心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える
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レプスのエンジニアリング・マネージャー、石坂です。最近バンコクから少し郊外へ引っ越しました。以前の住まいとはうって変わって自然が多く静かな住宅街で、もともと田舎育ちのわたしにとっては大満足の環境となりました。
さて今日の記事では、わたしが2021年に読んで印象に残った本をざっとご紹介して、一年の振り返りにしたいと思います。業務に関係する書籍を中心としつつ、エンジニアリング・マネージメント・コミュニケーション・こころのこと…と、ごちゃまぜでご紹介してまいります。
今年はなんと言ってもこの本がマイベスト読書体験でした。
「心理的安全性」という課題を集団だけではなくいち個人の課題としてまず位置づけて、そこに自分を組み入れて自分の認知・行動変容を基軸としてチームの成長につなげていく、というアプローチが大変印象的でした。組織マネージメント面での実用性はもちろん、自分の認知のずれやゆがみを定期的にアップデートするのにも役立ちそうです。
弊社のバリューの一つでもある「Put myself in someone's shoes(他者の靴を履く)」。安直な「エモーショナル・エンパシー(感情的共感)」ではなく、同意できない相手にも寄り添おうと努める「コグニティブ・エンパシー(認知的共感)」による共感の大切さ。たいへん興味深く読みました。「多様性を認める」と一口にいっても、その言葉の重みや、本当に実践するために相応の覚悟がいることについて読後はしばしば考えました。
エンジニアリングの現場でも今年は新たなメンバーが増え、これまで以上に多様なビジネス課題に取り組んだ年でした。開発チーム内のディスカッションや、またステークホルダーとの調整をする中で必ずしも Agree(賛成)できる場面ばかりではないかもしれませんが、それでも合意事項に Commit(積極的に関わって)いくことはできます。ここでも「他者の靴を履いて」みることが役立ちました。
再び「心理的安全性」がテーマの本、こちらも面白く読みました。成功例、そして失敗の事例はどれも実に読み応えがあります。
筆者は、個人が失敗から学ぶこととレジリエンスを身につけることが組織づくりにおいて特に重要だと考えているように感じました。
「心配がその役割を果たすとき」「安心して失敗できるようにする」の章、さらに「フィアレスな組織をつくる」の章には失敗に関する多くの印象的なフレーズや事例があります。
「本当の失敗は、やってみてうまくいかないとわかったのに、なおも続けていくこと」なのだ。本当の失敗とは学ばないこと、あるいは面子がつぶれるほどのリスクを取らないことだという。
賢い失敗は、技術だ。適切なときに適切な理由のために失敗できれば、役に立つ。
「スケールが大きくリスキーなこと、つまり大胆なアイデアに挑み、どんな大変な問題にぶつかっても取り組み続けてもらえるかどうかは…みんなの抵抗感を最小限にし、安心して失敗してもらえるようにできるかどうかにかかっている」ー Astro Teller
「早く、頻繁に、とんでもない失敗を見せて。それでいいの。完璧である必要なんかない。駄目なものを見ることで、はるかに素早く軌道修正できるようになるから。」ー Christa Quarles, OpenTable CEO
自分、そしてチームのマインドセットが今どうなっているか? 心理的安全性を阻みかねない小さな言葉や行動、仕組み上の不備がないか?と自問自答しながら読みました。
余談ですが、失敗論についてはこちらの「ジオン軍の失敗」も面白く読みました。
ここで技術書を1冊。モノリスからサービスの切り出しを行う過程で度々参照しています。マイクロサービス化に際してしばしばエンジニアが頭を抱えるデータベース問題についても、かなりのページを割いてプラクティカルに解説されています。
モノリスはレガシーではなく選択肢の一つ、ビジネスとサービスの要請に対してベストなアプローチを取るという大前提に立った上でマイクロサービスをどう活用するか計画していく、という観点を筆者は徹底しています。技術選定やアーキテクチャ設計、さらにサービスの部分的な切り出しを検討する際にも、議論のガイドラインを示してくれる良書だと感じました。
これも面白かったです。エンジニアリングに特化したチーム・ビルディング論で、役立つ内容が多かったです。
「文化のスケーリング」の章はコアバリューの議論や社内の周知をする際に参考にしました。またリモートワーク・ワーケーションといった自由な働き方文化を大切にする弊社での重要課題の一つである「自走性を担保しつつ / ルールで縛ることなく / 自律的なチームを作る」という目標の実現のために、「コミュニケーションのスケーリングー規模と距離が生む複雑性、組織内のコミュニケーション」の章は役に立ちました。
そのほかで印象に残っている本をいくつかピックアップしてみます。
こちらも素晴らしい本でした。「問題を性急に措定せず、生半可な意味づけや知識でもって、未解決の問題にせっかちに帳尻を合わせず、宙ぶらりんの状態を持ちこたえる」能力、ネガティブ・ケイパビリティ。コロナ禍における多々の困難と複雑性を前にして、それでもそこにぐっと踏みとどまれる力をくれる本でした。
こちらは妻の2021年ベスト・オブ・ベストとのこと。「気にしすぎないで」と一口にいうのは簡単ですが、じゃあどうするの?と言われると結構難しいですよね。具体的に何から始められるかが丁寧に解説されています。
コロナ禍2年目で、メンタルの健康について考える機会が沢山ありました。「セルフヘルプガイド」とありますが、どちらかといえばメンタルバランスを崩した人の家族や友人がどう助けになれるか、という観点で読むのがよいと思いました。(タイに戻る前に妹に進呈してきたため手元になく、具体例を挙げられず…)
韓国併合期の歴史に関心があり、朝鮮史を網羅的、かつさらに深堀りしたいと思いKindleにて購入しました。すごいボリュームなのでまだまだ読んでいる途中です。中国思想史とはまた違う独自の発展を遂げてきた経緯が体系的に分かります。
本書と「夜と霧」はわたしのライフタイムベストなのですが、「それでも人生にイエスと言う」は今年タイでコロナ感染が爆発的拡大をした時期にたびたび引っ張り出して読み返しました。
人間はあらゆることにもかかわらず、人生にイエスと言うことができるのです。
長期に渡るコロナ禍、また「生きづらさ」が度々叫ばれる時代。尊厳を破壊しようとするあらゆる状況にも断固として抗い、ヘドロのような混乱の中でもびくともしない石になる、そんな強さが必要な時代になってきたと感じます。良書から得られる指針は、前進していくためのインスピレーションを与えてくれます。
今年は比較的よく本を読みました。チームビルディング・組織論に関する書籍や技術書などから得られた沢山の知見を業務にフィードバックできる機会がしばしばあったも楽しい経験でした。また個人的には Kindle から紙の本に回帰しつつある年でした(本棚増設中)。来年も新たな良書との出会いが楽しみです。