今回お話をお伺いするのは、海外でソフトウェア開発やマーケティング分野において起業を経験した後、国内AI企業の経営サポートを経て株式会社Edulead&エデュラの経営に参画した田中滋之さん。海外で経験した「仕事への考え方」を変える出来事、保育業界・幼児教育分野の魅力などを語って頂きました。
▲Edulead経営企画室長(兼エデュラCOO)田中 滋之(写真右)
慶應義塾大学SFC卒。在学中の海外事業立ち上げを契機に、日本を含む東南アジアで起業。国内外4000名を超える技術コミュニティのグロースや日本のAI企業で大手総合商社との事業戦略支援、C向けサービスを提供する企業の収益化などに携わる。
――入社前の経歴を教えてください
大学1年の冬、先輩の紹介で語学留学しながらビジネスコンテストをやるという企画に参加しました。その提携企業先で、「この人いけてるな」と感じた方との出会いが、私が仕事という世界に飛び込むキッカケになります。半年後、その方がフィリピンでプログラミングスクールを立ち上げるので一緒にやらないかと誘われ、マンションの一室から代表と自分とフィリピンエンジニア2人で事業の立ち上げをしました。比較的新しいマーケットに入りながらも、目の前のキャッシュも稼いで黒字化させることを両立させる会社だったので、ビジネスを多面的に学ぶことができました。(その後も少しだけ事業に関わらせていただきながら、結果的に会社も急成長して、マーケットシェアを急拡大していく過程を見ることができたのは自分にとって貴重な財産です。)
事業の立ち上げにコミットした後、現地で出来たコミュニティを活かして、日本とフィリピンで起業しました。10人程度の会社で、ビットコインのマイクロペイメントの事業を走らせながら、開発やマーケティング事業でキャッシュを稼いでいました。ただ、マイクロペイメントは後払いでいいやと思ったり、色々な事情で海外開発もやめました。個人的意見ですが、技術開発は安い人件費で安いものを作るより、高い人件費をかけてでも高いものを作ったほうが総合的にはいいなと思っています。
その後は、技術コミュニティのグロースで関わっていたAI企業のクライアントの方にお声かけいただき、事業戦略やマーケティングのお手伝いをしました。その他にも、色々な会社とお付き合いさせていただき、AIの教育コンテンツのライセンス提供、資金調達、セールスマネジメント、新規事業開発のキャッシュフロー改善など、かなり幅広く事業や組織に関わらさせていただきました。
――海外での起業で苦労したこと、そこから学んだことを教えてください。
「当たり前を当たり前と思わない想定で動くこと」が、海外で特に苦労したし、大きな経験になりました。約束の時間に来ない、工事が遅れる、納品期限への意識が弱い、プレッシャーを与えると次の日から会社に来なくなるなど、不確実性の度合いがとてつもなく大きく、最初は全く対応できませんでした。ただ、自分の最初の上司である、事業の立ち上げをしていた代表の方に「結果の責任は全部お前にある」と言われたことは、自分の結果に対する責任感に大きな影響を与えたと思います。
それまではドライに「言ったことをやってもらう」程度で仕事を進めていましたが、言ったことをやってもらうために、あらゆる相手と味方の関係になるように努力しました。郷に入っては郷に従えといいますが、雑談をしたり、飲んだり、家に行って一緒にご飯を食べたり、できないことを否定や注意するのではなく、まずは相手に寄り添うなど味方になろうとしました。そうすると警備員が多少のルールを許容してくれたり、困ったときには駆けつけてくれたり、不確実な状況をなんとかしてくれるようになっていきました。この点で、子育てとマネジメントはすごい似ているなと感じます。「はやく宿題をやりなさい」ではやらないけど、「やりたくないこともあるよね。先にやった方が後でテレビをたくさんみれないかな」など、まずは相手に寄り添う姿勢や相手の選択肢を奪わない方が、相手の行動が変わりやすかったりします。
――様々な経験をされた後、なぜ保育業界を選ばれたのですか?
子どもが好きなこともありますし、なにより子どもを尊敬しているからです。 これまでAIやマーケティング事業に関わる中で、人間の知覚に対する仕組みを深堀してきました。大学ではAIによる創造性について研究をしたりもしました。人間の知覚を考えるほど、人間という生物のすごさには感動します。
なぜ子どもを尊敬しているかというと、一般的に子どもより大人の方がIQの知能は高いですが、子どもは見えていないものを見る力が優れている(正確には多く残っている)と思うからです。そして、それこそが人間ならではの知覚です。たとえば「空の絵」を描く時、多くの大人は青い空に白い雲を描くでしょう。すでに分かりきってる、同じ文化を共有していればこう答えるだろうなという模範的な回答が多くの場合出てきます。それに対して、子どもは緑や黄色の空を書いたり、人が空を飛んでいたり、想像力をフル活用して、直接は見えていないものをアウトプットすることがあります。新しいビジネスを創造する時もそうですが、人生の中で目に見える「正解」がないことはたくさんあります。だからこそ、想像力や妄想力は偉大です。イーロンマスクなんかは人類の生き残りのために電気自動車作ったり、渋滞なくすために地下にトンネル掘ったり、妄想力の塊です。遺伝と環境の関係が大きいのですが、歳を取るほど頑固になりやすいと言われたりもしますよね。現在一般的にAIと言われているものは、簡単に言えば、いかに正しい正解をAIに教え込むかで、頑固なおじさんを作ってるようなものです。みんな同じやり方で同じ内容を勉強するなど、学校の教育システムに対する課題解決プレーヤーは応援しながら、自分自身は20代のうちに乳幼時期という人生の貴重な時間に対して、人間ならではの知覚を最大限に伸ばすことに注力したいと考えていました。その中で、現代表と大学同期という縁で出会い、保育園という事業ドメインを一緒にやっていくことになりました。
――入社後、どういった業務に携わっていますか?
Eduleadとエデュラでそれぞれの役割を担っています。 Eduleadでは、会社全体の課題を定義し、優先順位を決め、それを各責任者に実行してもらうということをやっています。その中でも、主に組織強化と園児獲得に注力しています。 エデュラでは、保育園の課題を定義し、生のデータを拾い上げ、技術でレバレッジが掛かる事業領域を定め、検証するというプロジェクト全体の進行責任を負っています。
――そのような役割を果たす中で、この先、どのような組織を創りたいと考えていますか?
強い組織に共通しているのはスピードだと考えています。歴史上、巨大かつ長い政権を築いたアレクサンドロス大王やチンギスカンといった指導者の共通点に圧倒的な「速さ」があります。また、ただ闇雲に速いのではなく、計画性があり、目的の実現のための速さを生み出す体制でもあります。チンギスカン時代の中心的役割となった遊牧民は家ももたず、動く国とでもいうべき集団でした。それに憧れて、自分も家のない生活を一時期送ったりもしました。
また物理学で、仕事は速さ×力の方向の変位と定義されます。つまり、大きな仕事を生みだすために、速さと加える力の方向が大切であることがわかります。物理学と歴史の繋がりも面白いですよね。強い組織を作るために「速さ」を追及していくと同時に、保育業界は新しい情報や職種の人が入ってきづらい環境でもあるので正しい方向に力を加えることも意識しています。
――短中期な目標を教えて頂けますか?
エデュリーの保育園を「選ばれる保育園」にしていくことです。コロナ禍もあって、選ばれる保育園とそうではない保育園の差が加速度的に広がりつつあります。自分たちが実現したい保育園の軸を大切にしていきながら、選ばれる保育園になるために変化していければと思います。エデュリーとエデュラでシナジーを作りながら、顧客が抱えるより深い層の課題の発見と検証を、最速で回していく仕組みづくりをしていきます。
――どんな人と一緒に働きたいですか?
スキルセットは各ポジションごとに求められる要件が異なりますが、人間面に関しては「いいやつ」って感じの方が合うと思います。目標に向かって一緒に前進していける、全体的にはポジティブだけど、ネガティブさも持っている、うまくバランスが取れている人です。
――Edulead、エデュラで働くことに興味がある方へ伝えたいことがあればお願いします。
難しい課題を解決することに、疲れ果てる事もありますが、毎朝目を覚ませば「子どもたちがよりよい人生を送れるように頑張ろう」と思える事業であることは幸せだと個人的に感じます。また、そういう環境を与えて下さっている皆さん、お子さんを預けている保護者、一緒に働いている社員、全てに感謝しかありません。
周りの方々に助けられながら、とても運の良い人生を送ってきました。その運を多くのところで還元できるように頑張っていきます。