価値あるプロダクトでニューノーマルを創る!外資系製薬会社から医療ITスタートアップに飛び込んだ理由—ハート・オーガナイゼーション第一・第二営業部ディレクター・畑中佑介インタビュー
2019年4月にスタートした医療技術の情報共有ライブ配信サービス「e-casebook LIVE」は、昨今のコロナ禍においても順調に売上を伸ばし、現在では前年比約390%まで伸長しました。さらなる事業拡大を見据え2020年9月、第二営業部が発足、それと同時に東京オフィスも立ち上げました。第二営業部ディレクター兼東京オフィス立ち上げメンバーとして就任したのが製薬業界をバックグラウンドに持つ畑中佑介さん。医療ITスタートアップである当社の強みと、未来の挑戦について詳しくお話しを伺いました。
記事公開日:2021年2月2日
最終更新日:2024年11月13日
畑中 佑介(はたなか・ゆうすけ)
外資系製薬会社のMRとしてキャリアをスタート。医師と製薬会社をWebで繋ぐデジタルマーケティングに大きな可能性を感じエムスリーに転職。製薬会社や地方自治体のデジタルマーケティング支援業務に従事。その後ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門であるヤンセンファーマとアクテリオンのデジタル部門の統括プロジェクトをリード。2020年9月、ハート・オーガナイゼーション第二営業部ディレクターとして参画。その後、第一・第二営業部部長となり製薬企業への提案や新規事業計画立案など、先陣を切って邁進中。
「アナログからデジタルへ」MRから医療IT業界への転職
大学卒業後、外資系製薬会社でMR(医薬情報担当者)として9年間勤務しました。そこで感じたのは、MRの業務だけでは限界があるということです。現在ではデジタルマーケティングが普及していますが、当時の営業手法はアナログで、医師にアプローチするために夜遅くまで病院の廊下で待機し、接待を行い、土日はゴルフをしていました。これまで価値が置かれていたこれらのアナログなアプローチが規制により徐々にできなくなったとき、私は「MRの本当の価値とは何か?」という疑問を抱くようになりました。MRとして提供できる価値は、実はデジタルを活用すればもっと広範囲かつ効率的に伝えられるのではないかと直感的に感じ、思い切ってその方向に進むことを決意しました。
その結果、MR時代から興味を持ち、企業研究をしていた医療従事者向けプラットフォームを運営するエムスリーに転職しました。この転職は非常に刺激的な経験となりました。
エムスリーでは、全社員が仕事のスピードが速く、論理的に物事を考える人たちばかりでした。MRというwetなコミュニケーションの世界で生きてきた自分にとっては、まったく異なる環境でしたが、その中で遅ればせながら社会人としての基礎、物事の考え方をしっかりと学びました。直近では、ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J)に転職し、デジタル統合のプロジェクトに携わっていました。
成長性のあるスタートアップへの入社を決意
ハート・オーガナイゼーションに入社したきっかけは、たまたま転職エージェントから紹介されたからです。転職活動中じゃないのに(笑)
実は、J&J時代に「e-casebook FORUM」という症例相談プラットフォームについて一度問い合わせをしたことがあり、会社名を見たときに不思議な縁を感じました。実際にCEOの菅原俊子さんと話をしてみると、完成度が高いプロダクトが存在し、私が入社することで企業の成長にどのように貢献できるかのイメージが湧きました。
また、withコロナ時代が到来したことにより、製薬業界でも大きな変化が起きていました。これまでは「デジタルが必要だよね」という認識から、「デジタルなしでは成り立たない」という状況に強制的に変わったのです。この変化に伴い、社内のさまざまなソリューションが見直され、ニューノーマルが試されるようになりました。
エムスリーに在籍していた頃、製薬業界では規制の影響でデジタルシフトが加速しました。現在、コロナ禍の影響でそのシフトがさらに加速していると実感しています。新しい時代を迎えるこのタイミングで、既に競争力のあるプロダクトを持つ企業に、新事業の責任を任されることに、断る理由はまったくありませんでした。
価値あるプロダクトだからこそ、医療フィールドで戦っていける
医師向けライブ配信サービス「e-casebook LIVE」について、私が驚いた点は2つあります。
1つ目は、ライブ視聴者の視聴時間の長さです。配信開始から5分以内に視聴を中断する割合が、e-casebook LIVEではわずか7%という結果になっています。この数字は、一般的な医療プラットフォームと比較しても、非常にインパクトがあると感じています。医師が本当に見たいコンテンツがe-casebook LIVEにはあるということが、数字で明確に示された結果だと思います。
2つ目は、プラットフォームを活性化させるために、医師へのインセンティブ(例えばポイント制など)を一切導入していない点です。この時代において、非常に珍しいアプローチだと感じました。e-casebook LIVEは、純粋に医師が自発的に参加したいと思えるプラットフォームとなっており、コンテンツの魅力だけでここまで活性化しているという事実には、改めて驚かされました。
明確な差別化で市場に挑む
また、入社後に当社のプロダクトの強みについてゼロベースで考えたことがありました。マーケティングにおいて「バリュープロポジション」という概念があります。
「競合他社が提供できる価値」、「自社が提供できる価値」、「顧客が望んいでる価値」、この3つの要素が重なった部分が、自社だけが提供できる独自の価値となります。私たちは今後、どのような状況においても、この価値を事業の柱として追求し続ける必要があると考えています。
現段階で導き出した結論は、以下の3つの要素です。
① ライブ配信プラットフォーム
② 学会・研究会を配信するプラットフォーム
③ 専門医のためのプラットフォーム
例えば、他の医療系プラットフォームは、当社とは異なるバリュープロポジションを持っているはずです。もちろん、他社には当社が実現できない価値もありますが、大切なのは、このバリュープロポジションを今後も維持し続けられるかどうかです。競争力のないプロダクトでは、この領域は次第に縮小していきますが、逆に他社が実現できない世の中のニーズを形にできれば、ここは大きく拡大する可能性を秘めています。
個人的には、当社のバリュープロポジションは非常に明確であり、それによって差別化が可能で、価値提案も容易だと感じています。さらに、この部分を拡大するために何ができるのか、日々考えています。
専門医にアプローチできるメディア「e-casebook LIVE」を武器に製薬業界を攻める
これまで、e-casebook LIVEの主な利用者は医療機器メーカーでしたが、今後は製薬会社にもこのサービスを認知してもらい、ソリューションの選択肢の一つとして取り入れてもらいたいと考えています。
では、製薬会社にどのように活用してもらうか。それには、現在のアンメットメディカルニーズ(治療法が未確立の疾患に対する医療ニーズ)の変化を理解する必要があります。10年前に存在したニーズ、例えば「高血圧」や「脂質異常症」などの生活習慣病の薬は、ある程度進化し、今では多くの患者がコントロールできる時代となっています。現在のニーズは、「がん」「精神疾患」「希少疾患」などであり、これらの疾患に対する治療薬はまだ開発段階にあるものが多いのが現状です。
重要なのは、これらの治療薬を処方するのはかかりつけ医ではなく、主に専門医であるという点です。さらに、個々の薬は狙っている標的分子が異なるため、それぞれに特有の特徴があり、より高度な知識が求められます。製薬会社は、これまで以上に専門医にアプローチし、各薬剤の特性を明確に伝えていく必要があります。
その点で、e-casebook LIVEの「専門医のためのプラットフォーム」という特徴は、今のニーズに非常にマッチしていると感じています。私たちは、医師ユーザーにとって価値あるだけでなく、製薬会社にとっても情報伝達の価値があるプラットフォームを目指していきたいと考えています。
入社すればおのずと挑戦が待っている
当社は従業員が25人程度の小さな組織なので、個々の社員には自ら考え、意思決定を行うことが求められます。指示を待つのではなく、自分から積極的に動きたいという方にフィットする環境だと思います。そのような方には、期待以上の機会が訪れることでしょう。
私たちはそれぞれが異なる得意分野を持つプロフェッショナルの集団です。そのため、各人の強みを尊重し、個々の力を活かしながらチームとして成果を上げています。私は、マネジメントというよりも、その人が最大限に力を発揮できるよう、全力でサポートする立場にあります。
当社は、数年内にさらなる成長を目指しており、そのためのKPIが設定されています。営業部門においても高い売上目標が求められ、SaaSスタートアップによく見られる「T2D3」(Triple, Triple, Double, Double, Double)というスケール感とスピード感が求められます。非常にチャレンジングな環境ではありますが(笑)、それがこの会社の魅力の一つでもあります。
もちろん、売上を達成することが最大の目標ですが、それを達成するためには単にサービスを販売するだけではなく、新たなサービスを創出することも必要です。営業という枠にとどまらない、広範囲な業務を実際に体感できることが、売れるプロダクトを擁している当社の大きな魅力だと考えています。
ニューノーマルが確立されるまたとないこの機会に、ぜひ一緒にエキサイティングな事業拡大を体験しましょう!