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ドコモが食領域に出資した理由──グッドイートカンパニー副社長が語った「日本の食の可能性」

この記事は2022年9月5日に弊社noteに掲載した内容となっております。

食業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、新たな食のエコシステムを構築するため、NTTドコモ(以下、ドコモ)はグッドイートカンパニーに出資する──このニュースが発表されたのは2021年1月のこと。当時、ドコモがグッドイートカンパニーに出資するニュースを耳にしたとき、多くの人がこんな感想を抱いたのではないでしょうか。

「なぜ、ドコモが食の領域に出資?」

“ドコモ側の人”として、グッドイートカンパニーへの出資を主導したのが、現在グッドイートカンパニーで代表取締役副社長COO/CFOを務める忍足大介です。なぜ、ドコモは食の領域に出資することを決めたのでしょうか。忍足がグッドイートカンパニーに出資を決めた理由、そして新たな食のエコシステムを構築することへの可能性を語ります。

▼目次

  • 10年前に食の領域に参入していたドコモ
  • 楠本さんとの出会い、再びドコモが食の領域に参入したワケ
  • 日本の食は世界に打って出られる可能性がある

10年前に食の領域に参入していたドコモ

時はさかのぼること、約10年前。2012年当時、忍足はJPモルガン・インベストメント・マネジメントに務めていました。証券アナリストとしてドコモを担当し、決算情報などから経営状況を分析することで将来的な見通しなどを投資家たちに伝えていたのです。

その2012年にドコモは野菜宅配大手のらでぃっしゅぼーやを買収することを発表。これをきっかけに、ドコモは“食の領域”にも参入することになりました。

「携帯電話向けネットサービス『iモード』を提供していた時代、ドコモはiモード上でさまざまなサービスを展開し、ビジネスを成り立たせることができていました。ただし、スマートフォンが登場しiOSやAndroidが台頭したことで、通信キャリアがサービスプロバイダーとしてビジネスをするのは難しくなったんです。結果的にドコモは毎日ユーザー接点が持てるビジネスをしなければいけないとなり、そこで“食”に目をつけたんです」

そして、2014年には料理教室などの事業を展開するABC Cooking Studioの51%株式取得を発表するなど、立て続けに食の領域で事業を展開する企業を傘下におさめていきます。積極的に食の領域へと参入していったドコモでしたが、買収から4〜5年が経過してもなかなか思うような成果が出せない状態が続いていました。

「“外の人”としてドコモの買収に関して『ああした方がいい』『こうした方がいい』と言うのは簡単ですが、実際にそれを実行に移すのは難しい。であれば、ドコモという会社の中に入って、成果が出ていなかった買収の案件を立て直してみようと思ったんです」

こうして2017年にドコモに入社した忍足。その後は「リバイバルプラン」と銘打った再建の計画を策定し、ドコモが買収したらでぃっしゅぼーや、ABC Cooking Studioの立て直しに取り組んでいきます。忍足はABC Cooking Studioの社外取締役にも就任し、事業を立て直そうとしましたが、結果的には上手くいきませんでした。

2018年にドコモはオイシックスドット大地が実施する第三者割当増資を引き受ける形で出資し、子会社のらでぃっしゅぼーやをオイシックスドット大地に売却。そして、2019年2月にABC Cooking Studioとの提携を見直し、ドコモが保有するABC Cooking Studioの全保有株式を売却することが発表されました。

「食の領域に関しては想像していたような成果が出せなかったこともあり、当時ドコモ社内にあった“食文化チーム”も解散することになったんです。そうした背景から、ドコモは完全に食の領域から撤退し、今後やることはないだろうなと思っていました」

楠本さんとの出会い、再びドコモが食の領域に参入したワケ

食の領域で事業はやらない──そんなポリシーが決められている中、なぜドコモが再び食の領域に参入することになったのか。その裏側には、グッドイートカンパニーの代表である楠本修二郎の存在が関係しています。

「楠本と出会ったのは、2017年の夏だったと思います。当時、楠本と『カフェ・カンパニーがドコモショップのプロデュースをして地域コミュニティのハブになるカフェにするのはどうか?』というプロジェクトを計画していたんです。既存のショップとカフェがコラボする事例はいくつかあり、個人的にもカフェ・カンパニーとドコモショップのコラボはアリだと思っていました」

話は進んでいったものの、両社の事情もあり、結果的に話自体が流れることに。その後、忍足が楠本と再び会うことになるのは、2020年4月ごろのこと。新型コロナの感染が拡大し始めたタイミングで、忍足のもとに「ご無沙汰しております。久しぶりに折り入ってご相談したいことがあります」と楠本からFacebookでメッセージが届いたのです。

そして、忍足は久しぶりに楠本と再会し、日本の食産業の危機について話し合いました。緊急事態宣言が発令された中で、楠本と共に1週間ほど何をするか考えた結果、「外食のオンライン化」というお題目にたどり着きました。

「コロナ禍になって食産業全体が厳しい状況になっているのは、パッシブ(受動的)なビジネスモデルだからだと思うんです。お客さんがお店に来てくれて初めてビジネスが成立する。そうではなく、プロアクティブ(積極的)に飲食店が情報などを発信していくことで、お店以外の場所でお客様に商品を買ってもらうことはできないか、と考えたんです」


当時、フードデリバリーサービスも考えましたが、すでに複数のプレーヤーが参入しており、市場もレッドオーシャンの状態。「最後発で参入しても勝てる見込みがない」と忍足は判断します。楠本と共に他にはどんなビジネスが考えられるか。さまざまなアイデアを考えた結果、出た答えが、先述した外食のオンライン化でした。

「ここ数年でいろんなECサイトが登場していますが、外食をそのままオンラインで販売するのはどこも実現できていない。まずはECサイトを立ち上げて外食のオンライン化に取り組みながら、それをオフラインでも体験できる店舗もつくる。そして、その店舗のDX化にも取り組む。これを軸に事業を立ち上げることを決めました」

そのような経緯で、2021年1月にドコモが出資してグッドイートカンパニーが立ち上がりました。

日本の食は世界に打って出られる可能性がある

現在、食のコミュニティ型EC「GOOD EAT CLUB」を展開しているグッドイートカンパニーが、これから目指すのは日本の外食を世界に提供することです。従来のECでは実現できていない鮮度維持技術や冷凍技術を武器に、日本中のGOOD EATを世界に展開していくことに、これから取り組んでいきます。

「日本の食はまだまだ可能性があると思っています。コロナ前の2018年の訪日外国人旅行者数は3000万人を突破するなど、過去最高を記録しており、旅行者のほとんどが日本の外食を楽しんでいたわけです。また、ミシュランの3つ星を獲得している飲食店が最も多いのも日本。それを踏まえると、日本の食は世界に打って出られる可能性あります」

「外食というパッシブなビジネスモデルをオンライン化し、世界中に届けられる状態をつくる。それによって、海外の人が日本のおいしいものを食べられるようになるだけでなく、その逆で日本の人が海外のおいしいものを食べられるようにもなります。時間と空間と距離の概念を超越するモバイルテクノロジーを持っているドコモが、日本に眠る食の価値を海外に届けることは挑戦する価値はすごくあると思っています」

日本の食の価値という意味では、日本人が代表を務める米ニューヨーク発の植物工場スタートアップ・Oishii Farmが開発する高級いちご「Omakase Berry」は1パック8個で40USドル(約5500円)という価格ですが、すぐ売り切れになるほどの人気を見せています。

「日本の食が世界で受け入れられる余地は十分にある」と語る忍足。現在、日本国内では内食や中食の需要が増え、(接待といった)外食の機会が減ったことで、シェフの労働力にもキャパシティが生まれるようになってきています。「それを良いきっかけに、シェフと一緒に商品開発をし、それを海外に展開していきたい」と忍足は語ります。

「最近、日本の食を海外にも展開できる、これまでになかった革新的な鮮度保持技術の活用にも注力しています。現在、ECサイトは国内向けに展開していますが、来年以降はこの技術をもとに海外展開にも力を入れていく予定です。まずは日本のおいしい食を海外に展開していきます。その後は海外のおいしい食も日本に持ち込むことで、新しいトレンドなどを生み出していければと思います」



グッドイートカンパニーについて
株式会社グッドイートカンパニーは、20年来「WIRED CAFE」を始めとするカフェ運営を通して コミュニティ創造を行ってきたカフェ・カンパニーとNTTドコモとが、資本・業務提携を通して 新たに設立された企業です。 「GOOD EAT CLUB」は、飲食店・料理人・生産者・食品加工業者・食の探求者たちと作る、食のコミュニティ型ECです。 「LOVE & EAT〜 愛すべき食を、未来へつなぐ ...
https://goodeatcompany.notion.site/6264997ccfcd4777b50944baf5ea4ea0
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