障害児保育園ヘレンを運営するフローレンスの障害児保育・支援事業は、ヘレン以外にも、訪問保育、障害児訪問支援事業を運営しながら、医療的ケア児に関わる制度改革の推進を行う、国内有数の障害児家庭支援現場です。
前編では、フローレンスの障害児保育・支援事業についてのご紹介と、近年の地域の保育園での医療的ケア児の受け入れ増加に伴い、都内の認可保育園スタッフに向けて研修をしている様子をご紹介しました。
後編では、障害児保育園ヘレンでの日々の保育が「医療的ケア児家庭の未来をつくる」につながっている事例の2つ目として、日々の保育を通じて培った知見をもとに、現場の課題を訴え制度を変える「政策提言活動」についてご紹介します。
さくっとおさらい:障害児保育園ヘレンは医療的ケア児と働きたい親御さんをサポートする現場
現在、医療的ケア児は全国で約2万人いると言われており、その数は15年で約2倍に増加しています。
一方で、医療的ケアや重度障害のあるお子さんを長時間お預かりすることのできる施設は極度に不足しています。その結果、多くのお子さんが保育を受けることが叶わず、親御さんも仕事を諦めなければいけない現状があります。
障害児保育園ヘレンは、「すべての子どもが保育を受けられ、保護者が働くことを選択できる社会」を目指し、2014年に1園目であるヘレン荻窪園を開園しました。現在、都内5園でお子さんをお預かりしています。
障害児保育園ヘレンは①長時間保育ができ、②看護師、リハビリスタッフ、研修を受けた保育スタッフがチームを組んで医療的ケアに対応する施設です。また、③「遊び」を出発点とした、子ども自身が楽しみながら発達を促す保育を行うことも大きな特徴です。
2020年度末までに、のべ97名のお子さんに保育を提供し、親御さんのキャリアが継続できるようサポートを行ってきました。
障害児保育園ヘレンへの議員の訪問がきっかけで医療的ケア児支援法の成立へ
ヘレンで日々お子さんと親御さんに向き合う現場が、法律を動かすきっかけになることもあります。
2021年は、医療的ケア児を取り巻く環境の改善に向けて大きな一歩を踏み出した年でした。6月には医療的ケア児への支援を国や自治体の責務と定めた「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(医療的ケア児支援法)が成立しました。
実はこの法律、医療的ケア児への支援に関心の高い超党派の議員が、「障害児保育園ヘレン荻窪」を視察したことがきっかけとなって検討が始まったことはご存知でしょうか?
現在、こども政策担当大臣を務める野田聖子議員は、2014年当時、医療的ケア児のお母さんとしてヘレンを利用していました。
他にも、視察をした議員の中には、障害のある娘さんを育ててこられた議員さんや、教師として特別支援教育に携わった議員さん、看護師だった議員さんなど多くの方々がいらっしゃいました。
ヘレンへの訪問をきっかけに、超党派の国会議員や厚生労働省や文部科学省などの官僚、医療関係者、福祉事業者、当事者団体が集まり、医療的ケア児の支援に必要な施策や制度を検討する「永田町子ども未来会議」が立ち上がりました。
フローレンスも、保育現場で培った知見や実際の親御さんの声を届けるため、提言活動を重ねました。
検討をすすめる中で、医療的ケア児への支援を拡充するためには、関連する省庁の力を結集するための法律が必要だということがわかり、その結果、2021年6月に医療的ケア児支援法が成立するに至りました。
法律の成立後、各地で医療的ケア児支援センターができるなど、支援拡充に向けて動きが活発化してきています。
このように、ヘレンでの取り組みがきっかけとなり、少しずつ社会が変わっていくこともあるのです。
フローレンスの障害児保育・支援事業は、今後も医療的ケア児・障害児のお子さんをお預かりしてご家族を支援するとともに、そこで得られた知見を生かして他団体のサポートや政策提言も行い、障害児・医療的ケア児とその家族が暮らしやすい社会の実現に向けて活動を行っていきます。
フローレンスの障害児保育・支援事業は、看護・保育の現場でさまざまな経験をもつ仲間が、「障害児家庭支援」の最前線の現場に興味を持って全国から集まる組織です。
保育現場でお子さんと親御さんに寄り添い、そのことが「医療的ケア児家庭の未来をつくる」ことにつながっていく、そんな特色ある職場で働いてみませんか?
フローレンスの障害児保育・支援事業で働いてみたい、医療的ケア児や障害児を取り巻く環境を変えることに貢献してみたいと思われた方はぜひこちらからご応募いただければと思います!