東京大学 FoundX は東大卒業生の起業家向けに個室やサポートを提供する無償のアクセラレータープログラムです。2019年4月にFoundXがスタートし、1年強が経ちました。今回はFoundXを立ち上げた馬田に、立ち上げ時の苦労話や現在の状況、これからのFoundXについて、1年経ったいまだからこそ考えていることを聞きました。
ー簡単に自己紹介をお願いします。
馬田隆明と言います。東京大学の産学協創推進本部で、スタートアップ支援をするチームに所属しています。
足りない支援を埋めるためのFoundX
ーFoundXはどういった経緯でできたのでしょうか?
経緯を説明するために、少しだけ前の話をさせてください。もともと私は2016年から東京大学本郷テックガレージという場所を運営していました。本郷テックガレージは学生の皆さんが技術的なサイドプロジェクトを行うための場所で、今も運営しています。
本郷テックガレージでは起業ではなく、学生時代に技術的な製品開発のプロジェクトをしてもらうために作りました。そうすることで、製品開発の経験が得られるだけではなく、将来何かを始めたいと思ったときの仲間も見つけることができるかもしれないからです。これは10年後の起業家育成を見据えた長期スパンでの取り組みでした。
とはいえ、その中から起業する学生の皆さんもいました。しかし起業直前直後を支援する良いプログラムが大学にはそれほどないということに気づきました。東京大学のインキュベーション施設に入るためにはそれなりの条件が必要で、一方すぐに投資を受けようとしても、まだまだ初期段階なので中々良い条件で投資をしてもらえるわけではありません。もう少し長いスパンで製品開発をしたほうが良い場合も多くありました。
それに加えて、東京大学ではアントレプレナーシップ教育を十数年続けてきており、卒業生の皆さんが起業を始めようとしているタイミングでした。このタイミングで起業直前・直後の支援を行うことは、現役学生や卒業生にとって意味のあるものだと思えました。
ーFoundXをはじめたときの反響はどうでしたか?
東京大学が新しいことを始めた、という感じでしょうか。プログラムの内容とは全く関係はないのですが、「チムニー跡地」というのが東京大学の卒業生には刺さったようで、そこを取り上げていただく方も多数いました。(※ FoundX は本郷三丁目のチムニーの跡地にあります。)
ーFoundXのコミュニティはどのように大きくなっていったのですか?
東大卒の起業家の皆さんからの紹介や、入っていただいた起業家の皆さんや起業家候補からの紹介で徐々に大きくなってきています。
ー立ち上げ時に大変だったことはありますか?
起業の最も早いフェーズを支援するため、かなりリスクが高く、おそらくファンドの形で行うとリターンは発生しないので、運営資金をどうするかという点が課題でした。そのためリターンを期待してもらわない「寄付」という形での資金調達に挑んだのですが、ご賛同いただける企業を見つけるのが大変でした。ただ、ご賛同いただけた企業様が複数社いらっしゃり、思いを共にしてくれたのは本当にありがたかったです。
(FoundX のコワーキングスペースはこんな感じです!)
もっと多くのスタートアップを支援していきたい
ー今後のFoundXはどうしていきたいですか?
もっと多くのスタートアップを支援していきたいと考えています。長期的には起業家の数を増やしたいと考えており、そのためにオンラインでの活動などで広くリーチしていきたいと思っています。そしてスタートアップと同様に、可能な限りスケールする仕組みを整えたいと思っています。FoundX Review や FoundX Online Startup School などはその取り組みの一環として続けています。
(※ FoundX Review ではスタートアップやエンジニアの方に役立つ翻訳記事を配信しています。FoundX Online Startup School ではスタートアップの型に関するのオンライン講義集。 無料ですべてご覧いただけます。)
ーFoundXのPre-Founders/Founders Programへ参加するチームにはどういう方が多いですか?
技術を強みに持つスタートアップか、顧客の持つ課題の解像度が高いチームが比較的多めのような気がします。あとは特定の領域に熱い思いを持つチームなどが多いですね。
ー今後はどんなチームを採択していきたいと考えていますか?
社会的インパクトを目指しているチームをもっと採択したいと思っています。
( FoundX の個室はこんな感じです!最大4人まで入れます。)
同じフェーズの仲間が周りにいることで成長できる環境を提供する
ー馬田さんが考えるFoundXのおすすめはどんなところでしょうか。
FoundX では無償で個室を提供しているので、同じフェーズの起業家が自然と周りにいる、というところだと思います。偉大な先輩起業家からは根本的な教えを貰えると思いますが、新鮮な知識やノウハウは同じフェーズの人たちから教えてもらうことのほうが多いのではないでしょうか。それに日々小さなことを相談しあえたり、お互い大変なんだなと知ると、少しだけ気が楽になります。そうした環境に身を置くことで、起業家としての成長と精神的な安定を伸ばしてくれるのではないかと思います。
また大学が行っているプログラムということもあり、東京大学の卒業生の皆さんが快くサポートしてくれます。これはほかの営利企業のプログラムだとなかなか難しいと思うので、大学ならではの強みですね。
ー最後に、FoundXへ応募を考えている方へメッセージをお願いします。
ぜひ FoundX の Letter や、プログラムページの説明書きを読んでみてください。私たちの求めるスタートアップについてお話ししていますし、応募の際のヒントになると思います。