専門医ユーザーの行動・傾向を分析データによって可視化!ユーザーに寄り添い戦略を構築—ハート・オーガナイゼーション マーケティングコミュニケーション・荻原豊インタビュー
2019年4月にスタートした世界中の専門医から学べる学会・研究会プラットフォーム「e-casebook LIVE」は、当社の主力サービスとして転換を果たしました。現在では循環器内科、整形外科、脳神経外科などの専門医ユーザーが国内外で約25,000人登録しています。ユーザー数の拡大に伴い業務体制を整えるため、2020年8月にそれまでのセールス&マーケティング部が営業部となり、新たにマーケティング部が設置されました。新設部署でマーケティングコミュニケーションとしてジョインされたのが荻原豊さん。当社のマーケティングの特性や仕事のやりがいについて詳しくお話しを伺いました。
記事公開日:2021年5月28日
最終更新日:2024年11月12日
荻原 豊(おぎはら・ゆたか)
Web関連の現場で、主に大手企業のデジタル戦略のサイトリニューアル、運用、CRM、SEO戦略などの制作・ディレクション・プランニングに8年間従事。その後、事業会社に転職しマーケターとしてWebマーケティングの他にも顧客調査・PR・TVCMなど様々な施策を実行。2020年8月、ハート・オーガナイゼーション入社。新規ユーザー獲得、ユーザーの活性化などをKPIとした施策を実行。まさに「ブランド認知の仕掛け人」。
デザインから広がるキャリア、マーケティングの可能性を追求
もともとデザインに興味があり、専門学校でIllustratorやPhotoshopを学びました。それに加えて、HTML、CSS、JavaScriptを使ったコーディングの基礎も習得しました。卒業後は東京のWeb制作会社に就職し、大手企業を中心としたサイトリニューアルや運用業務を担当する中で、Web制作の基本スキルを身につけました。
その後、大阪に拠点を移し、Webディレクターとして東京時代にご縁のあった企業に就職しました。大手クライアントとのプロジェクトにも携わり、やりがいを感じる一方で、受託業務という性質上、クライアントの指示に従い制作・納品するところで完結してしまう点に課題を感じていました。「本当にユーザーにとって価値のあるものを作れているのだろうか」という疑問が湧き、次第に「ユーザーの行動を見据えたマーケティング施策を自ら考え、実行したい」という想いが強くなっていきました。
Webマーケティングの枠にとどまらず、ユーザー調査を通じて、どのようなユーザーに、どのようなメッセージを届けるべきかといった広範な視点でマーケティング活動を行いたいと考え、全国チェーンの店舗ビジネスを展開する企業に転職しました。マーケティング部の立ち上げメンバーとして参画し、刺激的な日々を過ごしました。
ここでは、経験豊富な経営陣とともに、マーケティングの基礎から経営に関する知識まで幅広く学ぶ機会を得ました。広報活動、マス広告(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)、Web広告、定量・定性調査、メールマガジン作成、サイトのUI/UX改善、アプリ制作、Web予約システム導入など、あらゆる業務に挑戦しました。常に新しい取り組みを行いながら、会社全体を動かしている実感を得られたことは、大きなやりがいとなりました。
将来性ある「医療×IT」分野で新たな挑戦
十分な経験を積むことができた今、自分のこれまでの経験をさらに活かせる場を求め、「ベンチャー企業」「成長ポテンシャルのある企業」「幅広いマーケティング活動が可能な企業」を軸に転職活動を進めていました。その中で出会ったのが、ハート・オーガナイゼーションでした。
ハート・オーガナイゼーションの事業領域は「医療×IT」。国内の医療IT市場は、2017年時点で約120億円規模でしたが、2023年には約250億円規模に成長すると言われています。今後も需要が拡大し続ける、まさに将来性のある業界だと感じました。
マーケティング活動において欠かせないのが「ユーザー理解」です。しかし、これまで医療業界で働いた経験がなかったため、「ユーザーの気持ちを十分に理解できるのか」と悩んだこともありました。それでも、「医療」と「IT」という大きな潮流に乗るこの会社で挑戦したい、活躍したいという想いが勝り、入社を決意しました。
自分たちが「医療従事者」でないからこそデータ活用が重要
現在、マーケティング部は代表、広報担当者、メルマガ担当者、そして私の4名で構成されています。この少人数のチームで、以下の3つの目標達成に注力しています。
①新規ユーザー数の最大化
②ライブコンテンツPV数の最大化
③ライブ問い合わせリード獲得
売上に直接紐づけるのではなく、ユーザーの行動をデータで可視化し、分析しながら施策を進めていく点が、マーケティング部ならではの特徴です。
当社のターゲットは、「医師」ではなく、その中でも特に「専門医」に絞られている点がユニークです。専門医とは、「それぞれの診療領域における適切な教育を受け、十分な知識と経験を持ち、患者さんから信頼される標準的な医療を提供できる医師」を指します。
当社の専門医ユーザーの診療科は、循環器内科、整形外科、脳神経外科など多岐にわたり、さらに同じ診療科の中でもライブコンテンツごとにターゲットが細分化される点が非常に特徴的です。例えば、「循環器内科の虚血性心疾患専門」や「循環器内科の不整脈専門」など、コンテンツによってターゲットが全く異なります。そのため、専門的なニーズに基づいたプロモーション施策を的確に打つことが求められます。そうでなければ、せっかくの取り組みも効果が発揮されない可能性があるのです。
部署目標を達成するための施策を検討する際、マーケティング部には医療従事者が一人もいません。正直なところ、社内を見渡してもユーザーである医療従事者の特徴を深く理解している人はいないと感じています。
私たちは医療従事者ではないため、ユーザーの気持ちを完全に理解するのは不可能です。さらに、診療科が異なる専門医をターゲットにするためユーザーの特性がライブ毎に異なります。そのため、簡単にヒアリングで解決できる問題ではないと考えています。だからこそ、ユーザーの動きをデータで可視化し、進捗のチェックや施策の振り返りを徹底することが何よりも重要なのです。
部署を越えて連携し、効果を共有。組織全体で成果を最大化する
これまでに取り組んできたプロモーション施策には、以下のようなものがあります。
・Web広告
・SNS広告
・ヒアリング調査
・ターゲティングしてのDM
・ライブページの概要説明文の充実化
・ブラウザプッシュ通知の導入
・メールマガジンABテスト(配信頻度、配信時間、件名、デザイン、CVボタンの色など)
・UI/UXの改善
これらの施策を実行する際には、まず部署内でスモールテストを行い、KPIに対する効果を検証します。その際、BIツール(データポータル)やGoogle Analyticsを活用して相関関係を数値化し、進捗を確認。効果のある施策を見極めて改善を重ね、専門性が異なるターゲット層にも効率的なプロモーション手法を確立させています。その成果は他部署にも共有し、会社全体の目標達成に貢献できるよう努めています。
具体的には、営業部にはユーザーをランク分け(ヘビー、ミドル、ライトユーザー)し、それぞれがどんなコンテンツに興味を持つかを分析した結果を提供しています。この情報をもとに、営業部が日々のコンテンツ企画に役立てられるようにしています。
キュレーターに対しては、ライブページの概要説明文の改善やメールマガジンのテスト結果を共有。また、ライブページ公開から配信当日までの日数と参加者数の相関データを分析し、ライブ参加者を最大化するベストプラクティスを提示。それをクライアントに提示して実施してもらうことで、顧客満足度の向上につなげています。
プロダクト開発部には、どのようなUI/UXであればユーザーが興味を持つコンテンツにたどり着けるかを提案。過去のデータやテスト結果を基にユーザー行動を分析し、仮説を立てて改善案を出しています。サービスの付加価値を高めるためにも、見やすさや体験の質を向上させる必要があると考えています。
DX化で月間ライブ本数が6倍に。医療課題解決への貢献がモチベーション
この1年、新型コロナウイルスの影響でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、ユーザーの行動が大きく変化しました。地方勤務で学会や研究会の開催地から遠く、参加が難しかった医師にとって、「リアル会場に行けない」という悩みがありましたが、e-casebook LIVEの登場により、オンラインで参加できるようになり、多くの喜びの声をいただいています。
さらに、オンライン学会・研究会では、リアル会場以上に必要性を重視した参加が進んでいるように感じます。純粋に勉学のため必要な人が集まっているのが、オンライン学会・研究会でありe-casebook LIVEなのです。その証拠として、ライブ視聴後にユーザーの臨床での行動が変わるというデータも取得できています。
e-casebook LIVEの月間ライブ本数は、2020年4~6月の平均が3本だったのに対し、2021年4~6月には20本へと約6倍に増加しました。本数だけでなく、ライブコンテンツの内容も多様化し、それに伴いユーザーの興味関心の幅も広がっています。今年は「ユーザー理解を深める」ことを徹底し、さらなるサービス向上を目指したいと考えています。
例えば、今後導入予定のコンテンツ管理システムでは、専門医ユーザーがどの分野に関心を持っているかをより詳細に把握できるようになります。放射線科の医師が循環器内科のコンテンツに興味を示すなど、新たな興味関心のパターンが見えてくるでしょう。これを活用することで、ユーザーに寄り添ったコンテンツのレコメンドが可能になり、ライブ参加(コンバージョン)につなげることができます。
「ライブ参加」は「最先端の知見を学ぶ医師の増加」を意味します。さらに、e-casebookは希少な専門医のプラットフォームであるため、ライブ以外でも新たなサービス展開の可能性が無限に広がっています。これからも医療課題の解決を支援するため、さまざまな挑戦を続けていきたいです。
「医師の知見をつなげて医療の格差をなくす」に挑む方、求む
「医師不足」や「医療の地域間格差」が深刻な課題として取り上げられる中、当社のサービスは医師の時間とお金を大幅に節約し、医療の発展にも貢献しています。これは非常に社会貢献性の高い取り組みであり、私自身の大きなモチベーションにつながっています。当社のミッションである「医師の知見をつなげて医療の格差をなくす」をまさに体現していると感じます。
また、喫緊の課題である2025年問題(※)の解決に向けても、当社は確実にその一翼を担っていると自負しています。もしこのミッションに共感いただける方がいらっしゃいましたら、ぜひ当社にご応募ください!一緒に医療の未来を創っていきましょう。
※2025年問題とは、第一次ベビーブーム(1947年~1949年)に生まれた「団塊の世代」が後期高齢者(75歳以上)となり、医療や介護などの社会保障費が急増することが懸念される問題を指します。主に「医療需要の最大化」や「高齢者人口の地域差」が課題として挙げられています。