いい人材とは、性格がいい人のこと。 ~ITの力で世界をニコニコに! 10周 年を迎えた、株式会社ニコシス社長・ 窪田大輔の思い。【後編】
楽しくやるか、メチャクチャ儲けるか。
――窪田さんの「面白さ」へのこだわりは、きちんと利益まで考えているところが特徴的で す。
窪田 エンジニアとして、「メチャクチャ面白いよね」って仕事だけをやりたいんですよ ね。おいしいところをやって、事業会社さんに戻して、きちんと運用できる体制を作って、 お客さんご自身でやっていただけるようにする。
特定サービスへの批判ではないんですけど、エンジニアはサービスやプロダクトを持ってる 会社で働きたい人が多いですよね。でも、そんなにみんなオークション好きだっけ? C to Cでモノを売るのが好きだっけ? 労務管理や人事がそんなに好きだっけ? と思ったりし ます。相当好きな人じゃないと続かない気がするんですよね。
実際、そういう会社に行ってメチャクチャ文句言ってるエンジニアいますしね。家に帰れな いし、給料は安いしって。サービス提供している会社ってだいたいそうなのに、なんでみん な行きたがるのかなと。
――社会貢献として素晴らしいけれども、ニコシスでやりたいとは思わないと。
窪田 そうですね。サービスの研究開発の依頼は来ますけど、リリースするまではいいんで すよね。でも、保守はうまく動くようにデータ移行をしなきゃいけなかったり大変だし、そ ういう作業はなるべくやりたくなくて。
例えば弊社はドローンのサービスをかなり手掛けていますが、難しい飛行処理計算とか新し いアルゴリズムを考えるのがエンジニアとしての醍醐味だと思うんですね。ボロボロのシス テムを新しいシステムに入れ替えるために一生懸命データ移行を頑張るとか、全然楽しくな い(笑)。それは別の会社にやってもらえばいいじゃん、って思います。
――徹底していますね(笑)。
窪田 ブロックチェーンの技術はやりたいけど、「ブロックチェーンサービスをやっていま す」って会社に入るとつまらないことをたくさんやらされるんですよね。例えば、24時か らサービスを止めるから深夜対応してねとか。
もしやりたくないことをどうしてもやる場合は、すごい高額を提示します。相場の倍ぐらい を提示して、「この金額をもらえるなら」と。実際、それで社員にお金が回るならいいかな と。
楽しいか、メチャクチャ儲けるか。それならニコニコできますよね。
国内にとどまらず、拠点を増やしたい
――10周年を迎えた今後、ニコシスはどういう変化をしていくのでしょうか?
窪田 グローバルカンパニーへの転身という部分もそうですが、昨日も役員と話していて 思ったのはハンディキャップを抱えた人が働きやすい職場環境づくりですね。それが実現で きれば、良い会社なのかなと。
今は大阪と東京で活動していますが、今後は拠点をどんどん増やしていきたいと思っていま す。例えば、アメリカや香港にオフィスがあってもいい。場所に本当にこだわらず、いろい ろな場所で皆が仕事をしてくれたらと思っています。
――名刺やロゴマークを変更したのも、そうしたグローバル色やダイバーシティを意識され たものだったんですね?
窪田 そうですね。「ITで世界をニコニコに」と言っている割に、これまで日本しかニコニ コできていなかったと思うんです。ちゃんと世界をニコニコさせよう、それを再認識しよう という狙いですね。
ロゴのカラーホイールについては2030年向けに仕込もうと思っていたんですけど、まあラ イツ的にアウトなので(苦笑)。社会問題についても、まずその存在を認識して、自分たち の活動をただ稼ぐだけでなく社会にとって肯定的な意味を持つものに変えていく。今後の 10年間は、そういう方向性でやっていきたいと思っています。
――SDGsへの準拠やリクルート施策を含め、そちらの方向に進んでいくと。
窪田 あとは、NPOサポートセンターを経由したいですね。素人が中途半端な支援をするよりも、NPO団体のことを理解した人をサポートする方がいい。継続的な支援をする上で、今後とも一緒にやっていけたらと思っています。
性格がいい=そいつのために、何かしてあげたい
――3回に渡ってお送りしたインタビューも、いよいよまとめになります。御社にとって、 「良い人材」はどう定義されていますか?
窪田 やっぱり、まずは性格がいい人ですよね。仕事をするときには、何をするかよりも誰 とするかが大事です。
性格がいい、イコール「そいつのために何かしてあげたい」と思える人です。そこに国籍は 関係ありません。
例えば、いま採用しようとしているインド人は全くIT経験がないのですが、8カ月で日本語 をマスターしているんです。メチャクチャ頭がいいし、性格もすごくいいから、この業界に もサクッと馴染めると思います。
――すごいですね。「性格の良さ」を因数分解すると、どうなりますかね?
窪田 人の気持ちがわかり、痛みがわかることですね。だから、人を傷つけない。相手が 困っていると思ったら、手を差し伸べる。当たり前のことを、当たり前にできる人。そうい う人は、人に愛されると思うんですよね。
――いいですね。そこが満たされていれば、能力は後から付いてくると。
窪田 そうですね。やる気があり、そういう人の良さがあれば、僕たちが能力を高める支援 はできるので。チームで動いていますからね。
最近はあまり活用していないですが、ストレングスファインダーを活用して特性を見て「こ の人は、このチームが合うな」と参考にしたり。どの人にどういう教育をさせるか、という ところも適性を見ています。
――ということは、御社にいる人材は性格のいい人材ばかりと。
窪田 まあ(笑)。とはいえ、全部うまくいってるわけじゃないですよ。性格的に難がある 人を採用したこともあります。
カルチャーフィットと表現しますが、弊社には合わないけど他社で幸せになれるならそれで いいと思っています。なので、採用と退職のプロセスはすごく大事にしていますね。
――採用プロセスを大切にする会社は多いですが、退職プロセスも大事だと。
窪田 人って、生きていればまたどこかで交わることもあると思うんです。だから、ウチは
退職のことを「卒業」って呼んでいます。新年会とかたまにあるイベントのときは、「最近
元気? 顔だしてよ」って連絡したり。
別にどんな仕事をしていたっていいんですけど、一時期でも同じ釜の飯を食った仲間じゃな
いですか。別の会社に行っても、応援する気持ちは持っていたいと思うんです。なので、採
用だけでなく退職はとても大事にしていますね。
よく、退職した人を村八分にする会社もありますよね。ウチは、そうしたことは本意ではあ
りません。お互い、「絶対にこいつの世話になるものか」って思うこともあるかもしれな
い。でも、実際は世話になるんですよ、狭い業界なので(笑)。
だから、人のことを悪く言ったりは絶対にしない。後ろ指をさされるようなことはしない
で、子どもから「お父さんの背中はかっこいい」と言われるように。会社としても個人とし
ても、そういう生き方をしていきたいですね。
インタビューを終えて(編集後記)
インタビュアーの澤山モッツァレラです。最後まで記事をお読みいただき、ありがとうござ
いました。
率直に、器の大きさを感じるインタビューでした。窪田社長は、1980年5月23日生まれの39 歳。インタビュアーの私は一足早く41歳になる、ほぼ同世代です。
本名が大輔という共通点もありますが(笑)、フリーランスとして四苦八苦する自分に比 べ、窪田社長はすでに30名近い社員を雇用し、100億円を目指す企業を創り、社員に還元 し、社会に還元しようというフェーズに入っている。
人材を使い捨てにする企業は未だ多く、そうした企業は人材を勝手に生えてきた植物のよう な感覚でいるのでしょう。まして、社会へ還元するなど思いもしていないはずです。ニコシ スのように、「還元する」という姿勢を全面に出している会社は、貴重だと思います。
同時に、何度も窪田社長が強調していましたが、その姿勢は「稼ぐ」チカラなしには成り立 たない。稼いで、社会に還元する。SDGs云々でなく、持続可能な社会を作るうえで重要な 姿勢だと思います。ニコシス社の、窪田社長の今後のさらなる活躍を祈念しています。
最後に、チームアップから取材セットアップに至るまですべてのアレンジを整え、到着の遅
い原稿を辛抱強く待ってくださった石山城プランニングオフィス株式会社の石山城さんに最
大級の謝辞をお送りします。
<了>