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デザイン会社への就職活動 〜ポートフォリオを紐解く vol.2 〜

コンセントの新卒採用では、学生時代に学んできたこと、強みや個性も多様な方々からの応募、入社があります。就職活動の仕方や考え方も人それぞれです。「デザイン会社への就職活動」企画では、そんな色とりどりの就職活動の一端を紹介していきます。
今回は、選考時の自己PR資料として「ポートフォリオ」を活用した社員に、自身のポートフォリオやその制作の裏話について聞いてみました。企業の視点では、コンセントの採用選考官は何に注目し、どんな点に惹かれたのか。

Vol.2は、User Experience Design groupの坂本理絵と、Creative groupの高橋裕子、人事担当役員の大岡旨成に話をしてもらいました。
坂本は活用した応募者の視点で、高橋と大岡は選考官としての視点で、「ポートフォリオ」を紐解いていきます。

/ 登場人物:株式会社コンセント|User Experience Design group デザイナー 坂本理絵
武蔵野美術大学で4年間デザインを学ぶ。あらゆるジャンルや分野に対応できるジェネラルなデザイナーを目指し、2022年に新卒でコンセントに入社。現在はService Design部門 User Experience Design group に所属。UX/UIデザインに関わるプロジェクトを中心に、紙のデザインやコンテンツの企画など、幅広いジャンルのプロジェクトに携わっている。

/ 登場人物:株式会社コンセント|Creative group クリエイティブディレクターアートディレクター 高橋裕子
京都工芸繊維大学大学院修了。雑誌などの出版物のデザインをはじめ、企業・大学の広報物などでは企画面からの提案にも携わる。2012年から8年間、雑誌「オレンジページ」のアートディレクションを担当。現在は、ビジョン形成・ウェブ・映像・店舗のツールデザインなど、領域問わずコミュニケーションデザインに関わる。

/ 登場人物:株式会社コンセント|Human Culture group 人事担当役員 大岡旨成
2003年株式会社コンセント入社、2010年より取締役を務める。人事、BtoB/BtoC分野のウェブ領域コンサルティング、ウェブガバナンス構築、プロジェクト設計・支援に携わる。HCD-Net認定 人間中心設計専門家。

一度つくって終わりではなく「何度もつくり直すもの」

―― 選考時に提出したポートフォリオはどのように制作していったのですか?
坂本 基本的には、1. ポートフォリオに載せる作品を洗い出す、2. 全体の構成を検討する、3. 必要に応じてそれぞれの作品をブラッシュアップする、4. 制作する、の流れで進めていました。

初めてのポートフォリオを制作したのは大学1年生の終わり頃でした。そこから2回ほど大きく形を変えています。ポートフォリオは一度つくったら終わりではなく「何度もつくり直すもの」なので、早めにつくり始めてみることをおすすめします。
就活中も、面接の前には必ずポートフォリオのどこかをブラッシュアップするようにしていました。「これだけ準備したのだから大丈夫」と自分が納得するための儀式というか、お守りのような行為だったと思います。

―― 制作する際に意識したこと、工夫したことはありますか?
坂本 「サクッと読める」ことを意識していました。企業がひとつのポートフォリオにかけられる時間は一瞬と聞いていたので、それぞれの作品のコンセプト・魅力・クオリティや私のデザインへの気遣いがひと目で伝わるようにしていました。例えば、文字を読まなくても作品の概要が理解できるよう、ビジュアルや図で説明したりしていました。それから、各作品の1ページ目をアイキャッチのようなグラフィックにしたり、作品ごとに背景色を変えたりすることで、作品と作品の境目がすぐわかるようにしていました。作品の切れ目がわからないことは読み手にとってストレスになると思ったためです。


大岡 どう見られたい、どう感じてもらいたい、などのイメージはあった?

坂本 「目的に応じて、いろいろな表現方法を選択できる人」というふうに見てもらいたいと思っていました。紙もウェブもできて、さらにそれぞれの表現手段に対して自分なりの考えをもっていることを伝えようとしていました。そのために、ピックアップする作品や見せ方を意識していたように思います。

紙ではなくデスクトップで見やすいレイアウトにしたことも、それを意識しての戦略です。私が就職活動をしていたのはコロナ禍の真っ只中で、面接がほとんどオンラインになることは早い段階で予測できていました。世情や状況に応じて表現方法を変えられる、柔軟性のある人だと感じてもらえるよう工夫していました。

――コンセント(選考官)の視点から、坂本さんのポートフォリオはどう見えましたか?
大岡 第一印象は柔らかい印象だけど、書かれている言葉はしっかりしていることに良い意味でギャップがありました。例えば1ページ目のフォントの抜け感。それと書かれている言葉のギャップに興味が惹かれて、ぜひ話してみたいと思いました。
実際に面接で話してみても、すごく考えているのが伝わってくる。考えていることと表現されることの一貫性が印象に残っています。


高橋 「グラフィックに強い人がきた」という点が強く記憶に残っています。それがポートフォリオの作品からしっかり見えるようにつくられているなと。もうひとつは、坂本さんの人柄が感じられること。タイトルの書体、自己紹介文、作品の解説文など、細部に坂本さんらしさや想いが表れていると思いました。また、楽しいと思うことやデザインのスタンスなど、人の温度を感じる言葉がしっかりと書かれているのも良かったです。

坂本 自分が何を楽しいと思うか、何に興味があるか、どういう出来事を嬉しいと思うかは意識的に書いていました。ただ作品のことを知ってほしいのではなく、作品を媒体として自分を知ってもらいたいと思っていたからです。

多角的な視点で表現を取捨選択する

―― 制作中にアドバイスをもらった人や参考にしていたものはありますか?
坂本 エントリーした企業の人事の方やデザイナー、学部の友人などによくアドバイスをもらいに行っていました。参考元は、先輩のポートフォリオや雑誌のデザインなど本当にさまざまです。
就活中はいろんな人に見てもらうと思いますが、人によってアドバイスの内容が正反対だったりします。「文章は読まれないからもっと少なくていい」と言う人も、「文章が少なくて物足りない」と言う人もいました。ポートフォリオはひとつの正解があるわけではないので、表現の取捨選択の軸を自分の中できちんともっておくことが重要です。もらったアドバイスを採用するかしないかは、自分で考えて決めなければなりません。

私は漫画が好きなのですが、漫画はまさに取捨選択が重要な表現媒体だと思います。伝えたいことを一番良い形で伝えるために、絵や言葉や画面構成などの膨大な情報を巧みにコントロールしなければならない。好きな漫画家の表現を研究したり、同じような視点で作品を鑑賞する友達と話したりしていたことが、この「取捨選択が重要である」という考えに繋がっているように感じます。

大岡 どう見せたいか、どう伝えたいかを考えるのはデザイナーとしての根源だと思っています。それだけでなくて、坂本さんは多角的にものを観る視点をもっていたんですね。漫画のストーリーを楽しむだけでない視点をもっていた、それを話し合える仲間がいたことが坂本さんにとっては強みになっていたのではと思います。

オンラインだからこそ“質感”をどう伝えるか

―― 今であればこう工夫したい、改善したいと思うところはありますか?
坂本 今思うと、文章での説明のボリュームが少なく感じますね。「それで説明終わっちゃうの?」と。あえて説明を少なくしていたのは、「サクっと読める」ことを意識していたのとは別に、面接の時に掘り下げたくなる「気になる!」ポイントをつくれるんじゃないかという目論見もありました。でも、それにしても味気ないかなと…。

実物写真が少ないなとも感じます。本当は実物へのこだわりもあるのに、「デスクトップの中でデザインして満足する人」だと思われてしまわないかなと。写真を撮るのが苦手だったので、練習をしたり、得意な人に頼るなどしても良かったなと思います。

高橋 私も就活当時は苦労して撮った記憶があります。でも、坂本さんの「100飯」の写真は紙の質感が感じられるよう、光沢が見える角度や光で撮ったのだろうし、タイトル部分の切り跡から見える奥行きや立体感など、こだわった部分を工夫して見せようとしてくれているのが伝わってきます。
ポートフォリオを紙で提出することは少なくなっていますが、たとえ提出がデジタルデータだったとしても、質感、サイズ、紙の薄さなど、こだわったポイントをどう伝えるのかが大事ですね。選考官としては、オフラインメディアをつくったときにどういう表現ができるのかを想像できます。


大岡 デジタルデータで提出しなければならなくても、作品を通してつくりたい体験を言葉で補填することはできると思います。こうあってほしい、だからこういう素材を使った、というように説明を加えることで、伝わる情報量は違ってきます。

高橋 昨年は自己紹介動画を送ってくれる学生もいましたが、映像も個性を表す表現方法のひとつです。ウェブサイトでつくったポートフォリオのリンクを送ってくれる学生もいて、表現手法が増えていると思います。工夫の仕方、手段がたくさんあるので、自分を表現するのにどの方法を使うのが適切かを考えてみると良いですね。

一緒に働く期待感を抱いてもらう

―― コンセントを意識してつくっていたポイントはありますか?
坂本 コンセントのためにつくったというようなところは正直ない気がします。
課題意識が出発点になっているとか、目的と表現の一致を意識しているとか、面接での説明の仕方やアピールするポイントは工夫していました。

大岡 企業ごとに作品の構成や順番を変えたりはしなかった?

坂本 変えませんでした。デザイン会社や制作会社を中心にエントリーしていたからかもしれません。
作品の順番については、最初と最後が一番印象に残るということを意識していました。最初に「いろいろできる人なんだな」と思ってもらえるような作品を出して、最後は人柄や自分のユニークな視点を知ってもらえる作品を置いていました。最後の作品はデザインではなくイラスト作品でしたが、「イラストもデザインも、表現の取捨選択が重要という点は変わらない」という考えを伝える役割を担う作品になっています。
「この作品で自分は何を伝えたいのか」という、各作品の役割を意識して構成を考えることが重要だと思います。


高橋 イラスト作品は、描く過程を通して坂本さんが何に気づいたのかが見えてよいですね。一緒に働いてからどんな気付きを得ながら育ってくれるのか、期待感を抱けるものでした。

大岡 学生から見ると先輩になる我々において、この人と一緒に仕事したらどんなふうに成長してくれるかを想像したい。その種を感じられるかがとても重要です。いわゆる「ポテンシャル」と言われる部分ですが、コンセントでは選考官それぞれで観ているポテンシャルは違います。
会社に入ることはゴールではなくてスタートだと考えています。それぞれに強みがあって、それが合う会社も合わない会社もある。お互いに対等であると思っているので、自身の強みややれること、やりたいことをしっかりアピールしてほしいと思っています。

[就職活動臨む皆さんへ]
ポートフォリオ制作は、「頼もしいパートナー」を育てること

―― 坂本さんの就職活動経験から、今就活をしている皆さんへ伝えたいことはありますか?
坂本 面接に身ひとつで挑まなくていいことは、クリエイティブ系で就職活動をする学生の大きなアドバンテージだと思います。初めて会う人に、その場でのパフォーマンスだけではなく、これまでの軌跡をきちんと見てもらえる。人前で話すことが苦手な私は、なんてラッキーなんだろうと思っていました。ポートフォリオを「倒すべきタスク」として捉えるのではなく、「頼もしいパートナー」を育てるつもりで、楽しく制作してください。



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