AIで日本を強く(3)高齢者支援と消費喚起に役立てよ
人工知能(AI)はこれまでのIT(情報技術)に比べ、音声入力や画像認識、臨機応変な対話などの点で素人にも使い勝手がいいのが特徴だ。高齢者や一般の消費者をはじめ、技術に詳しくない人もなじみやすい。 口
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO11683460U7A110C1EA1000/
株式会社エルブズは、2016年2月渋谷にて創業した新しいベンチャー企業です。TIS株式会社からのご出資を受け、AIなどの基礎技術を利活用し高齢者生活支援のためのサービスを開発しています。
多くの方々が東日本大震災をきっかけにして、新しいチャレンジを決意されたと同じように、創業者である私も、東日本大震災をきっかけとして社会課題に取り組む覚悟をいたしました。当時私は国立情報学研究所で特任教授をしていました。2011年3月11日も通常通り勤務していたことを覚えています。その日以降、多くの方に降りかかってきた苦難は、皆様ご存じの通りです。私は、そのときに「自分に何ができるのか?」をあらためて考えました。
私が私自身、社会に役に立てるかもしれない、と考えたのは、
「ITを使ったアイデア」と「経営」
でした。ボランティアで被災地に行っても役に立てることなど一つもないことを感じ、それしかないと、思うようになっていきました。1999年頃、NTTデータという会社のベンチャー制度で、起業経験がございましたので、その経験を十二分に使えば、ほんの少しでも社会のお役に立てるのではないかと考えたのです。
そうは申し上げても、そんなに簡単に起業はできません。国立情報学研究所に努めて2年もたっていて、技術は大きく進んでいたからです。2011年当時は、「ソーシャル」というキーワードが登場し、コンピュータ、ネットワークの世界が急速に進化した時代でした。Twitterや、Facebookも、当時登場したサービスです。私が最初に起業した頃とは、世代が一つ進んでしまっていたのです。
「どこか現場で働いて、今の開発を直接みないといけない」
そんな思いに突き動かされておりました。
そこで、私はグリーという会社に入社させていただきました。開発本部というところで、たくさんの優秀なエンジニアと出会い、彼らの開発に感嘆することが多かったことを記憶しています。特にグリーCTOの藤本さんは、私よりもずっとお若い方でしたが、素晴らしいCTOでした。今でも、CTOという役職の方の中では私は彼以上の人材を見たことがありません。今でも、私にとってとてもエキサイティングで大切な時間だと思っています。
グリーでは、ユニバーシティリレーションという大学とグリーをつなぐ役割を担っていました。その中で、東京大学の特任研究員というポストで社会課題に取り組むことが可能になってきました。
東京大学の特任研究員として最初に取り組んでいたのが、農業×ITです。東京大学農学部の先生方とも連携し、また大手企業とも連携し、活動を加速していきました。私は、センサーを使って、野菜などの生産者にデータを提供する「農業クラウド」を開発していきました。
小さな会社を青山一丁目に設立し、軽自動車を会社で購入、たくさんの地域の生産者の方とお会いしました。
どれくらい軽自動車で走り続けたかというと、一年間で約60000キロに達していました。東京から大手企業の研究所があるけいはんな地域まで毎週軽自動車で移動していたこともありました。ちょうどその移動の途中に、起業のきっかけとなる南山城村があったのですが、当時はそんなことはわからずにいました。
これらの活動に全力をあげていたものの、この取り組みを継続することはできませんでした。残念ながら失敗ということになるかと思います。
しかし、その中で、過疎化・高齢化というあらたな課題感を感じていました。
過疎地高齢者は、となりの家まで歩いていける距離にありません。とくに足が悪くなったりすると、外出ができなくなり、とてもさみしい思いをしていることがわかりました。社会課題を根本的に解決できるか、というと、たかだか私一人の努力では限界があることがわかりましたので、せめて、せめて、さみしさくらい、ITでなんとかしてあげられるのではないか、と考えたことを覚えています。
そんな気持ちを持ちながらも、農業クラウドの失敗は、より明確になってきていました。もうだめか、、、と感じるようになったある日、私は、TIS株式会社に所属する松井さんと出会うことになります。今では、当社CTOにご就任いただいて、エルブズの開発をガンガン引っ張っていっていただいている松井さんとの出会いがこのタイミングでした。
この時農業クラウドの次のバージョンを考えていて管理者向け機能について基礎的な技術調査をしていました。その中で、Joint.jsというJavaScriptのライブラリについて、少しわからないところがあり、エンジニアの友人を通じて、松井さんを紹介してもらったのでした。
松井さんとJoint.jsの話をしばししましたが、特にビジネスを云々という話はしてませんでした。最後に、松井さんが「ところで田中さんって何してる人なんですか?」と質問されました。少し農業クラウドのことで、鬱憤がたまっていたこともあって、上記に書いた農業クラウドの創業などについてお話しした記憶があります。その後、さらに、松井さんからのご紹介で、エルブズ副社長になる油谷さんと出会うことになります。
小さなJavaScriptライブラリがつないでくれたご縁ともいえるでしょう。当時油谷さんは、戦略技術センター長でもあり、また松井さんはその戦略技術センターでトップクラスの実力を持つ技術者でした。
油谷さんにこのときの話をお聞きすると、「松井さん、怪しげな人に騙されているんじゃないか?と感じていた」そうで、今では笑い話になっています。
お二人との出会いから、約6ヶ月、私たちは、IoT、ビックデータなどの技術的要素を含めた新しい事業会社の事業計画を書き上げていました。2015年10月ころのお話です。
最終的に役員の体制などが決まり、2016年2月にエルブズ誕生となるのでした。
エルブズの起業がきまり、これまでお世話になっていた皆様にご連絡を差し上げた中に、お一人、南山城村の森本さんという方がいました。むらづくり推進課の課長様をされていましたが、なにかお仕事をご一緒したわけではありません。前述の農業クラウドで走り回っていた時にご挨拶をした、その程度の関係でした。失礼ながら、今から思うと、なんとなくご連絡を差し上げただけ、、、だったかもしれません。ところがここで南山城村 森本さんから驚くようなお話をお聞きします。彼も起業するというのです。森本さんは、2017年4月15日にオープンする道の駅の運営会社社長に、ご就任されるということでした。しかも、南山城村 道の駅は、買い物困難者や交通困難者のための役割も担うとの話でした。私たちは、双方の起業の目的を紹介し合い、助け合えるのではないかと思うようになります。
森本さんと私の二人三脚がここから始まりました。私たちは、もちろん、IT、すなわちソフトウェアで、過疎地域に住む高齢者の方々の生活支援をする役割に邁進していくことになったのです。
社会課題は、とてもむずかしいものばかりです。たくさんの方がチャレンジしても、なかなか成功までたどり着けません。そこで、油谷さん、松井さんとも相談して、大学との共同研究を進めることとしました。
たくさんの先生方に、協力をしていただきましたが、その中でも、大阪大学 石黒先生、小川先生のお二人には、大変助けていただいております。
創業当初、共同研究からスタートさせていただき、当社のメンバの一部を、研究室にお邪魔させていただき、ご指導をいただいておりました。2016年12月からは、石黒先生、小川先生に、当社技術顧問にご就任いただき、より密接な協力関係となっています。
2016年度は、京都南山城村にて、合計5回の実験を繰り返しました。当然のことながら、小さな小さな実験からのスタート、、、といいたいところですが、実は最初の活動は、インタビューのみだったのです。CTO松井さんに「開発は少し待ってください」とお願いしてインタビューに取り組んでいたことを思い出します。そのインタビュー結果を踏まえて、松井さんが驚異的なスピードで、α版開発、実験、β版開発、実験と続き、最後は、バスを走らせたり、お弁当の受発注ができたりしました。
この頃になると、NHKや日経新聞などにもご紹介いただくようになり、少しだけ活動を知っていただくようになってきました。
特に、2016年1月14日 日経新聞社説に掲載された時は、驚きました。
私たちが行っている活動が、消費喚起と高齢者支援という切り口だったのかと、あらためて勉強をさせていただいた気持ちでした。
私たちは、まだ発展途上です。それどころか、むしろ2017年度からが勝負、卵の殻を破れるかどうか、そんな気持ちで活動しています。そしてのその勝負のための具体的アクションが、広域実証実験です。
2017年2月28日の日経FinTech Confernce にて、初めてお知らせさせていただきました。
上記写真を見ていただければわかるとおり、日経FinTech Confernce のメインの発表ではありません。私たちは、まだまだ実力がございませんので、日経FinTech Confernce 終了後のネットワーキングパーティで、6分のピッチをさせていただきました。
広域実証実験の詳細に関しては、今後順次公開していきます。(ご興味のある方は、個別にご連絡をいただければと思います。)
創業時に書いた事業計画を愚直に進めてきた私たちですが、さすがに手が足りなくなってきました。2016年1月からは、新しいメンバーにもジョインしてもらっております。
実は、彼らは以前からエルブズのサポートメンバーだったのですが、南山城村での最後の実証実験に向けて、正式にジョインをしていただきました。
創業メンバだけでは手が回りきらない部分、たとえば学会発表なども行っていただき、当社のプレゼンス向上という観点でも助かっています。
そして、彼らは、何よりも、私たち創業メンバよりも、若くて、イケメンです。多様性という意味では、とても楽しく活動ができています。
それぞれのメンバが、それぞれの立場で、思いっきり活動している、そんな会社にエルブズはなることができたのでした。
こんな強力なメンバーに囲まれて、幸せいっぱいのエルブズではありますが、上記でご紹介した2017年度の実験は、いよいよ広域。私たちだけの力では明らかに不足なのです。私たちのこれまでの知見に加え、皆様のご経験、お力が必要になってきています。
高齢化社会への解を見つける、あと一歩まで来ている私たちに、是非あなたのお力をおかしください。