クライアントにとって有益であり、かつ誠実な提案と施策を行うのがエージェンシーの使命です。その上で担当者に依存せず、組織として結果を出し続け「クライアントと継続的なパートナー」になるためには、ある種の “マインドセット” とも呼べる心がけが必要でしょう。
FICCはデジタルエージェンシーとして、クライアントが抱えるさまざまなビジネス課題を解決するため、データに基づくマーケティングに取り組んできました。そんなFICCのクライアントの多くは、ナショナルクライアントをはじめとした大手企業。予算が大きいことはもちろんのこと、求められることが多岐に渡り、かつ大きな成果が求められるプロジェクトばかりです。
そういったプロジェクトにおいて、メンバーはどのような心がけを持って日々の業務に臨んでいるのでしょうか。今回は大手企業と「継続的なパートナー」となるために、FICCのプロデューサーが心がけている7つのことをご紹介いたします。
はじめに:大手企業との取り組みにおけるプロデューサーの役割とは
まずはじめに、FICCは大手企業とどのような取り組みをしているのか、また大手企業との取り組みに対してプロデューサーの役割についてご説明いたします。
単発のプロジェクトをきっかけに、大手企業の継続的なパートナーへ
デジタルエージェンシーとしてFICCはクライアントとどうのようなお付き合いをしているのか、資生堂ジャパン株式会社様の例でご紹介します。
資生堂ジャパン株式会社様とは、単発のデジタルプロモーション施策をきっかけに、現在では複数ブランドの年間デジタルプロモーション施策や、デジタルマーケティング戦略立案を担当しています。
さらにブランドを横断したデータ戦略の体制構築やDMPの構築支援など、データドリブンな企業成長を実現するコンサルティングとサポートを行っています。
このようにFICCでは1つのプロジェクトでの成功をきっかけに、クライアントにご評価いただき、年間でのプロジェクト実施など、デジタルマーケティングの継続的なパートナーとしてお付き合いをさせていただいています。FICCの実績はこちらからご確認ください。
「目的と戦略」を明確にしていくのがプロデューサー
こういった大手企業とのプロジェクトの特徴は「大きな投資予算」です。そのためデジタルエージェンシーとしては無駄をなくし、投資対効果を高めるためにも、クライアントのビジネス課題や機会を理解し、目的と戦略をしっかりと定めることが重要です。そして、施策はそれら目的と戦略を達成するための手段であるため、施策一つひとつに「なぜこの施策を行うのか」という全体戦略の中での役割を明確にし、その役割の中で効果を最大化させることで、費用対効果を高めることができるのです。
FICCではマーケティング戦略を中心とした各種戦略を立案し、目的に応じた最適な資源分配を行っていきます。そしてFICCではプロデューサーとディレクターという職種があり、プロジェクトの戦略策定から施策の立案、さらには施策実施中のプロジェクトマネジメントや施策の振り返り、クライアント報告までを行うのが「プロデューサー」の役目です。
プロデューサーとディレクターの違いとは
プロデューサーはクライアントの要望とその目的を明確にして戦略を策定、そしてディレクターと一緒に施策を考えて実行に移していきます。ここで「プロデューサーとディレクターの違いはなんなのか」と疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれません。
そこであえて簡潔に説明するならば、目的達成に対しての戦略をつくるのがプロデューサーで、戦略に沿ってクリエイティブをつくっていくのがディレクターである、と言えます。
デジタルエージェンシーにおける多くのプロジェクトは、マーケティングに基づく戦略を策定し、施策を実行していきます。そして施策に対して出てきたデータを振り返り、戦略を見直し、新たに設定した目標に向かって新たな施策を考える、というサイクルが繰り返されます。
ただし設定した数値を達成するためには、プロデューサーは最終的なクリエイティブを管理するディレクターとともに戦略を設計することが望まれます。そしてクライアントへの提案は戦略からクリエイティブまですべて含まれるため、それぞれを担当しているプロデューサーとディレクターは常に情報を共有し、補完し合う共存関係にあるのです。
共存関係にあるがゆえに、企業によってはプロデューサーとディレクターが同一化されることもあるでしょう。しかしFICCが担当するようなプロジェクトにおいて、戦略立案の領域は広範囲に渡ります。そして大きな投資予算に対してしっかりと結果を出すためにも、プロデューサーとディレクターが存在し、それぞれが戦略とクリエイティブに責任を持つことが重要なのです。
戦略立案から施策実行まで、FICCのプロデューサーが心がけている7つのこと
それではFICCが大手企業と継続的パートナーであるために、戦略立案から施策実行までプロデューサーが心がけている7つのことをご紹介していきます。
1. クライアントの課題やアクティビティを徹底して把握する
まず大前提として、プロデューサーは「クライアントの課題」を正しく把握することを心がけます。課題の認識がずれてしまうと、ターゲットや戦略もずれてしまい、それがたとえ綿密な戦略であろうとその戦略は意味を成さないからです。
またクライアントが抱えている課題はもちろんのこと、経営戦略やブランド戦略、マーケティング戦略などがすでにあればヒアリングし、さらには店頭での売り場作りやアクティビティなど、一見するとデジタル領域と関係ない情報に関してもしっかりと把握します。
例えば、デジタル上でターゲットへ効率的にリーチし、効果的に商品まで興味を獲得することができたとしても、売り場がそのタイミングで作りきられていないタイミングであったり、商品在庫が少ない状態である場合には、広告投資を行っても最終的な売りに繋がらず、機会損失となってしまいます。
このように、クライアントの課題やアクティビティなど、プロデューサーはクライアントから余すことなくヒアリングしていきます。
2. 戦略の確度を高めるために、リサーチやブレストを重ねる
戦略を組み立てる際に、ただクライアントからヒアリングした情報だけで組み立てるということはなく、必ずFICC側でもリサーチを行います。
たとえばターゲットユーザー像を明確にするペルソナ設計では、提供されたペルソナが担当者の主観で設計されているケースや、設計されたペルソナに当てはまるユーザーの実在数が少なく、十分なリターンが期待できないケースなどが起こりうるからです。
適切に資源を配分するためには「正確な情報」を基に戦略を組み立てることが重要であり、情報や戦略を基にした仮説などの組み立てはプロデューサーだけで行うのではなく、多くの場合ディレクターとブレストを重ねることで形成されます。できる限り観点を増やし、戦略や仮説の確度を高めていきます。
FICCではプロデューサーとディレクターはもちろんのこと、FICCとクライアントがワンチームになって戦略を構築していくということを大切にしています。
3. フレームワークを活用し、目的達成の精度を高める
戦略を設計する際、目的達成の精度を高めるためにフレームワークを積極的に用います。フレームワークとは、戦略設計や分析を円滑かつ適切に行うための枠組みのことです。
「STP分析」や「カスタマージャーニー」などの一般的なマーケティングフレームワークだけではなく、FICCでは過去の成功事例から、プロジェクトの再現性を高めるためのフレームワーク化を徹底しています。
そして蓄積されたフレームワークを可能な範囲で社内共有し、新しいプロジェクトにおいても活用していきます。
4. 目的をブラさず、戦略から施策までを一貫させる
戦略が明確に決まり、その上で施策をどうするか考えていく中で、ブレストが大盛り上がりして、面白いアイデアが出たとします。そういうときは特に「目的と戦略からブレていないか」を気をつける必要があります。戦略意図に従ったアイデアになっていないケースがあるからです。
戦略から施策を考える際、無駄なく効果的に資源を配分・活用するためにも、単に面白いアイデアを出すのではなく、戦略意図に沿った効果的なアイデアが必要になります。
ターゲットのペルソナはもちろん、インサイト、どういう態度変容を起こしたいのかなど、戦略意図から施策がブレていないかを必ずチェックし、前に進めていく必要があります。
5. 施策実施段階においても、投資対効果を常に意識する
プロデューサーは限られた資源を無駄なく効果的に投資するために、綿密な戦略を策定します。そして施策実施時も投資した資源が無駄なく効果的に機能しているか、求められている結果を獲得できているかの心がけはマストです。
戦略設計時はもちろんのこと、施策に対しても「何を行うのか」によって投資額も効果も変わっていきますので、必ず適切な判断が求められます。
また施策実施後の振り返りで投資対効果が良いと判断できる場合、なぜ良かったのか、悪ければなぜ悪かったのかを分析していくことで、施策はもちろんのこと、戦略がワークしていたのかまでレビューすることで、継続的に投資対効果を向上することができるのです。
6. ビジネス目標達成に至るための数値指標を設計し、結果を可視化する
デジタルマーケティングの特性のひとつは、データを収集、蓄積、活用したマーケティングができることです。
たとえば特定市場の30%のユーザーに興味を持ってもらうことで、購買に5%結びつき、ビジネス目標が達成ができると戦略を立てた場合、実際に30%のユーザーが興味を持ったのか、5%の購買に結びついたのかをレビューする必要があります。
そのためには、数値を可視化できるようにどこを指標にするか、どう測定するのかをプランニング段階からディレクターとともに話し合うことは極めて重要です。もし測定ができなければ、戦略や施策がワークしたのかを正しく把握することができず、今後へのラーニングを見出すこともできません。
結果を数値として可視化できるデジタルだからこそ、ビジネス目標を達成するための、中間指標(KPI)とその測定は必ず行います。
7. クライアントへの結果報告で提供するのは、次に繋がる「資産」としてのデータと学び
上記の通り、デジタルでは数値を可視化することが可能です。そのため、クライアントへの結果報告では測定したデータを根拠に報告します。つまり、結果だけではなく、ビジネスへ貢献した「具体的な数値」と「なぜワークしたのか」「なぜワークしなかったのか」という考察もあわせて報告をします。
目的に対して戦略を設計し、その上で施策に落とし込み、期待通りの結果が出たとしても、データを振り返らなければ必ずしも戦略通りに作用したと確証を持つことはできません。同様に、意図した数値結果と違った場合も、なぜ違ったのかを根拠を持ってレビューすることが重要なのです。
データやラーニングは蓄積され、今後のマーケティング戦略や施策において重要な「資産」となります。データをデータのままで終わらせるのではなく、次に繋がる学びにまで落とし込み、クライアントへの報告ではデータと学びをセットで提供する ― それがFICCが目指す「クライアントの欠かせないパートナー」としての姿勢です。
おわりに:デジタルマーケティングで成果を残し続けるために
月日が経つにつれてデジタルマーケティングでは、できることが増えている反面、複雑になりつつあります。しかしながら、上述のFICCのプロデューサーの7つの心がけは時代に左右されるものではなく、デジタルの特性を活かした、デジタルエージェンシーとして至極当たり前のことでしょう。
そしてクライアントの規模にかかわらず、施策の一つひとつが無駄になっていないかどうか、投資対効果の良い結果に結びついているかどうかを常に考えることが大切です。その結果として、クライアントから信頼いただき、継続的なパートナー関係を築けるようになっていくのだと感じます。
綿密な戦略を策定するには、それ相応の工数が必要になりますが、デジタルマーケティング市場全体が盛り上がるためにも、プロデューサーはより最適な一手を考えて続けていく必要があるのではないでしょうか。
FICC広報担当
※ 資生堂 ANESSAについては2016年2月から2017年2月までのデジタルマーケティング領域を担当