたびに、時間が許す限りタレルの部屋でぼんやりと過ごします。毎回違う五感が刺激され、同じ顔を見せることは決してありません。光や風が常に新しく、雨の日はまるで演奏会のように感じられる。その時間は、とても贅沢なものでした。

ブルー・プラネット・スカイ
《ブルー・プラネット・スカイ》は、通り過ぎていく光をとらえ、人間の知覚体験(見ること、感じること)に働きかける作品。空間に入ると、正方形の天井の中央部分にある正方形に切り取られた空へと視線が自然と向かいます。ここでは、四季を通じて朝から夜まで絶え間なく変化する光を体感することが促されます。しばらくこの空間に身を置いてみると、普段は気づかない感覚にみまわれるでしょう。「どのように光を感じるか」...
https://museum-u.com/museum/93/collection/536

ジェームズ・タレルは、光と空間を使った作品で知られるアメリカの現代アーティストです。彼は光を物理的な素材として捉え、それを通じて観る者の知覚や体験を変えることを目指しています。まさに、私はタレルの掌の上で踊らされているのです。彼の作品は、観客が光の質感や色、空間との関係を新たに感じるように設計されています。


彼があるインタビューでこう答えていました。


「私は光の明度を低くすることを好みます。人をオープンにすることを促すからです。そして人がオープンになったとき、感情は目から接触のように流れ出します。もちろん、自分をオープンにしたときには、ゆっくりとした調整が必要です。」


これはまさに、ホストクラブが求めている要素だと感じました。


そんなお店になるように、店名を「TURRELL」と名付けました。働く一人一人が光となり、お客様一人一人に光が差し込むような場所であってほしいと願っています。


光を生かした大きなシンボルとなる作品も常設しました。

作品情報

作家名:深田拓哉

作品名:ずっと、ここにあった

制作年:2024年

素材:鉄

タレルの解体現場には、夢館IIの歴史を感じさせるさまざまな残置物がありました。その中で、深田は非常出口の看板を見つけ、本作のモチーフとした。


作家情報

深田拓哉 Takuya Fukada

1995年、東京都に生まれる。現在金沢在住。日常風景の中で見つけた朽ちた看板や構造物など、用途や役割を失いながらも存在し続けるものをモチーフに、それらを未来の遺跡として作品化している。大型の彫刻や大規模なインスタレーションを得意とし、主に鉄を素材としている。

Instagram



ガラス越しに見えるこの作品は、金沢の空気や雨に触れて時間をかけて変化していくことでしょう。ホストたちもまた、街に馴染みながら、その一部として大切にされる存在になっていってほしいと願っています。

10月以降、昼間の時間を利用して、若手作家の展覧会を開催します。ホストクラブという少し敷居が高いと思われがちな場所が、現代アートによって柔らかく馴染んでいくことを目指します。


私の母方の出自は石川県輪島です。子供のころ毎年夏休みに輪島に遊びに行って、おばあちゃんに手を引かれて朝市に出かけ、昼間は海で遊んでいました。御陣乗太鼓の鬼は怖くて、火の中に飛び込んでお札を奪い合う大人の姿に憧れました。

石川県でお店を、このタイミングやれることは、とても嬉しいです。

心からそう思えるようなお店を、時間を掛けてゆっくりと作っていきたいと思います。長い目でどうぞよろしくお願いいたします。



TURRELL






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