こんにちは、ナディアのプランナー、アートディレクターの武市です。
ナディアはWeb制作をメインとする会社ですが、最近ではもっと根底の部分から、クライアント様のブランディングについてご相談いただく機会が増えてきました。その流れに比例し、私自身、ロゴデザインに携わらせていただく機会が急激に増えています。
今回は弊社のお客様であるアクロシステム様にご了承いただき、実際に行ったロゴ開発プロセスをご紹介させていただけることになりました。
ロゴデザインのプロセスは、プロジェクトの規模やスケジュールによっても変化しますが、今回は制作期間1ヶ月のプロジェクトのフローをご紹介いたします。
さっそく次項より、順を追ってご説明いたします。
− 前提 −
アクロシステム様はシステムインテグレーションをソリューションに価値提供を行うBtoB企業です。現在レガシーなイメージになってしまっている企業ロゴに課題を感じ、企業イメージをもっと正確に、好意的に伝えられるデザインにしたいという思いからご相談いただきました。
STEP1.ヒアリング・ディスカッション
ロゴ開発は、クライアント様のことを知るところから始まります。
今回のキックオフミーティングでは、大きく分けて3つの項目を確認させていただきました。
① 今回のロゴ開発におけるゴールイメージ
② 企業(ブランド)についての情報(ビジョン・提供価値・強み等)のヒアリング
③ デザインイメージのすり合わせ
ロゴの開発において<②企業やブランドの情報のヒアリング>が必須なのはもちろんですが、それと同じくらい重要なのが、<①今回のロゴ開発におけるゴールイメージ>です。ここが不明瞭のままデザインを提案してしまうと、個人の好き嫌いしか判断軸が無くなってしまい、プロジェクトにとって有効な判断がしにくくなってしまいます。
今回は、「会社の特色である、お客様の要望にフレキシブルに対応できる企業」「社員一人ひとりを大切にしている企業」というゴールイメージを共有いただき、後ほど見返せるように資料として整理しておくことにしました。こうすることで、できたロゴデザインに対して、「フレキシブルなイメージがどれくらい感じられるか?」「社員一人ひとりを大切にしてくれそうに感じられるか?」といったチーム共通の視点で評価ができるようになります。
またクライアント様とは、“言葉”のすり合わせだけでなく、事例を確認しながら<③デザインイメージのすり合わせ>も同時に行うようにしています。
これを確認する2つの目的は、初回の提案がお客様のイメージに大幅に反するものになることを避けるため。そして、ゴールに対して有効なデザインイメージはどのようなものか、お客様との感覚をすり合わせるためです。
私がよく使う手法としては、ミーティング前に事前情報からある程度リファレンス(参考資料)を集めておき、それらを4象限にまとめ、どの方向性が今回のゴールに対して有効であるか?をお客さまと一緒に話し合うという方法です。
今回は、I T企業らしい、かつ人を大切に考える、やさしさを感じられるデザインという方向性が定まりました。
STEP2.開発ルートの整理
ロゴ開発に必要な情報とゴールイメージを確認できたら、「開発ルート」の設定を行います。
デザインを始める前に、あらかじめいくつかの開発ルート(拠り所)を作っておくことで、一つの方向に執着することと、趣旨から大きくブレることを同時に防ぎ、確度の高いアイデア開発を行うことができます。
今回は、ヒアリングさせていただいた内容や、自分でリサーチした情報から、次のような3つの開発ルートを設定しました。
STEP3.ラフデザイン制作
このステップでは、前項で設定した開発ルートを軸に発想を膨らませ、アイデアをスケッチしていきます。
今回は頭文字のAもしくはaをモチーフに、開発ルートで設定した内容を表現できるカタチを模索していきました。
STEP4.デザインの具現化とネガティブチェック
ラフデザインを出し切った段階で、実際にデザインを起こしていきます。
アイデアを選ぶ指標は、「どれくらい今回のゴールを達成できそうか?」という点に加えて、「その企業らしさをどれくらい包括できているか?」「意匠として洗練されているか?」といったデザイナーとしての目線でも評価していきます。
そのような目線で選りすぐったアイデアを、提案デザインに具現化していきますが、このタイミングでネガティブチェックも同時に行っていきます。できたデザインに対して、類似デザインがないか、ネガティブなイメージがないかを客観的に調査します。
今回はそのような過程を経て、3つのアイデアを選び、提案しました。
STEP5.デザインの精緻化
デザインが決まったら、精緻化作業を行います。 今回はフレキシブルな印象を持ちながら、最も意味が包括できているという点で評価いただき、A案をベースに検証していくことになりました。
フォント、色、サイズ等の項目を試験し、実際に比較しながら検討を重ね、洗練させていきます。地道な作業ですが、決まったデザイン案をより効果的に世に出すために、重要なプロセスになります。
STEP6.イメージボード制作
こちらが完成したロゴとイメージボードです。
最後にロゴから拡張された世界観をイメージボードとして可視化しておくことで、スムーズにwebデザインの方向性を共有することができました。
終わりに
今回は1ヶ月と限られたロゴ制作期間でしたが、一つ一つのステップを丁寧に踏むことで、精度の高い提案ができたケースでした。お客様の状況や課題はそれぞれ異なりますが、いずれにしても、プロジェクトのゴールを決めておく、アイデアを考える軸を決めておく、といった整理の作業を開発フローに組み込むことで、その後の余計な迷いをなくし、角度を絞った中でより深い思考が可能になると思います。
自分もまだまだ勉強中ですが、今後も工夫や発見を積み重ねてより良いプロセスの確立に努めたいと思います。
今回事例紹介を快くご承諾いただいたアクロシステム様にこの場を借りてお礼申し上げます。