DXの推進が叫ばれる昨今、各社はスピーディなデジタルサービスへの転換を図っています。このとき課題となるのが、開発組織の内製化です。組織構造の変革に伴う困難にどう立ち向かうべきなのかーーー。
今回はDXを推し進める各社が気になる「非テック企業の開発組織内製化」をテーマに、2002年1月24日に開催されたレバテック社主催のウェビナー「SUCCESSFUL DIGITAL TRANSFORMATION STUDY 2022」。同ウェビナーのパネルディスカッションに、モチベーションクラウドシリーズ開発責任者の柴戸が参加しました。当社の技術顧問としてご支援いただいているレクター社 取締役 兼 日本CTO協会理事の広木氏も交え、開発組織の内製化について語った内容をダイジェストでレポートします。
※本イベントではリンクアンドモチベーションの内製化の歩みについてもお話ししています。
●LT記事公開後URLを記載します●
リンクアンドモチベーション 執行役員 柴戸純也
大手IT企業を経てフリーランスとして技術力を磨いた後、2社で執行役員を務め1社を上場へと導く。「社会を前進させるプロダクトをつくりたい」という想いから、2018年にリンクアンドモチベーションのエンジニア社員第一号として入社。現在はモチベーションクラウドシリーズの開発責任者を務めると同時に、グループ全体のDXを牽引。2022年1月より執行役員に就任し、テクノロジーの力で「第二の創業」を推進している。
内製化にいたる変遷で組織が直面した困難・課題
エンジニアの言葉が社内に通じない状況でのコミュニケーション
ディスカッションの最初のテーマとして取り上げられたのは、非テック企業が開発部隊を内製化させるに至るまでに直面した困難や課題について。実際、開発内製化にあたっては多くの組織がさまざまな側面で悩みを抱えることになる。リンクアンドモチベーションも例外ではなく、大きくはコミュニケーション・文化の2側面での苦労があった。
柴戸:そもそも「テクノロジー」という領域に関してエンジニアがエンジニアの言葉で話しても、社内には通じません。MacBookがなぜ必要なのか、テスト環境とは何なのか、AWSとは……。こういった内容を、できるだけ非エンジニアのメンバーの頭の中にある単語を使って翻訳しました。例えば「AWSが止まるというのは、営業にとってJRが止まるのと同じこと」とか「プロダクトにおける使われない機能は、使われないトイレと同じ」と表現したり。コンサルティングの事業に関わるメンバーが多いので、開発プロセスをコンサルティングのステップに例えたりしながら、コミュニケーションを重ねました。
エンジニアと非エンジニアで言葉が通じづらい体験は、内製ならではの部分がある。例えばSIerに外注した場合はテクノロジーについても明るい営業担当者が上手くハブとなって開発を進めていくため、ビジネスサイドが専門用語を理解できなくとも実はさほど大きな問題は生じない。しかし内製の場合は、プロダクト開発部門の中にエンジニアの言葉を翻訳できる存在を少しずつ増やしていき、スムーズな開発体制の土壌を作り上げていかなければならない。
リンクアンドモチベーションの内製化にあたってエンジニア採用にも関わった広木氏は、柴戸を採用するにあたっては「技術力」「マネジメント力」以上に、「言葉が通じない状況にコミットするタフネス」を評価した側面が大きいと語っている。
お互いの文化に対する不理解から生まれるギャップ
もう一点、柴戸が言及したのが文化の問題だ。これまでデジタル人材が不在だった企業にとってエンジニアは異分子のようなものであり、エンジニアにとってもこれまでと環境が大きく変わることから、間に大きな溝が発生してしまうケースは非常に多い。柴戸はリンクアンドモチベーションにおいて第一号のエンジニアだったからこそ、溝が生まれないようにエンジニアと非エンジニア、両者のギャップを埋めることに尽力した。
柴戸:やはり何の開発文化もないところにエンジニアを採用しても、すぐに辞めてしまいます。テクノロジーの知見がない社内に対して「なぜこんなに簡単なことができないんだ」と思ってしまうからです。ですから、エンジニアリングやプロダクト開発がどんなプロセスをたどるのかをきちんと社内に理解してもらうのと同時に、僕自身もエンジニア以外のメンバーのことを理解できるようにコミュニケーションをとりにいきました。この「当たり前を変える」取り組みは、今も注力しています。
コミュニケーションと同様に、タフネスを持って文化の変容を促せる人材はやはり稀だ。時間や予算をかけてこうした文化的課題を解決する方法もあるが、まずは上手くタフネスを持つ人材を採用し、プロダクト部門のメンバーとの会話を通して「当たり前」のレベルを引き上げていくことが近道となる。
経営陣に技術の重要性を理解してもらうための鍵は「体感」
ディスカッションの中では視聴者から、「DXの過程で社内の技術理解を広げるにはどうすればいいのか」という質問が出た。この背景にあるのは、やはり内製が本当に必要なのかどうかという検討にまつわる議論だろう。また、会社として技術力を持つ意味を経営層に真に理解してもらわないと、仮に内製化を実施したとしてもコミュニケーションや文化面でボトルネックが発生してしまう可能性を示唆しているのだと考えられる。
広木:僕はキーワードとして「体感」が大事だなと思っています。柴戸さん、どうでしょうか?
柴戸:一番大事なのは、小さな成功体験を積み重ねることではないでしょうか。技術者以外の人に技術理解をしてもらう目的は「組織を変えたい」だと思うんですよね。そのときに大事なのは、チェンジマネジメントしていく領域の知識です。まず共通の目的を設定し相手に伝わるようにすべきという前提はありますが、やはりプロジェクトなどに一緒に取り組んで何か小さな成功体験を作り、「良くなった」「これは面白い」という流れを感じてもらうことだと思います。
最後に:リンクアンドモチベーションが抱く今後の展望
柴戸:僕たちは日本のエンゲージメントを高めて組織改善をより楽しいものにし、国の課題である生産性を高めるといったさまざまな展望を持っています。ただ、現在当社がやりたいこと、作りたい世界に対してエンジニアの人数はまだまだ少ない状態です。ほかのSaaS企業と比べてもエンジニアの比率が低いので、ここはまだまだ高めていきたいと考えています。具体的には現在エンジニアが50名のところから数年以内には100名規模にまで組織を拡大し、新規プロダクトの開発にも乗り出す予定です。このような環境や当社のビジョンに共感してくれる方がいたら、ぜひ仲間になって一緒に課題解決をしていけたら幸いです。
リンクアンドモチベーションの組織はまだまだ拡大フェーズにあり、過去を健全に否定し全員でリボーンしていかなければならない第二創業期だと捉えています。エンジニア組織は数年のうちに倍の規模にしたいですし、新規プロダクトも作っていきたいことから、あらゆる職種を募集中です。
最近は開発カルチャー作りのトライとしてテックブログも始めましたので、ぜひご覧ください!
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