【SUCCESSFUL DIGITAL TRANSFORMATION STUDY 2022とは?】
レバテック株式会社の主催で、2022年1月24日に開催されたウェビナーです。日本の非テック企業がデジタルサービスへの転換やIT技術の取り込みへの第一歩を踏み出すため、3名の登壇者を招きDXの先行事例をディスカッションも交えてご紹介しました。
今回は本イベントに登壇したモチベーションクラウドシリーズ開発責任者の柴戸が、「非テック企業のDXと内製化の歩み」についてお話ししたLTをレポートします!
リンクアンドモチベーション 執行役員 柴戸純也
大手IT企業を経てフリーランスとして技術力を磨いた後、2社で執行役員を務め、うち1社を上場へと導く。「社会を前進させるプロダクトをつくりたい」という想いから、2018年にリンクアンドモチベーションにエンジニア社員1人目として入社。現在はモチベーションクラウドシリーズの開発責任者を務めると同時に、グループ全体のDXを牽引。2022年1月より執行役員に就任し、テクノロジーの力で「第二の創業」を推進している。
モチベーションクラウドの開発をきっかけに内製化を決断
今回は簡単な当社のご紹介と、開発内製化の歩みについてお話ししたいと思います。正直なところ全てが順風満帆というわけではなかったので、上手くいかなかったことも含めてお伝えします。
リンクアンドモチベーションは2000年に創業した一部上場企業です。従業員数は連結で約1,500名。2016年までは完全に非テック企業でした。事業は、「個人から選ばれる組織づくり」を支援する組織開発Division、「組織から選ばれる個人づくり」を支援する個人開発Division、そして「組織と個人をつなぐ機会を提供する」マッチングDivisionの3つで構成されています。特に、組織開発Divisionにおいては創業以来、組織人事のコンサルティングサービスを提供しており、企業規模を問わず数多くの組織変革に携わらせていただいた自負があります。
そんな自分たちのコンサルティングノウハウを詰め込み、組織変革を実現するのが「モチベーションクラウド」というサービスです。開発内製化は、モチベーションクラウドを起点にスタートしました。
サービスの成長とともに社内の開発組織は約50名規模にまで拡大
組織をマネジメントされている方々の中には従業員のエンゲージメントを高めるため、さまざまな取り組みを行っているかと思います。しかし、施策の結果、エンゲージメントが高まったのか、効果が出ているのかは非常にわかりにくいため、エンゲージメント度合いを測る「ものさし」が必要です。
当社は創業以来、従業員のエンゲージメント状態をスコアリングし、「組織の状態」というファジーな指標を「エンゲージメントスコア」として定量化してきましたが、エンゲージメントスコアを指標にPDCAを回して組織状態を改善していくプロダクトとして、2016年に「モチベーションクラウド」が生まれました。サービス開始以降、MRR(月間経常収益)は右肩上がりで成長しており、株式会社アイ・ティ・アールが発行する市場調査レポート「ITR Market View:人材管理市場2021」において従業員エンゲージメント市場のベンダー別売上金額シェアで4年連続1位(2017~2020年度予測)を獲得しています。
こうしたプロダクトを提供する裏側で、開発は内製化を進めて参りました。開発組織は2022年1月現在、社員が46名。このうちデータサイエンスを含むエンジニアが33名、プロダクトマネージャーが9名、UI/UXデザイナーが4名という組織構成です。
内製化を必然的なものにしたリスク・価値的観点
数年前のデータによると日本の内製化比率は約4割と意外に少ないのですが、その状況の中で当社が内製化に舵を切った理由についても詳しくお話しします。内製化のメリット・デメリットはさまざまですが、我々の中では経営レベルのリスク的観点と、価値創出の観点の2つについて考えていました。
リスク的な観点では、開発の全てがコントロール不可能になる状況を避けたかったということがあります。すでにプロダクトはそれなりの開発規模まで進んでいました。事業をさらに成長させたいと考えたときに、開発の全てを外部パートナーに頼った状態、つまり「自分たちでプロダクトをつくる」という選択肢がない状況はリスクだと思いました。
次に価値創出の観点としては、テクノロジーを用いたプロダクトやそれに関わる人、開発組織を自社の競争優位性の源泉にしたいという思いがありました。そのためにはお客様や自分たちのプロダクトに対する愛着、仲間への想い、共通の目的などが非常に重要です。パートナーさまとの契約を挟んだ目標設定だけではカバーしきれない部分を凌駕する必要も出てくると考えました。そのようなことからリンクアンドモチベーションの開発内製化は自然な流れだったと思っています。
組織偏差値は低水準。内製化のスタートラインは悲惨な状況だった
内製に踏み切った2018年から開発組織の構造がどのように変化したかについてご紹介します。まずモチベーションクラウドの開発自体は2016年に1社のパートナー企業とともにスタートしました。1社に対する依存リスク低減のため2017年には外部パートナー複数社で開発する構成へ変更。そこから内製化に向かうためフリーランスの方々にご参画いただきさらにリスクを分散。2018年からは中途採用ができる体制へと変化し、私自身も2018年にリンクアンドモチベーションに入社しています。
ここまでの外形的な話を聞けば「順調に内製化が進んでいる」と思われるかもしれませんが、そんなことは全くありませんでした。特に内製化を始めた当初は、組織はなかなか悲惨な状況でした。
そもそも私自身の存在が、内部の既存メンバーからしてみれば外部から来ている人間なので、いきなり外の人間にあれこれ指示をされると誰もが少なからず苛立ちます。パートナー企業との契約ありきで事業を進めていた他部門との関係もあまりよくありませんでした。また技術負債の解消も優先度は下がり続けていまい、プロダクトを改善・更新し続けることを前提としたカルチャーや仕組みもありませんでした。
このような状況なので、開発メトリクス(※)は散々な結果でした。システム評価は低いですし、バックエンドコードを対象としたテストカバレッジも0%。重い処理には5分ほどかかり、多くは計測すらできていませんでした。開発組織のエンゲージメントスコアは43.1。これは社内を歩けば退職希望者に出会うくらいの数字です。※開発の品質にまつわる特定の項目を定量化したもの
しかし、現実から目を背けることなく正面から向き合い、目的や課題をクリアにし改善を重ねた結果、こうした数値は2021年時点でエンゲージメントスコアが77、システム評価は引き続き改善中ですが27.5ptが45.5pt程度、テストカバレッジは0%が85%にまで向上しました。
内製化とは、カルチャーをトランスフォームすること
開発内製化に向けた改善や試行錯誤をする中で得た大きな学びは、「内製化とは何なのか」ということです。この話だけでも記憶してほしいのですが、内製化とは「社員を雇って増やしていく」というだけではなく、「カルチャーをトランスフォームすること」です。
例えば以下のスライドの内容を当たり前に実行していき、その結果エンジニア一人ひとりが成長・貢献を感じて、周囲の人からも尊敬されていると実感する日々を過ごす。これが幸せな開発者体験 -ディベロッパー・エクスペリエンス- を生み出していくのだと思います。
最後に、リンクアンドモチベーションの組織はまだまだ拡大フェーズにあり、過去を健全に否定し全員でリボーンしていかなければならない第二創業期だと捉えています。エンジニア組織は数年のうちに倍の規模にしたいですし、新規プロダクトも作っていきたいことから、あらゆる職種を募集中です。
最近は開発カルチャー作りのトライとしてテックブログも始めましたので、ぜひご覧ください!
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