今回はRAKUDOでプログラマーとして働いてもらっている、田中健策さんにインタビューをしてみたいと思います。
様々な出自を持つRAKUDOのメンバーの中でも田中さんはかなり紆余曲折を辿ってこの会社にたどり着いています。
そこの部分を聞いてみたいと思います(写真はGoogle Glass Enterprise Edition 2でYOLOによる物体認識のAIプログラミングをしている田中さん)。
インタビュアー「田中さんはプログラミングをはじめたのが結構遅かった、と聞きましたが」
田中「はい。確か、20代の後半。本格的にはじめたのは、もうすぐ30というところだったと思います」
インタビュアー「どういうきっかけではじめたんですか?」
田中「僕はもともと名古屋大学で数学者を目指していました。その時に、授業でC言語やOCamlというプログラミング言語を触ってはいました。でも正直授業でやってもよくわかっていなかったんです。個人的にもemacs lispというものやprologというプログラミング言語で遊んだりもしていましたが、本当に『遊ぶ』という程度のものでした。それが20代中盤くらいまでですね」
インタビュアー「はあ」
田中「で博士課程にいた20代後半の時に、大学にいるにはお金が足りなくなりはじめてしまったんです。それで、来栖川さんというところでバイトをしようと思ったんです。そこで受けたJavaの研修が最初の本格的なプログラミング体験ですね」
インタビュアー「最初の感触はどうでした?」
田中「難しかったですねえ。難しすぎて、逃げてしまいました」
インタビュアー「逃げた?」
田中「ええ。プライドだけは無駄に高かったんで、思ったようにできないのが悔しくて行かなくなってしまったんですよ。行かなきゃ、給料も発生しないから、罪悪感も感じなくて済むし。それで一日中部屋にこもって一人で勉強してました。一人で勉強って、普通に悪手ですけどね。でもその時に一人で作ってたandroidのアプリは後にリリースできました」
インタビュアー「それで、バイトの方はどうなったんですか?」
田中「1ヶ月以上バイトに行かなかったら、なんだか気まずくなって、それきりです。でもバイトに雇ってくれた人たちにはずっと謝りたいとは思ってたんです。来栖川さんではいろんな勉強会が開かれていて、それに参加するたびに、『ああ、そうだ。経営者の人たちには謝らないとなあ』って」
インタビュアー「バイトから逃げた会社で開かれてる勉強会に行ってたんですか?」
田中「ええ。それで結局謝れたのは、来栖川さんで開かれてる忘年会に無料で出られるって知り合いに聞いたときです。ホテルの大きな食堂で美味しいタダ飯食べながら『あ、あの時はすんません!』って」
インタビュアー「相手はどんな反応でした?」
田中「生きていけてるならそれでいい、って言ってましたよ」
インタビュアー「そ、そうですか。で、そのバイトから逃げた後は」
田中「その直後くらいに、結局数学の研究者は諦めて、就職することにしました。29のときですね。他にいく場所もなかったんで、とりあえず3年は高校で数学の非常勤講師をしてました」
インタビュアー「その経験が活きている、という話でしたね」
田中「ええ。いろいろな人たちがいるってことですね。話が通じ合わない人たちを僕らはすぐに馬鹿だと思ってしまいがちなんですが、どっちかというと前提とする文化が違うんですよね。その文化の違いを考えないと永遠に話がすれ違うばかりなんです。だから文化とか言葉のレベルから我慢強くすり合わせて行かなくてはいけない。ソフトウェア開発技法で言うと「ドメイン指向開発」とか言うんですけど。僕は割と教師経験からそれを学んだような気がします]
インタビュアー「教師を3年やって、どうして辞めちゃったんですか?」
田中「バイト辞めた後も、プログラミングは続けてたんです。ハマってたと言うか。Ruby on Railsで自作のWebページ作って、おかしな機能をたくさん実装してたりしました。後、HTML5のCanvasで、数学のいろんな図形を表示するWebページ作ったり。それが楽しくて、仕事にできたらいいなあ、と思って、教師を辞めて、就職活動しました」
インタビュアー「30越えてのはじめての就職活動、というわけですね」
田中「苦労しましたね。いろんなところを転々としました。その時にいろんな人を見たのもいい経験です。困った人を見ても、そういう人の存在を可能にしてしまうIT業界の構造的問題の側を見るようになりました。特に、良い経験になったのは前の会社ですね」
インタビュアー「ぺあのしすてむさんですね」
田中「数学でIT業界に旋風を巻き起こそうとした意欲的な会社でした。でもいろいろな問題がありました。で、頓挫してしまった。僕はいろいろな開発手法論やビジネス手法論を読んで、ぺあのしすてむの何が間違っていたのか、についてここ1年考え続けています。それを今、RAKUDOでの勉強会で僕が読んだ本を参考書に使って、共有しているというわけです。同じ間違いをもう起こさないために」
インタビュアー「では、大学時代から含めて、全ての経験が今なぜか全て使えている、というわけですね」
田中「そうですね。CGやAIで数学もガンガン使ってますしね。今は教える側にも回ってるので、教師の経験はそういう意味でも活きてます。そもそもITって、ITだけで何かができるわけではなくいつだって『IT+何か』なので、活きない経験なんてないんですよ」
インタビュアー「田中さんはいつでも社内でいろいろな経験を楽しく話しています。それに釣られて他のメンバーもだんだんと自分の経験を話すようになり、社内に活気が生まれるようになりました」
田中「それが僕にとっての『RAKUDO(楽働)で楽しく働く』ことのイメージですらからね。もちろん他の人には別の『RAKUDO(楽働)で楽しく働く』ことのイメージがあるでしょう。それがコラボレーションしてもっと良い会社になることを期待しています」
インタビュアー「忙しいところありがとうございました」