地中構造物に作用する地盤反力に関する研究委員会 | 研究委員会 | 日本地震工学会(JAEE)
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母国イランでは、国家レベルの問題解決を行ってきたエリートのタレビ博士。これまでに国内外で数々の賞を受賞してきた。
彼のキャリアは、日本からイランへ、アカデミアから産業界へ、構造エンジニアからデータサイエンティストへという3つの転換期があった。
国や研究環境、業界を超え、工学分野を横断して積み上げてきた経験やチャレンジが今のタレビ博士へとつながり、ヒラソル、そして再生エネルギーの未来を背負っている。
母国イランでは国家レベルの問題解決を行う構造エンジニア
タレビ博士はイランでは5年間、構造エンジニアとしてシミュレーションや構造設計のインストラクターとして務め、エンジニアの知識を磨いてきた。彼の専門は建築物や地下鉄トンネルなどの地下構造物を中心とした建築設計分野だ。当時のキャリアのハイライトは、故郷の地下鉄トンネル・プロジェクトに3年間携わったことである。期間中、建設現場で3キロにわたってトンネルの覆工に亀裂が入ったためプロジェクト遂行は困難を極めたが、タレビ博士はこの研究に力を注いだ。兵役を免除され、イラン国家エリート財団からの報奨金を受けながら、この複雑な問題解決に取り組み、革新的なアプローチを見出したのである。結果として、タブリーズ市の地下鉄2号線トンネル20キロメートルの再設計が18カ月以内に実現した。 その後タレビ博士の専門知識や功績は、京都大学の教授の目に留まることとなった。教授が彼と議論するためにイランの故郷を訪ねた。この出会いが彼のキャリアの軌道を変える原点となった。以前より日本の大学と共同研究を行い、日本への長年の関心を示していたタレビ博士は、日本での博士課程への招聘を受けることを決意した。文部科学省奨学金の全額給付を受け、地震研究で世界的に有名な京都大学の地震・ライフライン工学研究室のメンバーに加わった。
研究者から産業界へ、構造エンジニアからデータサイエンティストへ
来日後、タレビ博士は、アカデミアから産業界へ、構造エンジニアからデータサイエンティストへと転身する。知識やモチベーションのベースとなったのは、世界トップクラスの地震・ライフライン工学研究室での研究とアルバイトの経験である。
京都大学の研究室では、地下構造物への地震の影響を評価するための解析的、数値的、実験的手法を開発し、新しい数理モデルを作成した。それと同時に、プログラミング開発のアルバイトをしながらデータサイエンス分野への興味を育み、今のキャリアにつながるスキルを磨いた。
京都大学大学院工学研究科博士課程を修了後、同研究室にて短期間ポスドクを務めた後、タレビ博士は自分のスキルを有意義な形で生かしたいという思いから東京の企業に転職し、構造エンジニアとデータアナリストを兼務した。そこでは太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギー分野に携わった。当初は、風力エネルギーのデータに重点を置いた。そのうち風力エネルギーのデータ分析プロジェクトの実績が際立ってきたため、構造物関連のプロジェクトは減少した。このようにしてタレビ博士のリーダーシップの下、データサイエンス専門チームが結成され、彼はデータ・サイエンティストのプロとしての道を歩み始めることになった。
イランから日本へ、アカデミアから産業界へ、構造エンジニアからデータ・サイエンティストへーこれまでの経緯を見てもらえれば、タレビ博士のヒラソル・エナジー株式会社でのキャリアのスタートは必然なことかもしれない。彼のヒラソル入社により、研究開発を中心としたデータサイエンスチームが立ち上がった。ヒラソルの仕事環境は大学の研究室を彷彿とさせつつ、産業界とは一線を画したものだった。働くスタッフは皆オープンマインドで、持続可能な未来のための研究に打ち込む、いわば高い教育を受けた国内外のプロフェッショナルで溢れており、非常に興味深いものだった。再生可能エネルギー産業、特にヒラソル独自の、アカデミアと産業界のユニークな融合は、社会貢献という使命と相まって、タレビ博士の目指す世界と専門知識とに見事に合致した。
ヒラソルで活かせる二刀流。これから実現したいこと。
タレビ博士はヒラソルで働くやりがいをこう語る。「自分の研究が社会の課題解決につながることに誇りを感じている。」 チーフ・データ・サイエンティストとして、研究側面でのデータ探索と、具体的な製品を生み出す産業的な仕事を両立させている。大学の研究は実世界での応用に直結しないことが多いため、この2つの能力が実現してこそ真の価値があると考えているのだ。
また、博士の専門知識はデータ・サイエンスにとどまらず、構造工学にも根付いているものである。データサイエンスと構造工学の両方をカバーする彼の幅広い知識と経験は、多面的なキャリアを反映しているのはもちろんのこと、ヒラソルで存分に生かされている。具体的には、老朽化した太陽光発電所のリパワリングや新規発電所の設計・監理についてもタレビ博士が担当し、構造チームと緊密に連携している。この2つの職務は、データサイエンスの複雑さと構造工学の実用性を組み合わせたアプローチとも言え、まさにヒラソルで活かされる「二刀流」と呼べるものだ。
さらにタレビ博士はヒラソルがアカデミアのような研究と産業への応用をユニークに融合させている点を高く評価している。より高効率で低コストのエネルギー生産方法を革新することで、イランから日本まで、複数の工学分野にわたる様々な経験が結実し、社会の改善に直接貢献することができる。
まさに博士の仕事は国境を越え、工学分野を横断した大学研究と産業実務の相乗効果を証明するものであり、これからもその可能性を追究していくものと言える。
自分の内にあるエネルギーをこれからの未来社会のために活かしたい。
昨今の再生可能エネルギー政策の変化に伴い、タレビ博士とヒラソルのチームは、この大きな変革に備え、会社と社会の成長の両方に力を注いでいる。具体的にはデータ、人工知能(AI)、統計モデルを用いて政策の変化をシミュレートし、ツールを準備し、顧客と会社にとって最も経済的に実行可能でエネルギー効率の高い解決策を模索している。
ヒラソルが最も注力しているのは、日本全国に数多くある太陽光発電所のパフォーマンス改善だ。PCSやPVモジュールから、ケーブルや劣化、シェーディング、ディレーティングなど、さまざまな問題を網羅する発電所内の問題を特定するために、高度なデータ分析を行っている。タレビ博士は、電気料金の請求書と衛星データだけを使って、リパワリングが必要な発電所を遠隔地から検出できる方法を開発した。この革新的な手法により、コストのかかる専門家による現地視察の必要性を減らすと同時に、リパワリングが必要な地域を効果的に特定することができる。彼はこの分野で広範な研究を行い、太陽光発電所の将来のエネルギー生成に関する予測モデルをいくつか作成し、高い評価を得ている。
タレビの仕事の核心は、社会にプラスの影響を与え、よりクリーンな地球に貢献したいという強い願いである。彼は、自身の専門知識と経験を活かし、チームと協力しながら、より大きな社会問題に取り組むことに全力を注いでいる。タレビ博士にとって、こうしたエネルギー問題を解決し、エネルギー発電の効率を高めることこそ、自分が残すべき究極の遺産なのである。
専門的な活動に加え、科学界への貢献を目指し、タレビ博士は日本地震工学会(JAEE)の地中構造物に作用する地盤反力に関する研究委員会のメンバーとして名を連ねている。そこでは、大学教授や研究センター代表など、その分野で功績のある方と協力し、地下構造物に対する地震活動の影響を評価するための標準化された方法を開発している。最年少かつ唯一の国際メンバーとして、トンネルやパイプなどの地中構造物に対する地盤反力評価を進める上で不可欠な存在となっている。
<編集後記>
タレビ博士が携わった仕事について、最近のエキサイティングなニュースを紹介したい。当社ヒラソル・エナジー株式会社が、太陽光発電所の発電量を予測するAIコンペティションで受賞したのだ。
この受賞は、博士が深い専門知識を持って幅広い分野に関わってきた証とも言える。具体的にはモデルの改良と開発、機械学習(ML)モデルの開発、前処理とデータクリーニング、入力気象予報データの準備に関する研究で貢献した。彼のスキルは、これらのモデルのトレーニングや発電所の発電量予測にも役立った。
タレビ博士の高度な技術と知識、そして「未来社会への妥協なき姿勢」は、私たちの地球という星の未来のための持続可能なソリューションに貢献し続けるだろう。