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ポストコロナ時代においてソーシャルキャピタル理論から見た企業の特徴

2年間続いている新型コロナウィルスのパンデミックは、欧米諸国を中心にコロナ前の「日常」に戻りつつあり、日本においても緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置が解除され、この週末に横浜の街に出てみたら、飲食店や歓楽街では活気を取り戻したかように熱気に包まれている。

人類の歴史に新たな1ページを刻んだこのコロナ禍では、日常生活はもちろん、教育の仕方や働き方も大きな変化を遂げていることは間違いない。今まで疑うこともなく当たり前だと思っていたオフィス勤務がリモートワークや在宅勤務に変わり、会議室でのミーティングがZoomやTeamsになり、契約書への捺印がクラウドサインになり、そして忘年会や飲み会もなくなり・・私たちの働き方も、会社内の交流も、お得意先とのコミュニケーションもこの2年間で変貌した。

社会学・文化人類学を勉強した私は、このコロナ禍における社会的な変化が非常に興味深かった。特に、コロナによる職場環境、同僚間交流、そして社員一人一人の働き方の変化について色々考えさせられた。

一般的な会社はいくつかの目的や存在意義を持っている。優先順位は会社によって異なるが、利益の追求、社会への貢献、社員の雇用を守るなどなどが挙げられる。

資本主義が本格的に広まった19~20世紀では利益を追求することが多くの企業の目的だったのですが、21世紀に突入してから、2008年の金融危機で資本主義の弱点が浮き彫りになり、それからずっと悪化していた環境問題への世界的な意識が高まり2014年にパリ協定が採択された。

こういった出来事によって、企業の存在意義や人々の企業への期待が大きく変わった。現代社会において、利益を追求することだけが会社の存在意義ではなく、むしろ「社会への貢献」や「社員の生きがいを与える」など、より抽象的でかつ社会的なものに変わっていた。もちろん、利益の追求は持続可能な経営を維持する上では必要不可欠であることは言うまでもないが。

企業からすると、企業で働いている社員、株主、お得意先やお客様、それから社会を相手にしなければならない。単純に利益を上げればいいというわけではないので、各方面とのコミュニケーションと利益関係を塩梅よく保ちつつ、お付き合いしなければならない。

それぞれのステークホルダー(関係者)は企業にとってどのような関係性を持っているのか、それぞれの関係性の重要性、または特徴はなんなのか?このコロナ禍で関係性は変わったのか?多くの疑問が頭に浮かぶ。

そこで、私は社会関係資本(ソーシャルキャピタル)という概念を大胆に当てはめて、上記の質問への回答を試みようと思う。これは、研究調査ではなく、科学的な根拠があるわけでもないので、お気軽に読んでいただければ嬉しい。

そもそも、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)とは何か?

社会関係資本という概念を流行らせたアメリカの政治学者パットナムによると、「ソーシャル・キャピタル」とは、ネットワーク、規範、信頼などが持つ社会生活上の特徴を示すもの。(https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=13231)

社会関係資本は比較的に最近にできた学問ではあるものの、とても奥深いものがあるのでここで全てを説明することはできないが、簡単にいうと「信頼関係」で、ソーシャルキャピタルが高ければ高いほど、付き合いが深く、コミュニケーションの頻度が高く、そしてお互いへの信頼が深いということ。

また、ソーシャルキャピタルはbonding(結合型)、bridging(橋渡し型)とlinking(連携型)の3種類に分かれている。結合型は、自分と似たような環境で育った、似たような考え方を持っているなど自分に近い、同質的な結びつきを指している。社会の中で言うと、地元が同じ、宗教・民族が同じな人同士の間のソーシャルキャピタルが結合型。一方、Bridging(橋渡し型)は自分と異なる(異質的な)人との間の関係性を指している。例えば、隣の町の人、地元は同じだが普段付き合いのない人たち。最後に、linking(連携型)とは、社会階層が異なる人たち同士の関係性を指している。例えば、富裕層や権力者と一般市民、または市民と政府との信頼関係。

そのため、結合型は距離が近い分、結束力がとても強い。橋渡し型は遠くまで広がるが、そこまで絆は深くない。そして、連携型は縦軸になっているので上下関係の意味合いが含まれている。

では、この3種類のソーシャルキャピタルは企業に当てはめるとどうなるのか?

先述した通り、21世紀の企業は、利益追求だけが目的ではなく、社員の働きがいや福利厚生も大事にしなければいけないし、環境破壊をするような活動はもちろんダメで、むしろ社会的な意義を生み出さなければならない。そして、もちろん従来通り、お客様やお得意様を大事にし、それから株主への説明責任も果たさなければならない。

まず、企業内(社員同士)の信頼関係やコミュニケーションは結合型のソーシャルキャピタルに当てはまる。同じ会社で、同じビジョンや価値観を持って働く人たち同士では、日常的にコミュニケーションを取りつつ、お互いを信頼しながら仕事をしている。

企業とお得意様やお客様との関係性は、橋渡し型。違う組織に所属していて、働き方も理念も考え方も違う人たちとビジネスをする上での付き合いという部分がある。

そして、企業と社会との関係性も橋渡し型に属する。企業は社会なくして存在しない。社会や環境が破壊されたら企業の存続が難しい。そのため、企業はお客様のためだけではなく、この地球のため、国のため社会のためにも貢献する必要がある。今や流行りのSDGsはまさにこのことだと思う。企業の利益のために、社会が損したり、人に被害を与えたりすると本末転倒だ。

そして、最後に企業と株主や、企業と政府との関係性はある意味階層が違うので、連携型のソーシャルキャピタルになる。

ご覧の通り、現代の企業は結合型、橋渡し型、連携型のソーシャルキャピタルにより動いている。それぞれのソーシャルキャピタルには違う役割を果たしているし、どのソーシャルキャピタルが強いかによってその企業の特徴が見えてくる。

例えば、結合型ソーシャルキャピタルの強い企業は、社員同士の信頼関係や絆が強いので、おそらく社員の満足度が高く、離職率も低いことでしょう。

また、橋渡し型ソーシャルキャピタル(社会)の強い企業は、社会やSDGsへの貢献度が高い、つまり環境活動やCSR活動などに力を入れていることがわかる。一方、橋渡し型ソーシャルキャピタル(お客様)の強い企業はお客様を大事にするでしょう。最後に、連携型ソーシャルキャピタルの強い企業は政府との関係性が深く、国や自治体とともに仕事をする傾向があるでしょう。

もちろん、ソーシャルキャピタルの定義は諸説あり、特に決まっているわけではないので、測定方法によって大きく変わる。方法論について語り出したらまたキリがないので、今回はとりあえずここまでにしておこう。

企業の特徴を見極めるもう1つの考え方として、ソーシャルキャピタルという概念をご紹介させていただいた。

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