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未来館キュレーター内田さんが「GANGU」にみた AIと人間の共創の可能性

[この記事は2019年11月14日にPARTY公式noteにて公開された内容です。]

未来館が注目するテーマ「Miraikanフォーカス」の関連展示に、アーティストとしてPARTYが選ばれ、AIと人間が共同で制作したアート作品「GANGU」を展示することが決定しました。日本科学未来館の常設ギャラリー「零壱庵(ぜろいちあん)」 に2019年11月14日から約1年間展示されました。


今回、「GANGU」の展示プロデュースをしてくださった、未来館キュレーターの内田まほろさんにお話を伺いました。

ー「GANGU」を展示することになった経緯はなんですか?

Media Ambition Tokyo 2019で「GANGU」が展示されていたときに、伊藤さんが作品の前で解説されていて、拝見したのがきっかけです。
今年度、未来館がAIを展示テーマとして集中調査対象にしている中で、日本的な人間と機械の関係とか、目に見えないものをどのように存在として信じるか、というようなアプローチの作品を紹介したいと思っていたのですが、なかなか見つからなくて。
ロボットだったり、オルタを展示したりとか、原点に戻って神道の話を展示している中で、「GANGU」に出会うことができて「なんだ、ここにあったじゃん!」と興奮しましたね(笑)


ー「GANGU」のどこに魅力を感じていただけたのでしょう?

特に気になったのは、アニミズム的な思想です。AIを人間のパートナーとみなして一緒にアート作品を創りあげている点がユニークで、日本人的な機械との対話というか、それを実現しているのが面白いなと。

アニミズムとは、全てのものに魂が宿っていて同等であるという考え方で、擬人化という言葉にすると分かりやすいかもしれませんね。日本人は多くのことを擬人化して考える中で、ましてや人間と同じように学習するという行動をAIがしてくれるわけだから、そのプロセスを見たら、プログラムが相手だとしても愛情が湧く気がするのです。「全然、うまく仕事してくれないな・・」と思っていたら急に学習しだしたぞ、みたいな(笑)。その“愛情が湧く”感じというのが、日本人は生まれた時から自然に持っている感覚なのだと思います。

西洋の考え方だと、常に人間が上位にあって、機械は人間が使う、コントロール可能なものです。だから、このような感覚って西洋の人にとっては、結構大きなカルチャーショックなんです。未来館にお越しいただくお客様の中には半分くらい外国の方がいて、日本人がどのようにAIを捉えているか、というのを示すことができるよい機会だなと感じています。


ーAI作品としても「GANGU」は海外と比べ珍しい作品だと伺いました。

「GANGU」はすごくポップに、誰もが可愛い!と惹かれるプレゼンスでまとめられているのがいいですよね。未来館での展示はあくまでギャラリーなので、ものとしての強さ・インパクトも兼ね備えていることが条件だったのですが、「GANGU」は色味のつけ方だったり、オブジェのつくりが精巧で、彫刻的にも完成度が非常に高く、噛み応えがたくさんあります。

AI作品自体は海外にもたくさんあるのですが、基本的に平面作品をコレクティブな写真撮影や映像で見せるのが一般的です。世界的に見ても、データから飛び出てきたAIはあまりないのではないかなと思います。それはあのプログラムから出てきた絵に対して、AIが作ってくれたものをなんとか形にしてあげよう、という感情を日本人が持ち合わせているからなんです。


ー日本のアニミズム思想は、最近海外でも注目されているのでしょうか?

そうですね。先ほどはアニミズムを擬人化と例えましたが、ただ擬人化するだけでなく、人間がコントロールできるレベルでないものが世の中にはたくさんあるという大前提の上で、相手をきちんと認めてあげるという考えが日本人にはあると思います。
それは例えば、災害にも言えるかもしれません。地球温暖化などの環境問題が日本であまりデモにならないのは、環境に対して人間がどうにかできるものではない、と日本人が潜在的に思っているからです。

最近は、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)などのテック系カンファレンスでマインドフルネスや禅などがフューチャーされていて、それらはアニミズムに沿った考えのもと派生していった概念でもあるんですね。この夏、私はロンドンのバービカン・センターでキュレーターを務めました。なぜテックの本場であるロンドンのギャラリーに日本人が招かれたかというと、日本のアニミズム思想を取り入れていきたいからという姿勢があり、このような風潮は、海外で広がっているように感じます。

日本のアニミズムは、日本がもつ美点の一つだと思っています。それは古いものとか自然や神に対してだけでなく、日本が生み出す科学技術にもその思想というのは表れていて、ロボティクスも、自動運転も、すべて根本の概念は繋がっているんです。
意識はしていないけれど、そういう土壌で生活して美意識も育っていく中で、デザインや科学技術など、生み出されるアウトプットは変わっていくのではないでしょうか。
そこを繋げるのが、最近の自分のライフワークなんです。


ーアニミズムが広がると、世の中はどう変わると思いますか?

あくまで個人の意見ですが、基本的に地球上の全てのものを人間がコントロールすることは不可能なんだと思います。それを受け入れる覚悟、メンタルが必要だと思うんですけど、アニミズムはそのようなときの拠り所になってくれるのではないかな、と思います。

あとは、AIのように人間の何倍も賢い解を出してくれる技術を開発しているので、それを人間ががんじがらめにコントロールしようとしてしまったら、できることが限られてしまう気がしませんか?

AIを人間と同じパートナーとして信頼し、無理矢理に制御することをやめたら、もっと可能性が広がり、今まで見たこともない新しい世界が待っているのではないかな、と期待をします。


ー「GANGU」の展示開催にあたり、最後に一言をお願いします。

未来館は、日本のテクノロジーや思想を空間を使ってオフィシャルに展示できる場なので、アニミズムやAIとの共創、などの要素をもっと入れていけたらいいなと思っています。「GANGU」は1年間の常設展示なので、展示中に色々なアングルで楽しんでいただけるよう、イベントや企画を考えていきます。来場者の皆様に、思いもよらなかった楽しみ方・発見があることを期待しています。

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