株式会社マージェリックの高見澤です。
マージェリックでは全事業の事業戦略を担当しています。
今回はどうして転職したのか、どのようにマージェリックという会社と出会ったのかというお話です。
前回は楽天に就職し、職業エンジニアとしての生活が始まったことをお話しました。
楽天市場という成長し続けるサービスを持っているにも関わらず、新規事業への挑戦を続ける企業。
高い志しや熱い思いを持っている方にはその気持ちをぶつけるに相応しい企業だと思います。
けれど、サービスや会社が成長を続ける一方で、違和感を持ち始めた自分がいました。
所属していたチームでは異動や休職、起業などの理由でリーダー/エンジニアリーダーの変更がかなり多かったと記憶しています。
そんな中、なし崩し的にエンジニアリーダーのような業務をこなす毎日がやってきました。確か入社から1、2年の話です。
もちろん先輩のエンジニアはいましたが、それまではエンジニア採用というものをやっていなかったので、エンジニアリングを学んだバックグラウンドを持っていたのは私だけでした。
また、長く楽天市場でエンジニアとして働いている方は多くいましたが、そういった方々の大半は業務委託。業務範囲が楽天社員である私とはもちろん異なります。
つまり、実際に詳細設計やコーディングを行うのは業務委託の方々で、社員である私は案件のスケジュールやアサインをプロデューサーと相談したり、コードレビュー、リリースオペレーション、サービス運用に関わる本番サーバー上での作業が主な業務でした。
当然、私自身がコーディングして新しい機能を作るような作業は減っていきました。
大規模なサービスを運用されたことのある方には共感していただけるんじゃないかなと思うのですが、大きなサービスでは改善は見えづらく、一方、ミスや改悪はすぐに分かります。
安定稼働は当たり前で、売上が落ちたり、サービス断が発生しようものなら大目玉。
他部署のサービスがコストカットや売上改善で月間数百万円の伸びで社内賞を受賞していたこともありましたが、それを冷めた気持ちで眺めていた記憶があります。
誤解がないようにお伝えしますが、楽天での経験は私にとって非常に貴重なものだったことは間違いありません。
サービスを運用するにあたってどうすれば安定した環境を構築できるか、他人のソースコードを読むにあたって効率的に理解するにはどうするべきか、タスクのアサインやスケジューリングに対する感覚など、業務をこなす上で必要なスキルを身につけられました。
また、他部署との連携や事業要望をヒアリングするにあたって、前提知識の揃っていない相手とのコミュニケーション(と交渉術のようなもの)も経験することができました。
しかし、「インターネットが来たんだ!」と喜ぶ姿からは程遠く感じられました。
クライアントの声を直接聞くこともなく、誰かの決めた計画に則ってただ業務をこなす、それは私の憧れた姿ではありません。
新しいことに挑戦し、不可能を実現し、喜びや新しい価値を届ける仕組みを作り上げる、その姿こそが私の望んだなりたい自分、憧れたエンジニアの姿なのです。
そして、私は違う環境を目指すことにしました。
転職を決意した私は、エージェントと会ったり、すでに転職した友人に会社を紹介してもらったり、それこそWantedlyで会社を探したりしました。
活動量は就活をしていたころと比べると雲泥の差でした。
もちろん探した会社は多くても20人規模くらいのスタートアップ起業ばかりです。
その当時はスタートアップに対する憧れや理想が強かったので、私は魅了されるばかりだったことを覚えています。
いまなら分かりますがスタートアップ企業で、事業を立ち上げ、人を雇い、会社を成り立たせることは並大抵のことではありません。決意や覚悟、芯の通った理想が必要です。
それを実現している方たちと話すわけですから、その言葉に力がこもっていない訳はありません。
ただ、現状に不満を抱いている人間には眩いばかりで、目がくらむような思いでした。
世の中には魅力的な人間、会社が多く溢れていて、果たして己の進む道はいずれなのか。
浮足立っていた、というのが正しい表現でしょうか。
就職活動では特に失敗もなくとんとん拍子でうまくいった私ですが、転職活動はなかなかうまくいきませんでした。
「この会社はいい会社だ」、「いろいろな挑戦ができそうだ」、「自分の能力を活かせるに違いない」、そう思っていても最後の決断ができずにいました。
なんとなく、腹の底では得心が行っていなかったのだと、いまでは考えています。
そんなときに出会ったのが弊社代表である嶋です。
きっかけは、知り合いの方にお声がけいただいたことです。
もともと楽天に入社したときのエンジニア採用を担当されていた方が、転職後に代官山RED(現マージェリック)を手伝っていて、エンジニアを新しく採りたいということで連絡をもらった、という経緯でした。
また、当時、すでに楽天時代の同期である吉越が入社していたので、会って話だけでも聞いてみよう。
そんな風に考えていました。
このとき嶋に伝えていたのかどうか定かではないのですが、実は別のスタートアップからすでに内定をもらっていて、あとは雇用契約書にサインするだけの状態で、なかなか転職活動がうまくいっていなかった私は、付き合いで嶋と会食だけして先のスタートアップに決めてしまおうという腹積もりだったのです。
嶋も私と同様楽天出身です。
ただ、私とは違い彼はECC(ECコンサルタント、いわゆる営業)でした。
彼が語ったのは、当時ECCだったときには自分の営業成績はすこぶる良かったが、担当していた出店者様をSOY(ショップ・オブ・ザ・イヤー、年間優秀店舗)にすることはできなかったという苦い思い出です。
本当に彼らのためになることをできていたか、当時できなかったのならそれを今やるべきではないか、そのための構想がいまあるんだ、そんな話をした記憶があります。
それは私が持っていた違和感に対する答えのひとつでした。
ユーザーの声を聞き、彼らのためになるものを提供する。
価値を創出し、それを届け、喜んでもらえる。
それが、私の望んだものです。
憧れは貴重な感情だと思います。
憧れるべき対象というものは望んでも現れるとは限りません。
しかし、己の進むべき道を選ぶ際には、時折、邪魔をすることがあります。
ただ憧れるだけでは足りないのです、自分が何を為し、どうなりたいのかが肝要なのです。
夢を語った彼の姿と、自分の目指すものが重なったとき、私はマージェリックという会社に入ることを決意しました