新規拠点立ち上げ、経営、上場とビジネスパーソンが憧れるキャリアを積んできた翠さんが少し立ち止まって今後の人生を考えるために向かった場所は宮古島でした。島での出会いや心境の変化、仕事観・人生観が大きく変わったお話を伺います。
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今この時を楽しむことの大切さに気付く
拠点立ち上げや人事コンサルティング、買収企業の経営や上場など、20年以上に渡って多くの学びを得た半面、家族との時間や仕事以外への投資などプライベートを犠牲にしてきた状況もありました。退職を「人生を見直す好機」と考え、ゆっくりできる時間を過ごす場所として選んだのは、行ったことがない宮古島です。
考え事と決断で緊張感がある日常と宮古島での暮らしは対極的なものでした。海と青空に囲まれてゆっくり流れる時間に、同じ日本ながら異世界にでも居るような感覚を味わいました。不思議と退屈さや焦りなどはなく、宮古島に早く馴染もうという気持ちが湧いてきました。島に親しむために現地の方が集う飲み屋を巡っていたのですが、数週間もすると飲み歩きで忙しくて仕事を思い出すことすらなくなりました(笑)。気が付くと毎日飲みや遊びの誘いが来て、町を歩いていると知り合いと会うような状態になっていきました。
宮古島での人付き合いは、会社名や地位・肩書、収入といったことは全く関係なく、1人の人間として「その人自身の人間性」で関係が深くも浅くもなります。そして、宮古島で出会った人たちは仕事以外の日常や仲間と過ごす時間をとても大切にしていて、今この時を生き生きと楽しんでいるように見えました。私が今まで走ってきた世界とは違うルールや価値観に戸惑いながらも、とても根源的で人間らしい生き方や人生の楽しみ方、人と人とのつながりがそこにはありました。私は先々のキャリアや仕事の「べき論」を追い求めるがあまり、今を楽しんで生きることを後回しにしていたかもしれないと、彼ら彼女らから学びました。
手がけたいのは「心豊かに生きる人を増やす事業」
本音を言えばもっと宮古島に滞在していたい気持ちがありましたが、当初に決めていた2ヵ月がたって東京に戻りました。戻ってきて少し落ち着いたころから、一緒に働こうと誘ってくれていた経営者の方々とお会いしたり、興味が持てる会社のお話を伺ったりと徐々に次の進路を考え始めました。当時は農業やエネルギー、教育や高齢化社会といった社会課題を解決するサービスなど、世の中に大きく貢献できる会社を見ていました。
どの会社も壮大なテーマがあり素晴らしいサービスではありましたが、決断には至りませんでした。当初は自分でも決断しきれない理由が分からなかったのですが、自分が「何をしたいのか」よりも「何をやるべきなのか」という思考に捕らわれているのだと気付きました。社会課題の解決にも大義を感じますが、宮古島で出会った人たちや価値観に触れて「日常を心豊かに過ごす、より良く生きる」ウェルビーイングの考え方に強い意義を感じ、方針転換をすることにしました。
社会的にもコロナ禍で自ら命を絶つ方が増えていたり、「トー横キッズ」と呼ばれる居場所なき若者が関わりを求めて街に集うといった世の中の動きを見るにつれ、経済的には豊かになっても、人のつながりが希薄化したり、日常に虚無感を抱える人が日本中に拡がっているような問題意識もありました。
「私の好きな会社だから会ってみてほしい」
転職軸の輪郭が見え始め、改めてフラットに企業を探していたところ、ヘッドハンターの方から「私の好きな会社があるので、社長と一度話をしてみてもらえませんか?」と、カメラブ株式会社を紹介いただきました。
正直な話を言うと私はそれまでカメラに触れた経験はなかったですし、カメラのサブスクというニッチなサービスを今後どうやって成長させるんだろうと内心では思っていました。しかし、代表の高坂さんと今後の構想をお話していくなかで、私の予想は良い意味で裏切られました。
カメラブが目指している世界は、生きがいや人生の思い出づくりを支援する『感動体験のプラットフォーム』であり、今後はカメラ以外の商材・領域にも積極的に事業を展開していく方針です。単なるモノ(カメラ)の提供に留まらず、コト(ハマる体験や人のつながり)やトキ(次世代教育や環境保護)の機会提供にも力を注いでいるからこそ生まれたユーザーとの強い結びつきにも大きな魅力を感じました。また、ベンチャーらしからぬ細やかな戦略やビジネス特許をとるといった堅実さには、これまでの試行錯誤や苦労の中で成長してきた経営の工夫が感じられました。
この事業であれば私が手がけたかった「心豊かに生きる人」を増やすための支援ができる、そう確信してカメラブへの入社を決めました。
会社も個人もハッピーな未来を目指して
入社してまず感じたのは人の温かさです。事業にまっすぐで、ユーザー思いのメンバーばかりなんです。カメラブは事業の提供価値をまず従業員に感じてもらうために、カメラを気軽に利用できる制度があったり、家族や仲間との時間を大切にしてもらいたいと考えているので休みを取って旅行にいったりする人も非常に多いです。
私は新たに経営企画室を立ち上げ、事業戦略や中期経営計画の策定、人事総務部と連携して組織強化や広報強化に携わっています。急成長が求められるフェーズにおいても、従業員がプライベートを犠牲にしない働き方を実現するために、全社一丸となって課題に挑む組織づくりや、労働集約にならないためのレバレッジの効いた戦略づくりを推進していきたいと考えています。
人材ビジネスや人事コンサル、CHRO、経営へとキャリアを歩んできましたが、私は人事の専門性を極めていくようなスペシャリストタイプではなく、事業をグロースさせるためにどんな選択肢が持てるか、自身の引出しやネットワークであらゆる手を尽くしていくゼネラリストタイプです。カメラブではCSOという役割をいただいていますが、経営者の立場になったつもりで事業・組織に関わりつつ能力を磨き、持っている失敗や成功体験を組織に還元していきたいと思います。
決して簡単な道のりではなく山あり谷ありだと思いますが、カメラブの仲間たちと共にしっかりと成果を出して前進し、折々でサービスの未来を語りながら美味しいお酒を飲めたら最高ですね。
翠さんと一緒に働くメンバーは「課題を正確に捉えて解決策を提示してくれる翠さんは痛いところをズバリと当てる整体師のような方です。カメラブの拡大フェーズにとても心強いです」と話します。翠さんは経験に裏付けられた正確な推進力で、カメラブの中心人物として事業を推し進めています。ロジカルさと温かさがナチュラルに両立しているという評判も多い翠さん。ビジネスシーンにおいて一線で活躍してきた実力と宮古島で変化した人生観が深く関係していそうです。翠さんがカメラブに参画したことでビジョンを実現するために必要な戦略がより強化され、一層サービスが拡大していきそうです。