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エンタメ特化M&A仲介事業の責任者が重視すること、「徹底的な顧客への寄り添いは御用聞きではない」

冠 幸之介(かんむり こうのすけ)
大学卒業後、日用品メーカー営業に従事。次に広告代理店にて、営業/プロデューサー兼ディレクターとして勤務。その後、税理士法人系M&Aブティックにて、M&Aアドバイザーに従事。
現在は株式会社エイスリーで、エンタメ業界特化型M&A仲介サービスの責任者を務め、戦略立案・管理・M&A実務実行まで、一貫して担当。



唯一のエンタメ特化M&A事業で、経営改善、事業継承、販路拡大を支援

― エイスリー入社の経緯をお伺いさせてください。

私自身が非常に関心を持っていたM&A、広告、さらにエンタメの全てに関われると感じ、エイスリーへの入社を決めました。

元々は父が広告会社を経営していたこともあり、大学を卒業する頃から最終的に広告会社で仕事がしたいと思っていました。その為、自分で広告会社を経営するにはどういったスキルが必要かを逆算していった経歴を歩んできたという形です。

卒業後のファーストキャリアはメーカー営業です。広告はものを売るための手段ですから、まずはものが売れる現場を知ろうと考えました。広告会社は顧客が幅広い為、メーカーの中でも、商品幅が広い事を基準に就職活動しておりました。

次に広告代理店に入社し、営業/プロデュースやディレクションを学ぶことができました。しかし、経営に関する知識が足りていないと感じ始めたため、財務・法務・税務について学ぶことができ、且つ経営者の息子として事業承継に関わる事が出来る、M&Aアドバイザーにキャリアチェンジしようと考えました。

当初の予定では、M&Aアドバイザーを経てからは、自らが広告関連の会社を経営するつもりでしたが、ここでM&Aの面白さに気付き、M&Aと広告に両方携わっていたいと考える様になったと記憶しています。

そして、その両方に関わることができる環境が、エイスリーだったのです。さらにエンタメ業界全般にも私自身関心が強かった事と、今後成長性も高いと考えていたため、ベストな選択であると感じました。

― エンタメ業界に特化したM&A仲介事業は、他にはないですよね。事業を通じて、企業へどういった支援をされていますか。

大きくは、コロナの業績悪化に対する経営改善の支援、技術承継の支援、販路拡大の支援の三つです。

コロナの影響はこの業界に限ったことではありません。しかし、エンタメ業界は受注産業がゆえに、非常にコロナの影響を受けやすい業界だと思っています。

技術承継に関しては、エンタメ業界特有の課題であると感じています。
エンタメ業界には、企画やデザインなど無形商材が多く、そのため他の業界と比べると属人化しており、 再現性が難しいビジネスです。

企画やデザインは、プロデューサー、プランナー、ディレクター、デザイナー、クリエイターなどその方のスキルとセンスで成り立っており、個々独自の要素も強い為、技術継承をすることは非常に困難で、時間がかかるとされています。さらに、日本の企業の80〜90%が中小企業であり、中小企業の場合は人的リソースに余裕が無く、中々技術継承まで手が回らない状態が多々見受けられます。

― 技術継承が難しいと、顧客との関係値を継続することも難しいように感じます。

仰る通りで、どうしても「会社と顧客の関係構築」というよりかは、「個人と顧客の関係構築」になりがちな業界とも言えます。
例えば、社長が持つスキルやセンスがかわれて仕事を受注できており、社長が引退した途端に依頼がなくなることはよくあります。

先程お伝えした通り、技術の承継をおこなっていくことは、どうしても中小企業一社のリソースでは難しいところがあります。社長のスキルやセンスを引き継ぐための育成に手がまわっていなかったり、人員が不足していたり、採用や広告宣伝が必要だとしても資金が不足していたりといった問題があります。

― 販路拡大については、いかがでしょうか。

昨今では多少少なくなってきましたが、未だに大企業の仕事を受注するには、自社も一定規模の企業で無いと厳しいという状況は存在しています。どれだけ良いサービス/スキルを保有していても、そもそも検討の土台に載れない事はこの業界でも多々見受けられます。

それらの経営/技術承継/販路拡大問題を解決していくことが、私たちがM&Aを通じてできることと感じております。
例えばM&Aをおこなうことで、大手企業とタッグを組み、スキルを引き継ぐ人を採用する、適した人材に出向してもらう、資金を投入してもらって営業人材を増やすといった策があります。また販路でいうと、大手企業の顧客に対して、自社サービスを拡販したり、強化する事も可能です。そうする事で、一つの会社として、より強固になっていくと考えております。



お客様が成し遂げたいことに徹底的に寄り添う


― 経営課題の解決のためにM&Aの手段を選択する経営者はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。

M&Aに対してあまり良くないイメージを持っている経営者も一定数いるため、まだまだ多くはありません。しかし、ここ数年で非常に増えてきていると感じています。実際に国内のM&A件数も右肩上がりとなっております。
また、企業経営や業界で必要な経験・スキルがあるかどうかにかかわらず、わが子に継がせたいと思うのが親心ですが、M&Aが認知され始め、経営者の皆様の選択肢が増える事は、いち経営者の息子としても、非常に嬉しい事と感じています。

M&Aが認知され始めているとはいえど、M&Aアドバイザー自身が、業界に明るくないと話を聞き入れていただけないことがあります。M&Aアドバイザーは金融機関出身が多く、その場合は経営やM&Aに詳しくても、事業を理解することが難しい傾向にある様に感じます。(※勿論、金融機関出身でも事業知識が非常に多い方もいらっしゃいます)そのため経営者の方が「決算書には現れない価値を理解してもらえない、M&A仲介会社は信用できない」と感じている場合があります。センスやノウハウが重要となるエンタメ業界では、他の業界に比べてもその傾向が強いように感じますね。

― お客様に接する際に、何を重視されていますか。

お客様の本来の目的や成し遂げたいことに徹底的に寄り添うことです。よくこの話をすると、御用聞き営業と勘違いをされますが、性質はまったく異なると考えています。

まずはヒアリングを重視します。経営者の人となりや現在・過去・未来をお伺いして、過去の経験や現在の考え方などを理解します。お客様とのヒアリングを重ねていくと、本当に成し遂げたいことが見えてきます。

その後は並走しながら、目的達成に向けて伝えるべきことがあれば、きちんとお伝えします。私はM&Aのプロとして、お客様であっても目的とずれ始めていると感じたら、意見を伝えるタイプです。ただし、その際は必ずその理由も説明し、お客様にご納得頂く事が大切だと考えています。もしかすると、何も言わずにとりあえず進めた方が楽かもしれませんが、お客様に徹底的に寄り添う事で、最終的に最も信頼して貰えると信じています。

反対に、自分の売り上げのために取りあえず譲渡させようとするスタイルはお客様目線ではないため、私の本意からは外れる行動です。正直、M&A仲介は、インセンティブ制を導入している会社が多く、売上=自身の給与に繋がる為、他の業界に比べても、その傾向が強い様に感じます。
譲渡はあくまでもお客様のタイミングで、お客様がご納得された相手と行うものと私は考えています。これは、売上/利益を否定している訳ではなく、お客様の目的に徹底的に寄り添う事が、最終的には自身の数字にも繋がっていくと考えているからです。

自分のためではなく、お客様のためにしっかりとヒアリングをする。そして、お客様の役に立つことができる。満足したお客様から、しっかり報酬を払っていただける。そうすると、お客様も、私も、会社も充実する。そんな三方よしの状態を目指しています。

― 先ほど「プロとしてお客様であっても意見を言う」とおっしゃられていましたが、意見を受け入れてもらうほどの信頼関係はどのように築けるのでしょうか。

「心地よい関係性を作る事」と「プロとしての専門性を伝える事」を重視しています。

お話し好きな方であれば、徹底的に聞き役に回ります。言葉数の多くない方であれば、最初のうちはこちらから話しかけることでコミュニケーションを取り、徐々にヒアリングを増やします。相手にとって心地よい関係をつくることが、信頼関係をつくるファーストステップです。

次に、プロとしての専門性を提供します。信頼関係を築いた後に、相手の不安や疑問に対して、メリットデメリットだけではなく、その選択をする理由も含めてしっかりと説明をすると、さらに信頼関係を築けると考えています。(※本当はもっと色々と細かい内容はありますが笑)



顧客視点で頑張った人が報われるチームをつくりたい

― 普段どのようにチームで業務を進めていますか。

エンタメM&Aユニットのメンバーは計三名いて、各々で案件を進めています。週に一度のミーティング等によって、全員で案件状況を把握しています。M&Aアドバイザーとして経験が浅いメンバーに対しては、OJTとして自身のKPIの目標に対する進捗状況と今後どうなっていきたいか、今週の反省・成功事項について、週一で話し合っています。

― 今後、チームをどうしていきたいと考えていますか。

顧客視点で頑張った人が報われるチームにしていきたいです。

メンバーには、事業全体の数字に注目し過ぎるのではなく、自分がなりたい姿になるために夢を追いかけていてほしいと思っています。

全員で協力体制を取りながら、個々が自身の夢を追いつつ、一生懸命努力をする事で、お客様に貢献する、各々の目標を達成する、それによって事業や会社全体の利益が向上する、それが私のつくりたいチームです。

―事業に関しては、どのように展開していきたいと考えていますか。

現状は事業拡大フェーズで、開拓型の営業が多い為、今後はエイスリーのネットワークをさらに活かし、「エンタメ業界のM&Aといえばエイスリー」といわれるまで認知を広げ、お客様から自ずとお問い合わせをいただけるようにしていく事がベストと考えております。そうする事で、よりお客様へのサポートに時間を使っていきたいと考えております。

― 最後に、どのような方とこれから一緒にお仕事されたいと思いますか。

「自分だけの得ではなく、協力することによって成果が挙がり、全員(お客様/社員/会社)が充実する」という考えに共感いただける方に尽きます。スキルは入社後に身に付けることができるため、その気持ちがあれば活躍いただけると思います。


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エイスリー 代表取締役 山本 直樹 高校卒業後、ベーシストを目指して上京。音大を卒業後、パイオニアLDC(現NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社)で宣伝プロモーター、ホリプロでアーティストマネージャーを担当。その後デジタル領域に可能性を見出し、DGメディアマーケティングへ。2008年にエイスリーを設立。 ― ...
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