医療機関向け「治療アプリ®︎」の研究開発及びその開発知見を活用した法人向けモバイルヘルスプログラムを提供する株式会社CureApp(本社:東京都中央区 代表取締役社長:佐竹 晃太)は、多量飲酒者の減酒を支援するアプリを開発し、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターと共同研究を開始いたします。今回の臨床研究に用いる支援アプリは今後エビデンスを蓄積し、禁煙、生活習慣改善に続くCureAppの事業におけるパイプラインの一つに位置付けることを目指します。
【臨床研究の背景】
飲酒は喫煙、不適切な食習慣、運動不足と並んで、健康に大きな影響を与える生活習慣の一つです。アルコールの有害な使用は本人の健康を損なうだけでなく、労働生産性の低下や自動車事故、犯罪の増加など社会的にも多大な悪影響を与えます。経済的な観点においても、関連疾病の医療費や早世・飲酒者の労働効率の低下による労働損失等、アルコール依存症による経済損失は約4兆1500億円にのぼるとの報告*1があります。
日本にはアルコール依存症の予備軍である危険な飲酒者が1036万人いるとされています。*1しかし、2000年に始まった健康日本21 では様々なアルコール対策を実施したものの目標を達成できず*2 、2013年にはアルコール問題の発生予防・進行予防・再発予防のための計画策定と実施を定めた「アルコール健康障害対策基本法」が制定されました。また、2015年に国連サミットで採択されたSustainable Development Goals(SDGs, 持続可能な開発目標)にも、アルコールの有害な摂取の防止・治療強化が含まれています。
このように日本、世界で対策の必要性が注目されるアルコール問題ですが、危険・問題がある飲酒者のうち、実際に支援・治療を受ける者は一部に留まります。日本の総合病院で行われた調査では、調査参加者の78.3%は減酒したいと回答しましたが、実際に減酒の指導や助言を受けたことがある者は22.3%に留まりました*3 。また、より問題の大きいアルコール依存症においては、専門的な治療を受けている者はわずか3.2%にすぎません*1 。このギャップを解消し、危険・問題のある飲酒者に早期に介入して行くことは国内外において喫緊の健康課題の一つであると言えます。
そこで私たちは危険・問題がある飲酒者に対するスマートフォンアプリを併用したオンラインカウンセリングプログラムを開発し、日本を代表するアルコール依存症の治療・研究機関である独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターと共同で効果検証研究を実施することにしました。弊社はすでに「治療用アプリの開発知見を活かし医師が開発した専用支援アプリ」、「医療資格を持つ指導員によるオンラインサポート」等を組み合わせた完全オンラインで完結する禁煙プログラムを提供しており、150以上の法人での導入実績があります。また、弊社には依存症領域で臨床経験を積んだ医師や心理士も在籍しており、アプリ開発知見と実際の臨床現場での経験を活かすことで、効果が期待できるアプリが迅速に開発できる環境が整っています。この弊社の強みに加え、今回アルコール依存症治療の権威である久里浜医療センターと共同研究をさせて頂くこととなり、より多くのアルコール問題を抱えた方がより早く支援を受けられる機会を提供するためのエビデンス創出を目指します。
【減酒支援アプリ及び臨床研究の概要】
今回開発したスマートフォンアプリを併用したオンライン減酒カウンセリングプログラムは、1日平均純アルコール摂取量が60gを超える多量飲酒者(男性60g+/日、女性40g+/日の純アルコール摂取)へ心理的な支援をするため、認知行動療法の考え方をベースとしています。ユーザーはアプリを通し、自身の飲酒を振り返り、多量飲酒に結びつく状況や感情、考えに気づき、飲酒欲求への対処スキルを獲得することで、不適切な飲酒習慣を修正していきます。
今回の臨床研究では、2020年6月から15名を対象に8週間、アプリの利用とオンラインでのカウンセリング(4回)を併用し、多量飲酒日を減らすことができるかを検証します。
【久里浜医療センターについて】
独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターは、昭和38年に日本で初めてアルコール依存症専門病棟を設立し、現在では4ヶ病棟でアルコール依存症の治療を行っています。患者さんの自主性を尊重した治療は、“久里浜方式”として全国各地に広がっています。また、平成元年にはWHO (世界保健機関)から日本で唯一のアルコール関連問題の研究・研修協力施設として指定されるなど、依存症治療において国内を代表する医療センターです。
久里浜医療センターの本臨床研究共同研究者
松下幸生 副院長
真栄里仁 教育情報部長
湯本洋介 医師
伊藤満 心理士
【CureApp開発責任者/日本精神神経学会精神科専門医:宋龍平】
アルコール依存症専門医療機関での診療・臨床研究に携わる中で、アルコール関連健康問題の大きさに対して、支援・治療を受けている方の少なさを痛感するようになりました。この度、日本のアルコール依存症の診療・研究・教育をリードする久里浜医療センターの先生方とともに、より多くのアルコール問題を抱えた方がより早く支援を受けられる機会の提供につながる研究を開始できることを大変嬉しく思います。
<開発責任者略歴>
2011年三重大学卒業、精神科専門医。2017年に京都大学健康増進行動学分野で公衆衛生学修士を取得。依存症領域を中心に様々な方法論の臨床研究論文を複数出版。
現在は岡山県精神科医療センターで依存症診療に携わる傍ら、株式会社CureAppでの研究・開発にも従事している。
出版論文、受賞歴などは以下
https://researchmap.jp/rso
【ascure(アスキュア)卒煙プログラムについて】
「医師開発の専用支援アプリ」、「医療資格を持つ指導員によるオンラインサポート」、「OTC医薬品の自宅配送」を組み合わせ、完全オンラインで完結する利便性を追求した新しい禁煙体験を提供しています。
従来の禁煙外来では3ヶ月に5回通う必要がある通院の負担や、通院と通院の合間は自身の力で取り組まなければならない「孤独な戦い」が障害となるなど、自宅や勤務時などでの心理面のサポートに課題がありました。
当プログラムは、保健師や管理栄養士などの医療資格と育成プログラムを経て専門知識を持った指導員が30~40分かけてオンライン面談を行い、加えて専用の支援アプリからも365日参加者個人に合わせたアドバイスを提供するため、心理面でも手厚いサポートが可能となりました。また、禁煙の失敗が多い3~6ヶ月の期間も支援する長期にわたるサポートが、プログラム終了後にもしっかりと持続できる禁煙継続に寄与します。
<出典>
*1: 尾崎米厚(2015)アルコールの疫学 - わが国の飲酒行動の実態とアルコール関連問題による社会的損失,医学のあゆみ,254, 896-900
*2:瀧村 剛,健康日本21におけるアルコール対策,厚生労働省e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-06-002.html
*3 : 角南隆史・宋龍平・石井博修・福田貴博・石丸正吾・杠岳文(2018)総合病院外来患者の問題飲酒,節酒ニーズおよび節酒指導を受けた経験, 総合病院精神医学,30, S.154
*4 :GBD Compare Viz Hubより算出
https://vizhub.healthdata.org/gbd-compare/
【CureApp治療用アプリの開発状況について】
- ニコチン依存症治療用アプリ(2018年12月治験終了):慶應義塾大学医学部呼吸器内科との共同開発、2018年末に治験を完了し、現在薬事申請中。
- 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療用アプリ:東京大学医学部附属病院と共同研究。2016年10月から臨床研究、2018年4月多施設での臨床試験を開始。
- 高血圧治療用アプリ:自治医科大学循環器内科学部門との共同開発。2019年12月から治験を開始。
【CureAppについて】
株式会社CureAppは、医学的エビデンスに基づいた「病気を治療するアプリ」=「治療アプリ®」の開発に取り組んでおります。「治療アプリ®」はこれまで医療者が関わることの難しかった診察以外の時間帯(院外、在宅・外出時など)に患者への治療介入を実現。個別化された医学的なフォローを行い意識・習慣に対して行動変容を促すことで、治療効果をあげる仕組み構築しています。現在、弊社は「アプリで治療する未来を創造する」をビジョンに掲げ、大学医学部・大学病院と共同で3疾患の「治療アプリ®」開発に取り組む他、「日本初のデジタルヘルスソリューション」として、グローバル展開も進めています。
また、「治療アプリ®」開発で蓄積した知見を活かし民間企業の健康増進にも活用できるよう、法人向け「モバイルヘルスプログラム」も開発。健康保険組合加入者などへの健康増進や健康経営の取り組みへ貢献することを目指し、現在、禁煙支援の「ascure(アスキュア)卒煙プログラム」等を提供しています。
【株式会社CureApp 会社概要】
社名:株式会社CureApp (CureApp,Inc.)
代表取締役社長:佐竹 晃太
本社所在地:東京都中央区日本橋小伝馬町12-5 小伝馬町YSビル4階
設立:2014年7月31日
事業内容:プログラム医療機器開発、モバイルヘルス関連サービス事業
商標登録:「治療アプリ®」「CureApp®」「ascure®」「処方アプリ®」
URL:http://cureapp.co.jp/