生活リハビリデイサービス「りふり」の運営に関わり、総務省の推進するデジタル活用支援推進事業も手掛けるビジネスソリューション本部の山縣さん。
勤続20年、華やかなアパレル業界でのキャリアを捨てて、ベンチャーであるシグニフィへ。まるで畑違いにみえる介護業界への転身をなぜ決めたのでしょうか。経歴のヒミツに迫ります!
満足してもらえない=役に立てていないということ。
――シグニフィに入社してからより人の役に立ちたいという思いが強くなったということですが、山縣さんは前職アパレル業界だったんですよね。
アパレルの時に扱っていたのは贅沢品のような洋服でしたが、「お客さんに満足してもらえない=役に立てていない」と思っていたし、役に立つということに対しては、ビジネスの基本として意識していたつもりなんです。
たとえば、アパレルに入社して販売員になった子が、「セット売りをしなさい」と言われて「それって押し売りじゃないんですか?」と反論してくることがあります(笑)。そういう時に、「押し売りになるのはあなたの技術が足りないからだよ。買ってくれる人が満足して喜んでいるなら、何万円でもそれがその人の満足度合いなんだよ」と話していました。
100円のコーラを1000円で買ったとしても、本人が満足さえしていれば、それはそれで幸せなことなんだって。“お客様の単価=満足の大きさ”だと思って、若手を教育してきたし、自分でもずっとやってきたんです。
愛用のマグカップ。アパレル時代に手がけていたブランド「ヴィヴィアン・タム」とメトロポリタンミュージアムがコラボした時のもの。
――今は扱うものが変わって、贅沢品ではなくなりました。
人の健康や命に関わる領域のことだから、とにかく目の前にある問題を解決しないといけないっていうことを日々感じながらやっています。“お客様の単価=満足の大きさ”とは必ずしも言えないけど、日本という国の抱えている問題に取り組んでいるんだという自負を持ってやっていますね。
今の自分にとって、成功したかどうかの基準はどれだけ人の役に立ったかです。もちろん売り上げと利益はいつも意識していますけど、その中でも芹澤(りふり春江店施設長)の言うところの“笑顔の循環”をよりたくさん感じられることの方が大事だと思っていて。
可視化は難しいけど、僕らのやっていることで困っている誰かが助かって、「ありがとう」とか「うれしい」って言ってくれたらそれが1つの達成だし、それを積み重ねていけたらと思います。ビジネスの基本として、困っている人を助けることがお金に変わるみたいな話があるけど、本当にそうだなって今はちゃんと腑に落ちているし、そう思えなければビジネスとしても弱いなと感じますね。
りふり春江店施設長の芹澤さん(左)と
マインドマップに興味を惹かれた
――そもそも、どうしてシグニフィに転職することになったんですか?
自分の子どもたちを伸び伸びとした環境で育てたくて、もともとは会社を辞めて地元の広島に帰ろうと思っていたんです。そのための転職活動をしていたら、大学時代の友人だった社長から連絡が来て、「デイサービスを運営しているんだけど、明日、見に来ない?」って(笑)
その時は、正直、デイサービスって言われてもピンとこなかったんだけど、社長の思い描くマインドマップを見せられた時に、「すごく社員を大切にしている会社なんだな」と感じて。
あとは、転職活動をする中で地方活性化に興味が出てきていたので、自分がやりたいことにもマッチするんじゃないかと思って「手伝うよ」っていう話をしたのが入社のきっかけですね。
――そういう経緯があって、シグニフィに入社されたんですね。以前の仕事とかなりギャップがあったのでは?
今までは、1億円かかったとしても1億5000万円回収できたらいいじゃんって感じで、店舗を出す場所も最高の場所しか探してこなかったし、お金を気にしたことがあんまりなかったんですよ。
でも今は、細々とした経費についても費用対効果を考えて結果を出さなければいけないわけで、そういう面では今までにないプレッシャーを感じていますね。
あと、ゼロから何かを作るっていうスキルは、シグニフィじゃなかったら一生身に付かなかったと思います。今まではブランドを立ち上げると言っても、大企業の看板を背負って、すべての環境が整っている中でやっていただけなので。今は、本当に何もかもゼロから。そこはすごく自分自身の成長につながっています。
当時、共有されていたマインドマップ
――前の会社は新卒で入社して長く働いていたんですよね?
そう、1998年から丸20年。
――長いですね。その経験が今の仕事にも生かされている?
数字的に厳しいブランドをいかに再生していくかっていう仕事を任されることが多くて、初めて事業部長になったときも、赤字のブランドを3年かけて1億円の利益改善をして、優秀部門賞で表彰されたりしたんです。
だから、ブランドを育てたり、再生したりすることには自信があって、今は、そのスキルを介護業界に紐付けながらやっています。
介護業界に「りふり」の存在感を
――今後の展望について教えてください。
今、目指しているのは施設の多店舗展開なんですけど、まずは10店舗と区切っています。それはなぜかというと、アパレルが多店舗展開をした後、eコマースにシフトして店舗をどんどんなくしていったのと同じようなことが起きると思っているから。介護業界もデイサービスのような施設はだんだん淘汰される時代が来ると思っているので、10店舗くらいで抑えて、その10店舗は理想の形にして、ショールーミングしてもらうようにしようと考えています。自宅や好きな場所でリハビリや健康にまつわるサービスが受けられるオンラインがメインになっていくと思うので、今はどこのフェーズかっていう流れを見極めながら進めている感じですね。
――10店舗は必要ってことですか?
別に3店舗でもいいんですけど、1度は店舗を増やしてマーケットの中での存在感を示さないと、影響力を持てないと思っています。店舗はどちらかというとショールームだから、マーケットの中にまずは「りふり」という名前を出すことが先決です。主要な都市に10店舗くらいあれば意識してもらえるんじゃないかなと思っています。
――迷った時や岐路に立たされた時の判断基準は?
自分の満足度が一つ、人から褒めてもらえることが一つ。褒めてもらえる=役に立っているのかもしれないと考えるようにしています。小学生みたいですけど(笑)。
アパレルも介護も、人の役に立つことに価値があることは変わらないと話す山縣さん。健康のオムニチャネル化も、多店舗展開もどんなふうに達成していくのか、今後が楽しみです!