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クリエイティブ集団・PARTYが制作したドラマで起きた「化学変化」とは 〜PARTYがテレビドラマをつくった理由〜前編

PARTYが企画し、RCCテレビと制作した大学受験並走ドラマ『フューチャー!フューチャー!』が、7月19日(火)よりRCC(中国放送)にて放送開始されました。近畿大学工学部 全面協力の元、クリエイティブ・ディレクターの眞鍋海里が企画・脚本を手がけ、1話3分の全9話完結で、現実世界における高校3年生の夏から受験までの期間と同じ時間軸でストーリーが展開されていきます。今回はドラマの見所をお伝えしつつ、制作メンバーにお話を伺っていきます。

大学受験並走ドラマ『フューチャー!フューチャー!』について

ストーリー

ディストピアとなった未来を変えるため近畿大学工学部を目指すこととなったSF大好きな高3女子と、未来からとある使命のためにタイムトラベルしてきた青年の物語。高校生たちに共感と希望をお届けしながら、受験生のリアルと並走する連続テレビドラマです。


受験生のリアルに並走していくドラマ

① 時間軸が現実世界と並走
高校3年の夏から受験まで、現実世界と同じ時間軸でストーリーが進行します。

② 主人公の気持ちも並走
主人公・マコトのTwitter(@makoto_study22)を開設。マコトの気持ちがTwitterを通じてリアルタイムに投稿され、ドラマの外でもつながる感覚をお届けします。

③ 視聴者もSNSで並走
視聴者のみなさんから寄せられたおすすめの受験勉強方法などの情報が、ドラマにも反映されてストーリーが展開します。

近畿大学工学部の学生・職員も制作や宣伝に参加しており、工学部の魅力やTIPSを知ることができる作品になっています。

制作メンバーインタビュー

連続ドラマ「フューチャー!フューチャー!」について、PARTYのメンバーに制作の裏側をインタビューしました。

ー 今回、PARTYが連続テレビドラマを制作するようになった経緯を教えてください。

眞鍋:
元々僕が、近畿大学工学部のブランディングを長年お手伝いしていまして、これまでは、近大の象徴である”マグロ”と工学部の象徴としての”ロボット”を掛け合わせたMAGROBOというSFロボットムービーを軸に広告展開をしていました。当時は、認知度アップと同時に、少し泥臭いイメージだった工学部のイメージをアップデートしたいという想いがあったんですが、SFという世界観を踏襲していったのは、僕自身が小さい頃にSF映画を観て「ロボットかっこいい!」、「科学者とかエンジニアかっこいい!」と憧れを抱き、それが最終的な大学選び(※宇宙物理学専攻)に繋がった体験があったからです。

そのマグロボも地元広島ではある一定の反響は得ていましたが、今年度のオリエンでは「受験生だけでなく、若年層全体を対象にイメージを広げていきたい」というものでした。そこで僕らが掲げたCHALLENGEは「どうしたら高校生の心にもっと入り込み、進路選択に大きな影響を与えることができるのか?」というものでした。

「深く刺さるものをつくる」それはまさに、僕が学生時代にSF映画から受けた影響と同じような現象を作り出すに近いものでした。


ー それがどう連続テレビドラマにつながっていくのでしょうか?

眞鍋:
まず僕らは、高校生のインサイトをデータから導き出して、いくつか仮説を立てていきました。一つ目は、「自分の可能性を信じている一方、悲観した視点を持っている」ということ、二つ目は、「求めているのは”共感”と”リアル”」であること、三つ目が、「CMから一番遠い存在」であるということ。

実は、この三つ目のポイントが、今回テレビドラマと言うアウトプットになったポイントになります。昨今、日本人のメディア接触時間が、スマホがテレビ超えて、2倍以上になったということが言われていますよね実は、だからと言って今の若い子たちがテレビ番組を全く見なくなったということではなく、テレビ番組の視聴態度が大きく変わっただけなんです。例えば、テレビを見ながらもスマホを片手に”ながら視聴”をしたり、リアルタイム視聴は減って、録画・後追い配信で視聴するなど。そうなってくると、番組の合間に挟まれるTVCMはほとんどがスキップされ、視線の先にすらいない存在になってしまう。そうなってくると、今までやってきたテレビCMという手法は、高校生とコミュニケーションするのに、一番困難なやり方なんじゃないかと。じゃあ、高校生の心に深く刺さるにはどうやったらいいかと考えた時に、CMのような刹那的なコミュニケーションではなく、時間をかけて高校生のリアルと並走していくような、生きたコンテンツが作れないかなと思い、今回のような連続テレビドラマを作るというアウトプットに至りました。

佐藤:
僕も、最初に企画書を見たときには、めちゃくちゃ腑に落ちました。


ー今回、1話3分のミニドラマですが、この3分にした理由は何かありますか?

眞鍋:
放映時間をどうするかの議論は、途中何度もあったんです。3分にしようか?5分にしようか?ただ、今の若い子って、僕たちが動画を見る感覚と全く違う次元に行ってるんですよね。例えば、YouTubeを見るときなんかに1.5倍速とか、2倍速とかで見るしょ?し、 YouTuberが制作する動画ものコンテンツの極力会話の間を詰めて、テンポ良く話が展開するようにできている。そんな若い子たちに、今までの映像の作り方をしても途中で飽きられちゃうなと思ったんです。

佐藤:
たぶん、今回の脚本の物量を普通のドラマの撮り方で撮ると、おそらく全話2時間の長編が作れるぐらいの物量です。今回それをぎゅっと凝縮してるんです。単純計算で言うと4倍ぐらいのカット割りのスピードで、カットを切り替えていく。っていうような構成になっています。僕は「絶対、3分がいい」と言ってました。CMのようにどんどん展開が切り替わって、 あっという間に見切ってしまうぐらいの短さじゃないと視聴者は離脱してしまう。

眞鍋:
まさに「CM的なつなぎ方でドラマをつくる」です。15秒CMが3分続くようなジェットコースタードラマ。だから、今回演出として、古くから一緒に多くのCMを作ってきた山本ヨシヒコ監督にお願いしました。撮影前で、チーフカメラマンの今西さんと、「どうしたら、この3分で、話を読み解くために必要な情報をしっかりインプットさせられる構成がつくれるか?」を夜な夜な議論していました。

佐藤:
毎回、長い打ち合わせでしたね(笑)そのおかげで、テンポは早いけど、視聴者が理解はしてくれるギリギリのちょうどいいラインが作れたなと。


ーたしかに!最初にドラマを拝見した時には、そんな苦労が感じられないぐらいすっと話が入ってきました。

水井:
いいとこ取りですよね。CM的なテンポの良さと、物語が濃縮されてる感じと、両方の良さが凝縮されていると思います。

佐藤:
ストーリーもこのテンポ感に相性がよかったですね。


ー 今回、脚本もPARTYが手掛けていますが、そこで意識した点だったり、物語に込めた想いを教えてください。

佐藤:
PARTYのミッションって、「ナラティブとテクノロジーで未来の体験を社会にインストールする」ことなんです。ナラティブがPARTYの一つの柱となる中で、今回のように世の中に拡がりやすいテレビドラマというフォーマットで、脚本からPARTYが手がけて、それが結果めちゃめちゃ面白いものになれば最高だなと思って。

眞鍋:
提案の段階で大まかなプロットはすでに完成していて、当初はそこから脚本家を立てることも考えたんですが、今回は物語としての強度に加え、CM的な繋ぎの感覚が必要だったので「だったら自分で書いた方がいいのか・・・」と、苦しむのは分かっていながら、えいやで飛び込んでしまいました(笑)

佐藤:
そこからが、地獄のはじまり・・・(笑)

眞鍋:
・・・(笑)テーマとしては、ドラマを通して今の高校生たちに「未来に対して明るい妄想を膨らませて欲しい」という想いがありました。時勢的にも、昨今、大人ですら悲観的な未来しか描けなくなってしまっています。だからこそ、そこを変えていく力が必要だなと。ドラマの1話目で主人公のマコトの好きな言葉として出てくるんですが、SF作家のジュール・ベルヌの言葉で「人間が想像できることは、必ず人間が実現できる」という言葉があるんですが、「前向きな”想像力”」と「工学の”実行力”」があれば、自分自身の手で明るい未来が実現できるんだということをナラティブの力で伝えたいなと思っていました。

佐藤:
だから、成績は悪いけど想像力豊かな主人公の”マコト”と、未来から自らの使命を果たすためにやってきたスーパーエンジニアの”シンイチ”が出てくる。

眞鍋:
そう。この”想像力”と”実行力”の象徴である2人が出会い、お互いを成長させていく物語にしたかったんです。

水井:
まさに、“ナラティブ”×”テクノロジー”で未来の体験をつくっているPARTYに近い(笑)

眞鍋:
それと、今回難しいのは、連続ドラマなので、3分という短い尺で物語を展開させないといけないし、各話の最後が次が気になるものにしなければならない。1話1話見てもしっかり面白いし、全話を通して自然にストーリーが展開し、伏線などすべてが繋がるように展開や設計していく必要があるのが1番チャレンジングだったと思っています。


ーもう少し中身について聞かせてください。今回、キャラクター設定や物語中にいろいろなSFモチーフが使われてたり、細かいところまで内容が濃い印象を受けました。作品のディテールを詰める上で意識した点はありますか?

眞鍋:
それは「”リアリティ”をどこまで高められるか?」という点ですね。今回、高校生ときちんと並走していく上で、”(登場人物や物語の世界が)きちんと存在している感”が大事だと思っていました。もちろん物語はフィクションなんですが、心を動かすためにはそのリアリティがとても大事だと思っています。

佐藤:
眞鍋さんがよく言う言葉で言うと、「ディティールが大事」って。

水井:
僕から見ても「ここまでこだわるのか」みたいなのがたくさんあって。作中に出てくる小道具のビデオのラベルを全て手作りしたり、そのひとつひとつも熱い思いを持っているんだと思って。

佐藤:
2話に出てくる、よしおのSF映画コレクションのことですね(笑)

眞鍋:
それは、物理教師である”よしお”がコレクションしている80年代〜90年代のSF映画を録画したVHSのことです。作中でちらっとインサート的に入る程度なんですが、撮影の前日にPARTYメンバーとBBDOの森下ちゃんとで夜なべして、一本一本手作りで制作しました。

山中:
街中の電器屋さん探しても、どこもVHSのテープが売っていなくて焦りました(笑)

眞鍋:
役者さんの演技に加えて、こういった細かいところでキャラクターに魂が宿っていくので、とっても大事なポイントだと思っています。それによって、映像のクオリティやリアリティが一段階上がる。

水井:
その映画のタイトル選びまで、眞鍋さんの頭の中で「この映画がいい」と言うのがしっかりあって。キャラクター設定というか、全ての設定作りが出来ているのが作品に対する愛があるな、と思いながら見ていました。

眞鍋:
それは、もはや脚本家としてのエゴですね(笑)プロットと並行してやるのが、そのキャラクターの造形をどこまで深くするのか。 各キャラクターの設定資料を作って、どうしてマコトがSFを好きになったのかだったり、キャラクター同士の関係性みたいなところを細かく設定していく。その輪郭がはっきりしてくると、セリフやストーリーに必然性が生まれてくるんですよね。そうなると、この人の部屋はこうあるべきだとか、こう言われたら、こういう行動に出るだろうだとか、迷うことがないんです。

佐藤:
なんかもう脚本見て想像できましたもんね。マコトはリュックサックを背負っていて、ちょっと前傾姿勢で歩きそう・・とか。脚本には一言も書いてないですけど、パっと僕の中のマコトができあがる、みたいな。

だから、どのシーンを残すかと言う議論の時にも、「マコトだったらこうするよね」と言うのが基準なんです。時間がないからとか、予算がないから削りましょう、じゃなくて、マコトは 絶対にこういう行動するから、絶対ここは外せないよね、って。で、むしろこういうことは多分やらないし、マコトの性格を描くのに重要ではないシーンだから、ここは削ってもいいかもね、とか。

深く突き詰めれば突き詰めるほど、予算や時間の外的な判断じゃなくて、内容のことだけを考えて、正しい判断が出来る。だから僕たち制作チームにとっても、眞鍋さんの脚本はすごくわかりやすいっていうか、判断しやすかったなと思います。
ここまでディテールを詰めるってことは、やっぱりすごくいいことなんだなっていうのを改めて感じました。

水井:
今回、眞鍋さんの好きなもの、全部詰まってますよね。SFネタだったりとか、大学で勉強していた物理のことだったり、ロケ地の尾道だったり・・・。だからやっぱり、今回にかける熱量が物凄く大きいのかなと思って。

眞鍋:
ぜんぶ、脚本家のエゴです(笑)

佐藤:
オープニングは「絶対にああしたい!」って、最初から言ってましたよね(笑)


ーやっぱり!(笑)まさに、1話目の冒頭が某有名SF映画のオープニングに似てるなって思ったんですよね!

眞鍋:
SF映画歴史に残る名オープニングですし、ドラマ設定がタイムトラベルモノですからね!

後編の記事では、ドラマ外の仕掛けで実現した立体的なナラティブ体験についてお聞きします。

公式YouTubeチャンネルでは第4話まで公開中!


メンバープロフィール

(左から)
Kairi Manabe/Creative Director
1982年宮崎生まれ。タワーレコード、WEBプロダクション、BBDOを経て2020年にPARTYに参加。ブランドと生活者を強固に結びつける”コンテンツ発想”を軸に、マス、デジタル、PRを越境するアイデアで課題解決に挑む。特に、映像体験を用いた”驚き”と”発見”を与えるコンテンツを得意とし、国内外の広告賞を多数受賞。

Yuma Sato/Creative Producer
87年山形県生まれ。CM制作会社でのプロデューサーの経験を経て、2019年よりPARTYに参加。 映像を軸としながら、ジャンルを固定せず縦横無尽に仕事をしていくことが得意。 理想とするのは、自らがハブとなり、チームのパフォーマンスを高めることのできるプロデューサー。

Hiroshi Yamanaka/Project Manager
1987年滋賀県生まれ。同志社大学卒業。ワン・トゥー・テン・デザインを経て、PARTYに参加。Web、映像、イベント、プロダクト・サービス開発など、幅広い領域で企画・プロデュース、プロジェクトマネージメントを行う。

Masahiro Tanaka/Business Producer
1981年 東京都出身。21incorporation、Delphys Inc.を経て、現職。 映像・WEB・SPツール・イベント・空間デザイン・PR・インナー教育などを経験してきたが、さらなる領域の拡張を求め、2020年 PARTYに参加。

Kakeru Mizui/Videographer
映像ディレクター。DRAWING AND MANUALを経て独立。2020年11月からPARTYに参加。 モーショングラフィックをベースにファッションから教育番組まで幅広く手掛ける。


PARTY
Designing experiences for a weird and wonderful world by mixing storytelling and technology.
https://prty.jp/

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