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【CEOインタビュー】人の底力を信じる投資銀行出身起業家が夢見る社会とは

こんにちは、Lincインターン生の李です。

今回は、社員インタビュー記事第2弾!CEOの仲思遥さんへのインタビューです。

仲さんという人

仲さんは中国人のご両親のもと、日本と中国を行き来しながら成長してきました。小学校は日本、中学校と高校は中国のインターナショナルスクール、慶應義塾大学進学にあたって留学生として日本に戻ってきます。その大学時代で経験したさまざまなことが、現在の事業にも色濃く影響を与えているんだとか。

さて前置きは短めに、さっそくインタビューをお届けしていきます。

Linc創業に至るまで

___Wantedlyのページや公式HPには「外国人材と日本の架け橋となり、少子化社会、雇用構造にイノベーションを起こす」とありますが、事業としてそうしたいと思うようになったのはいつからですか?

仲さん(以下、「仲」):自分が就職活動をしていたころですね。当時の友人で、すごく優秀な中国人留学生がいたんですよ。でも、彼は日本式の就活に慣れることができなくて、内定を得られず中国に帰らざるをえなかった。そのことがすごくショックで。僕が就職活動してた2012年~2013年は、いまの売り手市場の状況と違ってて、就職氷河期と言われていたんですよ。優秀な留学生たちが、日本に残りたくても残れない状況を見ていて、「日本やばいな」と思って。こんなに少子化が進んでいるのに、外国人材の雇用がすすまないって国としてどうなんだろうって思ったのが、起業の大きなキッカケです。

もっと些細なことで言えば、留学生が日本で就職するとなると、日本語が完璧ではないからどうしても不利になるんですよね。外国人って自分たちのコミュニティに閉じこもりがちで。でも日本での就職って、日本人とどんどん接していかないと、情報は手に入らないし。企業で働いている日本人の先輩のほうが、外国人の先輩より人数は多いわけだから、外国人コミュニティだけに頼るのは限度があるなと、見ていて思いました。僕も日本人の先輩にたくさん助けられたし、そういうことがもっと進めばいいなと。

____大学時代、すでに留学生支援に関わっていたとのことですが、具体的にはどんなことをされていたんですか?

仲:1年生のときから、留学生向け大学進学塾で講師をしていました。就職支援を意識しだしたのは就活を経てからでしたけど、その時は進学支援ですね。

僕自身、大学進学前に日本語学校に通ったんですけど、そこでも思うことはいろいろあって。まず受験指導能力に関して、先生の質が玉石混交なんですよ。日本人なら先生になるハードルは低いし、主婦の方とか、4年制大学の受験をしたことがない先生もいたんです。僕も日本語しか教わることができなくて、受験用の勉強は独学でしないといけなかったので、とても大変な思いをしました。なので、自分の経験や受験勉強のノウハウを後輩に伝えたい、という思いで塾講師をしてました。

____そうだったんですね。現在のLincではEラーニングを事業の中心に据えていますが、Eラーニングには当時から着目していたんですか?

仲:してましたね。既存型の塾で働いていて、気になったことがいろいろあったので。ざっくり分けると3点あって。

まず、先生の質のばらつき。大学生バイトが中心だったということもあるんですけど。僕の中では「教育」って、平等に均一的な価値を届けるものだと思っていたので、すごく違和感があって。生徒が他の先生のクラスをボイコットして、僕の授業を立ち見するなんて事態も起きて、モヤモヤしたのを覚えています。

2点目は、生徒の学習管理の大変さ。生徒数が少ないうちは状況も把握しやすいんですけど、人数が増えてくると、質問されても「君は誰だっけ?」ってとこからになっちゃう。Eラーニングなら、学習データの蓄積で可視化されますよね。学習の成果に加えて学習行動まで分かれば、その生徒を直接知らなくても、かなり適切なアドバイスができるんです。

3点目は、生徒の通塾負担。僕の受け持っていた生徒で、普段は長野県の語学学校に通っている子がいたんですね。毎週金曜日に夜行バスに乗って、土曜日の僕の授業を受けるためだけに東京まできていて。そういう余計な負担を、ITの力で減らせたらと思いましたね。

____大学卒業後、野村證券に行ったのはどうしてですか?

仲:まず野村に行った理由としては、大きなインパクトを残せる仕事がしたかったからです。ミーハーな志望動機ですね(笑) もともとは弁護士になるつもりで法学部に入ったのに、入学早々目指す気が失せてしまって。就活の時期には、上場やM&Aなど、大きな会社の意思決定に関わりたいと思って、いろいろ調べたんですね。そのうちに、野村がその分野に強いと分かって、入社先として選んだっていう経緯があります。

あと、僕はIT業界に向けた仕事をやりたいって話を、入社前からずっとしていました。TMT(テレコム・メディア・テクノロジー)の部署に行きたいって希望をだして、配属もそのとおりにしてもらえました。

____仲さんはマルチリンガルですよね。単に能力を活かすことを考えたら、海外で働いたり、海外で起業する選択肢もあったのではないかと思うのですが?

仲:海外に行かなかった理由はいくつかあって。まず、自分のバックグラウンドなら日本の方が差別化できて、もっと競争力があると当時思ったので。欧米に行っても、僕みたいなマルチリンガルなんてたくさんいるので、埋もれちゃうんです。単純に日本がとても好きというのもありますしね。ご飯美味しいし(笑)

それと、日本は起業環境が素晴らしくて、かつ自分は本気でこの国を変えたいと思ったので、日本での起業を決意しました。

元留学生のビジネスマンとして

____仲さんは、いろんな国に身を置いてきたことが、いまのビジネスにどんな風に役立ってると思いますか?

仲:Lincでは日本の生活についてのレクチャーも提供しているんですけれど、その内容に自分の経験を反映できるっていうのはありますね。それこそ、「ゴミ出し大変だな」レベルからです。自分たち先人がしっかりすれば、日本社会の外国人へ対するバイアスも薄れるかなと思っているので、会社の中国人メンバーにもマナーやルールを守ることは徹底させています。

____日本のマナーやルールそのものが理不尽に感じられることもあるのでは……?

仲:そういうこともあると思いますよ。敬語とか上下関係とか、難しく感じる外国人は多いですし。でも、マナーを変えるのって簡単なことではないので、むしろお互いが歩み寄るしかないと思ってます。善悪でものごとを分けると、すごく難しいんです。だから大事なのは、メリットとデメリットをしっかり考えることで。性善説ベースで、「相手は悪気があってこういう言動をとったわけじゃない」っていうのを心にとどめながら、互いが落としどころを見つけていくのが大事だと思います。

____「性善説ベース」と「歩み寄り」、素敵な考え方だと思います。そんな仲さんの原動力って、どこからきているんでしょうか?

仲:ビジネス面での原動力は、先ほど話したような大学時代の経験からきてますね。

個人的な原動力としては……中学や高校での経験かなぁ。中国の大連にあるインターナショナルスクールに入ったとき、あまりにも勉強ができなさすぎて。英語の発音を笑われたりもしました。でも負けず嫌いなので、そこであきらめずに泥臭く勉強していって。高校でも、同じような経験はしました。なんというか、ビリから始めるのに慣れてるんでしょうね。だから変なプライドはあまりないです。でも努力すればどうにかなるかなって信じてます。性格も、図太くてポジティブなんですよね。人生詰んでからが勝負なので(笑)

Linc経営にあたっての心構え

____会社経営でいちばん大事にしていることはなんでしょうか?

仲:経営面と個人面で、それぞれあります。

経営面では、見返りを求めない「ギブ&ギブ」の精神と、「三方よし」の精神。前者は両親の影響で、後者はゼミの教授の影響です。

個人面では、素直であること。常に成長するために、そして合理的になれるために、変な思い込みは持たないように気をつけています。

____いわゆる「成果」をどうとらえていますか?ユーザー数の多さなのか、利益率や売り上げの高さなのか……。

仲:もちろん会社なので利益を出す必要はあります。ただ経済合理性のほかに、ユーザーから感謝されるかどうかはすごく重要です。「東大早慶に〇〇人合格!」ってことではなくて、あくまで生徒さん本人からみて1ランクアップの手助けになってるかどうか。そこが大事ですね。

生徒たちとの交流会の様子

これから入社してくる人に向けて

____中途で入ってきた人がLincで働いたら、どんな点が面白いと思いますか?

仲:おおまかに言うと、3点あります。

まずは段階。今後の会社の形をつくる「0→1」の体験を一緒にできるのは大きいかなと。個々人が自分の役割をこえてできることが、非常に多いです。もちろんリスクもあるんですけれど、そのリスクに見合うリターンも得られます。リターンっていうのは、金銭的なところも含めて(笑)ストックオプションも発行する予定ですし。今の人たちが頑張った分だけ、会社が成長する感じですね。

2点目は事業的な面白さ。Lincが直面しているマーケットは大きいです。外国人のライフスタイルを支えるっていうところで言うと、現在で6兆円くらいの規模があります。このあいだ試算したんですけど。しかも毎年15%ずつ伸びてるので。とても大きなことができる可能性が高いと思っています。

最後にチーム。僕、COOの王営業の滝沢みたいに、金融やコンサルっていう日本の伝統的な業界出身者もいれば、エンジニアの篠原や天聖みたいなスタートアップ出身者もいる。かつみんな優秀なので、いいシナジーが生まれていると感じています。日本人も中国人もいるし、今後は他の国の人も増えていくと思うので、ダイバーシティあふれる会社かなと。

____求める人材像としては、どんな人をイメージしていますか?

仲:ハマりそうな人は、商業的合理性だけで動くのではなく、社会的意義を追及したい人。かつ、僕らが提供しているのは「来日する人のサポート」っていうB to Cサービスなので、個人のエンパワメントに興味ある人はピッタリだと思います。

そのうえで能力面について言及するなら、ふわっとした議論やプロジェクトをタスクベースに落とし込めて、自走できる人。スタートアップはスピード感がすべてだから、自分で動けない人は厳しいです。

____大きい企業から転職してくる人だと、スピード感の違いに戸惑ってしまうこともありそうですね。

仲:そうですね。議論のスタイルも違うかもしれません。Lincではみんなが問題意識をもって発言するし、バチバチな雰囲気になることもあるし。でもそれは喧嘩しようとしてやっているわけではなくて、会社を前進させるためにやっているのであって。まったく忖度はないです。

____スキルと素質だと、どちらのほうを重視しますか?

仲:圧倒的に素質のほうが大事です。求める素質としては、2つあります。

1つ目は、メンタルの強さ。スタートアップって、ほんとにたくさんの困難に直面するんですけど、それも含めて楽しむ姿勢が重要かなと。足りない部分に焦ったり、自分がしっかり仕事しても事業がうまくいかないこともあったりするんですけど、それを乗り越えるのもスタートアップの醍醐味ですから。

2つ目は、素直さ。さっきも個人で大切にしていることとして挙げたんですけれど。「何が自分に足りてなくて、今どうするべきか」っていう本質を見極められる人は、素直な人が多いなと思っていて。スタートアップでの仕事って激務になりがちだし、想定外のこともたくさん起きるけど、それにも素直に直面できるマインドが必要だと思います。そうすれば、どんなことも学びに変えられますし。うちのメンバーも素直な人が多いです。

今後のビジョンについて

____この1年で事業として注力しようとしているのは、どんな部分ですか?

仲:中国市場向けに提供しているEラーニングサービス「Linc Study(羚課日本留学)」のコンテンツと機能の、さらなる充実を目指しています。あと、来日していない学生にもLincのサービスを使ってもらって、日本で進学するための勉強を日本でしなくてもすむくらいに、質を担保できるようにしたいです。

____1億円調達の際に出たTechCrunchの記事では、「ユーザーデータをもとに外国人材の『信用』をスコア化し、それを利用して外国人向けの住宅探し、アルバイト探し、転職支援サービスなどにビジネス領域を拡大していきたい」と語っていましたよね。

仲:来日したばかりの外国人って、たとえ本人が優秀でお金持ちだとしても、現状のクレジットスコアリングだとすごく不利なんですよ。なぜなら、日本で住宅ローンや水道代を一度も払ったことがないから。

それよりは日々の行動から、自社のアルゴリズムを使ってスコアリングできればいいなと。オンライン授業の受講態度が真面目で、成績という形で結果も出していれば、それもその生徒さんの「信用」としてカウントしていいと思うんですよね。モバイルシフトが進んでいる中で、みんながインターネットにアクセスできる時代になっていて。ITのいちばんの強みは、データを蓄積できるってところなんですよね。そのデータから、新たな「信用」の形や評価の仕方が生まれたらなと。

____その構想を見たときに、「なんだか壮大だな」と思ったんですけれど。Linc1社だけでなくて、たとえばFinTech系の企業とか、他の業界を巻き込んでいくことになりますよね?

仲:もちろん他の業界を巻き込んでいく予定ですよ。Lincで学んだスコアをもって住宅を探す。その住宅の支払いの状況をもって、次は車を買うときにローンを組むとか。そういうことができたらいいなって。

信用スコアをつくることで何が生まれるかっていうと、もっと住みやすい社会ができる、それにつきますね。で、住みやすい社会になることで損する人って誰もいないので。

____なるほど。外国人が住みやすい日本社会になっていけば、日本人にとっても住みやすさが増しそうですね。

仲:そうですね。日本人側にもメリットはあります。たとえば不動産の大家さんって、貸し倒れのリスクを抱えていますよね。そこにいいスコアリングのシステムがあって、外国人に部屋を貸す不安を取り除いてあげられれば、貸し倒れが防げるわけで。そうすれば、みんなハッピーですよね。だから、Lincが提供するサービスを通じて、しっかりスコアリングできるようにしたいですね。なので、社内にいいエンジニアが増えることを心待ちにしています(笑)

普段は、営業の滝沢さんから「パジャマみたいなテキトーな格好してばっかり」とイジられている弊社CEO。ですが、滝沢さんは「誰に対してもフラットだから、気分よく一緒に働ける人」と評していました。エンジニア天聖さんは、「自分の興味に忠実で真面目な人」と、仲さんの内面について語っていました。

私は「普段から誰にでも『ありがとう』『ごめんね』を言う人だなぁ」と感じていたのですが、「変なプライドはあまりない」「素直でいることを大切にしている」という本人の言葉を聞いて、とても納得したのでした。


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