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未来の『kencom』に向けたリニューアル。何が変わった?気になるその中身を聞いた

「楽しみながら、健康に。」をテーマにした、ヘルスケアエンターテインメントアプリ『kencom』が、2025年に10周年を迎えます。

自治体・健康保険組合など、特定の企業・団体に向けたBtoBtoCサービスという性質を持ちながらも、ユーザーが月に1回以上アプリを起動する継続率は60%以上の水準と高く、最近では自治体での導入が進み、124団体、約792万人の健康維持に活用されています(2024年10月末時点)。

2024年8月、今後の更なる進展を見据えて『kencom』をリニューアル。関わったメンバー4人に集まってもらい、成長を続けるプロダクトの現在地と未来について聞きました。

INDEX

未来を見据えてサービスのあり方を見直し、基盤を大幅アップデート

──最初に皆さんの業務内容と、リニューアルプロジェクトでの役割を教えてください。

佐々木 勇人(以下、佐々木):私は営業系の組織で全国の自治体に対してプロダクトを広めていくのがメインの業務です。同時に、マーケットの潮流ニーズや個別自治体からの要望を集めてプロダクトに反映させ事業を大きく広げていく、営業戦略や企画も担っています。

小笠原 和哉(以下、小笠原):佐々木さんがお客様に対応する側、もう一方のつくる側にエンジニアとデザイナーがいて、私は企画としてその中間の立場です。営業とその先にいるお客様のニーズを理解し、つくる側の事情や難しさなども踏まえて、ご要望に応えるためにはどんな解決策があるかを導いていく。あと、営業と開発現場をつなぐ架け橋的な役割、チームの共通言語をつくる「翻訳者」でもありますね。

──佐々木さんがお客様の声を聞き、小笠原さんが営業と開発現場をつなぐ役割ということですね。では河治さんと福原さんは?

河治 寿都(以下、河治):私は二人が説明してくれたつくる側のエンジニアで、システムを管掌しています。自治体・健康保険組合からの要望に対してどのようにシステムを構築すればそれが実現できるかを具体・詳細につくっていく役割になります。

福原 歩恵夢(以下、ぽえむ):私はデザイナーとしてリニューアルプロジェクトが本格的に動き始めたタイミングで参画し、これまでの『kencom』の背景をキャッチアップしながら、新たなコアユーザーとなるターゲット層をリサーチし、価値観や課題の理解を深めつつリードデザインを引き継いでいきました。

企画・エンジニアメンバーと密に連携をとり、デザインシステムの構築・設計思想の見直しをゆるやかな変化としてじわじわと浸透させながら、数千画面を超えるほぼすべてのデータをつくり変え、大きく変わる登録導線は限られた期間の中でしたがユーザーテストを通じて改善を繰り返し設計・デザインを対応していきました。

──新たなコアユーザーとなるターゲットという話がありましたが、今回のリニューアルの背景を教えていただけますか?

佐々木:新たなコアユーザーというのは、自治体のユーザーさんです。『kencom』は健康保険組合や自治体など、アプリを使っていただくユーザーさんの健康づくりを支援するサービスで、ユーザーさんの「健康寿命の延伸」や「医療費の適正化」に貢献するものです。自治体が取り組みを進める拠り所として、国の「健康増進計画」があり、その計画見直しに合わせてサービスのあり方を見直しました。

今後、「PHR(Personal Health Record)」(以下、PHR)と呼ばれる一人ひとりの健康情報を今まで以上に使えるようにするためにも、自治体のニーズを踏まえて大幅改修を進める必要がありました。

小笠原:『kencom』はシステム運用開始から9年が経ちますが、当初は健康保険組合に特化したプロダクトとしてつくられており、自治体で使っていただくには限界がありました。今後、幅広い方々の健康増進をサポートしていくためには、柔軟なつくりが必要になります。今回のリニューアルでは、機能提供のスピードアップや自治体からの要望を受け入れやすくしたり、機能を拡張できたりするようなつくりを意識しました。

リニューアルは未来の『kencom』をつくるための家の立て直し、というイメージでしょうか。もちろん、リニューアル中であっても「今の家」はあるので、どちらも同時並行して機能をアップデートしていく難しさがありました。

──今のユーザーさんも大切にしながら、新たなコアユーザー(=自治体のユーザーさん)を見据えて変化していくには、時に難しい選択も迫られると思います。リニューアル前後で変わったことはありますか?

ぽえむ:実は、今回のリニューアルでは、すでにご利用いただいているユーザーの皆さんが使える機能が大きく変わるような改修は行わず、ゆるやかに、違和感を感じないレベルでより分かりやすく、使いやすい設計に変化させていきました。ですので、リニューアルに気づいていないユーザーさんも多いんじゃないかと思います。

目的は基盤を固めて今後の躍進につなげること。『kencom』の近い未来像として、5年後にどういう状態になっていたいかをメンバーと密に議論しながら、今の『kencom』で実現すべき構成などを少しずつチューニングしていきました。現在楽しくご利用いただいている方々の体験には影響がないよう、慎重に整理・反映していきました。

──表には見えないけれど、裏側では大きな変化があったと?

河治:はい。2015年4月のサービス開始以来の運用で多種多様なシステムが連動して動く形になっていたところの整理が、急ピッチに進められました。

効果として、管理する側にとってコントロールしやすい状態になり、システム理解の認知負荷が下がったことが大きいです。機能開発でも、散在するシステムを統合的に管理できるので工数が抑えられる状況がつくれるなど、開発体験の向上にもつながりました。また、運用面においても機能の整理がついて作業工数が減り、生産性が上がったことも一つの実績です。デザインもそうですよね。

ぽえむ:このタイミングで、デザインやフロントエンド周りも裏側のつくり変えに動きました。これまでさまざまなメンバーが関わり、ルールが煩雑になってしまっていたところもありましたが、思想を整理し共通化や見直しをかけたことで機能開発や改修時の迷いや調査時間が削減され、河治さんたちエンジニアメンバーとの連携効率も大幅に上げることができました。

未来を見据えた柔軟性のある設計とデザイン思想の整理により、複数のデザイナーが同時に分担作業を行っても混乱の起こりづらい状態をつくれたことも大きな進化です。

ユーザーの皆さんにとっての「価値ある体験」を届けることがゴール

──小笠原さんは、お客様側とモノづくり側の間に立つ「翻訳者」とおっしゃっていましたが、どのように意識を合わせていくのですか?

小笠原:自治体・健康保険組合など、それぞれのお客様に向けて営業がつくりたいものに対して、それのどこがお客様の満足につながるかを佐々木さんと議論を尽くし、河治さんやぽえむさんにマーケットのニーズとその必要性を伝えていきます。優先すべきものが決まれば、つくる側からこういう機能も必要だよねなどと、どんどん意見が上がってくるのでより充実度の高い施策に着手でき心強いです。

河治:納期とリソースが限られているなかで、開発側としては最優先に解決されるべきお客様の問題を抽出することが第一にやるべきことです。機能をたくさん追加しても、使ってもらえなければ、自治体・健康保険組合とそのユーザーさんには0でも私たちにはマイナス。逆に自分たちに都合のいい形でつくれば彼らにはマイナス。その天秤を見極めることを重視しています。

大人の喧嘩じゃないですけど、真剣に意見をぶつけ合うと、本当に必要なものが見えてきますよね。

小笠原:そうですね。佐々木さんの意図を理解したうえで、何をやるのが最も価値が高いのかを日々の会話と検証から出していて、私と河治さんが話して最終の意思決定をする。そのタイミングでどうしても漏れてしまうものは、佐々木さんが理解してくれて、お客様に話をしてきてくれます。

──『kencom』が提供する価値とは何でしょう?

小笠原:健康増進のプラットフォーム、という言葉では大きすぎてしまう。そうですね、何と言う言葉が適当なんでしょう……。

ぽえむ:「ハブ」でしょうか。『kencom』の大切にしている「顧客」は2軸があり、プロダクト開発側はユーザーさんのアプリ体験や健康行動の循環をつくるという価値に向き合い、営業側は向き合っている自治体・健康保険組合の皆さんが抱える課題解決に貢献したい。そのどちらも実現していくべく、小笠原さんが俯瞰して見ている感じですよね。

小笠原:「楽しみながら健康に。」というテーマのとおり、皆さんが楽しんで使って健康になってくれることがゴール。導入先の担当者の方もきっとそう思って『kencom』を採用してくれているのではないでしょうか。

佐々木:導入するお客様は、アプリが使われ続けることに対する要望が強いんです。利用シーンや楽しみ方は一人ひとり違うので、『kencom』がそれぞれに寄り添えるアプリであることを価値として伝えたいと活動を続けています。

チームの士気が高いのは、何でも話せるフラットなフィールドがあるから

──皆さんからのお話を伺っていると、とても連携の取れた活発なチームという印象を受けます。チームの特徴・カルチャーとして感じることはありますか?

ぽえむ:さっき河治さんが、「大人の喧嘩じゃないけど」と言っていましたが(笑)、言うべきことは言って、戦うべきときは戦うチームだと思います。それぞれがお客様やユーザーさん、プロダクトに真剣に向き合っているから対等に言い合える、いいバランス感を持ったチームだと思っています。

河治:そう言われてみると、みんなフランクに意見を交わしますよね。マナーをもって、みんなが自分の思っていることを率直に言えていると思います。価値を追求すべきことは遠慮しないで本気で言って、真面目に仕事をしたぶんちゃんと返ってくるので、チームとしてすごく高揚感があります。

小笠原:二人の言う通りで、本気で言い合って結果を出そうというのはブレないから、いい循環が生まれて前向きになれる人が多いと感じます。2年前に転職してきたときに、現場のメンバーが上に対してしっかり発言しているのを見て、それはDeNA全体のカルチャーなんだと。それは今も変わりませんね。

佐々木:私も2年前に転職してきたのですが、最初は正直、なんて議論することがこんなに多いんだろうと思った記憶があります。みんなが納得して働きたいという空気があって、ちゃんと理解するまで突き詰めるので、時には面倒くさい(笑)と思ったりもしましたが、やり続けるうちにこのステップを踏むといいものができて、いい反応が起こって、自然と自分も鍛えられている。このサイクルでメンバーが一緒に成長していると感じられるいい組織だと思っています。

チームメンバーも『kencom』で健康習慣を維持。つくり手とユーザー両方の視点がアプリ成長のカギ

──ところで、皆さんはユーザーとして『kencom』をどのように使っていますか?

佐々木:営業職なので外食が多くてお酒も好きなので、摂取した分を日々の歩数を増やして、カロリー消費を考えながら使っています。また歩数を増やすために「歩活(あるかつ)」というオンラインウォーキングイベントにチームで参加するなど、いいタイミングで『kencom』を通して、健康に向き合う時間をつくっています。

河治:私も普段はデスクに座りっぱなしになりがちなので、歩いていないと心配で。歩数を見るためのアプリはいろいろありますが、『kencom』に記録されるので一番習慣づけやすいですね。

小笠原:私はキャラクター育成機能の「エアモ」で、ハマチという名前のエアモを育てるために毎日さまざまなミッションをクリアしながら健康活動を楽しんでいます。

──習慣化できているのはすごいですね。私は何度も逃げられています(笑)。

小笠原:ほっとくと拗ねて、逃げるので(笑)。ハマチとコミュニケーションしたりミッションにチャレンジしたりするうちに、自然と健康活動につながっているのは『kencom』ならではの仕掛けだと思います。

ぽえむ:私はヨガ関連の記事を「お気に入り」に入れて参考にしたり、わっしょいと名付けている「エアモ」の部屋を装飾して季節感を楽しんだりしています。ポイントが貯まるとルーレットにチャレンジしたり好きなギフトと交換して、まさに「楽しみながら、健康に。」が実践できているかなと思います。

──皆さんそれぞれの使い方があって、リアリティがありますね。今後、自治体にサービスが広がっていくとユーザーの多様性も使い方も広がりそうです。

佐々木:そうですね。個人商店で企業に属していない個人事業主の方や農家や漁師といった一次産業に従事している方など、地域によって産業構造も異なり、活用具合も違うと思うので、どんな方たちが使うのかという想像を膨らませながら活動を推進しています。

小笠原:いろいろな角度で、いろいろな職業、年代の方々に楽しんでもらえる仕掛けを『kencom』に散りばめているので、お気に入りの機能がきっと見つかるはずです。老若男女問わず、多くの方に日々活用してもらいたいです。

──では最後に、『kencom』の今後についてお聞かせください。どういうプロダクトに成長させていきたいですか?

佐々木:『kencom』の強みは、たくさんの利用者数を維持しながら、継続率が非常に高いところです。多くの継続ユーザーがいるということは、『kencom』に集まってくる個々人の健康データをより活用するシステムとなれば、一人ひとりの健康状態に合わせた介入支援ができます。その効果を確認しながら、次の取り組みへ……。人とデータに向き合いながら、エビデンスに基づくICTを活用した健康づくりにトライしていきたいです。

小笠原:われわれが目指す「ヘルスビッグデータを公益活用し、創出したエビデンスを社会に還元する──。」ですね。ユーザーさんが自分の健康管理や状態把握だけにとどまらず、こういうことをすればもっといいことがあるという、その先の介入ができる可能性があると思っています。データや研究から得られたエビデンスを再度機能実装してユーザーさんに還元する、その入口と出口ができるのは『kencom』しかないと思っています。そこをやり切るのはみんなの共通の思いですよね。

ぽえむ:その話は、みんなで『kencom』の未来について議論したなかでも出ていて、目指す姿に向かって加速できる体制が整いました。健康でい続ける、改善につなげるための活動ってゴールがないことなので、日常のささやかな楽しみ、ルーティンになるような『kencom』らしい届け方ができたらと思っています。

河治:一般的にSaaSと呼ばれるサービス形態はヘルスケア分野でもたくさんある中で、将来生き残るSaaSはごくわずか、5本の指に収まる程度だと思います。これは今の私の「野望」でもあるのですが、その1本に『kencom』が入るレベルまで引き上げていきたい。ビジネス、社会課題への貢献、システムと全方位でよいプロダクトにしていきたいです。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。


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