「地域産業のアップデート」をミッションに掲げて、2017年に福岡で創業したクアンド。2020年11月に現場仕事の遠隔支援リモートワークツール「SynQ Remote」(シンクリモート)をリリースし、竹中工務店や安川電機、東京地下鉄、JR九州コンサルタンツ、北九州市など約40社・組織で導入されています。創業から紆余曲折を経て、2020年には分社という苦渋の決断も実行。代表の下岡さんをはじめ同社をリードする4人に、クアンドの内情から自らの思いまで率直に語ってもらいました。前後編に分けてお届けします。
座談会の参加メンバー
下岡純一郎 代表取締役CEO
1986年、北九州市出身。P&G、博報堂コンサルティングを経て、福岡へUターンして2017年4月クアンドを創業。
佐伯拓磨 取締役CFO
1988年、熊本市出身。肥後銀行、ドーガンを経て、2019年8月クアンドに入社。
梅田絢子 執行役員CRO
1987年、北九州市出身。ワークスアプリケーションズ、ビズリーチを経て、2020年3月クアンドに入社。
髙野嵐 テックリード/エンジニア
1996年、宗像市出身。大学3年の2017年夏にインターンとしてクアンドにジョインし、2021年4月入社。
インタビュアー:佐々木恵美
フリーライター・エディター。ロンドン、東京、福岡で執筆のキャリアを重ねて25年。著名人のインタビューも多数。
―皆さんはなぜクアンドに入社されたのでしょうか?
佐伯:下岡のプレゼンに衝撃を受けたのがきっかけです。そのシーンを今でも鮮明に覚えています。僕は地域を良くしたいという思いで銀行に入り、ファンドに転職。勉強会でたまたま下岡のプレゼンを聞いて、地域のために自分の人生をかけるという人が同年代にいたんだと驚きました。しかも、2017年からDXを実践している。その後何度か食事やいろいろな話をしたり、仕事をサポートしたりする中で、自分も一緒にやっていきたいという思いが強くなり、2019年夏に入社。まだ5人目の社員でした。
下岡:クアンドは僕と中野で創業して、僕は思想、中野は技術を担当。佐伯とは息が合ったし、金融のプロがうちにはいなかったので、スキル的なバランスも取れていい出会いでした。
梅田:私は30歳を前に東京から福岡へ戻り、キャリア支援会社の福岡支社に転職しました。でも、九州でキャリアを築くことに壁を感じたんです。仕事柄、九州の会社について知れば知るほど、福岡で働くなら本社からおりてくる仕事を展開する支社か、旧態依然とした地場企業が大半だなと…。東京へ戻ることも検討しながら、フリーランスに。前職で付き合いのあったクアンドから声をかけてもらい、業務委託でカスタマーサクセスに携わりました。すると、ここならキャリアを描けると確信しました。ゼロからイチを作っていくフェーズで、福岡にいながらスピード感のある仕事ができる。それに、地元・北九州の衰退を肌で感じていた私にとって、「地域産業をアップデートしていく」と地域にフォーカスを当てたクアンドの理念はすごく共感できて。2019年春に正式にジョインしました。
髙野:僕は2人ほどの理由はないのですが…(笑)、下岡さんからプロダクトの構想を聞き、純粋に面白そうだと思ったからです。ものづくりが好きで情報工学を学んでいた大学3年生の夏、友達に面白いインターンがあると教えてもらい、修士までインターンとして働き、そのまま2021年に就職しました。
―髙野さんは学生の頃から開発リーダーだったとのこと。就活はしなかったのですか?
髙野:一応、就活はした上でクアンドに就職しました。
佐伯:髙野には社員になってほしかったので、就活している最中にオファーレターを出しました。条件面に加えて、代表メンバー3人がそれぞれ髙野に来てほしい理由を書いて、ちょっとおしゃれなランチに誘って渡しました。
髙野:いやあ、そのときの呼び出し方がひどくて。取締役の1人に誘われてランチに行ったら、3人が待っていて焦りました(笑)。そしてデザートが出るタイミングでレターをもらい、返事は来年の夏までいくらでも迷っていいと言われたので、とりあえず一通り就活はしました。
佐伯:いろいろな会社を見た上でクアンドがいいと思ってもらえたのがうれしかったです。
―現在の仕事内容を教えてください。
下岡:僕の役割は主に2つ。CEOとして経営全般やプレゼンなどPR活動と、プロダクトの方向性を決めることです。
佐伯:CFOなので、会社の財務戦略の策定から実行までがメインになります。ただ、初期フェーズということで他にも経理や法務、労務、採用、営業、広報など幅広くやっています。
梅田:私はCRO(Chief Revenue Officer)という肩書で、売上全般に関して責任を負うポジションです。売上を上げるために必要なことは何でもやっていて、マーケやセールスで認知を広めたり、最近は髙野と一緒にユーザーさんの声をプロダクトにフィードバックしたりもしています。
髙野:僕はテックリードで、プロダクト開発を担当しています。とにかくやりたいことだらけで、新しいことも画策しているところです。
―クアンドで働くやりがいや大変さはどんなところでしょうか?
佐伯:改めて考えてみると、やりがいと大変さは表裏一体ですね。大変じゃなかったら、僕らはやりがいを感じないタイプかもしれない。
梅田:そうねそうね、幸か不幸か(笑)。不確実な要素がとても多くて、あっちにもこっちにも行ける状況で、なかなか進捗しないことに焦りや苛立ちを感じることもあります。だけど、手探りで模索している感覚は、これがゼロイチで作っている過程なのだと大きなやりがいを感じます。みんながいろいろな経験を経てレベルアップしていくことも楽しいですね。
下岡:今はシンクリモートというビデオ通話ツールから、さらに深いところで新しいことをやろうとしています。それも含めて、僕らが提供する価値を見定めながら進んでいるところです。
髙野:みんなで話しながら次のプロダクトに取り掛かっています。
―トップダウンではなく、皆さんで会社を運営されている印象を受けました。
下岡:確かにそうですね。僕が会社やプロダクトの世界観や方向性を出して、ものづくりに関しては髙野が統括。佐伯と梅田が実行に移すところを担っています。
佐伯:それぞれバックグラウンドと強みが全然違うのが、弊社のいいところですね。会社を運営していく中で壁にあたると、そのときどきで状況をみながら得意な人が進めていく感じです。
梅田:「重要事項が今これなのか」というところからみんなで振り返ります。
―そのために定期的なミーティングがあるのですか?
佐伯:もともと下岡と梅田と僕の3人でミーティングをしていたのですが、技術のバックグラウンドがある髙野にも入ってもらって定期的にミーティングをすることに。ただ、平日の日中はなかなか予定が合わず、最初は毎週土曜の朝に設定していました。
梅田:でも、私は朝ゆっくり派で、週末9:30は辛くて…。
髙野:僕は「花金」したかったんですよ。
佐伯:そうそう、金曜に飲みに行っても、24時くらいになると「ああ、明日」と気になって(笑)
下岡:だから、毎朝9:30の軽いミーティングと、金曜夕方の1時間に変えました。
―毎日、幹部がコミュニケーションを取るのは、ゼロイチの会社ならではかもしれません。
佐伯:小さなことは思ったときにパッと翌日のアジェンダにあげて話します。そこで方向性を決めれば、すぐに実行できますから。
梅田:私たちの事業は不確実性が高いので、1つの要素が変わると他にも大きなインパクトが及びます。だから、デイリーミーティングはみんなが同じ方向に進む上で必要なことを共有するのに有効で、金曜の夕方は緊急ではないけど重要度が高いことをメインに話しています。
下岡:目線合わせは大切で、社内のコミュニケーションの方法はこれからも柔軟に考えていきたいと思っています。
―一緒に働いてみて、下岡さんはどんな経営者ですか?
梅田:いろんな経営者を見てきた中で、私が下岡に感じていることは2つ。大きなパラダイムシフトを起こすというミッションドリブン型で、どう実現するかについては寛容だなと。根底の思想はブレないけれど、社内外の人たちのいろんな意見を柔軟に取り入れて判断するタイプだと思います。
佐伯:かなり真面目で勤勉ですね。いろんな情報を集めて、真面目に受け止めて学んで、最善の選択をしようとしている。勤勉ゆえに細かいところまでガーっといっちゃって、「そこは僕らがやってるから社長がしなくていいよ」と言うこともあります(笑)。
後半では会社のターニングポイントについて4人が語ります!どうぞお楽しみに。