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「地域に根ざした医療を支えたい」相談員として在宅クリニックで経験を積む

実体験から知った福祉の仕事、地域医療に興味を持つ

私のもともとの夢は保育士でした。しかし、大学受験の時に保育士に必要な音楽の教養について自分を顧みると、音痴であることと、ピアノが弾けないなど基礎が足りないことに気が付き、進路を考え直すことにしました。そんな時に思い出したのが、中学生の頃に祖父が入院した病院で出会った「ソーシャルワーカー」でした。

祖父が入院するまで、病院で働いている人のイメージは、医師や看護師、理学療法士がいるくらいだと思っていましたが、病院の窓口になり患者家族をサポートしてくれる人がいて、その人が「ソーシャルワーカー」という職業であると聞き、初めてその存在を知りました。

そして、進学先を探す中で、家の近くにソーシャルワーカーの資格を取れる実習を実施している大学があるということを知り、大学在学中に何か資格を取りたいと思い、保育士から進路を変更して、その大学の社会福祉学科に入学しました。

大学の講義は、2年次まで座学がメインで、事例検討が多く、ケースについて頭ではわかっていても、あまり実際の現場のイメージは湧きませんでした。しかし、2年次の実習で急性期、回復期、緩和ケアのあるケアミックスの病棟に行き、病棟ごとの特徴の違いを感じることができました。働いているソーシャルワーカーさんが、院内・院外の方々と連携し従事する様子をみてかっこいい仕事だなと思い本格的に目指すことを決めました。

また、大学では病棟での実習を希望し、実際に実習を経験した中でも、在宅医療を実施している病院と精神科病院の2つが一番印象に残っています。在宅医療を行なっている病院では、高齢の患者さんと小児がん末期の患者さんのお家に訪問させて頂きました。医療的なケアを必要とする人でも、病院ではなく自宅で診察が受けられるんだ、と驚きました。精神科病院では、入院して地域との関わりが希薄になっている患者さんを地域に繋げようという動きがあったので、これらの実習を通して地域密着型の医療にとても興味をもちました。


地元を離れ、選んだのは在宅医療

就職について考え始めた時、家の近くの大学を選んだこともあり、このまま地元で就職するとずっと地元から出ることがないだろうなと思いました。

そこで、早いうちに様々な価値観に触れたいと思い、思い切って知り合いがいない関東での就職を決めました。それから、興味のある在宅医療か精神科医療に携われる病院やクリニックを探しました。

精神科への興味もありましたが、就職活動時にはコロナ禍で大学での精神科病院の病棟実習に行けておらず、精神科については分からないことが多いまま、就活先を決めなければいけないという状況でした。実習では在宅医療の方が印象に残ったことと、地元にも精神科病院があったので、まずは在宅医療について勉強して、地域医療のことを学んでから地元で精神科に携わるのでも遅くないと思い、在宅医療のクリニックを選びました。

在宅医療の中でも、ときわのホームページをみて理念に惹かれ、理事長の小畑先生の「医療のための生活ではなくて、あくまでも生活のために医療が寄り添っている」という考え方や、当時、ホームページに掲載されていた相談員のインタビュー記事を読んで、私のなりたいソーシャルワーカー像に近く、このような人達がいる場所で私も働きたいなと思い、ときわの相談員に応募しました。


尊重しあえる職場で、苦手意識を克服

入職してみると、ときわの職員は優しくて雰囲気がいいと感じることが多く、他の職員からもそういった声を聞きます。理事長の小畑先生が第一線で診療に出ていることや、話しかけやすい方であることで、自然とそのような雰囲気がつくられているのかなと思います。

医師や看護師でも福祉の面についてアドバイスをくださる方もいて、他の職種と一緒に話し合うこともあり勉強になります。

また、大学の実習の時は現場の雰囲気をつかめず、わからないことがあった時に、人に訊くことを躊躇してしまう場面もありましたが、ときわで相談員として色々な業務を行っていくなかで、人に訊くことを恐れなくなりました。それは、相談課内に限らず、医師や看護師もみんなが優しくて、訊くと丁寧に教えてくださったり、「私もそのミスしたことがあるから、こういうところ気をつけたらいいよ」など、声を掛け合える関係づくりができているからだと思っています。わからないことは訊いて理解して、次に躓いたときにできるようにすればいいと思えるようになりました。


仕事のヒントとなるのは専門的知識だけではない

医師の初診訪問前に相談員がご自宅へ訪問するため、驚かれる方もいらっしゃいます。患者さんやご家族のプライベートな空間に最初に入らせていただくので、どうしても警戒されてしまいがちです。

そのような時にどのように振る舞うかは、大学での生活や講義での経験が役に立っていると思います。私は大学在学中、人数の多いサークルに所属していました。学外の地域の方々と関わる機会もあり、サークルでの活動やボランティアでは、出来得る限り多くの人と関われる場に参加して、自分の感情がきちんと伝わるように話すなど、人との関わり方を工夫していました。また、講義では心理学や社会学など福祉に特化しない授業もあり、人と関わる上での勉強になる発見が多く、ためになりました。それらの講義で、人と接するときに、相手が自分のことを嫌いかもしれないと思って接すると、相手に遠慮しているオーラが出てしまい、相手も同じように自分のことを嫌いかもしれないと感じ、結局お互いを嫌いになってしまうことがある、という話を聞きました。私自身、過剰に相手に遠慮してしまい関わり方に悩んでいた時期があったのですが、言葉にしてみると意識化でき、現在の対人関係を築く際のヒントになっています。

このようなヒントを元に、クリニックの窓口として、最初に出会う私達が患者さんと向き合う時には、「このクリニックなら信用できるかな」と思っていただき、できるだけ安心してもらえるようにお話することを心がけています。そうすることで、医師や看護師が診療に初めて伺う初診でも、患者さんが受け入れやすくスムーズな診療ができるのではないかと考え、実践しています。


やりがいを見出し、成長した先に見据える未来

相談員をしていて嬉しい瞬間は、患者さんを無事に初診まで繋げられた時です。特に、急な退院等の慌ただしい状況のなかでの介入で、ご家族から「ありがとう」「訪問診療が入って安心して家で過ごせるよ」などの言葉をいただいた時には頑張ってよかったと、仕事のやりがいを感じます。

一方で、相談員は、訪問看護が入るスケジュールの連絡や薬局との薬の調整、患者さんの退院に伴う病院との調整など、多職種との連携を取ることが主な業務の1つですが、多職種連携に大変さを感じることもあります。

例えば、病院との調整の中では、入院中に医療デバイスを使用していた方が退院後、使用している型番の物品が足りず、用意した型番が合わないと、栄養を取れなくなってしまうなどの命に関わる問題にもなるので、できる限りミスがないように病院と連携し、退院に向けて調整をしなくてはならないという緊張感があります。また、病院からは早く退院してもらいたい、退院時に希望通りの使用物品の用意が難しいと言われたりすることもあるのですが、退院に合わせたスケジュール調整が必要ですし、ときわは在宅クリニックで大きい病院ではないので物品の在庫量には限りがあり、病院や患者さんの希望とときわのできることを調整するのが難しいです。

ときわに入職して現在2年目の私には、まだ対応したことのない医療デバイスを使用している患者さんもたくさんいると思います。病棟での勤務経験がないため、見たことのない医療機器なども多く、医療デバイスに関しての知識が弱いので、初診に同行するなど今後も積極的に多くのケースに関わり、きちんと知識をつけていきたいです。先生や看護師さん、相談課内の職員の方々が、様々な知識を教えてくださるので、協力しながら、時には頼らせていただきながら、在宅医療の現場について勉強していきたいです。また、患者さんがどういうところに不安を感じるのかなどに常にアンテナを張り、同じ目線で寄り添える相談員を目指しています。

将来、私は地元に戻り、在宅医療の相談員の経験を活かしてソーシャルワーカーの仕事を続けたいと考えています。在宅で緩和ケアを行っている患者さんに関わらせていただいたことで、ケアミックスの病棟で緩和の勉強をしたいという目標もできましたし、もともと興味のあった精神科医療にも関わっていきたいです。そのためにこれからも様々な分野を見て経験を積み、ソーシャルワーカーとしての知識を広げ、深めていきたいです。








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