はじめまして、入社6年目になるLBPの三牧です。
事業再生アドバイザー(AD)として入社し、現在はファンド部門にて、事業承継ファンドの運営を行い、投資先の取締役としてハンズオン支援に取り組んでいます。
私からはADからファンドに社内異動したキャリアを中心に、入社後どのようなことに取り組み、現在の業務内容についてお伝えいたします。
1.入社の経緯
前職から主に中小企業向けコンサルタントとして、事業再生やM&Aの支援や、自社による再生局面の会社の買収~PMIなどを何社か経験しました。場当たり的に色々と経験をさせてもらいましたが、自身の力量不足を痛感することが多く、より体系的に、場数を踏んで、専門性を身につけたいとの思いが強くなり、「豊富な案件」があり「高い専門性」×「ハードワーク」を強みとするLBPに魅力を感じ、入社を決意しました。
2.事業再生アドバイザーとして
入社後は、まず事業再生ADとして、自力再生、スポンサー傘下での再生を目指すスポンサー型再生など、5年間ほど色々な案件に携わりました。その中で、特に意識していたのは、正解がなく、会社の行く末を左右する再生局面のため、顧客の現状を徹底的に理解すること、その理解をもって徹底的に議論すること。非常に根気が必要ですが、裏を返せば、重大な意思決定に関与できるやりがいある仕事であり、その局面で培ったプロセスや対話力は、自身の課題解決プロセスの重要な指針となっています。
実例で紹介しますと、皆さんも経験するであろう、初めての主担当の案件で、とある多店舗展開企業の再生案件に関与しました。
本業は黒字、関連事業投資の失敗で過剰債務と聞かされていたのですが、蓋を開けると粉飾決算、1億円超の赤字、更に新型コロナウィルスの発生で見通し悪化と危機的な状況。
赤字事業の切離し、本業の徹底的な経費の削減や低採算メニューの見直しなど検討を進めましたが、それでも黒字化には遠く、本部での検討では行き詰まりを感じました。そこで、全店舗を訪問し、店長ヒアリングや顧客アンケートを元に現状の問題点を洗い出し。
結果、顧客ニーズに合わなくなったサービスや体制を縮小し、将来性を見込める新規サービスの重点的な推進など、現場の声と改善によるアップサイドシナリオに基づき、社長と議論を重ねました。その結果、社長も「よく当社の課題が理解できた、やってみます」との意思を確認するに至りました。
LBPが関与する企業の中には、一定の事業規模の拡大に成功したものの、環境変化への対応力が十分でなく、後退局面に陥っている状況にある場合が比較的多いのではないかと感じます。過去のしがらみから脱却するためには、思い込みではなく、現状の分析による「ファクト(事実)」ベースでの対話が重要であり、意思決定まで「ハード」に調整すること、これが重要であることを体感しました。
その他の事案でも、国内外の生産拠点の見直しや営業拠点の再編など、難易度が高い案件にぶつかった時には、ファクトに基づき何度でも顧客と話すことを心掛け、時には意見の衝突もありますし、「鬼軍曹」と言われたこともありますが笑、会社のあるべき姿に向けて、判断に迷う時こそ意識するようにしています。
このようなやりとりが出来ることのも、顧客と同じ釜の飯を食う「常駐支援」ならではであり、またPJメンバーとも議論を重ねたり、案件の合間に飲みにいったりと、案件を離れても助けてくれるメンバーと関係性を構築できたという点でも常駐型での仕事を選んでよかったなと思っています。
プロジェクトメンバーとの飲みながらの情報交換の一コマ
3.ファンドへの移籍について
前述のようにADとして面白く仕事をしてきました。幸いなことに応急措置的な改善はうまくいく会社が多かったのですが、経営の安定化には、適切な意思決定を促すガバナンス体制や推進力が不足する企業も多く、半常駐でも支援してくれないかとの声をいただく機会がありました。自身としても実行まで領域を広げたいとの考えが強くなり、ファンド業務への異動を希望しました。
そのような半ばわがままに対して、相談~対応してもらったパートナーの赤坂さんや町田さん、相談しやすい土壌を作ってくれているパートナーの皆さんには非常に感謝しております。
4.ファンド業務について
現在は、継承ジャパン(事業承継ファンド)にて、伴走型支援に携わっています。具体的には、後継者を下支えするため、取締役という立場で投資先に常駐し、経営体制の強化に取り組んでいます。
事業承継フェーズでは再生フェーズと異なり、応急措置ではなく、今後のあるべき姿に向かって中~長期的な課題へのアプローチが中心であり、また実際に人を動かすことに苦労があります。事業は安定している中で、課題解決への取組み動機や時間軸を合わせる必要がありますし、既存の経営陣は「これまで十分努力してきた」との意識もあります。当初は、投資先の企業の理解や人間関係の構築が進んでいない中で、様々な課題への着手を急かすあまり、ハレーションを受けることもしばしば、、と散々な状況でした。ファンド業務では実際に物事を動かすため、特に相手の立場に立ち、自ら実行を阻害する根本原因の解消を並行して行う必要があることを認識し、マインドチェンジの必要性を痛感しました。
そこで基本に立ち返り、組織体制の不足に対し、部門間のコンフリクト調整や連携強化のための会議体の進行、採用や人事など率先することで、自身の考えや姿勢を少しは理解してもらい、現在では今後の成長に向けた議論ができる土台が出来てきたのではないかと感じています。
事業承継フェーズの企業でも様々な課題があります。特に、トップダウン型の中小企業では、自律した組織体制に向けた人材作りがそもそもの課題であるケースも多いのではないでしょうか。DXによる効率化も大事ですが、後継の経営人材の採用や、後継人材のビジョンの浸透、重点的な課題を解決するため幹部人材の採用や外部人材の活用、プロジェクト組織を編成と実行の推進など、既存の枠に留まらず組織を強化することは、ファンドが関与するからこそ実現できることもあると考えています。短期的に改善すべき事案もある中で、なかなか計画的に遂行する難しさを感じていますが、常駐支援だからこそできる、現場と一緒に事業を作り上げていく姿勢と、ファンドとして次にバトンタッチをする前提での客観的な目線をもち、優先順位を付けて、投資先の支援を進めきたいと考えています。
採用活動の一コマ
5.最後に
ファンドのハンズオンでは、投資先の内部で付加価値を出すことが求められ、それを実現するには経営陣や従業員を動かすことが必要になります。立場は異なりますが、AD時代に培った、現場の声を聴き、現場をみて問題点を洗い出し、対話をする、というプロセスは非常に活きていると感じています。当然のことのように思われるかも知れませんが、様々な会社と対峙した場数とその自信はADを経験してこその武器だと思います。
外部専門家として多くの企業と対峙し、大きな決断を後押しするADは面白いですし、またハンズオンは短期的に成果を出すことは難しく、また業績についての責任の一端を担っているため、悩みやストレスが大きい点は前述のとおりです。一方で、内部から一つ一つ着実に経営体制を整え、次世代へ経営を繋ぎ、その対価として大きな対価を得るという、ADとは違った長期的な視点での面白みやダイナミックさがあります。
私のように、ADのみならず、ファンドへのキャリアにも興味がある方の参考になれば嬉しいです。