今回は、株式会社データミックスの代表取締役 堅田洋資のインタビューをお届けします。
データミックスの創業の経緯やこれから目指すべき組織についてのお話を聞きました。
Q.データサイエンスとの出会いについて教えてください
私が初めてデータサイエンスと出会ったのは、大学1年生のときです。校門の前で暇を持て余しているときに、偶然クラスメイトに誘われて参加したのが統計学の勉強会でした。そこで統計学の面白さに引き込まれ、大学時代はデータサイエンス(当時はデータマイニングと呼んでいました)や数理統計学を勉強していました。しかし、当時はデータサイエンスを活用できる職業はかなり限られていました。そのため、卒業後は、大好きなデータ分析の世界ではなく、外資系メーカーに就職し、その後はコンサルティング会社、ソフトウェア会社とキャリアを歩んでいきました。データサイエンスからは遠い世界にいました。
しかし、2010年代になり、転機が訪れます。ビッグデータブームです。
「これは自分の好きな分野で仕事をし、生活ができるかもしれない」と思い、データサイエンスの修士号を取得するためにサンフランシスコに留学します。
Q.留学先のアメリカのデータサイエンス教育はいかがでしたか?
サンフランシスコでは、GoogleやYouTubeなどで働く実務経験豊かな講師から、理論はもちろん実務をやっていく上での心構え、テクニックを学びました。授業以外でもインターンやコンペなどに出て、データサイエンスの世界にのめり込んでいきました。
Q.帰国後からデータミックス創業に至るまで、どのような思いだったのでしょうか?
そもそも留学中、就職活動している時点から日本のデータサイエンス業界への危機感を感じていました。それはなぜかというと、帰国した2014年時点でデータサイエンティストの求人はインターネット業界かコンサルティング業界くらいしかありませんでした。しかし、アメリカのクラスメイトはAIG、GEといった金融やメーカーにも就職していくわけです。「これは日本のデータサイエンスの裾野はまだまだ未成熟だ」と思うきっかけでした。そんなことを思いながら、帰国後は監査法人やスタートアップでデータサイエンティストとして仕事をしていました。帰国後2年経過してもまだデータサイエンスやAIは非常にニッチな分野だったと思います。
自分はデータ分析がとても面白いと思っていましたし、今でもその気持ちは変わっていません。むしろ、今のほうが「データ分析が個人のスキル」という範疇から、組織文化へ与える影響まで研究しています。ただ、創業当時はもっと純粋でデータサイエンスの面白さを広めたいと思っていました。ソフトウェアを創ったり、コンサルティングでの起業も考えていましたが、日本でこのデータサイエンスの面白さをもっと多くの人に知ってもらいたいという気持ちが強く、データサイエンス教育分野を中心に置いた起業を決意しました。
そして、生まれたのが、データミックスです。
Q.データミックスが目指すものは何ですか?
「データサイエンス」と聞くと、多くの方は「理系分野」「数学」「プログラミング」といったことを連想し、縁遠いと感じる人も多いかもしれません。「データ」も難しそうに聞こえる言葉ですが、なんといっても「サイエンス」が「ザ・理系」な印象を与えてしまいますよね。
しかし、データサイエンスは、サイエンスとアートの融合で、人間の可能性を引き出してくれる分野だと思っています。データを見て確認する・想像する・議論するなどデータは人間の思考の幅を広げてくれます。そして、デジタルの時代において、データはあらゆるところにあります。ビジネスの文脈で言えば、営業・マーケティング・人事・SCMといった機能や、小売・金融・農業・ヘルスケアといった業種と結びつくことで、データの威力はさらに発揮されます。デジタル時代の事業において新たなイノベーションにもデータサイエンスは必要不可欠です。
そのような発想から生まれたのが、ビジョンにもある「オープンラボ」という構想です。
Q.堅田社長が考える「オープンラボ」とは、具体的にどんなものですか?
データミックスは2017年からビジネスパーソンのためのデータサイエンススクールを開始するわけですが、多くの受講生と接する中で感じていたのは、データサイエンスは人の創造力を引き出す力を持っているということです。そのデータサイエンスの力を使って、人と人との結びつきから新たなアイディアを創発し具現化する場を創りたいそのイメージを「オープンラボ」と呼んでいます。つまり、オープンラボは人類の可能性を引き出し、共創する場を表現した言葉です。
データミックスのビジョンは、「オープンラボ」を拡大し、人々が持っている創造力を引き出し、イノベーションを起こしまくる場になることです。
Q.データミックスはどんな社風ですか?
私もどんどん権限委譲し、任せていく経営スタイルですので、データミックスのメンバーは一人一人が当事者意識をもって周りを巻き込み、高速に行動と振り返りをしながら成果につなげていくことを良しとしています。逆に、上司の言うことをただ実行するような人はデータミックスには合わないとも言えます。忖度や同調なども不要です。顧客の課題に誠実に向き合い、顧客の期待値を超えることを信条とするプロフェッショナルを求めます。そして、顧客を批評するような態度も許されません。受講生にしてもクライアント企業にしても、私たちを信頼して契約いただいているわけですから、信頼に応えるための努力を惜しまないことも大事です。具体的には、リーダーシップ、視座の高さ、視野の広さ、思考と行動のスピードです。また、データサイエンティストとして仕事をしていくメンバーはこれらに加えて専門性を高めるマインドセットも重要です。
上記のような価値観を共有しながら、データミックスには様々な得意分野を持ったメンバーがコラボレーションしています。
そして、多様なメンバーとコラボレーションしていくことを求めますので、コミュニケーション力は何より大事です。具体的には
自分の考えを論理的かつ正確・簡潔に伝えることができること
相手の言っていることに真摯に耳を傾け、率直なフィードバックができること
が大事です。そういう意味では、国語力も大事ですね。
Q.ここまで読んでくださった皆さんへメッセージをお願いします
日本という国の資源は、人です。そして、日本は2000年まで最大の資源である「人」を活かして、製造業で世界をあっと言わせました。その最大の資源であった「人」というのは、言われたことを正確にやる情報処理能力と課題解決力、調和を大切にすることを教育のコアにしていたわけです。安心・安全第一で、大量に商品を製造するということが勝負の軸になっていた時代は、その教育がうまく行っていたわけです。
しかし、ゲームが変わりました。まず金融経済になり、その後、デジタル経済になったわけです。そこでは、人が大切なことに変わりはありませんが、個人の持つアイディアや起業家精神が大事になったわけです。つまり、これまでは「人と同じが大事」だったことから、「人と違うことが大事」というゲームに一気に変わったわけです。
しかし、日本人は製造業での成功体験から覚めていない・・・。そして、その夢から覚めていない間に日本の人材競争力は大きく下がってしまいました。1人あたりGDPは韓国にも抜かれ、タイの課長の年収よりも日本の課長の年収は低いわけです。
もし今のまま10年経過したら、どうなってしまうのでしょう。考えるだけでもぞっとしますが、今の10代は日本から出ていってしまうかもしれません。このような憂国論をただ愚痴るだけではダメです。アクションしないと変わりません。データミックスは、まずデータサイエンスという題材で、人の可能性を引き出し、イノベーションの土壌を創ることを目指しています。日本が世界に貢献する国であり続けられるのかどうかは、今が正念場だと思っています。
そして、世界に目を向ければ、食料不足問題、水不足問題、人的資本経営、カーボンニュートラルと日本だけでなく、世界中に問題が溢れています。これらの問題に立ち向かう事業創造集団でありたいと思っています。舞台は日本だけでなくグローバル。『2030年までに国内・海外に関わらず事業創造できるオープンラボ』になります。そんな未来を創るために、一歩ずつ着実に、かつ高速にデータミックスは突き進んでいます。
データサイエンス教育やデータを活用した事業創造に興味があるビジネスパーソンの方、データサイエンティストの方、エンジニアの方は、ぜひデータミックスへの入社に挑戦していただきたいと思います。