生粋の飲食業界人として生きてきた兄。サラリーマンから転職し飲食店を経営する弟。そんな二人が一緒に働くようになったストーリーと、リニューアルした店舗を作り上げていく中で得られる成長についてお話を聞きました。TEPPAN羊SUNRISE神楽坂店ソムリエの安東様へのインタビューです。
大学を飛び出してイタリアへ
-飲食業界に入ったきっかけを教えてください
小さい頃から飲食業界への憧れがあり、仕事として関わったのは浪人時代に地元茨城のイタリアンレストランでアルバイトをしたのが最初です。その後東京の大学に入学し空いている時間に飲食店でのアルバイトをしていましたが、なんか違うなと。本格的に飲食の仕事をしたいという思いが強くなって、大学を辞めてイタリアに旅行に行きました。
-思い切りましたね。本格的にイタリアンがやりたかった?
そうですね。できれば現地で仕事も見つけたいと思って旅立ちました。今考えると無謀ですね(笑)旅をしながらイタリアのいろんなお店を回って、結局ミラノのレストランで2週間くらい働くことができました。ただ、結局労働ビザの関係で一旦日本に帰らなければならなくなり。また改めてイタリアに行くつもりでしたが、帰国後のバタバタでうやむやになってしまい再訪は叶いませんでした。
-そこからは国内でソムリエを?
はい、首都圏の様々な業態のお店で働きました。イタリアンレストランはもちろん、ビストロ、ダイニングバー、居酒屋など、責任者を務めることもあればアルバイトで働くこともあり。20年近く飲食業界だけで働き続けてきました。
羊SUNRISEで働く直前の2年くらいはアルバイトとして働いていて、同じスタイルで今後も働き続けることに限界を感じていました。それで東京から地元に帰って、一旦リセットしようと。一応弟にも報告しようと思ったのが人生の転機になりましたね。
ソムリエとしての経験を弟の下で発揮する
-弟さんが羊SUNRISE社長の関澤波留人さんですね。どのような経緯で入社することになったのでしょう。
地元に帰ろうと思うと報告した時に「羊SUNRISEの社内に酒についてわかる人間がいないから協力してほしい」と言われました。羊SUNRISEとしてはちょうど神楽坂店をオープンする直前くらいのタイミングで。神楽坂店は鉄板焼きを提供するお店としてオープンする予定で、飲み物もワインの品揃えを多くする予定でした。
ちょうど自分のソムリエとしての経験も活かせますし、頑張っている弟に協力したい思いもあり入社を決めた感じです。
-弟の下で働くことについてはどう感じましたか
全く抵抗がなかったというと嘘になります。私はずっと飲食業界で働いてきましたが、波留人は別業界でサラリーマンをやってから飲食業界に入ってきている。その弟がお店を頑張っていることはすごいなと感じると同時に一抹の悔しさもありました。
ただ、性格も全く違いますし、生粋の飲食業界人として培ったやり方を変えるチャンスでもあるかなと。単純にゼロから始めてお店を軌道に乗せているということへの尊敬の念が勝ちましたね。
羊で世界を変えられるかもしれない
-羊肉という食材に関してはどのように捉えていますか
入社の時点では正直全く知識がなかったですし、それ以前は興味がありませんでした。食材として扱う機会がほぼなかったんです。
羊肉と出会ったことで私の可能性が大きく広がったと今では感謝しています。例えばこれまではソムリエとしてワインのことを中心に業務を担当してきましたが、ここ3ヶ月くらいで肉のカットもできるようになりました。やってみればなんとかなる、やることで世界が広がるのを実感しています。
他にも羊SUNRISEに入社してこれまでは考えられなかった業務を担当することが非常に増えました。しかも、それは根本では全部羊肉と結びついている。
ですので、私は「羊で世界を変えられる」と最近思うようになりました。自分の中にあるちっぽけな世界も壊せるし、羊という存在自体が大きな可能性を秘めている。羊に関わり続けていくことで、人も社会も成長できると感じています。
リニューアルオープンに携わることで成長を実感
-リニューアルオープンした神楽坂店ではどのような役割を果たしていますか
ソムリエ業務を中心にしながら、仕込みでは肉のカット、さらに支度品の調達など店舗運営全般を担当します。副店長的な立場です。
毎日が初めての業務ばかりで全く退屈しないので、リニューアルオープンに携われてよかったと感じています。常に頭をフル回転させて業務に臨む必要があり、ルーティンな業務が少ない。これまでも知ってはいたけれども実際にやったことはない領域が山のようにあることに気づかされました。
支度品の調達なんかもこれまではなんとなく同じ業者に発注していましたが、お店にあった良いものを揃えようと思ったらいろんなところを当たる必要があります。自分がこれまで使った人脈を活用したりネットで自発的に調べたり、事務的な仕事の割合も増えました。
なかなか普通の飲食店だと調理や接客に直接関係あることしか任せてもらえませんが、羊 SUNRISEの場合はなんでも挑戦していい、やってみようというスタンスがあります。意欲がある人が入社したら、相当なスピードで成長できるはずです。
ソムリエとしての専門的なところだと、自然派ワインを中心に取り扱うようになったのもチャレンジでしたね。リニューアルオープンにあたってワインの品揃えを変えたい意向が社長にありました。そこで取り扱うのはオーガニックな自然派ワイン。
ソムリエとしてはノータッチなジャンルでしたが、勉強をするのがとても面白いですね。自然派ワインは濾過をしていないため通常のワインの風味に加えて土の香りを感じます。これは好き好きですが、複雑な味わいを持っておりソムリエとしては研究心をくすぐられる対象です。
羊SUNRISEにいなければ、こういったソムリエとしての新しい領域の開拓もなかったかもしれません。飲食の専門家としても店舗経営のジェネラリストとしても、学びや挑戦に溢れています。
-通販業務も担当されてますね
はい、PCを使い主に遠隔での商品の在庫管理や発送管理を行っています。この通販業務がきっかけで肉のカットを担当するようになりました。工場での実務は別のスタッフが数人で担当するんですが、責任者も肉の扱いができる必要があるだろうと。
これまではソムリエ業務中心で肉には一切ノータッチだったので最初はとても不安でしたが、とにかく切りまくっているうちになんだかわかってきた。懇切丁寧な説明を受けて眺めている時間より、実際に包丁を握って切ってみることの方が成長できたと感じています。
この通販業務にあたって肉のカットの経験がなければ、神楽坂店でソムリエ業務と同時に肉を切る業務を担当することにはならなかったでしょう。働く上でのステップアップにつながりました。
縁の下の力持ちとして羊 SUNRISEを支えたい
-今後の目標を教えてください
まずは神楽坂店を軌道に乗せることが目標になります。これは羊SUNRISEで働いてから気づいたことなんですが、実は縁の下の力持ち的なポジションが向いているのかなと。
これまでは自分がトップになって店を動かしていきたい欲求が強かったんですが、与えられた自分の役割をしっかり果たして組織を回していくのも気持ちいいことに気づきました。エンジンをガンガンかけて歯車を回す、そんな存在でありたいです。