今回は1人目デザイナーとして転職してきた虫谷涼香さんに
入社の経緯や、想いについてインタビューを実施しました。
目次
・これまでの経歴
・転職しようと思ったきっかけ
・1人目デザイナーの業務
・事業会社のデザイナーの現実
・どんなデザイナーになりたいか
ーーこれまでの経歴を教えてください。
大学では、教育学部美術専修でグラフィックデザインを専攻。大学生をしながら、デザイナーとしてのキャリアを一刻も早く歩み始めたいと思い、大学1年からフリーランスデザイナーをやっていました。 公共機関のチラシやパンフレット、ロゴ、雑誌編集などを手掛け、DTP※デザインを中心に活動していました。
※DTP:Desktop Publishingの略。パソコン上で印刷物のデータを制作すること。
新卒は、実はデザイナー職ではなく、大手人材会社のファシリティマネジメントという部署で、グループ会社のオフィス出店・移転などのプロジェクト管理をやっていました。ありがたいことに、デザイン的思考やスキル面を評価してくださる仲間や上司がいたおかげで、自分なりにのびのびと仕事をさせていただき、新人MVPをいただいたりもしました。 その後、2社目で株式会社オースタンスに入社し、現在、1人目デザイナーをやっています。
ーー転職しようと思ったきっかけはありますか?
「デザイナーになりたい」という思いが強くなったというのが一番の理由です。 実は新卒で入社する会社を決める際に、デザイナーになるか、全く違う職種にチャレンジするかでとても迷いました。ただ、デザイナーは遅かれ早かれ、いずれはなると思っていたので、ファーストキャリアはお客様の課題に寄り添えるコンサルタント職になることにしました。 前職はとても素敵な人ばかりで、大好きな会社でしたが、一方でデザイン面を評価してもらえばもらうほど、デザイナーとして生きていきたいと思いが強くなり、転職を決意しました。
ーーそこでオースタンスを選んだ理由を教えてください。
理由は大きく2つあります。1つ目は、ドメインに将来性を感じた点です。シニアという成長性の高いマーケットと、シニアにターゲットを絞ってさまざまな業界のトップ企業と共創しながら課題解決(デザイン)ができるのは非常に興味がありました。 「シニア?よく興味が持てたね」なんて言われることがありますが、国の半分が50歳以上になる日本で、最も課題が深く、デザインの真の価値が発揮できる領域なのではないかと思っています。
しかも、オースタンスは、それが机上の空論ではなく、名だたる業界のトップ企業とタッグを組んでシニアに価値を届けている実績があることを知り、オースタンスでならシニア領域のデザインの常識を変えていけるんじゃないかとすごくワクワクしました。
2つ目は、オースタンスメンバーの人のよさと、真っ直ぐなカルチャーに惹かれました。 元々、会社を選ぶ軸として、特に、やるべきことに”真っ直ぐ”向き合っているか?は大事にしています。オースタンスは、当たり前の基準が高く、全力で向きあう姿勢をデフォルトで備えている人が多く、話していても一切の違和感を感じない居心地の良さがありました。
ーー入社に向けた不安はありませんでしたか?
正直不安はありましたが、それ以上にワクワクがありましたね。私はこれまでの経験上Webデザインの実績はあまりないことが不安でしたが、私のデザインへの想いやビジョンを汲み取ってくださり、Webデザインに挑戦するチャンスをいただきました。
ーー1人目デザイナーとして、普段どんなことをしているんですか?
業務の種別は大きく分けると、2C事業、コンサルティング事業、デザイン本部のミッションを持っています。
2C事業では、自社プロダクトを3つ展開しており、それぞれのプロダクトのUIUXデザインやマーケ目線を取り入れたコミュニケーション体験の設計などを担当しています。
コンサルティング事業では、企業様の目的達成のための最適なクリエイティブの制作やUIUX改善のご提案・制作が担当領域です。
デザイン本部では、デザイン経営の一環としてクリエイティブ統括室を立ち上げて、オースタンスのタッチポイントとなるコミュニケーション全般を担っていたり、社内クリエイティブの制作全般を担当しています。
制作物の依頼ももちろんいただきますが、ただ言われた通り制作するのではなく、「なぜ・どんな人のために・どういう文脈で、何を伝えたいのか」をセットでヒアリングするようにしています。どのチーム・どの職種のメンバーと一緒に仕事をするときもこれを強く意識することで、上流設計から相談に乗ってくれる、みんなの心強いパートナーになれるように心がけています。
ーー「心強いパートナー」いいですね。具体的にどんなことされてるんですか?
分かりやすい例で言うと、新規プロダクト開発をビジネス・マーケ・CS・エンジニア・デザイナーの5人で進めているのですが、そこでのチームワークフローの可視化をしました。これまでチームでアジャイル※に意思決定を進めてきたのですが、プロダクトが形になり始めた段階で、その意思決定プロセスや理由がドキュメントとしてほとんど残せていないという重大な課題がありました。 そこで、ビジネス・ユーザー・システム要件をチーム全員で思考する新しいプロセスが導入されることに。
私は記録としてのドキュメンテーションを依頼されていました。ただ、こうした一見複雑なワークフローはチームの共通認識をとりづらく、ドキュメントだと形骸化してしまいかねないと考え、誰でも視覚的に理解しやすいバリューストリームマップで表現しました。
※アジャイルおよびアジャイル開発:システムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法のひとつで、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進める手法のこと
(写真:バリューストリームマップ)
これにより、チーム内でも若干相違していた認識がすり合わせられただけでなく、取り組みの発信やエンジニア採用にも効く成果が得られたので、デザインの真価をチームに還元できた好例になったかなと思います。
ーー事業会社のデザイナーって、自由度が低いという声も聞いたことがありますが、実際はどうでしたか?
私も入る前は事業会社のデザイナーって会社のなんでも制作屋さんになるんじゃない?という固定観念がありました。自社プロダクトのテイストの中でしか表現できないなんて、退屈かも?って。 でも全く違いました。
自社プロダクトのUIUX改善業務ひとつとっても、ただビジネス側から降りてきた要求を言われた通り形にするということはありません。 これが醍醐味とも思っているのですが、経営企画から経営戦略を聞き取り、ビジネス側と今後の事業展開を擦り合わせながら、拡張性・保守性・ビジネスインパクト・実装コスト・スピードを考慮した提案をするようにしているので、デザインだけして終わりということがまずありません。 提案の上では、マネタイズできるかというビジネス的な感覚が必要だったり、顧客のタッチポイントを設計する上ではマーケティングの知識が必要だったり、どこから改善すべきかを特定するにはデータ解析のスキルが必要だったりします。なので他職種の方から刺激をもらいながら、デザイン以外の部分も鍛えながら仕事ができる点がとても面白いと感じていますね。
ーー虫谷さんは、入社後すぐ全社定例で全員の前に立って、デザイン経営の発表もされていましたね!
(写真:全社定例で発表した資料)
そうなんです。代表の菊さんに「デザイン経営やってみませんか。やったことはありませんが、勉強するのでやらせてください」と直談判しました。笑
経緯としては、入社して、色んなメンバーと仕事をする中で、メンバー1人1人がオースタンスで作りたい世界観や顧客に届けたい価値をはっきりと持っていて、これを一貫して全てのコミュニケーションポイントで表現できたらいいなと思ったんです。普通は逆になることが多いと思うんです。対外的にどう見せるかが先にあって、それを中の人にインストールしていく。でも浸透しない、みたいなジレンマが。
この素晴らしい世界観がオースタンスに関わってくれる全ての人に届けられれば、オースタンスはもっと社会に支持され、応援される会社になるのにと思いました。
ーー今後はどんなスケジュールでデザイン経営を進めていくんですか?
具体的には大きく3つのステップで進めています。
1. 経営企画ユニット直下にクリエイティブ統括室を立ちあげ、タッチポイントのコミュニケーション強化を図る
2. オースタンスの共通言語としてのMVV・カルチャードックを策定する
3. オースタンス公式のプロジェクトには、デザイナーをアサインする体制を構築する
現在、1と2は完了しています。クリエイティブ統括室を立ち上げ、広報や経営企画部と連携しながらエンドユーザーに伝えたいメッセージをすり合わせている段階です。 2のMVVとカルチャードックは広報中心に実現されています。3については、オースタンスとして公表するプロジェクトのデザイナーアサインも少しずつ浸透し始めた状況です。
ーーでは最後に。虫谷さんは、どんなデザイナーになりたいですか?
デザインの力で、ビジネス・マーケ・エンジニアの相乗効果を生み出し、事業と組織を成長させられるデザイナーになりたいですね。
事業でいうと、プロジェクトオーナーの右腕として、より効果の高い施策が提案できるようになっていきたいです。まだ入社して半年ですが、おかげさまで、特に新規プロダクト開発チームではユーザー中心の考え方をチーム全員が理解して、全員がユーザーの体験を徹底的にこだわり抜く文化ができつつあるので、そこでさらに私がリサーチやマーケティングの知識を身につけて思考の練度を上げていくことが今のミッションだと思っています。
組織でいうと、デザインに力を入れた組織が日本や世界でどう成長しているのか。デザイナーが入ることで何がどう変わるのか、その効果とケイパビリティを社内に伝え続けながら、成果でも示していきたいと思っています。 ただこれは私1人で実現するものではなく、みんなを巻き込みながら、デザインで、人・組織・事業を変えるムーブメントを起こしていきたいです。 見る世界は大きく!みんなに最高の眺めを見せるんだ!という気持ちをもってこれからも頑張りたいです。
自分のおじいちゃんおばあちゃんや両親に誇れるプロダクトを作る、全ての人が当たり前に使いやすくデジタルに触れられる時代を実現したい、この思いを胸に、これからもプロダクトと組織に向き合っていきます。
ありがとうございました。