子育て家庭において、37.5℃以上の熱がある病気の子どもの預け先が極端に少ないという「病児保育の受け皿不足問題」。
それを解決するため、フローレンスは2005年に日本初の「訪問型病児保育事業」をスタートし、2022年4月には累計病児保育提供件数は10万件を突破しました。そんな病児保育サービスの裏側を支えているのが、ソーシャルテック事業部システムチームです。
”世の中の「しんどさ」を、テクノロジーと探求心で「豊かな時間」に変換する”というミッションを掲げ、日々奮闘しています。
病児保育のシステムは会員管理から病児保育の予約、サービス利用料のご請求まで多岐にわたっており、サービスのあらゆる側面をSalesforceを活用した仕組みによって支えています。2023年1月、利用会員のみなさんからのご期待が大きかった「クレジットカード決済」がついに導入されました。
中心となったのは、病児保育事業部の市倉と髙橋、そしてシステムチームの細野と水村です。その4人に、プロジェクトを振り返り、座談会形式でざっくばらんに語ってもらいました。
どんな大変なことがあったのか、それをどのように乗り越えたのか、そして、フローレンスならではのポイントとは?
病児保育のクレジットカード決済導入プロジェクトの裏側を、どうぞご覧ください!
―最初に、クレジットカード決済導入プロジェクトが立ち上がった背景を教えてください。
髙橋:これまでフローレンスの病児保育を利用するには銀行口座登録が必要だったんです。ただ口座登録の手続きが煩雑で途中で辞めてしまう方が多くいらっしゃいました。
市倉:実際に入会手続きを開始された方の2割近くが口座登録の段階で離脱してしまっていました。
髙橋:他社のサービスではクレジットカード決済が使えるところが多いので、その点でも導入を進めたかったのです。
―実際に、病児保育会員さんからクレカ決済に対応してほしいという声もあったんですか?
髙橋:結構問い合わせが来ていました。アンケートでもクレジットが良いというお声もいただいていたので、会員さんのニーズとしてもやはり大きかったです。
―そんなクレカ決済を導入するために結成されたチームの体制について教えてください。
髙橋:私は病児保育事業部の請求担当なので、運用の担当者としてアサインされました。具体的には、なるべく業務工数が減るような新しい業務フローを書いたり、利用会員さんにとって分かりやすい画面のレイアウトを考えたりと、業務側の設計を担当しました。
病児保育事業部会員チーム所属。競技ダンスの名手。
細野:僕は2022年4月入社なんですが、入社2週間目ぐらいの期待役割面談でマネージャーから「細野さんの役割はこれです」と伝えられたのが最初の関わりです。プロジェクトの開始の段階から入らせてもらい、要件定義や設計、テスト、開発ベンダーさんとのやり取りから、リリースの準備とリリース後のフォローまでやらせていただきました。
ソーシャルテック事業部システムチーム所属。熱狂的なサッカーファン。
市倉:私はプロジェクト・マネジャーとしてアサインされたのですが、最初は「今まで関わったことのないシステム系のプロジェクトだ、やばい!」と思いました。システム自体も複雑なので、私は進捗管理、リソース管理、マネージャーとのコミュニケーションなど分かる話にフォーカスすることにしました。ただみなさんプロフェッショナルなメンバーで進捗遅れなどもなかったので、安心して進めることができましたね。
病児保育事業部会員チーム所属。双子家庭向けのシッターサービス「ふたご助っ人くじ」の事業開発者でもある。
水村:私はテスト仕様書の作成とテストの実施をしました。2022年の10月頃から関わらせていただきました。ソーシャルテック事業部システムチーム所属。可愛いものが大好き。
―実際にプロジェクトはどのように進めていきましたか?
髙橋:私は新しいシステムを導入するのが初めての経験だったんです。新しいことへの不安は大きかったですが、細野さんが以前クレジットカード決済導入の経験があったので結構安心感がありました。細野さんが入社直後だったので、プロジェクトを始める前に、Salesforceの動きや、業務フローを一通りお伝えすることから始めました。
細野:まずは既存の業務やシステムを理解したかったんです。
髙橋:プロジェクト全体のMTGだけじゃなく、別途2人で実務者MTGを開催していました。その中で、ふんわり考えていることを、細野さんに壁打ちしてもらうことで整理することができました。
例えば入金管理をする際に口座振替のパターンとクレジットカードのパターンで条件分岐が発生するので、どのように管理するのが良いか悩んでいたときに、細野さんがざっくり書いた要望を細分化した上で、運用面も踏まえながら複数案を提示してくれるようなコミュニケーションを取ってくださったんです。それによって考慮漏れがなくなり、効率的に進めることができました。
細野:あの時間は良い機会でした。話を進めていく中で、髙橋さんがかなり細かい部分の仕様まで気にかけてくれたことは助かりました。例えば返金になった場合どうなるか、クレジットカードの有効期限が切れた場合どうなるか、そういったイレギュラー部分の仕様まで目配せしてくれていたおかげで、考慮漏れを最低限に抑えながら進めることができました。
髙橋さんと組めて良かったのは、単なる業務システムのユーザー以上に、Salesforceの仕組みをわかっていたことです。
あとはちょっとした疑問を聞けるような関係性がありましたね。これは髙橋さん個人もそうですし、組織文化的なものもあるのかなと思いました。
行動指針的なものってよく掲げはするけれど、それが実体化されていないことってありますよね。フローレンスではそれが実体化されてる方だと思っていて、いわゆるチームフローレンス(※)的なものがちゃんと機能している。そういったこともあって連携はしやすかったです。
(※)「所属する部門やチーム・役割をしなやかに超え共に進んでいこう」という想いを込めフローレンス内でよく使われている言葉。
―プロジェクトを進める上で大切にしていたことはありますか?
細野:僕は新しく転職してきた身として、会員さんをたくさん抱えるシステムを気軽に触るのではなく、きちんと業務やシステム構成を把握した上で進めることを意識していました。業務を一番知っているのは病児保育事業部のみなさんなので、情報を自分から取りに行くことは常に心がけていました。
僕はサッカーが好きなんですが、仕事はチームスポーツだと思っているんです。サッカーってピッチにいると日々状況が変わる。自分がボールをもっていなくてもやるべきことがたくさんあります。誰が何をやっているのかというピッチの状況を把握して、自分が何をすべきか、常に判断する必要があります。
自分に足りないのが業務知識であれば自分からパスを貰いに行く。ピッチ内ではどこに行こうと自由なので、部署は関係なく、目的を達成するために必要なことは何でもやる。そういったことを大切にしながら進めていきました。
―プロジェクトを進める上で困ったことはありましたか?
市倉:病児保育サービスの継続との兼ね合いに悩みました。予約を止めないといけない、会員専用サイトを止めないといけないなど、何を停止しないといけないかを整理する必要がありました。そこを細野さんが会員サイトのページ間の遷移の関係性を図に描いて、ここを止めれば会員さんは入れないので問題ないと説明してくれたんです。
システムの専門家ではない人への説明っぷりが上手なんですよね。私たちの言葉とシステムの間の言葉を繋いでくれる。そういう通訳してくれる人が社内のシステムチームにいてくれるのは心強いです。
細野:専門用語は専門家にしか伝わらないんですよね。違うカテゴリーの人と話すときは気をつけています。コミュニケーションは自分の伝えたいことが伝わることがメイン。そのために相手に伝わる方法で伝えることを心がけています。
髙橋:細野さんの伝え方はすごく勉強になりました。頭の中を可視化して、図に描いてくれたり、箇条書きで端的に伝えてくれるんです。原因と結果がすごくよく分かるので、自分のやるべきことのイメージが付きやすかったです。
市倉:髙橋さんから最近「説明が下手で困ってるんですか何かアドバイスありますか?」って聞かれたときに、細野さんの喋り方を真似するといいよって言ったんです。細野さんになればいいじゃんって(笑)
―開発後はテストフェーズに入りましたが、テストはどのような役割分担で実施しましたか?
細野:今回のプロジェクトではフェーズを2つに分けたことで、テスト期間が長く取れたんです。その代わりにテストの項目数が膨大になっていて、水村さんと優先順位をつけながら進めていきました。
水村:確かにテストの数は多かったのでおののきました。でもテスト方針が事前に確認できていたのと、テスト項目の優先順位をデイリーで確認していたので、とてもスムーズだったと思います。
―テストで工夫したことはありますか?
水村:病児保育のプランが複数あり、それぞれ10以上のパターンがあったんです。テストデータを作る際に、どんなデータを揃えておくべきかを事前に用意しておくようにしました。このパターンだとこのデータというのをあらかじめ準備しておけたので、実際のテストがスムーズにいきました。
あと請求関連のテストをしているときに、髙橋さんたちが嫌な顔一つしないで協力してくださったんです。細かいこともきちんと丁寧に返してくださったので本当に助かりました。そこは細野さんが先ほどおっしゃっていたフローレンスの企業風土が実体化している現れだと思います。
―部門をまたぐプロジェクトではコミュニケーションが課題になることが多いですが、今回のプロジェクトで気をつけたことや工夫したことはありますか?
市倉:システムチームのみなさんが普段から、事業がうまくいくようにサポートしてくれているので、コミュニケーションに困ることはあまりなかったですね。事業の困りごとを理解してくれて、請負みたいに言われたことだけやりますじゃなく、運用うまくいってます?と聞いてくれる。伴走してくださっている感がすごくあります。
細野:僕は元々他のNGOから来ましたけど、そもそもNPO・NGOに正社員でシステムチームが存在することがすごく稀なんです。フローレンスのような社会的に困難な立場にある方々への事業を行っている組織において、システムチームがある価値はもっと伝えていきたいです。
―NPOに「システムチームがある価値」についてもう少し詳しく教えてください
細野:例えばシステム開発の知見を持っている方が、自分も社会課題に取り組もう、とした際に、一般的に考えられる選択肢は、ご自身の関心のあるNPOに寄付する、つてのあるNPOでプロボノをする、お勤めの企業として寄付などで関わる、などがあげられると思います。そしてそれらは、言ってみればどれも間接的。
もちろんこれらも良いことなんですが、もっと他にも選択肢があっていいと思っています。もっと関わりたいという方にとっては「NPOで正社員として働く」という選択肢もあるということを伝えたいです。
システム開発の知見を100%フルで投入することは、NPOの事業や活動の質と量の向上に確実につながり、結果としてそれは「社会課題の解決」に直結する。そう考えると、実はけっこうレバレッジが効いている手段とも言えると思うんですよね。
規模の小さなNPOではシステム担当がいたとしても1人か2人で、かつ他の業務とも兼任、というケースをよく聞きます。なのでシステム業務自体は「片手間にならざるを得ない」状態で、技術面での相談なども難しいと思います。
そういった意味ではフローレンスには専任のシステムチームメンバーが10人弱いて、チームで課題解決にあたれる環境は魅力的だと思います。
―クレジットカード決済導入によって、どのような変化がありましたか?
髙橋:入会される方の8割~9割がクレジットカード決済を選ばれるようになりました。最初に課題だった口座登録での離脱はほとんどなくなったんです。既存の会員さん向けにもクレジットカード決済の導入を案内したんですが、初日からたくさんの切り替えの申請がありました。
細野:それは嬉しいですね。僕自身の話で言えば、20年関わったNGOから転職してきたので、自分自身の価値を提供する相手が、国外の方々から国内に、特に子育て世代に変わったという認識があります。
このプロジェクトを、その最初の実践の場と位置づけていたので、目の前のステークホルダーは病児保育事業部のみなさんやシステム開発を担ってくださるベンダーさんですが、その向こうにいる「子どもが明日熱を出したらどうしよう、と不安を抱える親御さん」を常に意識していました。なので親御さんに無事に届けることができて安心しました。
―大成功だったんですね。それでは今回のプロジェクトの成功を受けて、今後取り組みたいプロジェクトや目標について教えてください。
市倉:会員さんのユーザビリティを上げるような施策にも取り組みたいですね。今はお子さんが熱を出して大変な中、親御さんに病児保育でお預かりする前日のお子さんの様子を全部紙に書いてもらって引き継ぎをしてるんです。そういうのがアプリでできたりするようになると良いですね。
―最後にシステムチームへの今後の期待を教えてください。
髙橋:引き続きわかりやすい言葉で私たちと一緒にサービスを作り上げていけると嬉しいです。あとはシステムチームってセキュリティの要だと思うんです。素人だとこれで良いんじゃないと言うところを、守ってくれている。そういうところの手綱を引いてほしいです。
市倉:今後はさらに情報共有のハブになってもらえると嬉しいですね。他の事業ではこんな仕組みを使っているとかを共有してくれたり、こんな風にやったら良いんじゃないかとレコメンドしてくれたり。そういった情報共有を受けて私たちもより良いサービス設計を行っていきたいです。
―それを受けてシステムチームとしてはいかがですか?
水村:社内のみなさんにとって、困っていることがあれば気軽に相談してもらえるような間柄でありたいと思っています。まず相談してもらって、そこから具体的に何ができるのかを話しながら考えていく。ハードルが高くない間柄を保てるようにしたいです。
そのためにも、私たちシステムチームが余裕を持てることが大事だと思っています。定型業務を外部委託したり、メンバーを増やしたりすることで時間の余裕を持てると、相談事を属人化することなくチームで共有・相談しながら課題解決を進めていけます。そのための仲間を増やしていきたいです。
細野:NPO全体を見渡すと、まだまだIT化やシステム化できているところは少ないんですよね。だから伸びしろしかないと思っています。IT化の比率を少しでも上げていくと、それが社会課題の解決に直結していきます。そのためにやはりもっと仲間がほしいですね。
あとはフローレンスでの取り組みをもっと発信していきたいです。僕たちソーシャルテック事業部のコンセプトとして「解を広げる」というのがあります。フローレンスがこんなことができるんだよという事例を積極的に発信していくことで、NPO全体としてより良くなっていく。そんな未来を目指したいです。
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