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繁殖する庭

Smappa!Groupにインターンに来ているSです。本日もアートに関する情報を発信していきます。

会期会期 2021年8月7日~8月15日
会ㅤㅤ場ㅤTOH
住ㅤㅤ所ㅤ東京都渋谷区千駄ケ谷5-20-11 第一シルバービル1B
開館時間ㅤ13:00~20:00
観覧料ㅤㅤ無料
アクセスㅤJR代々木駅徒歩1分

終わってしまった展示になるのですが大変素敵な展示でしたので共有したいと思います。


この度、開催する展覧会「繁殖する庭」では日本の建築制度と婚姻制度、そして性によって規制された3 つの「規制された家(庭)」を三つの軸とし『現実にある取り残された土地(庭)の運営』『“今日での家族像”というテーマを元に映画制作』の2つの方法でプロジェクトは展開されます。

現実にある取り残された土地(庭)とは、建築基準法によって再建築が不可能とされている空地であり、そこを実際に賃貸し、そこに家族に必要不可欠な建築物である「家」ではなく「庭」を作る。「庭」という漢字の語源には「場」という意味があり、「家庭」という文字には、夫婦・親子などが生活を共にする小集団である家族が住む場という意味がある。

現行の建築基準法の規制により家を建てることができない「再建築不可の土地」と、日本の結婚制度で規制されている「同性による結婚」という、2つの制度の間で「規制された家(庭)」を浮かび上がらせるとともに、プロジェクトメンバーである小宮りさ麻吏奈と鈴木千尋自身も異性愛規範から逸脱した「クィアネス」を抱えるアーティストとして、同じく制度からこぼれ溢れた存在であり、そのこぼれ溢れた我々が別の仕方での「庭=場」を作ることを模索し試みるプロジェクトであり、今回の展覧会では以上のテーマを元に制作された映画「繫殖する庭」を映像インスタレーション作品として再構成したものを展示いたします。1

私たちは緑色の工事用ネットのようなもので囲われ、その内部にスクリーンからつながるようにして土が敷かれている場所でその「庭」とつながるようにして映像を鑑賞する。

今目の前で起きている、映し出され展開されていく映像内のことが他人事ではなく私たちも当事者であり事実を痛感しなくてはいけないことを伝える。映像内に映し出される同じように緑色の工事用ネットのようなもので囲われた土地の地面の土と私たちが観賞するために入り込んだネット内の土とが地続きに繋がっていることにより鑑賞者もその場所を目の前で捉えているかのような、そこでたんたんと語られる事が事実として目の前にあることをより一層思わせる。


ここ一年ほどで私の周りでも結婚する人を見かけるようになった。現在日本では異性との結婚のみ認められている。しかし男女であれば紙切れ一枚で住むその契りをマイノリティとされている私たちは交わす事ができない。

人権問題として考えると人が誰を人生のパートナーとするかは自由であり相手が同性であった場合に、不動産を相手に残したい、自分が稼げない時に相手の収入で一緒に生活しているのだから相手が配偶者控除を受けて独身者より税金が安くなるべきと言ったことや、外国籍のパートナーが仕事をリストラされて就労ビザを失ったので配偶者ビザを出してもらって一緒に日本で暮らし続けたいといったことは当然なのでみとめられるべきだ。

しかし映像と入り口の階段にある不受理された婚姻届という実体を目の前で見ることで感じることでいかに今私たちが住んでいるこの国の制度が歪んでいるのか、価値観のアップデートが遅ているのかを目の当たりにする。

例えば「同性婚ができない」というと「パートナーシップ制度がある」という人がいるがその制度に法的効力はない。もちろん同社会に性カップルを認める制度があることでこれまで不安定な土地の上に立っていた二人が「認める」という制度があることによって以前より安定した土地の上に立つ事ができるだろう。しかし「パートナーシップ制度」ができたからといって現在認められている「婚姻制度」と同じ力が手に入ったわけではない。


男女での結婚は婚姻届を提出した自治体で暮らす必要はないがパートナーシップ制度はその制度が認められている自治体で暮らす必要があり、引っ越す際はその証明書を返還しなくてはいけない。その他にも健康保険の被扶養者や子どもの共同親権、所得税の配偶者控除などを受けることはできない。2


入り口を入ってすぐの壁に掛けられている不受理された婚姻届が映像を見終え立ち去るときより一層現実を帯び重くのしかかる。


大家さんが「邪魔だから」と言って二人が育てている庭に勝手に除草剤をまくことと、この日本で私たちが普通に、だれにも邪魔されることなく「私が私として」認められ生きていくことの難しさが重なった。


一歩目の階段としてパートナーシップ制度が導入され広がりを見せているがそこで止まるのではなく二歩目の階段として同性婚の成立、三歩目の階段として事実婚のように籍を入れない婚姻の形があり籍を入れなくとも籍を入れた人たちと同等の保証をより受けられるようにあゆみを進めて、より広い意味での婚姻の自由が認められ多くの選択肢を増やしていけたらと思う。

1「繁殖する庭」 東京アートビート(https://www.tokyoartbeat.com/event/2021/F65C )2021/08/16アクセス
2「朝日新聞digital パートナーシップ制度ではだめ 同性婚求めるワケとは (https://www.asahi.com/articles/ASP3H5R1LP3HIIPE01F.html ) 2021/09/17アクセス
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