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世界初の日本語歌唱ボーカロイド『MEIKO』の発売から20年! 歌声合成ソフトウェア事業の歩みを振り返ってみた

今から20年前の今日、当社は初めて、自社で企画・開発した歌声合成ソフトウェア(通称:バーチャルシンガー・ソフトウェア)を発売いたしました。

VOCALOID(ボーカロイド)初の日本語女性ライブラリ製品として発売されたその製品の名は『MEIKO(メイコ)』。同種のソフトウェアの中で「パッケージにキャラクターを起用する」という試みを初めて行ったパイオニアであり、この存在をなくして後発のソフトウェアである『KAITO』『初音ミク』『鏡音リン・レン』『巡音ルカ』の誕生はあり得ませんでした。

MEIKO(2004年11月5日に最初のソフトウェアを発売)
KAITO(2006年2月17日に最初のソフトウェアを発売)
初音ミク(2007年8月31日に最初のソフトウェアを発売)
鏡音リン(2007年12月27日に最初のソフトウェアを発売)
鏡音レン(2007年12月27日に最初のソフトウェアを発売)
巡音ルカ(2009年1月30日に最初のソフトウェアを発売)
※リンク先は各最新ソフトウェアの紹介ページです

本日は『MEIKO』20周年という記念すべき節目を祝して、『MEIKO』の誕生から始まった当社の歌声合成ソフトウェア事業について、あらためてご紹介したいと思います。

『MEIKO』は、当社が初めて発売した日本語歌唱対応の歌声合成ソフトウェアです。2003年にヤマハ株式会社が開発した音声合成技術「VOCALOID」の初代エンジンを使用した、世界で初めて日本語の歌声を合成するソフトウェアとして*1、2004年11月5日に誕生しました。

*1)『MEIKO』はVOCALOIDの開発元であるヤマハ株式会社に「ボーカロイド初の日本語歌声ライブラリ製品」と認められています。(参照:https://www.vocaloid.com/articles/meiko_kaito


「パッケージに歌声の主を想像できるようなキャラクターを起用する」という試みが功を奏し、『MEIKO』は年間1,000本売れればヒットと言われていた当時のDTMソフトウェア市場で3,000本という異例のヒットを記録。この『MEIKO』の成功を受けて、2006年2月17日には、当社が企画・開発した2つ目の歌声合成ソフトウェア『KAITO』*2が発売となりました。

*2)『KAITO』はVOCALOIDの開発元であるヤマハ株式会社に「ボーカロイド初の日本語男性ライブラリ製品」と認められています。(参照:https://www.vocaloid.com/articles/meiko_kaito


2006年12月になるとニコニコ動画、2007年6月にはYouTubeの日本語サービスが開始となり、『MEIKO』や『KAITO』を使用した楽曲・動画作品がインターネット上に投稿されるように。

その後、2世代目のVOCALOIDエンジンを使って企画・開発された『VOCALOID2 初音ミク』を、当社が手掛ける3つ目の歌声合成ソフトウェアとして、2007年8月31日に発売。動画共有サイトが登場した後の発売というタイミングも味方して、発売から半年で約3万本を売り上げる爆発的ヒットとなりました。


『初音ミク』の発売から数ヶ月後の2007年12月27日には、男女両方の歌声を収録した『VOCALOID2 鏡音リン・レン』を発売。


2009年1月30日には、当社が手掛ける歌声合成ソフトウェアとしては初の英語歌唱に対応した『VOCALOID2 巡音ルカ』を発売。


『初音ミク』の登場をきっかけに、大勢のクリエイターが歌声合成ソフトウェアとそのパッケージに描かれたキャラクターをもとにした楽曲・イラスト作品等をインターネット上に投稿する「ボカロ文化」ともいうべき創作文化が花開いたことで、今では当社が手掛けた歌声合成ソフトウェアのキャラクター全員が、グッズ化や3DCGライブへの出演など、ソフトウェアの枠を超えたバーチャルシンガーとして世界を舞台に活躍しています。



今回の記事にあたり、全ての始まりである『MEIKO』について、当社の代表取締役・伊藤に聞いてみました。

ー そもそもどうして、パッケージにキャラクターを起用することにしたのですか?

VOCALOIDの海外展開のために、当社でお付き合いのある幾つかの海外のDTMソフトウエア会社をヤマハさんに紹介しました。そのうちの1社の英国Zero-G社が世界で初めてとなるVOCALOID製品『LEON』と『LOLA』を開発し販売しました(日本では当社が販売)。どちらのソフトウエアにも、パッケージにリアルな人間の唇の写真が印刷されていました。確かにバーチャルインストゥルメント製品のパッケージとしては、自然な流れだったと思います。ギターのソフトウェアならギターの絵、ピアノのソフトウェアならピアノの絵、というのが一般的なパッケージのデザインですからね。
けれど、唇の実写はちょっと生々しいじゃないですか。だから、日本にはアニメや漫画のファンが多いし、実写よりもキャラクターイラストの方がウケがいいかもしれない、と考えました。

ー 『MEIKO』という名前は、声を担当いただいた拝郷メイコさんが由来ですよね?

はい、その通りです。最初は良くあるソフトウエアの名前は、例えば「バーチャルシンガー2004
プロフェッショナル・エディション」の様なものですが、このソフトウエアシリーズに限っては、そういう名前でなく、中の人物名にするのが良いと考えました。
ちなみに、お名前は確かに拝郷メイコさんから拝借しましたが、キャラクターの見た目については当社のオリジナルですので、拝郷メイコさんの私服や髪型を参考にしたわけではありません。キャラクターについては、当時当社でデザイナーとして勤務していたスタッフに「マイクを持った元気いっぱいの女性キャラクター」と指定して描いてもらいました。

ー 『MEIKO』は、どういう層に向けて売り出していたのですか?

バーチャルインストゥルメント製品なので、もちろんメインのターゲットはDTMユーザーの皆さんでした。それと同時に、バーチャルインストゥルメントをあまり利用しないライトなDTM層や、今までDTMに触れてこなかったようなアニメファン層にも興味を持ってもらえればとは思っていましたね。
「日本語で歌を歌うソフトウェア」は『MEIKO』が初めてなので、音楽制作をしたことがない方々にとっても面白いモノとして認識してもらえるのではないかと期待していました。

ー 歌声合成ソフトウェアに関する事業を進める中で、『MEIKO』は後発のソフトウェアにどのような影響を与えましたか?

後発のソフトウェアでもパッケージにキャラクターを起用するようになったのは、間違いなく『MEIKO』の成功がきっかけです。
それと『初音ミク』の開発中だった2006年~2007年頃に、一度落ち着いていた『MEIKO』の売り上げが再び伸び始めた時期があって。その理由が動画共有サイトに『MEIKO』を使用した作品が投稿されているからだと気付けたことで、『初音ミク』以降のソフトウェアはインターネット上に作品が投稿されることを前提とした考え方に切り替えることができました。『初音ミク』の発売時に予めユーザーが使用できる公式画像を複数用意していたのも、そうした『MEIKO』の経験があったからです。

ー 最後に、歌声合成ソフトウェア事業が20周年を迎えたことにあたり、コメントをお願いできますでしょうか?

当社は「音の素材」を世界から輸入し販売する「音の商社」として起業しました。音の素材には、効果音や楽器の音色やフレーズなど色々な種類がありますが、人の声の素材、例えば掛け声・叫び声、短い歌唱フレーズ、スピーチ、合唱のバーチャルインスツルメントなど、声の素材は良く売れたので、人の声に対するニーズは大きいことは知っておりました。歌詞を入力して、人の様に歌を歌ってくれるソフトウエアの登場は、音楽業界に影響を与えるだろうな、ということも当初からイメージしておりました。また、MEIKOを企画する時も思っていたことですが、日本はアニメや漫画が強い国なので、リアルを追求するよりパッケージにキャラクターを描いた方が一般に対する訴求力は上がるだろうな、と思っておりました。つまり、人口の1%に満たないDTMユーザーより、マスマーケットをターゲットと考える方が、長い目で見ると成功しやすいんじゃないかと思ってました。そうすることでDTMユーザーを増やしてゆくことも出来ますし。
あれから20年が経ち、プロで活躍するボカロPさんも数多く出ておりますし、音楽以外にもイラストや動画など多彩な才能がこのシーンから生まれて来ています。また、日本国内に留まらず、世界各国でもボカロファン、ボカロクリエイターがたくさんいらっしゃいます。ネット発のこの様な文化が生まれた最初のきっかけはMEIKOだったと思います。この文化が今後も永く続き、多くのクリエイターさんや、素敵な作品が生まれ続けるように、社員一同引き続き頑張ります。



クリプトン・フューチャー・メディアは今後も歌声合成ソフトウェア関連事業に力を入れてまいります。クリエイターの皆さまのクリエイティビティに貢献できるような製品の企画・開発に努めてまいります。今後とも弊社製品へのご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。



※「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。


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