株式会社マージェリックの高見澤です。
マージェリックでは全事業の事業戦略を担当しています。
今回は前回に引き続き私自身のキャリアパスについてのお話です。
予告では職業エンジニアになってから転職までを今回お話するつもりでしたが、長くなってしまったので、エンジニアになったころの話をしようと思います。
中学の頃はそこそこの成績だったので、地元の公立の進学校へ進学しました。
人並みにアルバイトをし、恋愛をし、受験勉強をし、ごくごく平凡な高校生活だったと記憶しています。
その後、大学へ進学しました。
もちろん専攻は情報科学科です。
私が通っていた大学の情報学科では1年次からプログラミングに関する実習があり、日常的にプログラミングに接することのできる環境でした。
内容は、昨今のプログラミング入門と比べると"固い"内容だったと思います。
Webアプリケーションやスマホアプリを作るということはなく、言語はCやJavaで、課題はデータ構造やアルゴリズムに関わるものでした。
もちろん実習だけではなく、座学もあり、そこでは計算理論やオートマトン、エンジニアリングなどプログラマー、エンジニアに必要な知識を学びました。
そして2008年10月、就職活動の始まる時期です。
2008年と聞いてお気づきの方もいらっしゃると思いますが、この年の9月に世界経済に大きな影響を与えた事件が発生しました。
そう、リーマンショックです。
内定切りなんて言葉はこの頃に生まれたと記憶してます。
エンジニアになりたいままプログラミングを学んだ青年は、けれど、すぐにエンジニアになることは選びませんでした。
学部での研究期間はおよそ1年。
研究活動に触れてみて、1年足らずではなく、もっと本格的な研究をしてみたい、叶うなら博士号を取って研究に没頭する生活を送ってみたい、そんな夢を描いていたのです。
そして、大学院への進学を決意しました。
それが、日本(世界?)で最も長い名前の大学と言われている「北陸先端科学技術大学院大学」、通称JAIST(Japan Advanced Institute of Science and Technology)です。
日本で初めて設置された大学院のみしか持っていない大学です。
これまでコンピュータサイエンスを学んでいたにも関わらず情報化科学研究科ではなく、知識化科学研究科を選択しました。
知識科学研究科では文理の垣根はなく、知識経営や創発、知識を応用したアプリケーション開発など多岐にわたる分野で研究を行っています。
いまから思い返してみると、このときから経営的な視点や社会の問題を解決したいという願望があったのかもしれません。
私自身がそこでなにをやっていたかというと、知識マネジメントや知識経営の講義を受けながら、3DCGの研究をしていました。当時の研究内容はこちらからご覧いただけます。
研究活動を望んで進学したわけですが、その道は非常に険しいものだと痛感しました。
博士になるのならば既存の分野で研究するのではなく、新しい分野を創造し、その第一人者であるべし、ということを知りました。
ただ、この考えはベンチャーマインドに通ずるものだと思います。
けれど、当時の私にはひとりで分野を切り拓いていく覚悟も、叶えたいビジョンも定まっていませんでした。
つまり、博士になることを諦めました。
さて、それから新卒として企業に就職したわけですが、あまり積極的に就職活動というものをしませんでした。
なにせJAISTは石川の山の中にある大学、当時は北陸新幹線もなかったので東京に出てくるだけでも一苦労。
(越後湯沢まで特急で移動し、上越新幹線で東京まで出てくる。冬の日本海を眺めながらの旅程は風情があり嫌いではありませんでした)
特別熱心に就活の準備をしていたわけではない私に、当時、大学の先輩がインターンシップを紹介してくれました。
インターン参加者は選考が優遇されるというのでそのまま就職を決めたわけです。
その会社こそが楽天です。
確か、楽天は私が入社した年である2012年から総合職と開発職を分けて採用するようになったと記憶しています。
それまでは新卒研修が終わった後の配属で、それぞれのバックグラウンドには関係なく開発職や営業職に割り振られていたそうです。
当然、私は開発職として採用されたので、エンジニアとして配属されることは決まっていましたが、どこの部署になるのかはまだわかりません(現在はエンジニアに限って内定時点で部署まで決定する採用経路もあるそうです)。
新卒研修後、人事の研修チームに希望部署を提出し、各部署のマネージャーと面談を行います。そこでお互いの意見が合致すれば、配属先が決定されます。
そして、私が配属されたのが市場サービス開発運用部でした。
この部署は楽天市場の開発運用をする部署で、楽天グループ内でもっとも売上を作っているサービスに携わる部署です。
少しだけ楽天市場というサービスの説明をさせてください。
楽天市場は大きく分けると2つの側面を持っています。
1つ目は、出店者の方が商品登録を行ったり、注文を受け付けるRMSと呼ばれる機能。
2つ目は、消費者が商品を選んで購入するいわゆるモールの機能です。
私はモール側、特に商品ページの開発運用をやっていました。
私が配属された2012年といえば初めて楽天市場の年間流通が1兆円を突破した年です。
そして翌年2013年は東北楽天ゴールデンイーグルスがペナントレース優勝からの日本一を達成しました。
その瞬間はお祭り騒ぎ、と言うのが相応しい情景でした。
社内にはライブビューイングが用意され、試合が生中継されている状況。
社員が固唾を飲んで見守る中、一球一球の行方を追い、一喜一憂していたことを覚えています。
一方で、日本一が決定した瞬間から30分以内に日本一セールを開始せよ、という指示がありました。
担当社員は日本一の可能性が出てきた時点からシフト勤務になり、いつでも開始できる準備をしていたのです。
その準備もあってか、日本一セールでの売上は非常に好調でした。
(この年に二重価格問題というものも発生しましたが、それはまた別の機会に譲りましょう)
勢いのある会社だ、そう感じていました。
社内公用語英語化、kobo買収、年間流通1兆円、日本一。
日本で最も大きいECモールでありながら、グローバルや新規事業展開、好調の知らせ、この会社は先行きが明るいのだと、未来に思いを馳せました。
こうして、エンジニアに憧れを抱いていた少年は、エンジニアとしての人生を開始したのでした。