はじめまして、株式会社WALCの代表を務める櫻井です。
我々は、工作機械業界のリーディングカンパニー「DMG森精機株式会社」からスピンアウトした、製造業発スタートアップです。工作機械を軸に、AI・IoT・Cloudなどの最先端技術を掛け合わせた事業を行っています。
そして今回は、DMG森精機グループの中でも新規事業を推し進めるWALCメンバーをご紹介します。MedTech・MLOpsグループのリーダー長、梁川 祥吾(やなかわ しょうご)さんです。彼から見たチームやグローバル文化、製造業に抱える想いを、彼の言葉で語っていただきます。
日本の製造業を変え、もう一度“イノベーション”を起こす。
ーー 梁川さんのプロフィールには、「製造業のグローバルプレゼンスが低下している」と書かれていました。こう思われた背景はありますか?
大学で師事していた先生方の存在が、大きく影響しています。彼らは、1980年代の日本で起きた産業革命を、現役で支えた技術者です。プレーステーションなど数々の有名機器が日本から生み出され、世界を驚愕させました。
彼らはことあるごとに、“イノベーション”という言葉を口にしていました。その影響もあって私自身も、「自分の周囲で今起きている“イノベーション”とは何だ?」と考えたことがあります。
「日本はモノづくり大国だ。」「ジャパン、頑張れ。」と、世界から賞賛や声援を受けていた過去。そして、私が生きている今。「今の日本や製造のプレゼンスは、圧倒的に低下している。」私が抱いた正直な想いでした。
ーー 学生当時、製造の現場をリアルで見学したことはありましたか?
恥ずかしながら、見学の機会はほぼありませんでした。授業の一環で一度だけ、製缶メーカーの工場見学に参加したことはありましたね。
現場を見て真っ先に思い浮かんだのが、“アナログ”という言葉です。長い歴史の中で私たちの暮らしは大きく発展してきましたが、その影で現場ではいまだ変えられない課題もある。「今この現状を変えなければ、日本の次なるイノベーションは実現しない。」こう痛感した体験だったと思います。
ーー 改めて、WALCに入社した背景を教えてください。
製造業という日本を代表する大きな産業に、インパクトを与えられる環境だと思ったからです。「AI・IoT・クラウドこの三拍子で工場のスマート化。」というフレーズは、まさしく体現していると思います。
私自身、技術者としてキャリアを終わらせたいとは考えていなくて、ビジネスを立ち上げたい気持ちがありました。そこで、大学院では分野を変え、イノベーション・マネジメントを研究。“技術”について深く知り、技術とビジネスの両側からハイブリッドにアプローチできる環境を探していたんです。
設立2年のスタートアップが、新規事業をリード。グループ創業約70年の歴史を変える。
ーー 現在は、どのようなポジションでご活躍されているのでしょうか?
MedTech・MLOpsグループのグループ長を務めています。WALCをはじめDMG森精機はいくつかの事業を抱えていますが、中でもいわゆる“新規事業”を担う役割です。
ーー MedTech・MLOps の取り組みについて、より詳しく教えてください。
はい。それぞれ解説します。
◆MedTech(Medical Technology)
“ヘルスケア”をテーマに、従業員の労働環境改革を担っています。少子化の影響で製造業における労働力不足が懸念されて久しく、労働環境改善のために多くの取り組みをDMG森精機で行ってきました。他方で、デジタル化を導入化することで、継続的なデータ取得・疾患予測・自然な介入活動などにより、身体的・精神的・社会的な健康を実現することを目指しております。また我々たBtoBの製造メーカとして製造業のお客様・サプライヤーと取引がございます。当社だけではなく、製造業全体を足元から改善することでエコシステム全体の持続的な繁栄を実現します。
◆MLOps(Machine Learning Operations)
チャットログを駆使して、あらゆる情報を引き出せるようにする機能を開発しています。ひとことで工作機械と言っても、その種類は豊富。加えて、何パターンもの活用方法があったりもします。詳しくないユーザーからしてみれば、機能や限界性能含め、正直わかりにくいことでしょう。
我々はこれらの情報を“加工事例”と呼び、蓄積・分析することで未来に役立てたいと考えています。ユーザーが機械の仕様やその効果を、簡単に把握することができる。社内メンバーたちが情報を有効活用し、もっと良いプロダクトを生み出せる。このような世界観を目指しています。
このストーリーでは、MLOpsの取り組みについてお話しする予定です。
ーー 「工作機械をつくること」からは、少し離れているように見える取り組みですね。会社としても新しいスタートを切った背景は何だったのでしょうか?
本格的にスタートしようとグループを結成したのは、2024年1月ここ最近です。DMG森精機グループが企業として何ができるのか。この問いに向き合った結果、以下2つの価値提供を早急に実現しようという運びになりました。
・新しく、真に価値がある。誰でも利用できるモノを生み出すこと。
・グローバルなつながりを活かして、モノの価値を底上げすること。
実際、生成AIの需要が社内的にも増えてきていて、その中で我々MLOpsグループがDMG森精機の新しい仕組みづくりをリードしていきます。なお、“工作機械”が軸にあることは、今もこれからも変わりません。
ーー 事業全体やMLOpsの取り組みについて、現在のフェーズ・改善したいことを教えてください。
今は戦略を練りながら、土台を固めているフェーズです。実際社内では、複数の小規模なプロジェクトを進行し、経過を分析。その結果をもって、これからの方針を決めていきます。
これまで地道に活動してきたこともあり、多くの加工事例を蓄積することができました。一方で、検索性能にはいまだ課題を抱えています。加工事例に関わる情報は、文字列だけでなく写真や表も含まれる上に、情報が更新される度に新しいマニュアルとして置き換えられていく。これらをまとめていくための機能改善を、リアルタイムで行なっているところです。
社外ユーザーに向けてプロダクトの形を決めて届けていくのは、もう少し未来の話。0から立ち上げる面白さがあると思います。
強みはメンバーそれぞれ。補い合いながら、技術でユーザーの課題を解決する。
ーー MLOpsグループには、どのようなメンバーが所属していますか?
私をはじめ、データサイエンティスト1名と学生インターン10名が所属しています。
データサイエンティストメンバーは、学部修士課程で機械工学を専攻。医療機器を機械的な視点から研究する活動を行っていました。
インターンメンバーは、理系学部4年生以上で研究室に所属しています。全員が機械系というわけではなく、“ヘルスケア”に興味をもった薬学・バイオ研究生も活躍中です。
ーー プロジェクトによっては編成が異なると思いますが、どのようなステークホルダーとともに進めていきますか?
例えば、工作機械の周辺機器のモニタリングプロジェクトは、計測部隊の開発チームが関わってきます。そして、検証は必要不可欠なので、テストカット・修理・アフターサービスなどの品質管理部隊との連携も多いですね。
マニュアルの翻訳部隊とも協力するので、日本にとどまらず全世界に我々のプロダクトを届けることができています。
ーー グループ長という立場から見て、グループの雰囲気や仲間たちについて教えてください。
「ユーザーの課題を解決するために、技術を駆使する。」
皆この共通認識をもって、研究開発に取り組んでいると思います。
個性は、本当にいろいろ。例えば、私は非常に細かいところが気になり、丁寧に進める傾向があります。一方でデータサイエンティストの彼は、ものごとを素早く進めることを重視しています。性格が真逆なんです。
でも、だからこそお互いの欠点を補い合える、バランスの取れた良い関係性を築けています。リーダーとあるメンバーの関係性は周囲にも伝わると思っているので、その点でもチームの雰囲気は和やかです。
グローバルだからこそできることを、妥協せず取り組む。
ーー MLOps の取り組みには、グローバル拠点の方々も関わっているのですね。
まず我々は、日本にとどまらずグローバルに価値を提供できるよう、全世界に拠点をもっています。特に大きい拠点が日本・ドイツ・アメリカです。日本だけではできないこと、ドイツだけではできないこと、アメリカだけではできないこと、こういった研究開発ができることは、我々のアイデンティティのひとつでもあるのです。
そしてこのMLOpsは、各拠点ごとに進められていた取り組みでもあって、実はドイツが最も進んでいました。さらにスピーディーに新しい付加価値を生み出すために、連携するようになった背景があります。
ーー グローバルに連携していくことの難しさ、それを超える魅力はありますか?
難しさというと、国をこえた文化・人間性の違いでしょうか。マーケットの状況や考え方・法律といった文化的な違いに加え、志向性や視点など人間的な違いも発生します。例えば、プロダクトコンセプトを設計する際、日本ではカスタマイズ性、ドイツでは標準化・効率化が好まれる傾向がありますね。
そのため、時には意見の違いが生じ、衝突することもあります。世界の課題解決に向けて皆本気なので、どうしても議論が白熱してしまうのです。でも、視点を変えてみると、これらは魅力にもなるはず。グローバルに物事を知り、全世界のユーザーに価値を届けていく研究は、一般的には経験できないことですから。
ーー 意見の違いが生じた際には、どのように結論を導き出していますか?
お互いが理解し合おうという意識をもち、納得するまで議論します。議論を重ねることは、お互いの良さを引き出すことにもつながるので。片方のアイデアを100%採用することはほぼなく、双方のアイデアを融合し、新たな解決策を見つけ出すスタンスが根付いています。
議論の場としては、オンラインMTGや出張の機会があります。関係性を深めるために、オフラインの集中合宿を行うこともありますね。日本・ドイツ・アメリカから関わりのある開発者たちが、この日のために一拠点に集結するんです。合宿の最後には交流会を開いて、より本音でフランクに語り合う時間にしています。
国は違えど、我々は同じ目標に向かっている。このことを自覚し、リスペクトし合う関係性を目指しています。
製造業は改善の余地しかない。技術が活きる瞬間は、あらゆるところに落ちている。
ーー どのような仲間とともに、製造業を変えていきたいですか?
技術の基本を理解していて、製造業に興味がある。社会課題の解決に挑む情熱と、グローバルな視野を持ち合わせている。このような仲間と、日本ひいては世界を変えていきたいですね。
学生・新卒・中途も問いません。大学でプログラミングや機械工学を学んでいる方、社会人2年目の技術者の方、長くキャリアを積んでこられた方、技術の知識と英語力を活かしたい方...。どれも自由ですし、ぜひいろんな志向をもつ仲間を集めたいと思っています。
英語力は必須ではなく、もしご興味があればぜひ。メンバーの志向性を考慮しながら、業務を調整することもできるので。
ーー 最後に、求職者の方へメッセージをお願いします!
このストーリーを通じて、「製造業って今本当に大変だけど、それだけ改善の余地がある。やりがいにもキャリアにもつながる、可能性ある分野だ。」ということに気づいていただけたら嬉しいです。
我々に共感いただける方、少しでも気になっている方がいれば、ぜひ面談でお話ししましょう。
株式会社WALCでは、絶賛メンバーを募集中です。
今回のストーリーを読んで、一緒に活躍してみたいと感じた方・ご興味がある方がいらっしゃいましたら、こちらより気軽にエントリーしてください。まずはカジュアル面談にてお会いできることを、楽しみにしています!