ヒト・コト・モノ from OSAJI Journal - 一般社団法人日本ケアメイク協会 理事長 山岸加奈子 / SPECIAL INTERVIEW
見えなくても、自分の力で美しくメイクを仕上げられたら ...
https://osaji.net/journal/106/
こんにちは、OSAJI 店舗採用担当の原田です。
OSAJIでは、視覚障がい者の方と売り場の架け橋 となる化粧指導員を輩出し、より多くの方にメイクする楽しさを伝えていく活動を行っています。
このプロジェクトは、2017年にOSAJIディレクターの茂田が視覚障がい者のためのメイク技法「ブラインドメイク」に触れて、感動したことに端を発しています。当時衝撃を受けた茂田は、このメイク技法を美容関係者に紹介する場を設け、2020年には「日本ケアメイク協会」の副理事にも着任しています。
ブラインドメイクをより多くの人に知っていただくために、化粧品店といわれる販売店で教えられる仕組みをつくりたい。そう考えてこの活動を推進する経営企画の早川さんと、社内公募でプロジェクトメンバーとして参画したOSAJI蔵前店スタッフの杉山さんに話を聞きました。
― 今回のプロジェクトは、どのようにして立ち上がったのでしょうか?
昨年、日本ケアメイク協会が10周年を迎えるタイミングにあわせ、OSAJIがその第1号になれるようなことをできないかと日本ケアメイク協会の理事長である山岸さんにお話したところ、もうすごいスピード感でカリキュラムを組んでくださって、プロジェクトをが走り出しました。山岸さんの活動については、OSAJI Journalでもインタビューしていますので、ぜひあわせてご覧ください。(早川さん)
― 社内でメンバーを公募したんですね。
OSAJIの店舗にはメイクリーダーがいるので、全員参加にする方法もあり得ましたが、やっぱり「やりたい人がやるべきもの」というのが日東電化工業ヘルスケア事業部の中にはありますし、かつ、やりたい人もいると思っていました。実は社内でも若干心配の声もあったのですが、私自身はあまり懸念していませんでした。社内公募で「本当にやりたい!」という気持ちがあるスタッフだけでスタートたいと考えて、スタッフのみんなに声をかけたところ、案の定たくさんのスタッフが手を挙げてくれました。その16名のなかの一人が杉山さんです。(早川さん)
― 杉山さんは、このプロジェクトがスタートする前にもブラインドメイクのデモンストレーションを見る機会があったそうですね。
はい、そうんなんです。デモンストレーションでは、当事者が実際にメイクをしているのを初めて見たこともあり、「こんなふうにできるんだ!」と純粋に大きな発見がありました。私自身、鏡を見なくてもある程度お化粧ができますが、それは色や量がわかっているからなんですよね。見えない状態で化粧をすることについて、接客に携わる身としてどう説明できるのかなど、想像がついていませんでしたので、大きな学びがありました。そんな経緯もあって、今回の社内募集がスタートしたとき、すぐに興味があることを伝え、参加することになりました。
― 先ほど早川さんからカリキュラムについての話が出ましたが、それは研修や講習のような形で、社内向けに実施されたということですか?
丸一日かけた講習会を実施しました。ブラインドメイクとはどんなものかを知るための講義とともに、ケアメイク協会の山岸さんが当事者なので、実際のデモンストレーションも拝見しました。その後ファンデーションなど、自分自身で実際に塗っていく体験もありました。実際当事者さんにどういう化粧品を選んだほうがいいのか、ペアを組んで当事者側と指導員側に分かれて実践のワークも行ったほか、最後は試験もありました。
― 杉山さんは、講習を受けていかがでしたか?
私の場合は、参加者の中で唯一実践のデモを見るのが2回目だったと思うんですが、いざ自分がそれを説明することになると考えると、やっぱり見方がちょっと変わってきて。私たちが何気なく、「ここをこうして」などという時のあいまいなニュアンスを全部言語化して、それをしかも伝えていかなければならず、身振り手振りをどう言葉にしていくのが大変でした。
たとえば口紅を繰り出すにしても、どのくらい繰り出したか見えない中、どうすれば繰り出してほしい分量が伝わるんだろうというような、語彙力との闘いでしたね。当事者の理事長がいる中でやらせていただいているので、「ちょっと私が言うのでそれをやってみてもらえませんか」と理事長のところに行って、「これ伝わりますか、当事者の方に」みたいな感じで言ったら、このやり方だと伝わるけど、もしかしたら他のところが汚れたことに気付けないかもしれないとか、そういうことを教えてもらいました。
― 実践的な学びだったんですね。
これだったら伝わるかもしれないと思っても、別の切り口で問題が出てきたときに、自分たちだけじゃわからないことが発生するので、トライ・アンド・エラーが必要なんですよね。一方で、そういった当事者の方は気軽にお店に来るというモチベーションになれなかったりということもお伺いしました。エラーをしちゃうとその方に何かしらの不利益が出てしまうことも学び、気が引き締まる思いもありました。また、この伝え方は良さそうだったから、今度はアレンジして「こんなこともしてみたい」とか、どんな方が来ても大丈夫と思えるモチベーションを持てたのはとても良かったなと思います。
―最後に早川さんにも聞いてみたいのですが、ブラインドメイクについて学ぶことで、視覚障がい者以外のお客さんに向ける目というのもまた変わってくるようなこともあったのでしょうか?
そうですね、ブラインドメイクに限らない部分も大きいと感じています。みんなそれぞれいろんな影響をもらっていて、メイクをする楽しさ、言葉の力、日頃販売当たり前のように販売をしてるスタッフもまた新しく違う角度から知ることがあったと感じています。今よりもさらにお客さまと接することに対してもモチベーションが上がっていると思います。終わった後にアンケートをみんなに取って、やっぱりもう一つ上の段階の化粧訓練士だったりとか、実際当事者さんと触れ合うイベントをやりたいとか、そういう声も上がっています。
― いろいろな可能性がありそうですね!今後の活動も楽しみにしています。化粧品業界では、コスメコンシェルジュ、化粧品検定などの学びの制度がありますが、OSAJIでは今回のような独自の取り組みも積極的に行っています。