地元カンパニー、JTBと「JTB全国47都道府県の地元ギフト」で販売提携。
株式会社地元カンパニーのプレスリリース(2022年10月25日 16時00分)地元カンパニー、JTBと「JTB全国47都道府県の地元ギフト」で販売提携。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000092451.html
どうもこんにちは。地元カンパニー・代表の児玉です。今回は、当社の理念についてお伝えしたいと思います。
早速ですが、2022年から地元カンパニーでは、このようなビジョンを掲げています。
このビジョンを言語化できたとき、個人的にはかなりしっくりきたんです。そして、上場も必要だなと思うようになりました。
ただ、いかんせん概念自体が抽象的なんですよね。しかも、この理念に辿り着いたことと上場との関連性もわからない。だから、どうしてこの理念に至ったのか。ここで一度整理して、お伝えしておこうと思い、筆を執りました。
はじめに地元カンパニーという会社について簡単に紹介させてください。
当社は、長野県上田市に本社があり、全国の地域産品を扱うカタログギフト事業を中心にローカルプロダクトの流通DXに取り組んでいます。
私自身の結婚式の引出物で「ご当地グルメのカタログギフト」を引出物として配布し好評だったことをきっかけに、2012年に設立しました。
顧客は、結婚式の引出物などに使う個人から、企業の贈答品などに使う法人までさまざま。サービスとしても、被災地の産品を掲載した「復興支援のギフト」をリリースしたり、株式会社JTB様と提携して「JTB全国47都道府県の地元ギフト」を開発して全国のJTBグループ各店舗で販売いただいたりと、さまざまな取り組みを進めてきました。
「生産者のストーリーとともに地域産品を贈るカタログギフト」という切り口が世の中的に珍しかったからか、おかげさまで事業は徐々に成長。
テレビや新聞、雑誌などにも取り上げていただきました。
こう書くと、事業は順調に来ていたかのように見えるかもしれません。でも、その背景で徐々に悩みが生まれてきました。
私自身、アスパラ農家の息子だったこともあり「地域産品の流通」というテーマには強い関心があります。ただ「ギフト」という事業ドメインにどのようなモチベーションを抱けばいいか、次第にわからなくなってしまったんです。
起業当初は、約11兆円と言われる巨大なギフト市場に切り込んでいくことに高揚感があったかもしれません。ただ、6,7年ほど会社を続けるうちに次第に「どうして自分はこの事業をやっているんだろう」という迷いが生じてきました。でも、事業を辞めるつもりもないし、他の事業が成長しているわけでもない。
そんな中で、1冊の本に出会いました。それが『世界は贈与でできている――資本主義の「すきま」を埋める倫理学』(近内悠太著)という本です。
詳しい内容は、本を読んでいただければと思うのですが、私が感銘を受けた部分をざっくり言うと「お金が介在する(等価)交換は、即時的でその場で関係性が完結してしまう。一方で、お金が介在しない贈与は、受け取った人に健全な負債感をもたらし、いつか返済しようと思いながら生きるから、贈ってくれた相手との関係性はその後も続いていく」といったところでしょうか。わかりやすい話、誰かにおごられたら「いつか何かを返さなきゃ」と思う、あの感覚です。
抽象的ではありますが、なんだか人と人が生きていく上で大切な概念である気がして、贈与という行為のロマンを感じたんですね。一方で、世の中を見渡すとけっこう交換に埋め尽くされているなと。便利ではあるけれど、全部交換になってしまうと、ちょっと寂しいなぁと。
そう考えると、もともと贈与的な意味が込められている「ギフト」という事業への見方が広がるきっかけになりました。
あと、もうひとつ。
理念が生まれた2022年は、つらい事件や出来事がいくつもありました。お笑い芸人さんやタレントさんが自ら死を選んでしまったり、元首相が襲撃されたり。そうした方々と直接面識があったわけではないけれど、なかなか精神的に堪えてしまいました。
そんなとき、自分たちにできることはなかったのか、どうしたらそのような決断を踏みとどまってくれたのだろうか、といったことをどうしても考えてしまうわけです。
もちろんギフトひとつで根本にある悩みや人生の問題を解消できるわけではありません。でも、もしかしたら、「冬に楽しみにしていたリンゴが届くから」と少しだけでも決断を先延ばしにしてくれるかもしれない。それくらいであればできる可能性はあるはず。どうしてそのような関与の仕方ができなかったんだろうと自分の無力さを痛感しました。
ギフトは「地域産品の流通」のための手段だけではなく、「待つ」という概念を社会実装させる手段のひとつ。そう考えると、効率化やスピードアップにちょっと偏ってしまっている社会の重心をちょっといい方向に動かしていけるのではないかと思ったんです。そして、「待つ」という概念が広がることで、どんな社会にできるのかを確かめたいと思うようになりました。
「待つ」という概念をテーマにする上で、都市と地方の違いも鍵になります。「地元カンパニー」という社名を掲げている通り、地方の可能性はずっと考えてきたテーマでもありました。
地方の暮らしには、もともと「待つ」時間が組み込まれています。冬が越すのを「待つ」、野菜や果物が収穫できる季節を「待つ」、本数が少ない電車の時間を「待つ」。それに都市で生きるあなたの帰省を「待つ」こともそうでしょう。
地方は「待つ」ことを前提に暮らし、それをよしとしている。でも、都市部では「待つ」をできるだけ取り除こうという力学が強い気がします。
あと、私たちは地元に関する何かに触れると特別な感情をいただくことがあります。僕たちはそれを「地元エナジー」と名付けました。
たとえば、仕送りで送られてきたリンゴと都心のスーパーで買ったリンゴでは、手に取ったときの感じ方がなんとなく違う。帰省する前の自分と帰省を終えるときの自分では、世界の受け止め方がなんとなく違う。その差分が「地元エナジー」です。
地元にいるときは当たり前に感じていた、親から与えられる衣食住、地域の人たちからかけられる温かい声。そのありがたさに、上京してから気付くこともあるでしょう。そうして「地元エナジー」を求めるようになる。
「待つ」を宿した空気が流れている地元、自分を待ってくれる人がいる地元。そして、地元の空気や人に触れることを楽しみに待っている自分。目には見えないけれど、地元に触れるとき、たしかに僕たちはエネルギーをもらいます。
そんな「地元エナジー」が流通し、世の中全体に満ちたらどうなるか。多くの人の気持ちにゆとりが出るかもしれない。地元に触れることが楽しみになるかもしれない。そして、究極的には「待てる社会」に辿り着くのだろうと思います。
地元のリンゴが届くまで待とう。
横断歩道を急いで渡らず待とう。
子どもが泣いても気長に待とう。
……
地元カンパニーの事業を通じて、そうやって待てる人が増えたらいい。待てる社会に近づけたらいい。そうすれば、きっとつらいことがあっても明日まで待とうと思えるかもしれない。人生の辛い冬に耐え春を待とうと思えるかもしれない。
「待つ」という行為は、自分1人だけではなく、そこに“誰か”がいることが多いもの。“誰か”と会える日まで待つ、“誰か”からの贈り物が届くまで待つ、“誰か”が帰ってくるのを待つ……など。「待つ」は人と人との関係性を前提にしています。だから、ひとりぼっちにさせることがない。それが少しでも踏みとどまってくれる力になるかもしれない。
そんなことを考えて「待てる社会をつくる」という企業理念に辿り着きました。
「待てる社会をつくる」ためには、できるだけたくさんの人に「待てる」という概念に触れ、納得してもらう必要があります。だからこそ、取引の数を増やしたいし、たくさんの人と関わりたい。だから、上場もして多くの人にサービスを届けたいと思っています。
経済は、動力です。その仕組みを使うことで、自分たちの思想を大きく広げていくことができます。今のやり方のまま事業を継続させるのもいいかもしれないけれど、めちゃくちゃ時間がかかるだろうし、なんだか自分たちの全力を注ぎきれている実感が湧かなそうというか。そもそも脇目も振らず何かに没頭している状態でいたいんですよね。
「待てる」という概念を社会実装する事業の可能性は、カタログギフト以外にもいくつもあります。現在も、あとからお土産が届くサービスも開発していますし、ほかにも新たなサービスやプロダクトを増やしていって、「待てる」経済をつくっていけたらいい。
いずれにせよ、この「待てる」という概念を発見したことで、ずいぶん会社として目指す方向性が明確になりました。自分の迷いもなくなっています。
「待てる社会をつくる」。地元カンパニーは、この理念を実現させるために頑張ります。改めて、これからご期待のほどよろしくお願いいたします。