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【外出し社内報 #2】「自分デザインノート」~楽天大学学長 仲山進也さん(前編)

20代のうちに何をすべきか “自由”を切り拓くためのキャリア論

こんにちは。パーソルキャリア広報部の乾です。日頃パーソルキャリアの社員に発信している“ウェブ社内報”の中から、社外の皆さんにも役立つ情報をピックアップしてお届けします。

自分の認め方、社会との適応の仕方、未来の社会で活躍する方法など、独自の視点で社会と自分を見つめてきた「自分デザイン」のスペシャリストに徹底インタビュー。2回目の今回は、楽天大学学長・仲山進也さんをお迎えしました。

「働き方改革」が一大アジェンダになる以前に、“いつでも・どこでもワーク”を実現し、複業も実施、自分の会社まで設立しながら、楽天の社員もちゃーんとやっている仲山さん。自身のキャリアの軸の作り方、組織とのつきあい方などなど、今日からあなたも始められるヒントが見つかるはずです。

20代~30代ビジネスパーソンは覚えておきたい、「加」のステージでやるべきこと

――実はこの前のインタビューは、はあちゅうさんでして……、“自由人シリーズ”と編集部では呼んでいます。今日は仲山さんが自著『組織にいながら、自由に働く。』で紹介されている「加減乗除の法則」も紹介しながらお話をうかがえればと思っています。“自由すぎるサラリーマン”とメディアで紹介される仲山さんに対していろいろな方が「同じように自由に働きたい。どうすればよいか?」と人生相談してきて、ご自身の経験を体系化されたのがこの法則ですよね?

仲山:最初にお断りしておきたいのは、僕が狙って「兼業自由・勤怠自由の正社員」というポジションを獲得できた、というわけではないことです。

数年前までは「組織のレールから外れた、ただの変人」だったんですが、ここ最近、新しい働き方を模索する動きが世の中的に加速して、「あいつの働き方、新しくない?」「自由すぎない?」と言っていただけるようになっただけです。なので、スゴい人でもないし、すぐに役立つようなノウハウも知りません(笑)。

――壁にぶち当たりながらいろいろ試して、気がついたら自由な働き方になっていたという?

仲山:ニュアンスでいうと、「壁にぶち当たらないようにしてきた」感じです。皆さん、よく「壁を乗り越えろ!」って言うじゃないですか。僕の場合は、「壁あるな〜」と思って横をずっと見ていくと、遠くに壁がないところが見つかるので、「なんだ、乗り越えなくてもいいじゃん!」みたいな。多くの人は「うお~!」っと乗り越えて一直線に進もうとするけど、テンション高くしすぎると長続きしないので、人も少なくて遠回りに見える道が好きです。

――キャリアのこととなると、つい、「常にハイテンションで成長し続けようぜ!」みたいな圧強めのコミュニケーションになりがちなので、今の話を聞くと肩の荷が下りる人もいるかなと思います。

仲山:「高い目標を掲げて努力して壁を乗り越えた」みたいなストーリーが「成功の法則」と思われがちですよね。短期的に結果を出す手法としては、それが有効な場合が多いかもしれませんけど、自由に働くということなら別な視点や考え方が大事になると思っています。

――今は“成功者になりたい”と考えるタイプの人だけではなくて、あらゆる人が人生やキャリアについて考える、考えざるを得ない時代になりました。一方で「キャリアをどう考えたらいいのか」という方法論についてはあまり統一の物差しがない。仲山さんが提起している「加減乗除」のフレームワークだと、まず“加=足し算”のステージは「できることを増やしていく」ステージですよね。社会に出て10年目ぐらいまででしょうか。

仲山:期間は人によって変わると思いますが、おおむね20代という感じでしょうか。足し算のステージは、「できないことをなくして、できることを増やしていく」イメージです。指示された目の前の仕事を、より好みせずとにかくひたすらやればよい。ニガテなことも食わず嫌いせず、人並みにできるまでやってみるステージです。

その時に大事なのが、いかに「不安」と「退屈」を避けるか、です。言い換えると、「いかに仕事で夢中に遊べるか」。

――分かるんですが、ちょっと“先輩あるある”的な発言でもあって。目の前の仕事にもっと本気で取り組めよ!というお説教にも聞こえてしまう。「仕事なんて、お前の気持ち次第なんだよ」という精神論に感じてしまうんですよね……。

仲山:新入社員が後輩として入ってきて、「自分の強みはこれなので、こういう仕事はやりたくありません」と言われたときに、「つべこべ言わずにやれよ」と思うことはありませんか?

――はい、思います。

それって精神論に思えるかもしれませんけど、「いま思っている強みが仕事で強みとして通用しなかった人」とか、「できないことが多すぎて伸びない人」とか、「仕事をしているうちに強みが開花した人」とかをたくさん見てきたという裏づけがあっての「つべこべ言わずにやれよ」だったら、単なる精神論ではないと思います。

ちなみに、僕も単なる精神論はニガテです。だから、「好みでない作業からは全力で逃げる」ことを大事にしていたりします。

――どういうことでしょう?

仲山:「逃げる」というのは「仕事から逃げる」ことではありません。仕事というのは、いろいろな作業が合わさったものです。その作業のなかには、自分にとって「好みの作業」「好みでない作業」「どちらでもない作業」が混じっています。仕事をやる上で、好みでない作業を減らして、好みの作業を増やしていくようにチューニングを変えることができれば、仕事はだんだん楽しくなっていきます。

――仲山さんの場合だと、どういうことですか?

僕は「人前で話す」という作業がニガテです。でも、楽天出店者さん向けに講座をやる「楽天大学」の立ち上げを担当することになりました。26歳のときです。リソース的に、自分が講師をやらざるを得ません。なので、講師として「人前に出る」ことは受け入れつつ、「なるべく話さなくて済む方法」を工夫するようにしてきました。

たとえば、グループワークのお題をつくったり、そもそも「参加者同士で実践談を語り合う合宿」を企画したり。そうやってチューニングを重ねてきた結果、今では「話さない講師」というスタイルが確立しつつあります(笑)。

こういったチューニングをする中で、「仕事で活きるほんものの強み」が浮かび上がってくるんです。

――なるほど。人にはそれぞれ強みと弱みがあって、苦手な作業も得意なことでカバーできるよう仕事のカタチを加工してしまえ。そうすることで人にはない強み(話さない講師)にすら昇華することができるのだ、と。そこは納得ですが、「自分の成長のために」という動機って限界あるじゃないですか。

仲山:人が仕事をする動機については研究が進んでいて、6つあります。

① 楽しさ ② 社会的意義 ③ 成長可能性 ④ 感情的プレッシャー(怒られない・嫌われないため) ⑤ 経済的プレッシャー(食べていくため) ⑥ 惰性(昨日もやってたから)

です。前者3つの動機で働くとハッピーで、後者3つの動機で働くとモヤモヤします。

――なるほど。「成長可能性」はハッピーの要因にもなりますが、経済的プレッシャーや感情プレッシャーと裏腹なところがありますよね。「成長し続けなければリンダ・グラットン先生の言う人生100年時代を生きていけないかも……」とか「この会社で上に上るために早く成長しなければ……」みたいな。

仲山:その観点から言うと、「楽しさ」や「成長」を「社会的意義」とリンクできるようにチューニングすることが大事だと思っています。

「社会的意義」というと社会問題に取り組むような「大上段な善行」というイメージがあるかもしれませんが、もっとシンプルに「相手にとって価値があること」という意味合いです。そういう仕事をしていると、相手から感謝されるようになります。

僕はお客さんからの“ありがとう”を「魂のごちそう(略して、たまごち)」と呼んでいます。たまごちがもらえることを「楽しい!」と思えるようになると、「もっと喜んでもらえるようになりたい」と思うようになり、仕事が「自分ごと」になります。そうなると、「本気でやれなんて精神論だろ」とか、「成長しなければやっていけないのではないか」というモードではなくなります。なぜなら、それは「他人事モード」に固有の感覚だからです。

――確かに年齢を重ねても、“たまごちのうれしさ”は変わらないですよね。でも「加」のステージは結構悩む時期でもあって。今は良くも悪くも、3年で新卒入社3割が転職する時代です。手元の仕事ができてくると、少し飽きてきて、つい「今後どうしよう。やりたいことも見つからないし」と考えてしまう。

仲山:ぼくも3年目で転職をしたので、おっしゃる問題意識は分かります。「やりたいことは見つからなくてもいい」んですよ。

――いいんですか?

仲山:人には“目標達成型”と“展開型”の2タイプがあるんです。

さっき話にも出たように、夢や目標を掲げて達成するのが「成功の法則」と思われていますが、それとは違うスタイルもあって、それが「展開型」なんです。展開型の人は「いまここ」を夢中で過ごすことで、人生が転がるように拓けていきます。ぼくは思いっきり展開型のキャリアで、今に至っています。

だから、「やりたいことが見つからない」と悩んで、「やりたいこと探し」で浮つくよりも、目の前のことを「飽きてきたからちょっと難易度上げてみよう」というふうに、夢中ゾーンに長く居続けられるような工夫をするのがおすすめです。

――大きな組織で分業が進んでいて、どうしても自分が歯車の一部に感じてしまうときもその考え方は有効なんでしょうか?

仲山:大きな仕事の一部分だけを担当していると、工夫しようにも全体像がわからなくて、「勝手なことをされると困る」と言われそうで工夫できない、ということはありますよね。そんなときは、「落ちている仕事を拾う」のがおすすめです。

――「落ちている仕事を拾う」?

仲山:誰の担当とも決まっていないけど、「これはやらないといけないんじゃないかな」と思うことって、誰でも1つくらい経験があるはずです。そんなふうに「やらないと気持ちわるい」と感じることって、実は自分の強みと関係していることが多いんです。部屋がどのくらい散らかったら掃除したくなるかって、早く掃除したくなる人は「きれい好き」という強みを持っているわけです。自分が気持ちわるいので、気持ちよい状態をつくるために動くと、「自分だけのプロジェクト」だから全体像もわかるし、全部自分で考えられる。しかもそのうち、「あいつは自分の担当じゃないのに、こんなことをやって貢献してくれた。ありがたい!」と“たまごち“がもらえます。

――それもわかるなー。落ちているものって、たいてい緊急度はそこまででもないけど、重要度は高いテーマで、上司を始めみんなが「やべ、やらなきゃ……」と気になっていることだったりする。軌道に乗ってくると当然いろいろな人も巻き込むことになるから、結果としてこれまでにない他人の巻き込み方も覚えらるし。

仲山:そうそう!だから異動や転職もいいけど、今の職場や組織をじっくり見て、「落ちたままになっているのが気持ちわるい仕事」を探すこともしてほしいです。それをやっているうちに認められて、いろんな仕事を頼まれるようになっていくはずです。

――そうしてキャパオーバーになったあたりから、次の“減ステージ”に向かっていくわけですね。「減」は好みでない作業を減らし、強みに集中する。「乗」は磨き上げた強みに、別の強みを掛け合わせる。「除」はひとつの作業をしていると複数の仕事が同時に進むようにする、です。

仲山:解説、ありがとうございます(笑)。

詳しくは仲山さんの著作を読んでいただければ(笑)。後編は仲山さんの仕事観やキャリア観に迫ります!

なかやま しんや/楽天株式会社楽天大学学長、仲山考材株式会社代表取締役。1973年、北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、シャープ株式会社を経て、1999年に社員約20名の楽天株式会社へ。2000年、楽天市場の出店者が互いに学び合える場として「楽天大学」を設立。04年、Jリーグ「ヴィッセル神戸」の経営に参画。07年には楽天で唯一の兼業フリー・勤怠フリーの正社員である「フェロー風正社員」となり、08年には自らの会社である仲山考材を設立。『組織にいながら、自由に働く。仕事の不安が「夢中」に変わる「加減乗除(+-×÷)の法則」』(日本能率協会マネジメントセンター)ほか著書多数。

構成/パーソルキャリア”外出し"社内報編集部 撮影/柳沼涼子

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