約40兆円という市場規模の大きさや直面している課題から注目を集めている医療業界。そこでエンジニアが活躍するおもしろさについてVPoEの山崎に聞いてみました。
エムスリーのエンジニアとして働く一番の面白さは「世の中を変えられる」と強く感じることです。
私は人に影響を与えられるような仕事を目標にしています。できればエンジニアとして誇れる仕事で世の中に良い影響を与えたい。その点でエムスリーが取り組んでいる医療業界は、多くの未解決の問題にITを使った斬新なアイディアで切り込んで行くことができる、非常にやりがいのある領域です。未知の問題へのチャレンジとも言えますが、私自身チャレンジが大好きなので、楽しみながらそれらを解決するサービスやプロダクトの開発に取り組んでいます。
まだ誰も解決したことがないチャレンジなので、時には問題を解決できるか不安になることもありますが、私は多くの人に影響を与える問題だからこそ、目をそらさず、解決するまで粘り強くチャレンジしていくことが大切だと思っています。
エムスリーがこれまで成長し続けてきた理由も、諦めずチャレンジすることで医療業界の多くの問題を解決し続けてきたことが大きいと思います。「解決する価値があれば解決するまで粘り強くチャレンジする」というのは代表取締役の谷村からもよく聞く言葉です。
チャレンジが部分的に失敗しても、その理由をきちんと分析して学び、そこから問題を解決するまで諦めない姿勢がとても重要だと思います。
ーたしかに、山崎さんはよく「やっちゃいましょう」「なんとかします」というのが口癖ですね。それでも心が折れそうになったり諦めたりしたことはなかったのですか。
全国各地の電子カルテの中から治験や臨床研究の対象となる患者を効率的に探し出す夢のプロダクトへの挑戦は学びが大きかったです。このプロダクトは業界のニーズも大きく、技術的にも画期的(2つの特許を取得済)だったのですが、当時はどうしても対応電子カルテが限られてしまい検索範囲を十分にカバーすることが出来ないという課題がありました。いくつかの解決策を考えましたが、結局、短期的にクライアントのニーズを満たすクリティカルマスを達成することが難しく、当時はプロダクトの本来持っているポテンシャルを十分に発揮できませんでした。現在は電子カルテそのものを広げることにフォーカスして、今でも夢のプロダクトを実現する方法を模索しています。
この件から得た学びの一つは、いくら技術的に画期的であっても、それだけでは失敗しやすいという事実です。世の中を変えるような真のイノベーションを実現するようなプロダクトは、大前提としてエンドユーザーやクライアントの短期的、長期的ニーズに噛み合っていることが重要です。エムスリーの場合だと医師や患者、製薬企業が本当に喉から手が出る程ほしいものかどうか。その受け入れ基準はどの程度か。それらのニーズや受け入れ基準を、テクノロジーを活用し、圧倒的に良いプロダクトで実現できることが重要です。
皆がほしいものが先にあって、最新のテクノロジーで対応していく。この順序さえ間違えなければ大きなイノベーションの可能性があります。エムスリーは本来そのやり方がうまいと思っています。
例えば、医療業界におけるAIの活用にも色々あります。医療×AIといえば、病名の自動診断は良く出てくるアイディアですが、専門医が必要な画像診断や希少疾患を除いた通常の診断の範囲では、それを心からほしいと感じている人がどのくらいいるかはまだわかっていません。今の所、医師は自分で診断できる範囲は自分で診断するのが仕事ですし、患者さんも医学的に正確な病名が知りたいというよりは病気が治ればいい、という仮説も考えられます。
一方でAIを医療業界の情報提供に活用し、多忙な医療従事者に必要な情報を必要なタイミングで届けることも出来ます。医師にとって重要な情報と重要でない情報、リーチできている情報とリーチできていない情報をかけ合わせた4つの領域の内、重要だけどリーチできない情報の領域でのAI活用は重要であると感じており、そのニーズに対してすぐにテクノロジーを活用できます。
どちらのニーズに最先端のテクノロジーで対応すべきか、その匙加減が重要だと思います。
一方で、もっと大胆に医療業界にエンジニアリング文化を持ち込むことも可能ですし、面白いと考えています。医療業界のStack OverflowやSlack、GitHubのようなイメージで世界中の医師をつないでフラットに話せるようなコミュニティを提供する。その話題であれば先日最新のエビデンスが発表されています、とリコメンドして、5分後にその医師が現れて治療方針に対する最新のディスカッションができる。エムスリーは現時点で世界に450万以上の医師会員を持っている為、これらのグローバルネットワークを活用したプロダクトで世の中を変え、世界の医療を大きく前進させることができるかもしれません。
他にも、医療業界はIT化が遅れており、例えば未だにスマートフォン対応などが遅れていたり、ブラウザベースのクラウド電子カルテもようやく出てきたような状況です。こういった未開拓な分野をエンジニアの力でなんとかしたいですし、どうせやるなら最新のテクノロジーでドラスティックに変えて行きたいと思っています。
途上国では有線の電話を飛び越えて一気に携帯電話やスマホが普及しました。医療業界も業務がローテクという状況であれば、中間は飛び越えてハイテク化していくことは十分可能ですし、エムスリーの重要な使命だと感じています。
ーこういったチャレンジに向いているエンジニアはどのような人材ですか?
技術力は高ければ高いほど良いですね。エンジニアとして高度な知識があり、良いコードが書けること。チャレンジの中で技術的に難しい課題に直面した時に、使いこなせる技術的な引出しが多いので、解決の幅が違いますね。
一方で、技術力だけでなく「世の中を良くしたい」、「世の中を自分で変えたい」というチャレンジ精神と、たとえ困難でも諦めずにチャレンジし続ける勇気が必要だと思っています。先に述べた通り、解決する価値があれば解決するまで粘り強くチャレンジすることが重要です。
現在、エムスリーのエンジニアは約65名。チーム数は14なので平均すると1チームあたり4〜5のエンジニアで医療業界のイノベーションにチャレンジしています。それを2020年度末までに約2倍の120名以上にしていきたいと計画しています。時価総額1兆円規模になるとエンジニアが1000人以上いることもあると思いますが、少人数で高い生産性を実現できるのも、医療業界で未解決の問題にチャレンジし世の中を変えるという価値がユニークだからだと思います。
「未解決の問題にチャレンジしたい」「世の中に良い影響を与えたい」と考えるエンジニアと一緒にこれからも粘り強くチャレンジしていきたいですね。