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日本の「食」をもっと豊かで価値ある存在に。コンペ優勝経験者が挑む新たな目標と野望

ホテルやレストラン、ウエディング事業の企画・運営を展開するポジティブドリームパーソンズ(PDP)でシニアソムリエとして活躍していた本庄 健太は、ある想いをもってFBS企画室に異動しました。シニアソムリエとしてこれまでに歩んできた軌跡と、企画側としてこれから挑む目標について、本庄が語ります。

お客様へ提供するものすべてのクオリティ向上を模索

本庄がユニットマネージャーとして所属するFBS企画室は、全国規模で運営をしているPDPのスケールメリットを活かした材料の安定供給や、最終顧客へ向けた価値の高い商品の創出を主なミッションとしている。

新店舗の立ち上げの際には、コンセプトの落とし込みやメニューの作成、さらには顧客に関わるメンバーの育成、生産者とのつながりの構築など業務は多彩だ。

本庄 「FBSは“フード・ビバレッジ・サービス”という3つの頭文字を並べたものです。お客様がレストランで食事をする際に、たとえ料理が素晴らしかったとしても、ビバレッジやサービスの力が伴わなければ、生産者の想いや料理に託されたメッセージをお客様に伝え切れません。そのためFBSでは、3つすべてを最大限まで引き上げることを目標にしています」

2022年1月現在、FBS企画室には本庄を含めた5人のメンバーがいる。キッチン出身のシェフが多い中で、シニアソムリエとして高い技術を持つ本庄は異色の存在だ。プレイヤー時代はリピートのお客様も多く担当した。現場で培ってきた豊富な知識を活かして、本庄は現在、ビバレッジを中心に業務に携わっている。

しかし、企画者ならではの難しさを感じることも少なくないという。

本庄 「自分たちが直接現場に出るわけではないので、お客様と接する機会はほとんどありません。そのため商品開発やメニュー作成を行う際には、お客様と認識のずれや誤解を生じさせないための適切な情報収集が大切です。また、FBS室が現場のシェフやサービスマンへ新提案を行うには、企画の意図を正しく現場に伝える必要もあり、それには伝える技術も磨かなければいけません。自分で考えて自分で動いていた現場とは違う難しさを痛感しています」

顧客に対し、直接的な関わりが持てない立場での活動にもどかしさを覚えながらも、現場では成し遂げにくい目標を本庄は抱いている。それは、“新しい飲食文化を創造し、日本の社会に定着させる”という壮大な夢だ。

本庄 「レストラン、という空間で創り上げたい文化があります。サービスマンって本当に頑張り屋が多いんですよ。その頑張りをサポートして、現場で発揮できるようにしたいと思っています。自分に自信がつけば誇りも生まれる。それが来店してくださったお客様に伝わって、お客様も心から楽しくてサービスマンと一緒に盛り上がる。サービス面ではそんな空間を理想にしています。食文化という面では、日本のスタンダードとなっているフランス料理は、フランス本国から海を渡ってきて長い時間をかけて日本の味や文化と融合して新しく生み出された日本のフランス料理です。そんな風に各国の美味しい文化を日本に取り入れて、日本のお客様の食文化が豊かになるように、PDPでは各店舗に個性あるメニューを取り入れています」

お客様に喜んでいただける楽しさに魅了され、料理人からバーテンダーに

本庄は高校卒業後、調理師学校に通いながらイタリアンレストランで働いていた。オープンキッチンだったことから、お客様の前で料理の説明や取り分けをするなど、直接お客様に関わる機会は多かったという。

目の前でお客様の喜ぶ顔が見られる環境にやりがいを覚え、20歳の頃にバーテンダーに転身。さらに接客の楽しさに魅了されていった。

本庄 「バーテンダーとしてバーに転職し、その2年後にはチーフとしてレストランバーに移動しました。そこでは取り扱う酒類の種類が多く、ワインは自分が好きなものをセレクトできました。そうした環境の中で、より良いものをお客様に提供するために、勉強の必要性を感じたのが、ソムリエを目指したきっかけです」

同店のオーナーがバーテンダー協会に所属していたことも、本庄に大きな影響を与えた。本庄はオーナーに誘われて協会に所属し、より高い技術を目指す技術研究部にも顔を出すようになる。そこでは有名なバーテンダーらがそれぞれの店で勉強会を開き、バーテンダーの技術を高め合っている姿に感化されたという。

本庄 「店ごとに使っている材料や道具が違うので、それらを使わせていただけるというのがとても勉強になりました。たくさんの先輩方のお話を聞き、バーテンダーの奥深さに触れられたのは、とても良かったと思います」

その後、PDPに転職を決めたのは、さらに大きなフィールドでチャレンジしたいという気持ちからだ。レストランという飲食分野だけに留まらず、ウエディングやフラワー、バンケット事業などの専門家が企業理念を共有し、一つのビジョンに向かいながら活動していることに、大きな魅力を感じたと語る。

本庄 「PDPなら、これまで主に関わってきたビバレッジと接客のすべてを活かせるのではないかと思いました。前職でドリンクメニューをゼロから作り上げたことがあり、何を強く売りたいか、売るためには何が必要かという考え方を持っていたのが、転職後も強みになっています」

これまで関わりのなかったウエディングという舞台でも、本庄の経験が活かされている。新郎新婦との打ち合わせにより、二人をイメージしたオリジナルカクテルを考案し、パーティの席でゲストに提供した。

お客様に喜んでいただきたいという想いが仕事の原動力であることは、飲食業に足を踏み入れてから今まで、変わらない信念だ。



コンペ優勝経験から学んだサービス業の本質

PDP入社後の2018年、当時プレイヤーとして活躍していた本庄は、スコッチウイスキーブランドのシーバスリーガルが主催する、バーテンダーコンペティション「ザ・シーバス ミズナラ マスターズ 2018」において優勝を果たした。この輝かしい実績をあげるまでには苦労もあったという。

本庄 「入社前から参加していたバーテンダー協会の勉強会では、世界チャンピオンになった方から実際に教わる機会もありました。その方がおっしゃっていたのは、コンペに出られるほどの実力者であれば、味や技術のレベルはほとんど差がないということ。そこから一歩抜け出すためには、プラスアルファの価値をつけられるか、そこが最終的な勝ち負けにつながるのだと教わりました」

さらに同じコンペに繰り返し挑戦することで、本庄は審査の傾向をつかんでいった。審査員の中には、外国人がいる。全員にわかりやすく伝えるにはどうするべきか。そこがポイントだと思い、なんらかの伝える工夫が必要だと感じていた。

テーマとして出された「和」というキーワードに対して、本庄が打ち出したコンセプトは、和食の構成である「五味五色」。複雑な五味の調和を一体にして味わえるカクテルを生み出した。

本庄 「最終的にはコンセプトをいかに伝えるかに主眼を置き、五味をお寿司にたとえた説明をパワーポイントでプレゼンテーションしました。当日は準備したものの8割しか出し切れなかったのですが、それでも手応えはありましたね」

数年にわたって挑戦し続けたコンペで得たものは、「優勝者」という称号だけではない。コンペに真剣に向き合ったことでサービス業の本質を学び、その考えはFBS企画室での仕事にも反映されている。

本庄 「たとえ自分が最高だと思うものができたとしても、人が求めているものを具現化できなければ評価はされません。コンペで、単に作品を競うことではなく、他者が本当に求めているものは何かを追求することの重要性に気付いてから、考え方が変わりました。その重要性はサービス業でも同じ。他者の評価がすべてであり、自己の表現の場ではないことを、常に念頭に置くべきだと考えています」

日本に新しい食文化を──働く人をバックアップする仕組みを構築したい

外食というのは、おいしいものを食べて豊かな時間を過ごすことで、そこに付加価値が生み出されていくことだと本庄は語る。そして、こうしたお客様が満足するサービスを提供するためには、飲食業界で働く人をバックアップする学びの場が必要だと考えているのだ。

本庄 「フード・ビバレッジ・サービスの3つを高い次元で調和させるために、まずビバレッジの分野を底上げしたいと思っています。それには、各レストラン、各会場でのビバレッジの指導者を育成する必要があります。そうして指導者が周囲に良い影響を与え、知識や技術が末端まで広がっていくような取り組みをしたいですね」

自身で開発した商品がメニューに採用され、それをお客様に楽しんでいただけるという飲食業ならではのやりがいを、もっと多くの人に実感してほしい。そして、知識や技術を伝えるだけでなく、自身が接客に携わって感じた楽しさも伝えたいと本庄は考えている。

本庄 「サービス業の大きな魅力は、人との出会いです。立場や職種などの垣根なく、さまざまな人とつながることで、自分の世界が広がっていく経験を多くの人に味わってもらいたいと考えています」

バーテンダーコンペティション優勝者として、ロンドンや中国など海外のバーで働いていたときに見た光景が、本庄は忘れられないという。そこで目にしたのは、誇りを持って働くスタッフと、心底楽しんでいるお客様の姿だった。

本庄 「スタッフたちは“自分はアーティストなんだ”という感覚でみんな働いているのです。来ているお客様も本当に楽しそうで、店全体が盛り上がっているんです。スタッフとお客様がお互いに尊重し合って、一体感が高まっていることを肌で感じました。日本でもそういう文化が醸成されてほしいと願っています。またPDPだからこそ、こういった機会を与えてもらい、さまざまな経験をさせてもらったことに感謝しています。スタッフにも場を提供し、この楽しさを味わってほしいですね」

新しい食文化を日本に根付かせるため、FBS企画室での本庄の挑戦は、まだ始まったばかりだ。


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