解説動画制作の進行管理を担当するProject Manager(PM)は、動画内容の策定から完成までを一貫して担う、重要なポストです。今回はPMの奈良さんに、その内容や、やりがいについて聞きました。
奈良敏弥(なら としや) ●simpleshow Japan プロジェクトマネージャー。静岡大学 美術・デザイン専攻(現 地域創造学環)卒。在学中はグラフィックデザイン領域を研究する傍ら、絵画・イラストレーションの自主制作を行なう。卒業後は3DCGパースの制作会社に勤務し、その後フリーランスとして独立。2016年、イラストレーターとしてsimpleshow Japan入社後、2018年にPMへ異動。自身の制作経験を活かした進行管理で、カスタマーと制作の橋渡し役を担う。
- 「シンプルさ」の裏に、ロジックがある。
私はsimpleshowに入社する前、フリーランスのグラフィックデザイナーでした。グラフィックデザインの世界では、「なぜこのデザインにしたのか」という合理的な答えが必要になります。デザイナー時代からずっと「人目に触れるものはロジカルに説明できなければならない」という考え方を持っていたので、simpleshowを知ったときは、そのロジカルさにとても共感しました。
(2018年、絵コンテチームからProject Managerに異動。)
グラフィックデザインもsimpleshowも、制作物の裏側に合理的な考え方があることは共通しています。特にsimpleshowは、「シンプルにするため」のロジック。シンプルなものはより多くの人の共感を呼び込む、分かりやすさの必須条件です。このロジックに基づいた「シンプルさ」というのはずっと変わらないsimpleshowの軸であり、私にとっても価値があるものだと感じています。
- フェイストゥフェイスでのコミュニケーションは1回のみ。simpleshowの制作フローを、いかに理解してもらうか。
Project Managerは、営業の方が獲得してきた案件の進行管理を行なう役職です。simpleshowは制作工程も効率化されているため、カスタマーと対面して話すのは脚本会議の1回のみとなります。これはほかの映像制作会社とは大きく異なります。
(テレビ会議等で脚本会議を実施した後は、全てメールや電話でやりとりを行なう。)
常に複数の案件を抱えているPMにとって、いかにカスタマーと制作チームの双方が納得感を持ってスムーズに案件を進められるかがとても重要です。カスタマーは対面でのコミュニケーションの場が少ない分、不安や不満を持ちやすいですし、制作チームとしては「分かりやすさ」のクオリティを最優先したい。
だからこそ私たちは、「シンプルにするためのロジック」をきちんとカスタマーに理解してもらえるように、カスタマーとしっかりとコミュニケーションを取る必要があるんです。
(脚本会議には営業とコンセプターが同席。営業からPMにバトンが渡された後、コンセプターと二人三脚で動画を作り上げていく。)
脚本会議以外の時間では、制作スケジュールの作成、カスタマーや制作チームへの情報共有や、制作物のチェックをメインに行ないます。そのほか、制作メンバーのキャパシティ管理やナレーターのブッキングなど、PMが行なう業務は多岐に渡ります。
ある日のスケジュールをご紹介します。
9:30 出社
10:00〜12:00 メールチェック・情報共有・担当案件の脚本や絵コンテ、動画のチェック
12:00〜13:00 ランチ
14:00〜15:30 脚本会議@テレビ会議
15:30〜16:30 ポスト脚本会議(社内でスタッフと脚本会議の内容を再確認)
16:30〜18:30 メールチェック・情報共有・担当案件の脚本や絵コンテ、動画のチェック
18:30〜19:00 新規案件のスケジュール作成・キャパシティ管理・ブッキング作業
19:00 退社
スケジュールは基本的に流動的です。担当案件の進捗などによって日々変動しますが、カスタマーは大手企業が多いため、やりとりが深夜まで及ぶようなことはまずありません。残業がとても少ないのは、simpleshowの特徴ですね。
- simpleshowのPMだからこそ、感じる壁。
PMに就任し、まずぶつかった壁が、simpleshowの制作フローと日本の企業の体制・文化との違いです。simpleshowでは基本的には本社が定めた制作フローに従って業務を進めていくのですが、お客様とのやりとりを極限まで少なくするために、確認をお願いするタイミングでは、かなり細かいところまで確認していただく必要があります。
そのため、先方社内での意見がまとまらなかったりすると、お戻しをいただくのに、とても時間がかかってしまいます。その分、制作もストップしてしまうため、双方にとってあまり良いことではない。
また、1度しかカスタマーとフェイストゥフェイスで連絡を取らないというのも日本では珍しいので、驚かれるお客様も多いことは事実です。最初の頃の案件の進行は、スムーズにいかないことの方が多かったです。
ですが、PMは意思決定を一人で行なうことは基本的にありません。チームでの協働が必ず必要なポジションのため、コンセプターや絵コンテチームから演出の意図の共有を受けたり、制作チームの負荷を加味して営業に追加発注(特急料金など)の依頼をしたりと、周りの方の力を借りながら乗り越えていくことで、今ではあらゆるパターンに対応できるようになりました。
simpleshowはフラットな体制で、意見交換が活発なので、その点ではすごく働きやすいですね。
(ランチは時間の合う人で集まって食べることも多い。日常的なコミュニケーションが、より良い動画制作に繋がっている。)
- 「ロジック」と「コミュニケーション」。
制作チームをけん引するPMとして、最も大切なことは「社内外のバランスをどう取っていくか」という部分です。
通常、PMは一人当たり月に8~10本程度案件を抱えていますが、案件ごとに納期やカスタマーの要望、オプションなどの条件が変わるので、その都度、最適な解を求める必要があります。カスタマーの要望、simpleshowのノウハウ、制作チームへの負荷、これらを鑑みて進行パターンを複数想定し、臨機応変に対応します。
(simpleshowは全社でワークライフバランスを重視しているため、通常の制作会社よりも制作チームに負担をかけないようにスケジュールを組み立てている。)
カスタマーと制作チームを繋ぐ役割なので、いかに双方の意見を要約し、ベストな解を導けるかという、ロジカルなコミュニケーションが必須です。PMとして多くの案件を回し、トライアンドエラーを繰り返していきながら、「どんなパターンであればよりシンプルになるか」を突き詰めていきます。案件数も多いので、要約するスキルや、会話のテクニックなどはとても向上しますね。
工程としても川上から作品の核に触れる立場なので、PMがどれだけシンプルさへのロジックを持っているか、質の高いコミュニケーションが取れるかが、最終的なクオリティを左右します。難しいかじ取りを迫られるからこそ、自分がPMを担当した案件が追加発注に繋がると、やりがいを感じますね。
担当した案件で特に心に残っているのは、味の素株式会社様の解説動画「Get to know the Ajinomoto Group」です。「味の素社がどんな会社か」という紹介動画を、simpleshow wheelという商品で、英語ナレーションで制作しました。
日本語以外の言語で解説動画を制作する際、まずは担当者間で日本語脚本の内容を固め、その後、他言語版脚本を制作します。この案件の場合、ネイティブのチェックも含めて通常2〜3週間ほどで終わる脚本の制作期間が、何と2ヶ月を超えました。
何度も何度も担当者の方と認識をすり合わせ、時には上申のお手伝いなどもしながら制作を進めていき、最終的な動画を納品したのは制作開始から4ヶ月後です。とても苦労した案件ではあるものの、やはり時間をかけてしっかりとコミュニケーションを取った分、非常に分かりやすく、良い動画に仕上がったと感じています。
- PMという立場だからこそ、ワークライフバランスを重視する。
これからPMを目指される方には、ぜひ何かsimpleshowで叶えたいキャリアビジョンを持って入っていただきたいです。私たちの会社はフレックスですし、リモートワークも可能なので、朝のメールチェックは自宅で行ない、オフピークを狙って出勤するなど、効率的に働くことが可能です。
カスタマーの目線、制作チームの目線、その先の動画視聴者の目線。様々な視点が必要なPMという立場だからこそ、ワークライフバランスはぜひ重視してほしいです。多様な価値観や考え方を持つことで、柔軟なコミュニケーション能力が培われますし、会話のテクニックも向上します。そしてその能力は、PMとしてのゆとりに繋がります。
(週に1度のバー通いが趣味。お店主催のイベントに参加するなど、積極的に交友関係を広げている。)
また、先ほどの味の素株式会社様のような他言語の案件であったり、他国のsimpleshow PMチームとのやりとりなど、グローバルな動きも社内外で増えているので、言語やカルチャーについて造詣を深めていくことも重要ですね。
(週1回の英会話レッスンを、一部会社負担で受けることができる。多くの制作チームメンバーが参加している。)
- PMを目指す方へのメッセージ
ぜひ、「simpleshowでこれがやりたい」というビジョンを持って入社してください。
PMの作業は多岐に渡りますが、その中で解説動画という作品に、いかに成長軸を持ってコミットしていくか、というビジョンが大切です。「解説動画」と触れ合う時間が一番多い役職なので、学べることがたくさんあります。
simpleshowが好きな人、0→1でディープに関わりたい人からの応募を、お待ちしています。