目次
ー前編
- プロフィール
- 凸版印刷がベンチャーに出資?
- 新規事業「デリくる」とは
ー後編
- 大企業とスタートアップに共通して求められる能力
- これからの世の中に必要とされる人材
- 企業選びの大切な「軸」
凸版印刷とメトロエンジンが2年かけて開発した新規事業「デリくる」。前編では共同開発に至った経緯やお互いの印象についてお話を伺いました。後編では、大企業・スタートアップに必要な能力やこれから求められる人材についてお話を伺っていきます。
大企業とスタートアップに共通して求められる能力
前回のお話を聞いて、お互いがリスペクトしあっているからこそ今のシナジーが生まれているんだと感じました。会社の規模に関係なく、共通して必要になる能力というのはあるんでしょうか?
小阪|ビジネスを立ち上げるときに共通しているのは関係者を味方に引き込む力でしょうか。これは大企業の方が顕著かもしれないですけど、法務とか事業部長とか開発部門とか、色んなステークホルダーがいて、その人たちを漏れなく味方につけていかないといけない。そうしないと、どこかで猛烈に反発する人や部署が出てきてとん挫してしまいます。
とはいえ、彼らも部署としてこういうリスクがあるというのは主張しないといけないので、落としどころをうまく決められるとか、同じことをやっててもなんとなく好かれるような人がうまくいくかなと思います。スタートアップでも社内でその力を発揮する機会はやっぱりあります。スタートアップはリソースが大企業と比べて限られているので、専門家が社内にいないなんていうこともあります。そうすると、社内だけでなく社外の色んな人を味方に付けながらチームとしてやっていかないといけない、そういう時に単純に金銭的な利害で繋がっている人よりも気にいられて一緒に物事を進めていきましょうっていう関係性を作れる人のほうが圧倒的に強い気がします。
吉田|小阪さんのお話はおっしゃる通りです。ただ、大企業でも部署とかやるところによって全然違ったりすると思うので、これっていう能力はむずかしいですね。「やり切る」みたいなメンタルの部分は一緒だと思うんですが、スキルとして共通する特出すべきなにか、みたいなのはないんじゃないかと。普通のビジネススキルがあれば。
小阪|どっちかでめちゃくちゃ成功するけどもう片方では全然うまくいかない人ってあまりいなさそうな気がしますね。
大企業で活躍している人がスタートアップ企業にいっても同じように活躍できるんでしょうか?
小阪|どちらかというと大企業でやることの方が難易度は高い気がします、僕は。さっきのステークホルダーを味方につけるという話と共通しますが、大企業は大人力が求められるというか。スタートアップ企業で活躍できても、大企業で同じようにいくとは限らないので、モチベーションが保てなくなる人はいると思います。
逆に、大企業で人からの指示を受けながら働いていた人は、スタートアップ企業ではうまくいかないこともあるかもしれません。ですが大企業でも自分で考えながら動いていた人は、スタートアップ企業でも上手くいくのではないでしょうか。
吉田|野球選手に例えるなら、大企業は縦割り社会なので、バッティングなど何かに秀でた力があれば良く、それぞれのエキスパートになることが求められます。一方でスタートアップ企業では、1人が攻撃も守備も行い、さらにグランド整備やスカウトまでする…というイメージですね。もちろんそうした人が多いということで、全員がそうだというわけではありませんが。
これからの世の中に必要とされる人材
時代の変化とともに企業が求める人材も変わってくるのではないかと思っています。これから必要とされる人材について、それぞれの立場から教えて頂けますか?
吉田|これから変化をしていかないといけない企業は多いですが、とはいえ足元のお金は作っていかないといけないです。なので、「新しく作る」ところと「既存を守って伸ばす」の二個の文脈が特に大企業にはあります。「既存を守って伸ばす」のところでいうと、先ほどの野球の話でたとえるとDHや2番バッターのような、組織を理解した上で自分の能力を活かし、期待されている仕事をきちんと全うする人材が必要とされると思います。今あるクライアントさんをしっかり維持してさらにアップセルできる方です。
一方で、彼らが作ってくれたキャッシュで新たな事業を作っていくには、大企業でもスタートアップに近しい人材が必要になってくると思います。大人力を発揮しながら周りを巻き込んで新しいものを作っていくスタートアップマインドを持った方がすごく重要です。必要とされる人材要件ははっきりわかれているものの、これからは両方の人材が必要だと思います。弊社の場合は部署毎に必要な人材の要件があるので全社としてこれというのは言えないですが、私たちがいるCVC事業部に関しては完全に後者です。
日々スタートアップの方と対峙して仕事を進めていくので、いざとなれば自分もスタートアップに出向いきます!みたいなマインドを持った人を採用していくべきなんじゃないかと思ってます。
スタートアップ企業の目線ではいかがでしょうか?
小阪|アンラーニングすることができる人かなと思います。スタートアップが事業展開している領域って変化が大きいんですよね。お客様の業界自体の変化が大きかったり、自分達の会社もフェーズがどんどん変わっていくので、今までの成功体験が通じないことも結構あります。過去の成功体験にしがみつくのではなくて、今自分が直面している課題を世の中ではどうやって解決しているのかをリサーチして試してみるとか、そういうことができる人がパフォーマンスを出している気がします。
吉田|私がスタートアップ企業にいた頃、「大企業に縛られたくないからスタートアップ企業を選ぶ」と言っていた人は上手くいっていなかった印象があります。もちろん自由や裁量はありますが、そういう考え方ではうまくいかないことも多いですよね。
小阪|それはあるかもしれないです。大企業に比べたらスタートアップは、確かにしがらみは少ないですけど、間に挟まれて選択しないといけないことは普通にありますし、大企業でも泥臭い部分はありますし。縛られたくないからスタートアップにいく、というマインドではなくて、「こういうことがやりたいからスタートアップ企業に行きたい」という人のほうが、安心して迎え入れられる気がします。
企業選びの大切な「軸」
これから就職・転職をする人で、会社選びに悩ませている方も多いのではないかと思います。お二人が考える、会社を選ぶ時に大切なことを教えてください。
吉田|私が大企業からスタートアップ企業に転職した時の理由の1つは、成長曲線の角度が急だということです。大企業では一定の年数が経たないと昇進できないということがありますが、スタートアップ企業ではすぐに部長になる、あるいは部下を持つことができるので、視座が上がっていきます。そして視座が高いほどきちんとした意思決定ができるので、どんどんビジネスに役立っていくんです。私はそこに危機感を持っていたので、スタートアップ企業に転職することを選びました。メトロエンジンさんでも優秀な人はどんどん昇格していくので、私と同じように危機感を持っている人には良いのではないでしょうか。
小阪|スタートアップでは特に、優秀な人に仕事を任せていかないと組織が回らなくなるというのもあります。入社して2、3年の人がプロジェクトの中心になって重要な仕事を進める、というのはメトロエンジンではよくあることなのですが大企業では少ない例だと思います。
そもそも弊社は年齢で上下関係が決まることがないので、だからこそ20代の人でも役職が付いたり、仕事のレベルが上がったりしていきます。
吉田|逆に、「このスキルだけを伸ばしたい」というのであれば大企業はすごくいい環境だと思います。とはいえ社会人2・3年目の方だと、事業を作るという経験はあまりしていないと思います。CVC事業はスタートアップ企業の事業理解や相手への尊重などが必要なので、事業づくりに取り組んだことがないと難しいかもしれません。はじめはスタートアップ企業で事業づくりを経験し、その後大企業でCVC事業や新規事業にチャレンジするという流れもいいかもしれません。
小阪|大企業でこそ輝く人もいるし、スタートアップ企業でないと輝けない人もいると思います。自分でやりたいことをどんどん決めて、ケガしながらでも進むのが好きな人にはスタートアップ企業が合っているのではないでしょうか。ケガをしながら進むのではなく、周りと力を合わせながら、最短ルートを知った上で進んでいきたい人は大企業が向いているかもしれませんね。
貴重なお話をありがとうございました。最後にこのインタビュー記事を見ている方へメッセージをお願いします。
吉田|凸版印刷のCVC事業は立ち上がって6年目で、既に50社以上のスタートアップ企業に出資活動を行っています。出資先と弊社の両社で新しい事業を作っていくために日々MTGを重ねています。
なので、「印刷」という名前がついていますがそれに捉われない新しい事業を作っていっているので、やってみたいという方がいれば是非ご連絡を頂ければと思います。
小阪|ずっと水面下で開発をしていたフードデリバリー業界向けのサービスとレンタカー業界向けのサービスをここ最近たて続けに公表することができました。ようやく「ダイナミックプライシングを色んな業界に展開している会社ですよ」と胸を張って言えるようになりました。
実は、まだ他にも水面下で進めていて公表できていないものがあります。どんどん色んな業界にダイナミックプライシングのサービスを提供していこうとしている、すごく面白いフェーズだと思います。気になった方は是非カジュアル面談しましょう。