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「こうでなくてはならない」を超えて。Ayakaが見つけた、今の笑顔が活きる場所 【国際女性デーに寄せて】

3月8日は「国際女性デー(ミモザの日)」です。1904年3月8日にニューヨークで女性労働者が婦人参政権を要求してデモ集会を開催したことに由来し、これまでの女性の勇気と決断を称え、女性の地位向上や女性差別の払拭を考える日とされています。

性別にかかわらずお互いを尊重し、誰もが働きやすい社会を目指したい。そんな想いを持つ京都のコーヒースタートアップ Kurasuでは、性別やバックグラウンドが異なるメンバーがそれぞれの「個」を活かし活躍しています。

Kurasu創業期以来のメンバー、Ayakaもその一人。2016年8月にバリスタとして入社し、ジェネラルマネージャーを経験した後に代表社員(役員)になりましたが、妊娠・出産を経て、再び従業員に戻ることを選びました。そんな経験のすべてが、現在のポジションであるカフェ事業統括マネージャーに活かされているといいます。

本日の国際女性デーを記念し、Kurasuの顔といってよい存在であるAyakaに、仕事と妊娠・出産・子育てとの両立にどう向き合ってきたか、そこからどんな知見を得たかを聞きました。

Oki Ayakaのプロフィール - Wantedly
合同会社Kurasu, 店舗統括マネージャー/ Head of Store Operaions コーヒーキャリアのスタートは2011-2015年に勤務したスターバックスコーヒー。 ホスピタリティとは何か、お客さまを思う気持ちの大切さを教わりました。 2015-2016年にワーキングホリデーにてオーストラリア、メルボルンにて1年間コーヒーを学び 2016年にスタートしたKurasu Kyoto
https://www.wantedly.com/id/oki_ayaka

メルボルンのカフェでバリスタに。新しい価値観を知る

——Ayakaさんがコーヒー業界に入ったきっかけを教えてください。

もともと人と話すことが好きで、学生時代に経験したアルバイトはすべて接客業でした。一番長かったのはスターバックスで、18歳から4年間ほど働きました。とはいえ、最初からコーヒーに興味があったわけではなく、店舗で受けた接客に感動して、「私もこんな店員さんになりたい」と思ったのがきっかけです。

そこで働くうちに、自然とコーヒーに興味を持つようになりました。当時、滋賀県にあったスターバックス リザーブ® ロースタリーの店舗に所属しており、他店舗よりもコーヒーについて勉強できる環境にいたこともあって、どんどんコーヒーが好きになっていきました。初めてSCAJに行ったのも、このアルバイト時代でしたね。

——その後、オーストラリアに移り住んだそうですね。

スターバックスで数年働くうちに「もっとコーヒーについて広く学びたい」と思うようになり、長期休暇を取って、コーヒー文化が盛んと聞くオーストラリアのメルボルンに1か月ほど滞在してみました。英語科の高校を卒業しており、英語が好きで得意だったのも一つの理由です。

メルボルンでいろいろなカフェを巡ってコーヒーの奥深さを知り、その魅力に引き込まれていきました。観光ビザでの滞在を終えて帰国し、4年間勤めたスターバックスを辞めて、今度はワーキングホリデービザで渡豪。メルボルンにあるカフェ「Superrandom」を含む3店舗で働かせてもらえることになって、本格的にバリスタとしての人生が始まりました。

世界チャンピオンになったこともある師匠、ヘッドバリスタのNobuさんからコーヒーを教わり、退勤後はみんなで自然と時間を忘れて居残りして自主練する日々で、本当に楽しかったですね。

——そこではどれくらい働かれたのですか。また、帰国を決めた理由は?

ワーキングホリデービザの期限は1年間なので、メルボルンに暮らしそのカフェで働いたのは1年間です。ファームジョブ(農園労働)のような特定の仕事をしてセカンドビザを取得し滞在期間を延長することも可能ですが、メルボルンに滞在して3〜4ヶ月、ようやく暮らしも仕事も慣れてきて楽しくなってきたタイミングで、ファームに行くのは今じゃないかなと感じたんです。

これまで日本のスターバックスやさまざまなお店での接客業を経験し、日本のホスピタリティやサービスを学んで、自分に合っている仕事だと自信が出てきていたのですが、オーストラリアのカフェで働いてみて、ワークスタイルやマインドセットのあまりの違いに衝撃を受けました。

たとえば、お店がすごく混んでいて必死にコーヒーを作っているときにホール担当の同僚に「Ayaka!!!!!!」と呼ばれ、「何!?どうした?」と思ったら、彼女は「This is my favorite song.」とスピーカーを指差すんです。日本だったらあり得ないでしょう?

彼女はいつも明るく元気な人なので、フロアにコーヒーを持っていくときも「お待たせ~♪」という感じで、お客さんもそれを楽しい気持ちで見ているんです。日本なら「大変お待たせしました。お待ちいただきありがとうございます!」と低姿勢が当たり前なのに、ずいぶん違うんだなあ、と。

そんな経験から「こうでなくてはならない」という思い込みが覆され、そのカフェを辞めても日本で別のやり方でコーヒーに関わっていけばいいし、日本とオーストラリアの接客をうまくミックスして届けていけたらいいなと考えて、帰国することにしました。

バリスタ、ジェネラルマネージャー、そして代表社員へ

——帰国してわずか2か月でKurasuに入社されたそうですが、どんな経緯だったのでしょうか。

2016年5月、帰国予定日の2週間ほど前に、たまたま友人がFacebookでシェアしたKurasuのバリスタ募集投稿を見かけました。目に飛び込んできたのは「京都から世界へコーヒーカルチャーを発信する」という言葉。

帰国後もオーストラリアで学んだコーヒー、接客、英語を活かしたい。日本の人々にもっといろいろなコーヒーを飲んでもらいたい。そう考えていた私にはぴったりの場所だと感じ、滋賀の実家から通えるのも魅力的だったので、すぐ応募して、代表のYozoさんとSkypeでお話ししました。

そして、日本に帰った翌日にYozoさんと京都駅前で会いました。当時Yozoさんはシドニー在住でしたが、一時帰国されていたタイミングだったんです。私の経歴ではなく私自身を見てくれていると感じたし、「あなたが僕に対して合わないと思えば断ってくれていい」と言ってくれたことに驚きました。採用する側がこんな風に言ってくれるのか、と。

まだKurasu Kyoto Standのお店ができる前でしたが、Yozoさんの人柄にも惹かれ、迷わずここで働きたいと伝えました。その場で採用が決まり、2016年7月に入社しました。

——Kurasuでのポジションの変遷をお聞かせください。

最初はバリスタとして入社し、その翌月Kurasu Kyoto Standがオープン。取材問い合わせがあったのですが、Yozoさんはまだシドニーにいたので、どうしたらいいか聞いたところ、「Ayakaちゃんが店長だ!」と言われ、いきなり店長になってしまいました(笑)

——当時のKurasuらしい、勢いを感じるエピソードですね(笑)

それから3年間ほど、Kurasu Kyoto Standの店長をする傍ら、Kurasu Fushimi Inari(現在は閉店)やKurasu Ebisugawaの新店舗オープンに携わらせてもらったり、店長候補スタッフのトレーニングや新設された焙煎チームやパッキングチームのサポートをしたりと忙しい日々を送りました。

Kurasuが大きくなり、環境が変わっていく中で、「もはや自分は1店舗の店長とは言えないのではないか」と思い始め、Yozoさんに相談。すると、「じゃあ、ジェネラルマネージャーになろう」と言ってくれました。ロールモデルのない中、私の気持ちと会社の状態に合わせて新たにポジションを作ってくれるのが、Yozoさんらしいというか、Kurasuらしいというか(笑)

Baristaから General managerになって 【Ayaka Oki】前編
こんにちは! 今回インタビューするのはKurasuの顔と言ってもいいほどの大きな存在、Ayaka。 なんと2017年5月以来のインタビューです。 「最近カフェで見かける機会が減ったような気がする」、「Ayakaさんは今何をしているの?」など 聞かれることも多いので今日はそんなお客様へのメッセージも含め、彼女の近況と 前回のインタビューから4年経った今どう変わったのか、彼女の想いに迫りました。
https://jp.kurasu.kyoto/blogs/kurasu-journal/interview-with-ayaka-our-new-general-manager
BaristaからGeneral managerになって【Ayaka Oki】後編
こんにちは! 今回インタビューするのはKurasuの顔と言ってもいいほどの大きな存在、Ayaka。 なんと2017年5月以来のインタビューです。 後編となる今回では、おうちコーヒーのスタメンについてや、彼女のパーソナルな部分に 触れつつ、今後の展望などを伺いました。 今回も美味しいコーヒーを飲みながらお楽しみください。 ================================ ...
https://jp.kurasu.kyoto/blogs/kurasu-journal/https-jp-kurasu-kyoto-blogs-kurasu-journal-interview-with-ayaka-our-new-general-manager-secondpart

そして2022年8月、Yozoさんからオファーをもらい、代表社員(役員)に就任しました。Kurasuは合同会社で、それまで役員はYozoさん一人きり。責任重大だと感じたものの、Yozoさんに万一のことがあったとき従業員を守りたいと考えて引き受けました。

お知らせ: Kurasuの代表社員に大木彩夏が就任
この8月より、合同会社Kurasuの代表社員として大木彩夏が就任したことをお知らせいたします。「Ayaka」として皆さんに親しまれている大木は、2016年8月にKurasu Kyoto ...
https://jp.kurasu.kyoto/blogs/news/ayaka-joins-kurasu-board


妊娠・出産後は子連れで出勤。産後の働き方について

——代表社員に就任した翌年に妊娠されたとお聞きしました。

2023年8月に現CFOのMasaさんが入社し、これからKurasuを大きくしていこうというタイミングで、妊娠が判明しました。ITベンチャーで経理からプロダクトマネージャーまで務めた経験を持つMasaさんが入ってくれたことは、実務的にも精神的にも大きな支えとなり、妊娠中も無理のない働き方ができました。

代表社員(役員)って、労働基準法・育児介護休業法の対象外なので、産休や育休といった概念が存在しないんですよね。Yozoさんは「好きなだけ休んでいい」と言ってくれましたし、サポート体制も整えてくれましたが、なにしろ初めての出産なので、どれくらい休めば復職できるのか自分でもわからなかったんです。自分なりに調べて「2か月が妥当かな」と判断し、出産して2か月後に職場復帰しました。もし当時の自分に一言声をかけられるなら、「半年は休もう!」って伝えたいですけど(笑)

——復職するにあたって、赤ちゃんのお世話はどうされましたか。

Yozoさんに相談し、子連れで出勤させてもらうことにしました。前例はなかったですが、「いいんじゃない、やってみよう!」「ベビーベッドや授乳用カーテンなど、必要な備品があれば買っていいから」と言ってもらえたのが心強かったですね。

(写真:ベビーベッドのそばに昇降式のデスクを設置して、抱っこしながら仕事しやすい環境に)

赤ちゃんのお世話をしつつ仕事をするのは何もかも手探りでした。授乳しながら役員ミーティングに参加したこともあります。感じ方は人によって違うので「子育てと仕事の両立を考えるすべての人がそうすべき」とは思いませんが、前例がないことも柔軟に受け入れ、性別やバックグラウンドの異なるメンバーがお互いをリスペクトできるKurasuの組織文化は、子育てと仕事を両立したい私にとって心地よいものでした。

——産後の働き方において、よかったことと大変だったことを教えてください。

2か月で職場復帰して、よかった面と大変だった面の両方があります。

人と話すことが好きでずっと接客業をしてきた私にとって、社会から離れて赤ちゃんと家で二人きりで過ごすのは、ある意味、恐怖でした。メンタル面を考えると、2か月で復帰したのはよかったと思います。初めての子育てでわからないことが多い中、オフィスでみんなに相談できたり、子どもが泣いたときも「どうしたんだろう?」と一緒に考えてもらえたり、夫が同じ会社にいたりと、ありがたい環境でした。

(写真:Soraちゃんと、夫のTatsuyaさんと)

一方で、大変だったのは、睡眠不足です。現在でも、朝まで起こされずに眠れる日は迎えていません。マミーブレイン(産後に記憶力や集中力、思考力の低下が起こる現象)なのか、前はパッと答えられたはずの質問に答えられなかったり、頑張って発言しても「なんであんなこと言ってしまったんだろう」と後悔したり、うまく頭がまわっていない感覚なんです。

がんばりたい気持ちはあるけれど、いつまで子連れ出社できるのかわからないし、自分自身やりきれるのかなというプレッシャーに押しつぶされそうでした。役員としてのレベル感やスピード感での仕事が難しくなってきたと感じ、役員をやめて再び従業員になりました。

悔しかったけれど、同時にほっとしたのも事実です。Yozoさんからは「落ち着いて、また役員を目指したかったら目指せばいいよ」と言ってもらえましたし、従業員に戻ったことでオンオフの切り替えができるようになり、子どもと向き合いやすくなったと感じています。

正解は一つじゃない。今の笑顔が活きる場所を探して

——妊娠・出産・子連れ出勤を経験し、どんな気持ちの変化がありましたか。

妊娠・出産・子育てや、働き方やキャリアについての考え方は、本当に人それぞれです。「どうしたいか」「どこまでやりたいか」が見えない中で会社が環境整備をしても、本人の意向とはズレてしまうかもしれません。なので、本人の気持ちをちゃんと聞くこと、それも頻繁に聞くことが大事だと思うようになりました。

同じ人間でも、出産前、出産後、その少し後では、ずいぶん気持ちが違うんです。だから、組織側は「こうするのがいいだろう」と決めつけず本人の意向を聞いたほうがいいし、本人としても「こうしたい」を伝えられるといいのかな、と思います。個人的には、妊娠・出産・子連れ出勤を経験し、周囲に弱みを見せる大切さや人に頼る方法を学べました。

現在、私はカフェ事業統括マネージャーとしてKurasu Kyoto StandとKurasu Ebisugawaの店舗マネージメントを担当しています。カフェメンバー全員との定期的な1on1や日常の会話を通じて一人ひとりに向き合い、サポートする日々です。コーヒー、サービス、今後のキャリアプランも含めた目標管理も、私の役割だと思っています。

飲食業で、こんなふうに目標設定に注力しているところは珍しいでしょう。どんなバリスタになりたいかなど、目指す姿はみんな違うので、「こうするのがいいだろう」と決めつけるのではなく、一人ひとりに寄り添い、本人の意向と組織としての方向性をすりあわせていくのが大事だと感じています。

——コーヒー業界でキャリアを積みたい方へのメッセージがあればお願いします。

前例のない中、私が手探りで出産や子育てと仕事を両立してこられたのは、多様性を尊重し、スピード感と柔軟性を持つKurasuの環境があったからだと思っています。でも、最初からそうだったわけではありません。会社が成長し、新しいメンバーが入ってくる中で、徐々にKurasuらしいカルチャーが構築されてきたと感じています。

環境は合う・合わないがあるので、Kurasuにフィットしない方もいるでしょう。実際に、面接をしていて「すごく素敵な方だけれど、うちじゃないな」と思う方もいます。そんな方には、「ここやあそこも見に行ってみてもいいかもしれませんね」というように、その人がもっと輝けそうなほかのお店を紹介するなど、お節介をしてしまうこともあります。

とにかく、伝えたいのは「あなたの今の笑顔が活きる場所」で自信になるキャリアを積んでほしいということ。今Kurasuにフィットしなかった彼女ら彼らも、今Kurasuじゃなかっただけで、また未来で合流して一緒にやれるかもしれません。

それぞれ自分に合った場所でがんばって、みんなで一緒に業界をもりあげていきましょう!

——Ayakaさん、ありがとうございました。最後におすすめのコーヒーを教えてください!

やっぱり、ラテですね。私は普段はブラック派ですが、Kurasu Kyoto Standのラテは本当においしくて、飲むとほっとするので、ぜひ飲んでみてください。そして、ラテそのものだけでなく、バリスタの仕事風景やコミュニケーション、カフェの空間、隣にいる人は何を頼むのかなといったことも含めて、まるごと楽しんでほしいです。

お店で見かけたら、気軽に声をかけてください。みなさんとお話しできるのが、私の一番の「ここにいる理由」です。

Kurasuは、一緒に働く仲間を募集しています!

Kurasuでは、コーヒーを通じて人々の暮らしを豊かにし、笑顔溢れる社会を実現するビジョンに共感するメンバーを募集しています。

一人ひとりの情熱と知識を大切にし、自由な発想と責任感を育む環境のなかで、生産者から消費者まで、コーヒーに関わる全ての関係者とのつながりを深める経験が得られる、そんな場所です。

変化を恐れず、新しい価値を追求し、市場の変化に対応するKurasuで、コーヒー産業のグローバルリーダーとして共に成長しましょう。

合同会社Kurasuからお誘い
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