自分自身への挑戦。ShowNet Team Member体験記<インタビューシリーズvol.9>
今回はInterop Tokyo におけるShowNet Team Memberに参加された山田さんへインタビューをしました。今回のチャレンジにかけた思いや、ShowNet Team Memberの経験を経て感じたことなどをお伺いしていきます。
■略歴(株式会社パソナ DXテクノロジー本部 X-TECH第2エンジニア室 山田)
新卒で地元(熊本県)のIT人材派遣会社でサポートデスクやコールセンターの運用保守を経て、2016年にパソナ(旧パソナテック)へ入社。転職活動中、当時福岡支店が開催していた「博多TECH塾」に参加したことがご縁に。入社後6年間は通信系企業様やNIer様等のお客様先常駐にて、主にインフラ案件を担当。現在は、博多HUBにおける通信系企業様のネットワーク技術支援やお客様フォローアップなどを担う。
目次
■キャリアに向けた1つ目の挑戦
■多彩なメンバーで構成されるShowNet Team Member(以下STM)
■最新技術の普及を目指す 開催までの日々
■出展企業の方、来場者の方のためにも成功させる
■STMを振り返って、「世界が広がった」
■自身のキャリアへの想い
■キャリアに向けた1つ目の挑戦
6年間、お客様先にてネットワーク設計・構築業務に従事し、2023年に社内に戻ってきたのですが、「自身のスキルが他社で通用するのか」という不安が自分の中にありました。そんな時、同じ福岡で勤務をしていたマネージャー(現在のエンジニア組織室長)へキャリアについて相談をしたところ、「もっと視野を広げ、IT業界というところにフォーカスを置き、挑戦してみなよ」というアドバイスをいただきました。その言葉をきっかけに自身のキャリアについてより俯瞰的な視点を持ちながら考えることができ、1つ目の挑戦としてInterop Tokyo(※1)のShowNet Team Member(※2)への応募を決めました。
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Interop Tokyo 2023は現地開催の3日間で約12万人という多くの来場者数にお越しいただきました。旧パソナテックに入社し、2017年に初めてInteropへ来場者として参加したのですが、その時よりテクノロジーのレベルも高く、来場者も増えており、「インターネットテクノロジーのニーズは増しているな」と改めて実感しました。
※1:Interopは世界最大級のインターネットテクノロジーのイベントで、その中の「Interop Tokyo」は来場者数だけでみるとアジア最大級。毎年国内外から数百の企業・団体が参加し、会場での展示、デモンストレーションやセミナーを通じて、技術動向とビジネス活用のトレンドを、いち早く体感するイベント。
▸詳細はこちらから:https://www.interop.jp/
※2:ShowNetとは出展社から提供された約1,600の製品・サービスと、約700名トップエンジニア達が幕張メッセに集結し、構築や相互接続実証にチャレンジする巨大プロジェクトの名称。ShowNet Team Memberは、全国から一般公募により選抜されたエンジニアの総称。
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■多彩なメンバーで構成されるShowNet Team Member(以下STM)
STMとは、長い時間を掛けて練られたデザインを基に、展示会場に敷設するShowNetの構築・運用・トラブルシューティングを担うボランティアメンバーです。
応募者数は正式に公開されていませんが、毎年全国から多くの応募があります。また応募するにあたり、Interop開催前の1週間または2週間を確保することが条件となります。応募者の中から次世代のネットワークエンジニアを選抜します。その上で、2023年度のSTM採用者は37名でした。公式サイトに掲載されている今年の採用メンバーリスト(公式HPより:https://www.interop.jp/2023/shownet/noc/)を見ていただけると分かると思いますが、STM参加者の中に東京大学や慶應義塾大学の研究室等からも参加しています。その中で、パソナのエンジニアがここに選抜されたことに対して、クライアント様や周囲からは驚かれることが多いです。
「この技術を発信するのはこのShowNetであって、私たちなんだ」というプライドがあり、それが選考基準でもあったと感じています。1人のエンジニアとして、プライドを持って参加し、お客様の業務改善につながってほしい。そのような集団であったと思います。
■最新技術の普及を目指す 開催までの日々
STMで選抜された方で複数の班を編成し、与えられたタスクを遂行していきます。タスクの中には自身の経験のない技術要素が含まれていることが多くありますが、同じ班の仲間またはそのスキルを持っているSTMと協力してShowNetの事前検証及びその構築をします。
私は配線技術が未熟だったので、他のSTMの方に教えていただき、その技術を吸収することができました。自分の得意分野を生かしつつ、スキルの深掘りやその他のスキルを大きく高めることができたのは、ShowNetならではの環境だったと思います。
ShowNetで構築するネットワークは、Interopに出展される出展社様から提供いただいた最新機種を相互接続検証するプロジェクトになります。相互接続する機器の様々な実装に対して、トラブルシュートを行うケースもあります。構築される約1,600台の機器がある中で、それらを事前検証期間である1週間で素早く完了させるのは、濃厚で貴重な経験でした。
「ゼロから作ってゼロに戻す」というプロジェクト遂行もShowNetならではです。ShowNetで行った相互接続検証が世界で発表されるケースもあります。一般的なプロジェクトは構成図を作成した上で作業準備とその作業を実施しますが、ShowNetにおいては、基本的なコンセプトに基づいた構成図が事前に準備されており、NOCチーム主導のもとSTMが協調し、事前検証を経て最終構成図を仕上げ、撤収まで完遂していきます。なかなか一般業務では得られない経験となりました。
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苦労話で言うと、経験したことのない膨大なタスクをInterop開催までの約2週間で処理し、かつ最先端技術を習得しなければなりません。ですが技術的なプレッシャーもありました。様々な領域のプロフェショナルの方と関わり、技術を惜しみなく学ぶことができました。
NOCチームはいろんな産学から集められたトップエンジニアですので、情報連携のスピードと技術理解がとても早く、会話を聞いているだけでも勉強になりました。
STMの皆さんは何かしらの信念を持って参加されています。私を含め誰も諦めていなかったと感じました。仲間と協調しながら自身のタスクを遂行していく中で、結果的にスキルアップできたのは本当に良かったと思います。STMとして活動するにあたって大事なことは「ShowNetを成功させることができるか」という気持ちを持つという点が挙げられると思います。そのためにはコミュニケーション能力は必要不可欠であり、そのような方々が多い印象を受けました。事前検証期間の初日は名刺交換し、それぞれの得意や強みを共有した後にチーム編成があるので、「この技術はあの人が詳しいから聞こう!」という連携が自然とできていました。
■出展企業の方、来場者の方のためにも成功させる
ShowNetで構築されたネットワークはInterop期間中に出展する企業様の製品のインターネット接続性を提供する用途でも利用されます。提供する上で、その品質を確認するためにドロップチェック(※3)を実施する必要があります。Interop Tokyo 2023では出展社様のブースは幕張メッセ内の4ホールへ展開されました。出展社数は475社になるため、幕張メッセ内に張り巡らされている光・LANケーブルの正常性確認を何回も実施しました。この期間中は短期に作業を進めるためのシフト制がしかれ、宿泊先に戻るのは深夜帯になることもありましたが、他STMと協力し、多くの作業を乗り越えた経験はかけがえのないものとなり、心技体全て鍛えられたと感じました。
※3:出展社ブースへ提供されるインターネット接続用ケーブルの正常性を確認する作業。
また、出展社様に対してインターネットの接続性を提供するにあたり、一番やってはいけないことは、「来場者に対して製品の品質を損なう印象を与える事」です。
3日間で約12万人という来場者の前で、「ネットワークへ接続できないので、製品の良さをPRできない」というのはまずあり得ません。NOC/STMはそのような重圧の中で、ShowNetを成功させるために動いている人たちなのだと実感しました。
■STMを振り返って、「世界が広がった」
「これほど忙しいことはないだろうな」という精神的な余裕が生まれました。またShowNetは様々な企業から人材・技術の支援を受けて作り上げられます。普段の業務では、他社の方との間にはビジネス上のやり取りが入りますが、ここでは同じ釜の飯を食った仲間として、企業の枠を超えた交流ができました。パソナより以前に勤めていた会社や現顧客の通信系企業様、過去お世話になったお客様から激励の連絡もいただきました。参加したことでお客様と交流する機会が増えたなと思います。Interopが終了した今でも、ShowNetのメンバーとは連絡を取り合っており、特別な信頼関係が結べたと感じています。
「ShowNetに参加した」というワードをお客様との会話の引き出しに使うと、ITに興味のある企業様に関心を持たれ、良いお話をいただく機会も増えました。その分、期待値も高まり、技術的なプレッシャーもありますが、その経験を評価いただけていると感じています。
STMプログラムへ参加してよかったですし、「世界が広がった」まさにその言葉通りです。
正直、どのくらいスキルアップできたかはまだ実感できていません。ですが、今は「やればできる」という発想に切り替わったことを実感しています。
また、今回Interopへ応募する際に考えたことは、このイベントへ参加することにより博多DXHubのエンジニアの方々や連携していく営業チーム、クライアント等、これまで関わってくださった方に何かプラスになることはないかということでした。InteropでのSTM採用が決まり、本申込のタイミングで、その思いを所属部門の室長とチーム長に相談したところ快諾いただき、本当に嬉しく思っています。 ビジネスに繋がるかどうかはさておき、個人の想いや挑戦に対し、全力で応援してくれる組織だなと感じています。
今後について、NOCチームの方々やSTMと関わる機会が増えたので、面白いことに取り組んでみたいと考えています。また、今回イベントに参加して、IT業界ってまだまだインフラエンジニアとしてもやることがたくさんあるなと実感しました。インフラエンジニアも開発スキルが必要な時代なので、フルスタックに活躍できるエンジニアとなりたいです。将来的にNOCチームのように活躍し、その姿を見てかっこいいなと思ってインフラエンジニアを目指す若手が増えてくれたら嬉しいなと思います。
また、そういった活動がパソナでできたら良いなと思っています。
■自身のキャリアへの想い
根本だとは思いますが、クライアントのため技術を磨くことですね。
クライアントが笑顔になる技術力が提供できないと、いつまでも市場価値は高まらないと思います。自分が作ったシステムでお客様が悲しむ姿は見たくないですよね。これからも技術を磨き、お客様のために良いサービスを作っていきたいと思います。その先に次のビジネスが生まれますし、クライアントとの1回限りの関係性は無くしていきたいです。
個人的に社会はクライアントの集合体だと解釈していますが、単に自身の市場価値を高めるのではなく、クライアントのために技術を習得したいと考えています。
熱意を持って取り組めば、それがクライアントの求める市場価値に繋がっていき、その積み重ねが社会の問題を解決できるエンジニアになるのだと思います。