私「まりお」は、あと一ヶ月で退職します。
退職者インタビューって見たことありますか? 私はないです。
でも、退職する身だからこそ、赤裸々に書けるわけです。
ぜひ読んでみてください。
一番印象に残っていることは何ですか?
入社して1週間で、私の提案が通ったことです
「絶対にやった方がいいです!」
入社1週間で、ヒロトさん(COO・副代表)に対して私は断固として主張をしていました。
私が入社したのは、2週間後に新サービス(現在のMemotiaメモティア)がリリースされるという時期でした。
それを知った私は、
「サービスリリースのタイミングが最も取材を取ることができる、だから記者向けの体験会を実施すべきだ」
と思ったのです。体験会を実施したら、絶対に取材につながることはわかっていました。
しかし、実際にはリリースまであと2週間しか時間がなく、社内はサービスリリースに向けてんてこ舞いな状況でした。その中で、入社してすぐの新参者が主張して、誰が取り合ってくれるでしょうか?
「まあまあ、気持ちはわかるよ。もう少し早かったら、それも検討したんだけどなぁ!」
こう言って取りなすのが一般的でしょう。そして常識的だと思います。けれど、ヒロトさんは言ったのです。
「どうしてもやらなくてはならない、とまりおさんは思うの? だったらやろう!」
拍子抜けしたのは私の方です。
「え、、、本当にやるんですか?」
「やるよ。急いで準備に取り掛かろう。何を準備したらいい?」
ヒロトさんは、やると決めたらすぐに動く男です。そういう意味で最高の上司です。
結果的に、記者向けの体験会は大盛況でした。
「VRの恋愛メタバース」「メタバースマッチングアプリ」という新規性あるサービスだったので、記者としても取材のしがいがあったのだと思います。
そこからはメディアがメディアを呼ぶ展開になり、テレビにも連続で出演しました。
今思えば、これこそが株式会社Flamersの文化の一つである「トライファースト」だったのだろうなと思います。
スタートアップにおける正解は何かなんて誰にもわからない。だから、良さそうだと思ったらまずやってみよう。そして、選んだ方を正解にしよう。
どのような仕事を担当していましたか?
広報とカスタマーサポートです。
私は「PR(広報)を担当する」ということで、株式会社Flamersに入社をしています。
私以前のメンバーはエンジニアばかりだったので、役員陣を除き、ビジスネサイドの採用としては私が初でした。
そんな私に、ある日、経営陣から声がかかりました。
「まりおさん、CS(カスタマーサポート)もやってくれない?」
「・・・いいですよ」
なんとなく、社内の誰もやりたい人がいないし最適な人材がいないから、ビジネスサイド採用かつ広報業務が落ち着いていた私に白羽の矢が立ったのだろうことは想像できました。
別に積極的にやりたい業務ではなかったし、カスタマーサポートをやることが私に期待されているわけではないだろうことはなんとなく伝わっていました。でも、カスタマーサポートは前職で経験がありましたし、やれるだろうなとは思いました。
するとその後、ヒロトさんが個別にフォローしてくれました。
「どう思った?」
聞かれて私は、今感じていることを正直に話しました。積極的にやりたいわけではないが、やってもいいと思っていること。社内のリソース的に私が最適なのだろうと思っていること。
すると、ヒロトさんは言ったのです。
「さっきのMTGでの言い方は良くなかったと思っている。まりおさんに押し付けたいわけじゃなくて、まりおさんの業務にとってカスタマーサポートがどう役に立つのかを、考えたい」
これにも私はびっくりしました。
たしかに、若干のモヤつきを抱えていたことは事実です。でも、仕事ってある意味そういうものじゃないですか。やりたくないことでも与えられたらやらなくてはならない。
株式会社Flamersには文化があります。「まず、自分たちがワクワクして働こう」。
それを本当に体現しているなと感じた瞬間でした。
そして、ヒロトさんは言ってくれたのです。
「まりおさんは、社内で一番ユーザーの声に詳しい人になるといい。ユーザーの声を一番知っている人が一番強いから、そのポジションを取って欲しい」
その言葉を聞いた時、私の中でこの仕事の意義がしっかりと腑に落ちました。そして、自分の中に明確な目標ができたことを感じました。
「与えられた仕事」が「やりたい仕事」に変わった瞬間でした。
仕事で一番大変だったことは何ですか?
カスタマーサポートの重要性を知ってもらうことです。
「俺、カスタマーサポートやりたくないんだよね、正直」
と言ったのは、代表こーちさん(CEO)です。
「だから、会社のみんながやりたくないことをいつもやってくれてる、まりおさんには感謝してる」
これを聞いて私は喜んだのか?
答えはNOです。
私は別に、みんながやりたくない仕事を進んでやるような、慈愛の精神に満ちたできた人間でもない。もちろん、ストレスをためながらやりたくない仕事をやっているわけでもない。
せっかく代表が労いの言葉をかけてくださったのに、私は喜ぶどころかイライラしたわけです。
「こーちさん。私はこーちさんにそんな言葉をかけてもらいたくてカスタマーサポートの仕事をしてるんじゃない。カスタマーサポートの仕事が、会社にとってとても有益で、価値あるものだと思ってるから、やりたくてやってるの。私はむしろ、代表こそカスタマーサポートをやるべきだと思う!」
顧客の声を聞くことはとても重要です。
顧客の声にはリアルタイムの事業の課題の全てが詰まっています。
今、どんな顧客がいて、彼らが何を価値に感じていて、どこが期待と食い違い離脱していくのか。
丁寧にカスタマーサポートをすれば、その全てがわかります。
カスタマーサポートにはクレームも多いです。
「返金してくれ。どうなってるんだ。ふざけるな」
聞きたくないでしょう、そんな声。
自分たちが良いと思って提供しているサービスにそんな言葉をかけられて、イライラしないわけがありません。
でも、それは一時的な感情です。その裏にある顧客の感情は?
「このサービスに期待していた。期待を裏切られて悲しい。悲しいというこの思いをなんとかして伝えたい」
そして、その思いを伝えることで、このサービスにまた期待しているわけです。
だから、顧客は何に期待していたのか、どうして裏切られたと感じさせてしまったのか、サービスで改善できるところはないか、このお客様が満足してもらうためにはどうしたらいいかを考えるわけです。
するとどうでしょう。
「本当にありがとうございます。丁寧に対応していただき感謝します。これからも期待しています!」
あっという間にファンになるのです。
黙ってサービスを離脱しても良かった。なのに、それを運営まで伝えようとしてくれてるということは、その人はクレーマーではありません。事業にとって重要な改善点というプレゼントを運んでくれた、未来のファンです。
私は、苦情を言っていた人がお礼を言いながら帰っていく時、とても嬉しい感情になります。
そして、そのご意見を社内で共有し、会社にとって重要な機能改善を提案できた時、もっと嬉しい感情になります。
私は常々、この顧客の声を聞くということの重要性が社内に伝わっていないことを、強く課題に感じていました。伝わっていないから機能改善の速度が遅い。顧客の声を軽視している。
会社と代表は異なる? いえ、やはり代表の思想は社内で大きな影響力があります。変えるなら、代表から。
ということで、私はこーちさんと話し合うことにしました。
「なんで、こーちさんはカスタマーサポートがやりたくないの?」
こーちさんは答えました。
「俺は、顧客の声を聞くことはサービス開発において重要ではないと思っている。だって、もしスティーブ・ジョブズが顧客の声を聞いてたら、iPhoneなんてできたと思う? 革命的なアイディアは、顧客の声からは出てこない。俺は自分の創造性を鈍らせたくないんだよね」
それを聞いた私は思いました。それはわかる、その通りだと思う。 ・・・でも。
「顧客の声を聞くということは、顧客の言いなりになるということじゃないよ。革命的なアイディアを出すのに、たしかに顧客の声は必要ない。でも、顧客がいま何を考えてて、何を感じてるのかをちゃんと知っておくことは重要だと思うんだけど」
「俺もたしかに、顧客の声を知ることは大切だと思ってる。だからユーザーヒアリングをやってるじゃん。それで十分じゃない?」
メモティアでは、毎週、ユーザーに1時間ほど時間をもらい、インタビューする時間を設けています。それにより、どんな顧客が使ってくださっているのか、どんな使い方をしているのか、何に期待して使い続けてくださっているのかを知ることができます。さらに、このインタビューはメンバー全員が視聴します。それにより、顧客理解を社内全員が深めています。
「いや、私は十分じゃないと思う。ユーザーヒアリングに答えてくれるのは、サービスのファンだけだよ。ファンからは良い声しか聞けない。悪い声も聞くべき。事業って新しいアイディアだけじゃなくて、改善も必要じゃん。それに、経営判断で大きなミスをしないためにも、現状を正しく把握した方がいいと思う」
議論は平行線かに見えました。しかし、こーちさんは言ったのです。
「完全に納得したわけじゃない。でも、わかった。とりあえず、やってみよう」
ここでもまた、「トライファースト」の文化でした。私は、なんだか言葉に言い表せないような感情を感じていました。嬉しいような、尊敬するような、新鮮な驚きでした。
それから、それは代表のこーちさんに限らず、副代表のヒロトさん、さらには全メンバーに至るまで、シフト制を導入して、1ヶ月間全員でカスタマーサポートをすることにしました。結果として、CSシフト制は1ヶ月で終わることになりました。業務の負担が大きいということで。
しかし、成果は確実にありました。顧客の声に対する当事者意識が上がり、機能改善の速度が大幅に上がったのです。
だから、メモティアのユーザーはみんな口を揃えて言います。
「メモティアは改善の速度が素晴らしい」と。
それは、顧客の意見を会社のできるだけ中心に据えているからです。
社内はどんな雰囲気ですか?
スタートアップらしからぬ雰囲気です
私が好きな時間、それは週に一度の水曜日。勉強会の時間です。
「勉強会」
それは、各自が最近学んだ、業務に全く関係ないことをみんなに語る時間。
テーマは何でもあり!
最近の大学での研究テーマ「AIとは」の報告をするインターン生、最近読んだ本について話す人や、突然戦国武将の話を始めるこーち(代表)。
私は、ここで4回の勉強会をやりました。
テーマは、「イラン」「LGBT」「小学校受験の世界」「オルタナティブ教育」
どれも楽しすぎて、準備に相当力を入れました。めっちゃスライドつくりました。
「その力をもっと業務に向けてくれてよかったのに」と退職が決まった最近になってひろとさんに言われました。(今さら言われても遅いんじゃい!)
でも、こうした業務に全く関係ないような、その人のパーソナリティの部分にしっかりと時間を割き、メンバーみんなでその時間をシェアする。これほど贅沢な時間があるでしょうか?
こーちさんが言っていました。
「実はこの勉強会の時間って、Flamersの大きな資産だと思うんだよね。スタートアップだけど、こういうところに時間を割くことができる文化を、大切にしていきたい」
私もそう思います。
スタートアップって何となく、「さぁやれ!もっとやれ!早くやれ!やらないと死ぬ!!」みたいなヒリついた空気があるのが常であり、私もまあそんな空気感は嫌いではないのですけど、エンジン全開にして走り続けることなんて人間なかなかできないと思うんです。
それよりも、こうして、人としての関わりを大切にして、人としてしっかりと呼吸をしながら仕事に打ち込める環境が重要だと思います。それを当たり前のように実装している株式会社Flamersは、ある意味異質な存在だと私は思います。
そんな株式会社Flamersだから持続可能性があり、優秀な人材が集まる魅力的な会社になるのだろうと思います。
なぜ退職者インタビューを書くことになったのですか?
自分の後任を探すためです。
私は自分が人生を賭けてやりたいことのために、退職します。次は、株式会社キッチハイクというところで働く予定です。
私が会社を辞めることになった時、代表も副代表も心から応援してくれました。
「会社としては悲しいけれど、友人としてとても応援してる!」
そして、副代表ヒロトさんは言ったのです。
「記事書いてよ、インタビュー記事。まりおさんが一番、Flamersの良さを知ってるでしょ? それに退職するんだから、赤裸々に書けそうだし」
そうね、と私は思いました。
実際、株式会社Flamersほど良い会社にはなかなか巡り会えないと私も強く思います。
毎朝、今日も株式会社Flamersのみんなと働けると思うと、ワクワクするんです。
自分が自分のままで、伸び伸びと実力の全てを発揮できていると感じています。
それって、一番幸せなことだと思いません?
自分を長い時間拘束する仕事という時間。そこをいかに充実したものにできるかは、人生の質に関わってくると思います。
ところで、代表こーちさんの年齢を知っていますか? 1997年生まれです。
副代表ヒロトさんは1996年生まれ、CTOだーらさんは1997年生まれです。
Z世代の作った会社、それが株式会社Flamersです。
この会社の働き方は、スタートアップのものではないと私は思います。Z世代のものです。
Z世代が作る、新しいメタバースの事業。それがメモティアです。
10年後、私は言うと思います。
「あの有名なMemotiaが、まだ全然小さかった頃、私はあそこで働いてたんだよ!」