女性向けのラブグッズの企画・開発・販売を一気通貫で行うナチュラルプランツ。セクシャルヘルスケア領域のパイオニアとして走りつづけられる秘密は、マーケティング思考の強さにあります。
特に、「女性向けビジネス」であるからこそ、マーケティング的に物事を捉え分析することは非常に重要。今回は、ナチュラルプランツのマーケター2人に、ニッチ領域のマーケティングの極意を教えてもらいました。
目次
- 女性は「ホンネ」と「タテマエ」を使い分ける
- なぜセクシャルヘルスケアのマーケティングは面白いのか
- セクシャルヘルスケアの世界でマーケティングをやりたい方へ
女性は「ホンネ」と「タテマエ」を使い分ける
――女性向けビジネスの見せ方は近年多様になり、マーケターとしてのあり方・考え方は会社によって様々です。ナチュラルプランツは、いわゆるセクシャルな領域に切り込んだ商品を取り扱う『LOVECOSME』を運営していますが、お二人はマーケターとしてセクシャルヘルスケア用品のマーケティングをどのように考えていますか?
Hさん:「あえて、従来のイメージの“セクシャルなもの”としてマーケティングをしないように気をつけています。私達がやっているのはあくまでも、セクシャルヘルスケア。アダルト領域や他の化粧品の領域とは異なります。例えば、従来のアダルト商品は黒字に赤文字で性的な煽り文句を書く、というようなものが多かったのですが、『LOVECOSME』ではパステルカラーや柔らかい印象の言葉を使っています。クリエイティブにもこだわっていて、生身の人間の写真ではあまりにも直接的なのでイラストを使っています。その他にも、心と体、感情すべてを連動させてサポート・ケアしていくものがセクシャルヘルスケア用品なのだということを常に念頭に置いています」
Sさん:「私は新卒でナチュラルプランツに入社したので他社や他領域との違いはあまりわからないのですが……特に『LOVECOSME』では、人の本音はどこにあるんだろうと考えながらマーケティングをすることが多いです。まだまだ世の中の風潮として、女性の立場でセクシャル系のものへの興味や、セックスが上手になりたいというニーズは表に出てこないですよね。だからこそ、数値を見てニーズを見極めることが多いです。実際マーケターとして数字を見ていると、自分が感じているより大きな市場があることに気づくことも多々あります」
――女性向け市場におけるマーケティングで、難しいと感じる点があれば教えてください。対女性、さらにニッチな領域でマーケティングをしていくことに特有の着眼すべき点はなんですか?
Sさん:「女性には建前と本音があります。SNS上の匿名のアカウントでは、みんな本音を口にしている……かと思いきや、建前の発言が意外と多かったりするんです。SNSのトレンドと、実際の検索ニーズがかけ離れていることもあります。これはセクシャルヘルスケアという領域だからこそ、というのもあるかもしれませんが、本音と建前を上手に見極めるのも大切です。そこを間違えると、ブランディングとして一見綺麗だけれど売れない、という商品を送り出してしまうこともあります」
Hさん:「そうですね。女性の感情は、時々のトレンドや政治状況で異なることもあります。これはマーケティングの定石ですが、男性はものを買うときスペックを見ます。逆に女性は、スペックの情報にはほとんど関心を示しません。どちらかというと、この商品を使うことによって自分(消費者)がどうなるか、というストーリーを重視するんです」
Sさん:「今、広告とかマーケティングの相手は世界的に見ても女性相手のものが80%を超えているそうです。女性が欲しい情報は多いんですよね。これを買うことによって自分がどう変化するのか、ライフスタイルがどう変わるのか、そういう情報を大切に見比べて検討します。その点が難しいポイントだと思います」
――コンテンツ作成、LP作成、クリエイティブ作成など、マーケティングに係る範囲は多いですが、どのようなプロセスでマーケティングの方針を組み立てていますか?
Hさん:「ナチュラルプランツにはプランニングシートというものがあります。会社全体としてマーケティング的な思考を大切にしているので、何か動き出す時に必ず「アイディア・ニーズ・シーズ」の3つや、STP分析、コンセプトなどを整理します。一人ひとつの譲歩が結合して矛盾がないか、ニーズや提供できるものが現実的かを検討してから走り出すんです。
一方、マーケティング活動で重視したいスピード感ももちろん大切です。すべてをプランニングシートで整理しているとスピードが落ちてしまうので、整理が終わった段階でメンバーに業務を分解して渡していきます。ナチュラルプランツでは、部長・課長レイヤーになれば必ずこのプランニングシートを使っているんです」
Sさん:「リーダー層以上は基本の方向性やプランニングをしっかりと組み立て、メンバー層はフレームワークとして仕事を進めていくことが多いですよね。
コンテンツを作る上で大切にしているのは、コンテンツやページの切り口です。『LOVECOSME』独自のポジションが取れるか、ブランドイメージがぶれないか、切り口が純粋に面白いかどうかは必ず気にしています。社内でラダリングというのですが、文章の構成や話の流れがつながっているかどうかも考えますね。
例えば、情報を提供するようなコンテンツで、読者の納得感と購買に向けた目的・意欲づけがつながらないと離脱してしまうんです。文章の構成、ページや文章、あらゆる面で整合性がとれて流れが綺麗であることは常に意識します」
なぜセクシャルヘルスケアのマーケティングは面白いのか
――そもそもお二人がセクシャルヘルスケアという領域に興味を持たれたのはなぜですか?
Sさん:「新卒でナチュラルプランツに入社したのは十年前、ナチュラルプランツが中国・上海支社を立ち上げるタイミングでした。もともと化粧品業界に興味があり、いろいろな会社の面接を受けていました。ナチュラルプランツと縁があり、最初の面接で“シナヤカウォッシュ”という商品の存在を知りました」
■シナヤカウォッシュ
アンダーヘアのボサボサ、モジャモジャ、チクチクをふんわりとしなやかで優しい質感に整えるトリートメントです。
ショーツからはみ出さないように、収まりのいいアンダーヘアに整えます。
Sさん:「アンダーヘア用のトリートメント、というのがとても新鮮で、面白く感じました。ニッチなブランドで仕事をしていくことも、いろいろな事に触れられそうで楽しそうだと思ったのがきっかけです。あとは……就職先で悩んだ時に、占い師さんに相談したら“ナチュラルプランツに行きなさい”と言われたのもあって、入社を決めました(笑)」
Hさん:「私は新卒から広告系の仕事をしています。紙媒体、WEB系の代理店からキャリアを初めて、そこから大企業でゲームづくりに携わっていました。その時に、大人向けのゲームに携わることがあり、女性向けのセクシャルコンテンツは男性向けのものと全然違うな、と実感したんです。男性向けのセクシャルは性的にどれほど興奮できるか、が重視されている一方で、女性向けのセクシャルコンテンツは心と体が連動して、精神的な満足感も重視すべきだと学んだのが大きい理由です。
私が入社した当時、ナチュラルプランツには男性社員も少なかったんです。女性が考えるセクシャルは、その先に異性の目があるのも事実です。私は入社当時、ナチュラルプランツの数少ない男性メンバーだったので、何かしら男性からの目線も役に立てるのではないかと思って入社しました」
――ナチュラルプランツ入社以降、お二人が携わった商品の中で印象に残っているものはありますか?
Sさん:「いろいろありますが、さくらの恋猫は印象に残っています。女性向けのラブグッズで、制作にゼロから携わったのでとても思い入れが深いですね。映像作品や音声のコンテンツと連動する先進的な商品です。自分でも思ったより女性からのニーズがあり、実際にユーザーさんから素敵な感想をいただくことも多かったので、とても嬉しかったのを覚えています。さくらの恋猫で、自分の夢が実現した、理想通りだった、という声を聞けたときは、ナチュラルプランツのメンバーとして、商品を作り、届けられたことに喜びを感じました」
Hさん:「僕はリビドーロゼの販促のために作った“リビドーニャン”です」
Hさん:「ナチュラルプランツの商品に、リビドーロゼという香水があります。今までのターゲット層だけでなく他の層にリーチするため、リビドーロゼのリフレーミング商品を売ろう、という企画が持ち上がりました。
PRのため、インスタグラムで色々な方にDMを送り続けて、実はその中で実際にリビドーニャンを使ってくれた人が動画をつくってアップロードしてくれたんです。それが半年くらいで40万回ほど再生され、大きなPRに繋がりました。……リビドーニャン制作がきっかけで、ずっと犬派だったのですが猫派になってしまったくらいです」
――ナチュラルプランツのマーケティングにおいて、ここが凄いと感じるポイントがあれば教えてください。
Hさん:「スピード感と発想力は眼を見張るものがあります。社内に面白いことを考えている人がとても多いです。女性起点のアイディアも多い会社なので、思いもよらなかったアイディアに出会える機会が多いことと、そこに事業会社だからこそのスピードを感じるのはいい点ですね」
Sさん:「新しいツールや技術、広告媒体へのチャレンジが当たり前なのが魅力だと感じます。ナチュラルプランツは“普通の”商品を扱わないので、売り出し方には頭を使います。マーケターとして、いろいろチャレンジしたいひとにはすごくいい環境です」
Hさん:「あとは、マーケティング予算は入社当初驚きました。広告代理店にいた経験で大手企業の広告予算なども目にしてきたんですが……実際ナチュラルプランツの予算を見て、“マジか……!”と驚いたのを覚えています。やはりマーケティングにしっかりお金を使い、思考していこうという企業体制だと感じますね」
Sさん:「ナチュラルプランツでは、全てのポジションにマーケティングの視点が入っているので、特定の部署・チームが関わるのではなく、社員全員がマーケターであるという意識が強いですよね」
Hさん:「社内の言葉として、マーケティングはハッピーの交換である、という言い方をします。広告やSEO対策は勿論マーケティングですが、マーチャンダイジングや商品企画を行うのもマーケティングです。お客様とハッピーの交換をするすべての活動がマーケティングです」
セクシャルヘルスケアの世界でマーケティングをやりたい方へ
――今セクシャルヘルスケアの領域に携わっている中で感じる、業界的な面白さや将来性についてお聞かせください。
Hさん:「個人的な意見ですが、セクシャルヘルスケアという領域は、これからどんどん形を変え広げていかないといけないものだと思っています。『LOVECOSME』が使い始めて徐々に浸透してきたセクシャルヘルスケアという言葉ですが、今は新規参入企業も増えてきています。セクシャルウェルネス、フェムテックなど様々な領域に広げ、高度化していくことに面白さや将来性を感じています。
業界を切り拓く立場にいることで、今までの常識を壊して新しいものを作っていく思考回路や、調査する力、マーケターとしての先見の明は身についていくと思います」
Sさん:「今まで、セクシャルな領域は女性と男性がいて、当たり前に恋愛や結婚をゴールとして見据えていくものでした。しかし現代では、一人ひとり、どんな関係性であっても幸せである、ということをブランドとして重視しています。セクシャルな領域は、人類がいる限りニーズがあります。社会も変わり、働く女性も増え、セクシャルヘルスケアに関するニーズも刻々と変化しているのは面白さだと思います。全く新しい商品を、新しい技術を用いて作り届けていく会社がナチュラルプランツです。自分で考えて、自分で仮説を立て、自分で広告や施策を考え、実際の数値に向き合うことを通じて、大きな成長機会が得られると思います」
――マーケターとしてではなく、働く一個人として、お二人が思うナチュラルプランツのいいところはどこですか?
Hさん:「メンバーの人柄が凄くいいです。よく、女性が多い会社ということで派閥争いなどをイメージされるんですが、全くそういうのはありません。社長も、経営者として厳しいこともありますが、基本的にはすごくおおらかで優しい人です。過ごしやすさ、居心地の良さと同時に、結果を追い求めるプロ意識の高さを感じます」
Sさん:「一人ひとりが、何をやりたいという明確なアイディアや思いを持っているところが好きです。10年この会社にいて、年々変わる目標や状況についていくのも、変化が多くて楽しいと感じます。新しいことへのチャレンジ精神やポジティブなスタンスに魅力を感じています」
――では、これからセクシャルヘルスケア領域のマーケティングに関わる人に、なにかアドバイスをお願いします。どのような心得が必要ですか?
Sさん:「一つは、セクシャルヘルスケアや事業ビジョンにかける想いです。でも、マーケティングをする上では想いが強いというだけでは足りないことが多々あります。数値面の緻密さ、ロジックも求められるので、そこのバランス感覚を養っていくと良いものが生み出せます。特にナチュラルプランツは、時間管理を徹底することで効率を上げていこうという考え方の会社です。スピーディーさも忘れずに、シャープな一面を持っていくことが重要です」
Hさん:「ナチュラルプランツには、やりたいことを邪魔する人はいません。やりたいことを実現するまで、本気で頑張れる環境です。調査して、実現可能性を探って、プレゼンして、責任者になって……実行までの過程に真摯に、真面目に、真剣に、熱意を持って臨めれば、やりたいことがきっとできます」