カンムは2024年2月に、新たなミッション「お金の新しい選択肢をつくる」を公表しました。ミッションを策定するに伴い、社内ではプロジェクトが立ち上がり、八巻や経営メンバーを中心に議論がされました。今回はミッションに込められた思いや背景について、代表の八巻に聞きました。
※当記事では同プロジェクトでファシリテーターとしてお世話になった、株式会社MIMIGURI コンサルタント/組織ファシリテーターの矢口様にインタビュアーとしてご協力いただきました。
ミッションの再定義は、事業多角化への第一歩。
▲新たに策定した新ミッション。内容が誤解なく伝わるよう、ボディコピーのロング版も用意された
矢口:ミッション策定をご一緒させていただきましたが、改めてミッションを再定義することになったきっかけについて教えてください。
八巻:これまで弊社はバンドルカードを主力事業に、toC事業のみで成長してきました。以前のミッション「心理的unbankedをソフトウェアで解決する」はtoC事業のみを想起させやすく、事業の多角化を目指すフェーズにおいては合わなくなっている部分があり、多様な事業を包括できるようなミッションが必要になりました。
矢口:再定義は事業多角化への第一歩というわけですね。今回「お金の新しい選択肢をつくる」に込めた意味や思いは、どのようなものがあったのでしょうか。
八巻:まず、新しさへのこだわりがありました。私自身「過去にないものをつくり、他の人をびっくりさせる」といった、ものづくりで人に良い影響を与えることに価値を感じています。
たとえば、バンドルカードはプリペイドカードとプロダクト自体はありふれたものですが、「アプリで、その場ですぐにつくれてしまう」というアプリを通したチャネル、体験そのものが新しいものでした。進化が起きにくいと言われる金融領域で、「新しいものを作って進化を起こしていきたい」という思いが、新ミッションには込められています。
お金の流れをスムーズにし、経済成長を促す
矢口:策定の過程で、「金融とは」についても定義されていましたね。
八巻:経営ボードメンバー全員での対話を重ねる中で、カンムとしての金融の存在意義を「経済成長を促すこと」、お金は「そのためのツールである」と結論づけました。
なぜ金融が世の中に必要かを紐解くと、「お金を移動しやすくし、経済成長を早くする」こと。「お金が移動することが最大の価値」なんですね。
たとえば、AさんとBさんがいて、AさんがBさんに家を建てるようにお願いをした。Aさんが100万円渡してBさんが100万円を得て、Aさんは家を得た。今度はBさんが、その100万円を、Aさんに渡して車を作ってもらった。そうなるとAさんの手元には100万円が戻ってきて家があり、Bさんには車がある。結局100万円自体は、増えても減ってもいないけど、家と車を手に入れられた……ということが経済です。
八巻:この「100万円を移動しやすくすること」が金融の一番の目的なのです。
経済において、これが停滞していると、経済活動が起きず非効率な状態になります。これを最適化し、お金が無駄になっていない社会をつくることが重要で、それには「お金の新しい選択肢」が必要だと考えています。
矢口:金融というツールで、経済を活発化させるようなイメージですか。
八巻:お金がぐるぐる回り続けていることが一番の最適解かなと思っています。今はそうなってない部分も目につきますから、さまざまな立場の人・企業に対し“お金の新しい選択肢”を提供することで、結果的にお金の流れをスムーズにし、経済成長を促していきたいと考えています。
日本のリソースにレバレッジを。起業して13年、次のフェーズへ
矢口:そもそも、金融を事業の根幹においたのには、どんな理由があったのですか。
八巻:創業のタイミングは25歳で2011年でしたが、日本のリソースにレバレッジをかける領域がいいかなと思って。当時、教育か金融で考えていました。
当時、日本の金融資産は1000兆円あって、その1%動くだけで10兆円のインパクトがありました。金融領域であれば日本のリソースにレバレッジをかけやすいことや、自分自身のデータ系のエンジニアの強みを活かせると考えて、金融を選択しました。
矢口:起業から13年が経ち、バンドルカードは1000万ダウンロードを達成するなど、toC事業が大きく躍進したと思います。今後、カンムはどのようなことを目指していきたいですか。
八巻:「全員が最適な金融を使えている社会」にできたらいいなと思います。最適な金融を使える社会が何かと問われると、個別具体の話になってしまうので割愛しますが。個人的にはカンムの事業によって金融が最適化されて、結果として日本の経済成長に少しでも役立てられたらいいのではないかと思っています。
矢口:起業当初から変わらない想いが根底にあり続けていて、その意味では今回のミッションの再定義は1つのマイルストーンを達成し、次に向かうためのステップのようにも思えますね。
言葉遊びではなく、ビジネスとして成り立つか。
矢口:ミッション策定のプロジェクト内では、「実態が伴っていない見せ方だけで綺麗なものは違う」や「見た目で表現するのではなくプロダクトで表現する」と発言されていましたね。
八巻:言葉遊びで終わるのではなく、ビジネスとして成り立つかが大事だと思っているからですね。ビジネスとして持続可能なものであるか。耳馴染みの良いことを掲げて規定すると、必ずどこかでバグが生じるものです。そのため、事業多角化に向けて動きはじめた段階である今は、ミッション自体にセグメントをかけるようなことはせず、進化の余白を残した内容に留めています。
矢口:いい意味で“スタートアップ感”だけで物事を押し進めていない、地に足のついた姿勢がありますよね。次回、ミッションを進化させるタイミングはいつ頃になりそうですか。
八巻:多分2パターンあると思っていて。「これだ」というワードが見つかった時と、事業の多角化が成功していた時ですね。特に後者の場合においては、今の主力事業であるバンドルカード並みの規模の新規事業が複数生まれている状態になったタイミングかと思っています。なぜなら、複数できた段階になれば事業創出にあたっての再現性も生まれ、それに向けたアプローチも一定固まってくる頃合いだと思っているからです。そうするとよりフォーカスすべきものが見えており具体的なストーリーを展開できると思います。
なので、まずはそれを見つけることがミッション。成長しつづけられる企業としてあり続けるためにも「お金の新しい選択肢をつくる」ことはマスト要件です。
矢口:では最後に、未来のカンムが成し遂げたいことについて教えてください。
八巻:日本の経済成長にカンムの事業で寄与していきたいです。経済成長の一番わかりやすい指標で言うならGDPの成長とかでしょうかね。これはもっと良い指標があるかもしれませんが、少しでも日本の経済成長に貢献していきたいと思っています。
矢口:ありがとうございました!